バーダックが告げた悟空の母であるギネが生きている発言にスーナを除いた全員が驚愕した。
ギネも惑星ベジータの消滅に巻き込まれたと思っていたからだ。
「ど、どう言う事だ親父!」
「どうもこうもねぇよ。カカロットを地球に打ち上げた後、俺はギネを気絶させてポッドで地球以外の平和な惑星に送り付けた。そんだけだ」
「なんで、それを私達にも言わなかったんだ!」
ラディッツの叫びにバーダックはたいした事じゃないと言わんばかりの態度だった。
「あの時……俺は死の予感があった。ラディッツはベジータ王子と共に他の惑星の制圧に行っていたし、カカロットは地球へと送った。だったら後はギネを逃せば良いと思った。俺の勘違いだったらギネもカカロットも迎えに行くつもりでな。最も……俺の予感は的中して惑星ベジータは滅ぼされちまった訳だがな。言わなかったのは言う必要が無かったからだ。ギネが居ねぇって事は死んじゃいねぇって事だからな。聞かれなかったしな」
「それでも言えやっ!」
「どちらかと言えばバーダックさんは照れているのでは?男のサイヤ人が子供や奥さんの心配をするのは珍しいと言われてるみたいですし」
バーダックの素っ気ない言い分にキレそうになったラディッツ。しかし、スーナの発言にバーダックの頬に僅かに赤みが走った。顔を背ける辺り、正解だったのだろう。その仕草にスーナはクスクスと笑みを溢した。
「色々なお話が聞けて良かったです。今日はこの辺りで失礼しますが……また来ますね、お祖父様」
「ちっ……とっとと消えろ」
楽しそうに笑みを溢しながらサイヤ人の集落を離れたスーナ。フリーザの側近だと言うスーナを警戒していたトーマ達だったがスーナの人格に絆された様だ。
「お祖父様か……確かにカカロットの義理の娘ならバーダックはジジイだな」
「複雑だけど悪くないって顔だね、バーダック」
「うるせぇ……」
トーマやセリパに弄られるバーダック。不機嫌そうには見えるが満更でも無い様子だ。
「フリーザが上司で親父がギニューとカカロット。義理の祖父がバーダックってどんだけ濃いんだアイツは……」
そんな中、ナッパだけはスーナの取り巻く家族関係に一人ため息を溢した。ついでを言うなら戦闘の師はクウラやピッコロであり、弟に悟飯やトランクスと言う更に複雑かつ濃い関係が広がっていたりする。
閻魔大王の屋敷に戻ったスーナは天国行きのリストを読み漁っていた。バーダックの言っていた悟空の母親であるギネの生死を確認する為だ。この数十年。サイヤ人に限定して検索をしたが結果はゼロ。つまり、バーダックの予想通りギネは生存していると言う事になる。
「フリーザ様が亡くなられてフリーザ軍もほぼ壊滅状態。これは全宇宙に広まった事ですが、それらを知らずにフリーザ軍から身を隠している可能性がありますね……悟空さんに伝えるべきでしょうか?でも今の私は死者ですし、あの世の者がこの世の者にあまり口出しすべきでは無いと界王様からも言われてますから……うーん」
この調査結果を悟空に伝えるべきかと悩むスーナ。界王が直接指示を出す話ならまだしも今回の事はかなり個人的な内容であり、あの世で調べた事を悟空に伝えて良いものかと悩んでしまう。自身がドラゴンボールで蘇ったのなら伝えても良いだろうが、あの世にはあの世のルールがある。
その辺りは界王も悟空にキツく言い含めている。その証拠に悟空は瞬間移動で界王星には修行で訪れてはいるが天国や地獄には足を踏み入れていない。これはあの世の定めとして生者があの世を迂闊に彷徨いてはいけないとしているからだ。
特例があるとするならば占いババの力であの世から現世に一日だけ戻った時と界王星などで修行の為に肉体を得るか、死んで間もない頃にドラゴンボールで生き返るか……それらを考えると今回の事も口出しをするのは憚られる事と言えるだろう。
「私が現世に戻る時までのお土産話として残しておきますか……でも所在は調べておきましょう。私にとっては祖母に当たる方ですし」
そう言ってスーナは資料を片付け、閻魔大王の館を後にして天国へと赴いた。此方でもやる事や調べる物があったからだ。最もこっちの方はスーナがあの世に来た段階で挨拶は済ませておいたので今回は話を聞きにだ。
「おおっ……待っておったぞ桃香」
「はい。お待たせしてスミマセン、悟飯翁」
スーナが天国に会いに行ったのは悟空の育ての祖父である孫悟飯だった。悟空から話を聞いていたスーナはあの世に勤めるのが決まった際に、その事を調べて挨拶に行っていたのだ。自己紹介を済ませた後に悟空の幼い頃の話を聞こうと思った矢先に地獄での騒動となり、問題が解決したらゆっくりと話がしたいと約束をしていたのでスーナは天国へと来たのだ。
因みに『悟飯翁』とはスーナなりの弟である悟飯との区別の為の呼び名である。
「ふむ……以前、悟空が嫁さんを会わせてくれた時以降は会っとらんかったら、こんな可愛い義娘が出来ておったから驚いたわい」
「可愛いだなんて……可愛いと言えば悟空さんの赤ん坊の頃はどうだったんですか?可愛かったでしょう?」
悟飯翁のストレートな褒め方にスーナは照れて話を変える事にした。悟飯翁はフム、と考える様な仕草をした。
「うむ、悟空は今でこそ穏やかな性格になったが赤ん坊の頃は暴れん坊での……拾った時なんぞアナコンダで縄跳びをしておった」
「私ならその時点で山に埋めてましたね」
赤ん坊がアナコンダで縄跳びをする光景を思い浮かべてスーナは真顔で思案していた。何故、パオズ山の山奥にアナコンダが居たのかも疑問ではあるが。
「その後、谷底に落ちて頭を打ってから良い子になったがの」
「サイヤ人云々ではなく悟空さんの生命力の底の深さが垣間見えましたね。他にはどんなエピソードが?」
悟飯翁は苦笑いになりながらも悟空の幼い頃のエピソードを話してくれた。その話は悟空が大猿化して悟飯翁を踏み潰す話まで続いた。