あの世を司る閻魔大王の館の一室でスーナは事務仕事をしていた。
「これが、ここ数十年の地獄に落ちた者達の資料ですオニ」
「ありがとうございます。それとは別に今、地獄で反旗を翻そうとしている亡者達は別にリストアップしておいて下さい」
スーナが地獄の獄卒として働いているのには理由があった。北の界王を殺した罪として地獄行きになる予定のスーナだったが現在、地獄で起きている問題解決の為に獄卒として抜擢されたのだ。
それと言うのも現在、地獄では元フリーザ軍を含めて地獄へ行った亡者で溢れかえっている。更にその亡者をコルド大王が纏め上げて軍を率いて閻魔大王に反旗を翻そうと画策していた。更に最近になり、セルも加わって手が付けられない状態に陥っているのだと言う。その事件の解決策として元フリーザ軍の幹部であるスーナが界王の紹介で抜擢された。
元フリーザ軍の幹部であるスーナを起用するのに閻魔大王は当初、良い顔をしなかったがコルド大王やギニュー特戦隊、フリーザ軍兵士達が暴れているのを知ったスーナの静かな怒り様を見て、任せるしかないと確信した様だ。
因みにスーナの現在の服装はスーツや道着ではなく獄卒として黒の着物を身に纏い、巨大な金棒を装備していた。コレに関しては地獄の働くスタイルの差があるからである。天国や閻魔大王の館で働く鬼達はスーツ姿だが、地獄で亡者達を相手にしている鬼達はタンクトップに短パンといったスタイルなのだ。スーナがそんな姿で地獄を彷徨こうものならば地獄の亡者共が群がってくる事は間違いなかったし、下手をすれば閻魔大王はスーナからセクハラで訴えられかねない。ならば、それっぽい服装という事で黒の着物に金棒というスタイルに定まった。
「しかし……死んでも他人に迷惑を掛けますね、あのナマモノは」
「他にも亡者達が反旗を翻している様ですオニ。あ、資料は此方ですオニ」
スーナは眼鏡を掛け直しながら資料に目を通す。現在、地獄で獄卒鬼達に反抗し始めている者達をリストアップした資料を見ながら、事態を率先して行なっているセルに呆れていた。
「地獄の亡者の力を抑えられる力があると言っても力が格上過ぎると、こうなってしまうのですね。良く今まで反乱が起きなかったものです」
「今までも反乱みたいな事はあったんですが、力を抑えられて途中で諦める亡者が殆どだったんですオニ。セルとかコルド大王とか言うのが来てから秩序が乱れ始めたんですオニ」
閻魔大王は戦闘力で言うならばラディッツより強いが界王よりは劣る。しかし彼の持つ死者への絶対の権力によりセルやフリーザなど力では格上の存在でも地獄送りする事が可能であり、セルを地獄送りへとしたまでは良かったが力を抑えられたセルでも地獄の獄卒鬼よりも遥かに強く、セルはそれを良い事にコルド大王やギニュー特戦隊、ザーボン、ドドリア、ターレス、スラッグ、シャーベ以下、フリーザ軍の兵士達、レッドリボン軍の兵士達等を支配下に置き、地獄を掌握し始めていたのだ。
「まったく……死者の行き先を決めるのも重要な仕事だとは思いますが部下の管理も必須ですよ」
「か、返す言葉も無いですオニ……」
スーナの言う部下の管理とは閻魔大王に限った話ではなくその下で働いていた鬼達の事を示していた。事務に携わる鬼達と亡者を拷問にかける鬼達とは連絡が滞る事が多々あった。その為にセルやコルド大王の反乱に気づくのが遅れた上に報告も遅くなった事で現在の獄卒だけでは手に負えない状態になってしまったのだ。
しかし、拷問をする獄卒だけが悪いのかと言えばそうではない。悪人の魂を浄化する為の装置が閻魔大王の館には存在するのだが、フリーザ軍の兵士達が大量に地獄行きになった為に浄化装置のタンクの入れ替えは頻繁にしなければならないのだが、下っ端である鬼のサイケ鬼が仕事をサボっていた為にタンクが破裂寸前だったのだ。気付いたスーナがサイケ鬼を殴り飛ばした後にタンクの全てを迅速に交換したので大事には至らなかった。もしもスーナがこの事に気付かなかったらタンクが破裂し溜まり切った邪気が溢れ出て大変な事になったであろう事は想像に固くない。
この件にサイケ鬼の上司である鬼達は怒っていたが、そんな重要な仕事を下っ端であるサイケ鬼に任せていた上司達にも問題があるとしてスーナは閻魔大王に直訴していた。閻魔大王は死者の選別で忙しいから鬼達の事は任せきりにしていたと目が泳いでいた。
そんな事もあり、スーナは閻魔大王からフリーザ軍で培った知識で鬼達の人事を任された。それにより閻魔大王の館の管理が始まった。
天国や閻魔大王の館に勤めていた鬼達は緩かった管理体制の引き締めが行われた。過去の亡者達の資料の管理と情報の修正。更に魂を浄化する装置の管理人の増加と指導。余談だが仕事をサボっていたサイケ鬼は髪は半分黄色く染めていてカジュアルな服装を勝手にしていたのだがスーナの指導により丸坊主にされ、服装もスーツに着替えさせられた。サイケ鬼はクビは免れたが職務怠慢だった為に新卒の獄卒に混じっての新人研修を受けさせられる事が決定していた。
地獄で亡者達の管理や拷問を担当する鬼達は報連相をしっかりする様に定めた上でセルやコルド大王などの大物相手では閻魔大王を通して天国に在住の達人達の手を借りる事が決まった。尤も、それは今回の反乱騒ぎが収まってからの話になるが。
「やっぱり……お父さんは死んでいない。でも、何処に……ナメック星で死んでいないんだとしたら地球に転移していた?でも、生きていたなら私に会いに来る筈なのに……もしかしてチェンジで他の生き物に乗り移っていて身動きが取れなかったの?」
此処までの管理体制を見直していたスーナだが、あの世で調べたかった件があり、地獄での反乱騒ぎを収める前に、その事を確認していたのだ。スーナがいの一番に調べたのは父であるギニューの事だ。彼が死んでいない事は閻魔大王の館の資料で確認はしたし、地獄で暴れているギニュー特戦隊はジース、バータ、リクーム、グルドだけでギニューの姿は無かった。そして死んでいない事を確認はしたものの何故姿を表さないのか……導き出される答えはギニューがチェンジで他の生き物に入れ替わってしまい、身動きが取れないと言う予想だった。
「まさか、あのカエルが?……いえ、まさかですよね」
スーナはカプセルコーポレーションの温室に居た自身に妙に懐いていたカエルが父ギニューだったのでは?と考えたが頭を横に振って馬鹿な考えだと切り捨てた。それが正解だったとスーナが気付くのは、もう少し後の話になるが、それは今のスーナには知る由もない。
「まあ、気になる事も多いですが……今は地獄の反乱騒ぎを鎮圧するのが先決ですね」
スーナはそう言って席を立ち、金棒を肩に担いだ。地獄の反乱騒ぎを鎮圧する為に。因みにスーナのデスクには惑星ベジータのサイヤ人の資料や地獄の最下層に捕らえられているフリーザの資料が残されていた。