地獄の反乱騒ぎを収束させたスーナは獄卒の時に着ていた着物からスーツに着替え直していた。雰囲気的に着物を着ていたスーナだが、他の獄卒達がスーツかタンクトップなのに一人、着物なのは若干浮いていた。故にフリーザ軍時代に来ていたスーツよりも大人びたOLの様なスーツと黒のストッキングに着替えて仕事をしていた。
反乱騒ぎの後にスーナは地獄のサイヤ人の集落へと来ていた。理由は二つ。先日の反乱騒ぎに参加しなかった理由と自身のルーツを探る為である。
「此処がサイヤ人の集落……なんだか随分と荒れてますね。なんか暴れた様な後が大量に……おや?」
地獄の浅い階層の端のエリアにサイヤ人の集落は存在した。サイヤ人達は地獄での拷問は受けるし、罪を償おうとしている姿勢は見せるもののコルド大王やセル達に従おうとせず、何故か集落に身を寄せているのだ。
穏やかに生きる事を選択したのでしょうか?と考えたスーナだったが現地の荒れた様を見て、考えを改め始めていた。
「侵入者か!俺達はもう誰にも従わねぇぞ!」
「そうだ!サイヤ人を舐めるなぁ!」
「俺達は誰にも縛られない!」
するとスーナの前に三人のサイヤ人が現れた。フリーザ軍の戦闘ジャケットを身に纏っているが微妙にデザインが古く、スーナが知る時代のサイヤ人では無いのだろう。
既に戦闘態勢に入っているサイヤ人達を落ち着かせようとスーナは声を掛けた。
「いえ、私は……」
「やっちまえ!」
「「おうっ!」」
声を掛けはしたが先頭の男を皮切りに残りの二人も襲いかかって来た。スーナは「はぁ……」と溜息を溢すと右手を前に構えて中指を親指で支えた。
「落ち着いてください」
「ぎゃっ!?」
「ぐやっ!?」
「………へ?」
スーナのデコピンに二人が吹っ飛ばされ、集落の方へと飛んでいく。残されたサイヤ人も何が起きたのか分からずに呆然としていた。
「まったく……亡者になったから従えとは言いませんけど話くらいはマトモに聞いてください。私の名はスーナ。フリーザ軍の人事です」
「フ、フリーザ軍だと!?」
スーナの自己紹介にサイヤ人は怯えて後退りを始める。その様子を見たスーナは一息ついてから説明を続けた。
「今は軍から離れている身です……見ての通り私も死んだ身ですので。それと……こっちも見ていただけると分かると思いますが私もサイヤ人です」
「た、確かに……それに尻尾!?お前さんもサイヤ人なのか!?」
頭の上の輪っかを指差した後、スーナは自身の尻尾を見せた。それが一番手っ取り早いと考えたからである。
「私が……幼い頃に既に惑星ベジータは消滅していました。私は私自身の両親を知りません。故にその手掛かりがあればと思いサイヤ人の集落にお邪魔させ頂きました」
「そ、そうか……だが、しかし……」
「お、おおっ!?スーナじゃねぇか!」
スーナの説明にサイヤ人の男は何故か言い淀む。そしてそれと同時にサイヤ人の集落から一人のサイヤ人が飛んでくる。スーナには、そのサイヤ人には見覚えがあった。
「ナッパさん。お久しぶりです」
「良い女に成長したじゃねーか!でも、地獄にいるって事は……お前も死んじまったのか?」
サイヤ人の集落から飛んできたのはナッパだった。ナッパは当初、喜んだものの、スーナの前に降り立つと両肩に手を添えて悲しそうな表情になっていた。ナッパは乱暴な言動は目立つが同族意識や仲間意識が割とある人物だった事をスーナは思い出していた。スーナはそっとナッパの手に自身の手を添えた。
「死んでしまったのは事実ですが、私自身の不手際な部分が大きいのと……家族の為にこの身を捧げたのです。悔いはありません」
「そうか……お前が良いのなら俺から言う事はねぇぜ」
スーナの言葉にスーナ自身が納得しているなら、とナッパは手を離した。ナッパが手を離したのを見計らってスーナは自分が此処にきた経緯を話した。
地球でのセルとの戦い。自分が死んだ理由。地獄に来てから反乱騒ぎを止めた事。フリーザが地獄の最下層に居る事。自身の出自のルーツを知る事。それらを話し合えるとナッパは難しい顔をしていた。
「うーむ……俺にゃ難しい話は分からねぇ……おお、この集落には昔からのサイヤ人も多いからスーナを知ってる奴が居るかも知れねぇぜ!」
「でしたら、是非お話を……所でなんでサイヤ人の皆さんは此処に集落を?」
ナッパもフリーザ軍時代でもスーナのルーツは知らず、心当たりがないと言う。しかし、この集落には古参のサイヤ人が居るのだからスーナの出自を知るサイヤ人が居るかも知れないと言うのがナッパの考えだった。
集落を案内してくれると言うナッパにスーナは率直に感じた疑問を投げ掛ける。
地獄では抵抗した者や罪の深い者は牢屋に入れられるが、罪の浅い者や反省の見られる者は地獄に存在する集落で暮らすのだが、サイヤ人は地獄の浅い階層の端に集落を構えているのだ。正直、不便としか言いようがない。
「そ、それがよ……そのコルド大王みたいに反乱騒ぎを考えていたんだけどよ。地獄じゃ力がろくに出せない上に力のある連中……ベジータ王や側近は先に地獄に来てから、さっさと成仏して転生しちまったんだ。残った上級兵も反乱騒ぎを起こそうとはしなくってよ……」
「それで……今更引っ込みがつかなくなってしまって……今じゃ細々と集落に……」
ナッパや他のサイヤ人が気まずそうに喋る。それを見たスーナは何処か納得した。
「つまり……力も出せない上に自分よりも戦闘力がある人達は乗り気じゃなくて、指導者は地獄の折檻に負けて早々に転生してしまったと」
「隙が無いなスーナ」
スーナの発言に二人は「うっ」と言葉を詰まらせる。恐らく惑星ベジータが消滅した際にベジータ王や側近達は地獄に落ちていたのだろう。地獄での反乱を考えていたのだろうが、地獄で亡者は力を引き出せない。更に獄卒達の拷問に耐えきれず魂を浄化する装置で心が洗われた後に転生したのだろう。逆に戦闘力の低い者やナッパの様に最近地獄に落ちた者は拷問の暦が浅くまだ地獄に滞在したままなのだろう。そしてプライドの高さが邪魔をして先日の反乱騒ぎを参加しなかったのだろうとスーナは結論付けた。
「でも参加しなくて正解でしたね。もしも参加していたら……私自ら拷問に参加していましたから」
「お、おう……」
にこやかに話しながらグッと拳を握るスーナに底知れぬ恐怖を感じるナッパ。スカウターは無いが本能的にスーナの力を感じた様だ。
「そ、それでも残った古参の連中も居るからよ。安心しな」
「そうですね。私は悟空さん、ベジータ王子、ナッパさん、ラディッツさん、ターレスさん以外の純粋なサイヤ人には会った事が無いので楽しみです」
若干引き気味のナッパに案内されながらスーナは集落に足を踏み入れた。集落の内部では見た事の無いサイヤ人達が遠巻きにスーナを見ていた。後の交流で話を聞きたいですね、と考えていたスーナだったが案内された先で驚愕に包まれた。
そこには頭から地面に突き刺さったラディッツと目付きが悪く、頬に傷がある悟空が居たからである。