ブラック家の御曹司   作:修造

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こんにちは。

ついにここまできました。
一章完結です。



賢者の石

  シグナス・ブラックとの驚きの邂逅のあと────

 。

 

 やはり援軍なしでハグリッドを説き伏せるのは難しく、何故かロンまでやる気になってしまった。説得も虚しく、卵を孵化させることになった。

 

 ハーマイオニーが、"ブラック先輩も言ってたじゃない。法律違反よ。私たち捕まるわ!"と泣き落としに入ったけど、"ハーマイオニーは黙ってろ!"とロンが一蹴した。今まで見たことがない恐ろしい表情だった。

 

 僕もハーマイオニーも、彼らを止められなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このごろ、ロンは生まれたばかりのドラゴン(ノーバードと名付けられた)にご執心のようで、名付け親のハグリッドに懐かないのをいいことに、甲斐甲斐しく世話をしていた。

 

 そんなにブラックの言葉に従うのが嫌なのだろうか。

 

 

 そんな中、ハグリッドの小屋にまたブラックがやってきた。ハグリッドにこの前の詫びと、頼んでいたものを受け取りに来たという。

 

 "何をもらったの?"と聞いてみたところ、"魔法薬の材料さ。動物由来のものはハグリッドが融通してくれるんだよ。"と返ってきた。

 

 さらに、"スネイプ教授に頼んで教室を貸してもらっているのさ。ポッターも自習で魔法薬つくってみるかい?学年末試験も近いし1年生のヤマなら教えられると思うけど。あ、グレンジャーもどうだい?"

 

 と言われた。サラリと言っているけど、スネイプと結託して何かをしようとしているのではないか。という疑惑は残っている。

 

しかし、確かに試験が近いのは事実。ヤマは張っておいて損は無い。それに双子によると、ブラックは2年連続首席らしい。どうせ嫌味を言われて頼みも聞いてくれないだろうスネイプに頼るくらいなら、ブラックの方がずっといい。実際、僕自身はまだ彼とは敵対していないのだから。

 

 ということで頼もうとしたところ、"ハリー、まさかそんなやつのことを信用するのかい?それに自習とか嘘に決まってる!スネイプと結託して何かしようとしているんだ!"とロンに邪魔されてしまった。

 

 さらっと僕たちが懸念していることを言ってしまうあたり、ロンに隠し事は向いてない。

 

 "ウィーズリーには関係ない。"

 

 今まで努めてロンの存在を無視してきたブラックは、再びロンの爆弾を起動させたあとさっさと行ってしまった。

 

 "それとドラゴン。まだ引き渡してなかったのか?ことは急を要する。関わって何もしなかっただけでなく育ててるなんてバレたら君たちも退学だと思うんだけど。"

 

 せっかく苦手な魔法薬が何とかなると思ったのに!ロンのアホ!!

 

 それにブラックの言う通りだ。このままじゃ僕たちまで巻き添えを喰らってしまう。

 

 しかし、ブラックのことを心底気に入らないらしいロンと、ただ今絶賛母親役をやっている(実際不評だが)ハグリッドは耳も貸さなかった。

 

「いい加減にしてくれ。この頑固者、馬鹿、アンポンタン、間抜け、マーリンの髭!」

 

 とりあえず怒りがオーバーヒートしたので、思いつく限りの罵倒する言葉を全力で投げかけた。ハーマイオニーが、"流石に言い過ぎ!"と注意してくるけど、至極真っ当な意見を聞きもしない2人が悪い。

 

 主にハグリッドを増長させるロンが。すると、こんなことを言われると思ってなかったのか、ロンは泣き始めてしまった。最近僕らは上手くいってない。みんなストレスがたまっている。

 

 

 

 

 

 この後、めちゃめちゃロンを宥めた。

 

 

 

 更に悪いことは続く。

 

 

 ノーバード誕生からそう時間が掛からないうちに、もう小屋の高さに届きそうになっていたのだ。

 

 ブラックの言うことは本当だったんだ!

 

 生まれた直後の頃からハグリッド目掛けてよく火を吹いていたけど、最近は火力も増しており、木造の小屋がいつ焼け落ちてもおかしくない状況だ。

 

 こればっかりは、ハグリッドもロンも顔を真っ青にさせた。しかも最近また僕らに絡み始めたマルフォイにも大きくなったノーバードを見られ、ようやくロンはチャーリーに連絡を取りに行った。

 

 

 

 そして手紙が帰ってきた日──。

 

 ロンはドラゴンに手を噛まれてしまった。ブラックが言うには、確か猛毒を持っているらしい(ハグリッドに説得するときに確かに言っていた)から、危険だ!早く医務室へ!と繰り返し言っていたけど、ロンは頑なに顔を縦に振らない。

 

 意地でもブラックの言葉に従いたくないらしい。

 

 強制的に医務室に連れていくことができたのは、毒による作用で手がパンパンに腫れ上がり、痛みに耐えきれずロンが泣きわめいた頃だった。

 

幸いにも、チャーリーはすぐに引き取りに来てくれるという話出そうだ。しかし、秘密裏にコトを運ぶために、真夜中のうちに天文台まで運ばなければいけないようだった。

 

 おまけに、手紙を挟んだという本を、ロンはマルフォイに渡してしまった。毒による影響で気づかなかったらしい。(体のいい言い訳だ。)

 

 しかし、今さら予定日を変更するわけにはいかない。僕らはチャーリーにコネクションがないから連絡もできない。

 

 ロンはダウンしてしまったからハーマイオニーと2人で運ばなければならない。ブラックの言っていたことが身にしみる。

 

 確かに1年生でこれをどうにかするのは大変だ。

 

 やっとの思いでノーバードをリヤカーの中に入れ、遠い天文台目指して歩き始めた。

 

 

 

 

 そして何とかチャーリーに渡せた僕らは、少し休もうということになり、さあ行こうかと戻ろうとしたところでスネイプに見つかってしまった。

 

 更には、何故か僕らを探していたらしいネビルと、散々僕らを嗅ぎ回っていたマルフォイもマクゴナガルに捕まっており、僕らの行動で、グリフィンドールに前代未聞の150点減点が言い渡された────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――

 

 ポッターにはほとほと呆れてしまった。自分が特別だから何をしてもいいと思っているのだろうか。

 

 現在、俺とダフネは、朝食を取りに大広間へ行くついでに、各寮の得点を示す砂時計のところに来ていた。生徒たちが群がり、ごっそりと得点が減ったグリフィンドールの噂をしている。

 

 何でも、グリフィンドールの得点が一夜にして150点も減点されたらしい。俺には心当たりがあった。

 

 

 一度、ドラコにポッターたちのことを言われたのだ。ドラコとは、クリスマス休暇から戻ってきてからは今までよりも話す頻度が減った。今までよりもダフネと話しているからだ。

 

 暇になったドラコは最近、またポッターに絡むようになったらしい。

 

 最初は久しぶりに話せると嬉しくなっていたが、いきなり核心に踏み込まれてたいそう驚いた。なぜドラゴンのことを知っているのかと思ったものだ。

 

知っている人間は少ない方がいいとポッターたちには言い聞かせたハズだ。聞いてみると、どうやらハグリッドの小屋いっぱいに成長したドラゴンがいたらしい。

 

 この前にまた忠告したばかりだし、とっくに処理された問題だと思っていた。しかし、彼らはまだ何もしていないらしい。

 

 この前ハグリッドに頼んでいたものを受け取りに行ったときに、俺の忠告を受けいれて辞めておくべきだったのだ。いや、本来孵化させる前に引き渡しておくべきなのだが。

 

 しかし、正直俺はあんな面倒事に関わりたくない。さっさと終わらせれば済むものを、問題になるまで放置した案件だ。ドラゴンがやってきた時のために"結膜炎の呪い"でも復習しておくか。

 

 そして翌日。

 

談話室にいるところを、ドラコはドラゴンを引き取る旨を書き記した手紙を持ってきた。彼らは情報管理も甘いらしい。これに懲りて大人しくしてもらった方がいいだろう。

 

 興奮して"これでポッターたちは退学だ!"とまくし立てているドラコに、"スネイプ教授に手紙を託してあとは大人しくしているんだ。わかるね?"と伝えたあと、もうこの件は終わりだとばかりに部屋に戻った。

 

 

 そして、スネイプ教授は期待通りしっかり絞ってくれたようだ。彼らは行動力があるのか、はたまたフットワークが軽すぎるのか、厄介事をよく起こす。先のトロール事件もそうだ。

 

 グリフィンドール生に冷遇され、寮対抗杯の優勝を争う他3寮からはお礼を言われる始末。否、お礼を言っているのは、主に現在1位をひた走るスリザリンだけだ。

 

 逆に残りのレイブンクローやハッフルパフは、スリザリンの7年連続優勝をグリフィンドールに止めてもらうために応援していたらしい。実際グリフィンドールの得点はスリザリンに肉薄していた。

 

 こういう所は、寮の関係が緩和されても変わらないんだなと痛感した。

 

 可哀想だとは思わなくもないが、彼らにはきっちりと行動を改めて欲しい。特にポッターやグレンジャーは見どころがある。こんなところで退学だとかになったらもったいない。

 

 まあグリフィンドール贔屓のダンブルドアのことだ。ポッターだけは優遇して退学措置だなんて取らないだろうが。しかし、巻き込まれるのは御免被る。

 

 

 

 そして俺の忠告を無視したドラコも減点された。

 

 マクゴナガルから我が寮監に引き渡され、20点減点とのことだ。スネイプ教授にしては厳しめの採点だが、これは戒めだろう。

 

 情報をリークしたのなら、動かずにただポッターたちが捕まるのを待っていればいい。しかし、彼は自分も夜にわざわざ外出し、マクゴナガルに"外出禁止時間だ"と捕まったのだ。情報も正確だったし、正直何で外に出たのか、これがよく分からない。

 

 外出禁止時間を破った罪は重いらしい。

 

 過去何回も破ってきている俺にとってはそんなに重大でもない気がするのだが、わざわざ罰則を取らせるそうだ。しかも夜間に。更には禁じられた森で。

 

 結局、ドラコはポッターたちと仲良く罰則を受ける運びとなったそうだ。ドラコ。君も秘密裏にコトを運ぶことを知っといた方がいいよ。

 

 

 

 

 そして罰則の日。

 

 流石に可哀想だと思った俺は、真夜中に使える呪文など色々とアドバイスをして彼を送り出した。

 

 そして現在は彼を待って談話室で紅茶を飲んでいた。先ほどまでダフネや、(自称)ドラコを愛してるパーキンソンもいたが、夜も遅くなったので部屋に帰した。

 

 それにしても遅い。こんな夜中までかかるものなのか?

 

 

 

 

 ようやくドラコが帰ってきたとき、彼の凶変ぶりに驚いた。白い顔が更に青白く、汗ばんで恐怖におののいている顔をしていた。

 

 罰則は、最近傷つけられているというユニコーン(!)の調査だったという。そしてまさかの下手人と遭遇してしまったドラコらは、ケンタウロスの助けで間一髪助かったらしい。

 

 自分にしては珍しく声を荒らげたほど彼は憔悴していた。息も絶え絶えのくせに、必死に言葉を紡ごうとするドラコに胸がいっぱいになった。

 

 ドラコは、勇敢にも戦ったらしい。あたりを光で照らすルーモスこそ、下手人がフードで顔を隠したせいで失敗に終わったものの、失神呪文や武装解除呪文を用いて攻め立てた。

 

 しかし、最後は力及ばず逆に失神呪文を受けて倒れてしまい、意識を取り戻したのは、ハグリッドに抱えられながら森を抜けたあとらしい。

 

 正直、1年生としての罰則でこれは無い。"父上に訴えてやる!"と意気込むドラコに"元はと言えば忠告を聞かなかったお前が悪い"と黙らせたあと、よく頑張ったと労った。

 

 元より罰則1つで崩せるほどダンブルドア体制は脆くない。先の襲撃事件でも、グリフィンドールはほとんど減点されていなかった。

 

 正直ポッターたちよりも減点されていて当然だと思うのだが、やはりダンブルドアの考えることはよく分からない。ただ贔屓していることは分かる。

 

 また、戦闘におけるアドバイスもした。今回の場合、相手の顔を確認するまでは良いとしても、それに失敗してからも戦闘を継続するのはナンセンスだ。

 

 まず、ドラコは1年生だ。俺も直接教えたから分かるが、彼には確かなセンスがある。といっても絶対的に実戦経験が足りない。

 

 次に、相手の力量が分からなかった。もしかしたら死喰い人だったかもしれない。更に視界も悪く、そんな悪条件での戦闘は避けるべきだ。

 

 ではどんな行動を取れば良かったか、────脇目も降らずとにかく逃げることだ。大声を出して位置を知らせるとなお良い。

 

 今回のように、もしも敵が格上だったのならまずドラコに勝ち目はない。傍らのポッターは額の傷を抑え何も出来なかったそうだから、さっさと彼の手を引いて逃げるべきだったのだ。

 

 こうして彼への説教を終えると、恐怖で寝られないと甘えるドラコと一緒に寝た。誰かと一緒のベッドで寝るのは何年ぶりだったか。

 

 

 

 

 

 その夜、久しぶりに母さまの夢を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恐怖の罰則から一夜明け、ドラコはいつにも増してくっつくようになった。基本的に、朝昼晩と授業以外はよく一緒にいる。一度死を覚悟したからか、もう自分に素直になるらしい。

 

 

 おかげで彼の取り巻きもくっついて非常に動きづらい。

 それでもドラコが満足ならそれでいいか。

 

 

 …構ってくれないとダフネがご機嫌ななめだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学年末試験を迎えた。教科がほぼ倍増し、最初はどうなることかと思ったが、いつもフワッとしている占い学以外は納得のいく手応えが掴めた。

 

 特に、要求以上に仕立てた変身術や、習っていない無言呪文で課題をクリアした変身術などの結果が楽しみだ。

 

 魔法薬も忘れてはいけない。

 日頃お世話になっているスネイプ教授への恩返しの意を込めて、最高の出来のものを作った。

 

 

 

 

 そして終業式が近づいてきたある日──。

 

 ポッターたちが、学校に隠されていた賢者の石を守った──という噂が校内中を駆け巡った。

 

 噂の出所は存じ上げないが、どちらにせよ、それを多くの人が信じているらしかった。

 

 実際にポッターたちやクィレルが行方不明になり、この4人に何かあったのでは?と囁かれているからだ。

 

 真相はどうであれ、一時冷遇されていたポッターは、再び学校の皆に受け入れられたようだ。

 

 あんなに公然と悪口を言われていた頃とは違い、今では良い噂しか聞かないし、誇張されまくった武勇伝(真偽すらも怪しい)が流布されている。

 

 

 それからしばらくして────大広間では、学年末パーティーが開かれようとしていた。

 

  全体はグリーンとシルバーを基調とするスリザリンカラーで大胆に装飾され、スリザリンを象徴する蛇が堂々と描かれている。スリザリンの7年連続での寮対抗杯優勝だ。

 

「そっか。今年で7年連続で優勝ってことになるのね。」

 

「そうだね。今年の7年生は全ての学年で優勝したことになる訳だ。」

 

「大丈夫さ。シグの学年も7年連続で対抗杯を取らせてみせる。」

 

「ありがとうドラコ。期待してるよ。そういえば、ドラコはスリザリンの1年のなかでは1番得点を稼いだんだっけ?」

 

「まあシグには及ばないけどね。それに学年1位って訳じゃない。まあ首席はもらうけど。」

 

 

 

 視界の片隅では、まだ宴会が始まってないのにも関わらず、既に7年生たちが盛り上がっている。最大の難関、NEWT(いもり)試験を乗り切ってハイになり、テンションがおかしくなっている。

 

 重圧から解放された爽快感はいかほどだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  やがて、一躍時の人となったポッターたちが大広間に入ってくると、途端にあたりが静まり返った。すぐに、まるで再起動したかのように皆が会話を再開する。ひたすらポッターのことを話していた。

 

 ポッターがウィーズリー(6男坊)とグレンジャーの間に座ると、まるで図ったかのようなタイミングでダンブルドアが前に出てきた。

 

「また1年が過ぎた!」

 

 ダンブルドアは、とても朗らかな表情で言った。生徒たちは、ザワザワと噂をする。やがて落ち着きを取り戻すと、ダンブルドアは続けて言った。

 

「一同。ご馳走にかぶりつく前に、老いぼれの戯言をお聞き願おう。何という1年だったろう。君たちの頭も以前に比べて少しは何かが詰まっていれば良いのじゃが……新学年を迎える前に、君たちの頭が綺麗さっぱり空っぽになる夏休みがやってくる。

 

 それでは、ここで寮対抗杯の表彰を行う。点数は次の通りじゃ。

 4位グリフィンドール、312点。

 3位ハッフルパフ、352点。

 2位レイブンクロー、426点。

 

 

 

 そして1位スリザリン、

 

 493点。」

 

  途端に、スリザリンのテーブル中から歓声が上がる。7年連続で寮杯を獲得したのだ。嬉しさもトビっきりだ。ドラコに至っては、その手に持つゴブレットをテーブルに叩きつけている。お行儀が悪いからやめなさい。

 

 

「よし、よしスリザリン。よくやった。しかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」

 

 ダンブルドアの言葉に、スリザリン生たちの狂気にも近しい笑みが凍りつく。

 

  ダンブルドアは構わず続けた。

 

「エヘン。……駆け込みの点数をいくつか与えようと思う。まず最初は、ロナルド・ウィーズリー君」

 

  いきなりのことで、ウィーズリーの頬が赤くなり、彼のことをよく思っていないドラコは顔を顰めている。シグナスはポーカーフェイスを保っているが、その内面はいかに。

 

 彼が何かをやっただろうか。

 

「ここ何年か、ホグワーツで見ることができなかった素晴らしいチェスゲームを見せてくれた。よってこれを称え、グリフィンドールに50点を与えよう。」

 

  グリフィンドールから、悲鳴にも近い歓声が上がる。パーシーはいつもの冷静沈着なキャラはどこへやら、何かを早口でまくし立てている。

 

「僕の兄弟さ! 一番下の弟だよ。マクゴナガルのチェスを破ったんだ!」

 

 どうやら例の噂のことを言っているらしい。やはり寮が変わってくると、情報の精度も変わってくるようだ。

 

 ……というかチェスで得点が入るとか、こじつけもいいところだ。大会をやった訳でもあるまいのに。

 

 そして50点という大きな大きな得点。この瞬間、シグナスはダンブルドアの狙いを察し、その眼光を鋭くする。

 

「次に、ハーマイオニー・グレンジャー嬢。火に囲まれながらも冷静な判断でこれに対処した。よってこれを称え、グリフィンドールに50点を与えよう。」

 

 歓喜に打ち震えるグレンジャーが、顔を手で覆って嬉し涙を流している。予想外の展開に盛り上がるグリフィンドール生たちとは対照的に、こちらスリザリンテーブルはもはやお通夜のような状態だ。

 

 当然だ。権力の力で堂々と不当とも思える過剰な加点をされ、100点も追加されたのだ。そして次に誰が呼ばれるかは、もはや皆も検討はついていた。

 

「3番目は、ハリー・ポッター君……その完璧な精神力を称え、グリフィンドールに80点を進ぜよう。」

 

 グリフィンドールテーブルから1番遠いこちらでも、耳鳴りをするほどの大騒音だった。グリフィンドールは、たった3人の加点によって、スリザリンまであと1点に迫ったのだ。

 

 この時点で、ほとんどのスリザリン生たちが、更なる展開を想像させていた。そう、絶対に揺るがないと思っていた、7年連続優勝という事実が崩れ去るのを。

 

 自分の宣言によって歓声が上がり、自ら余韻に浸っている様子のダンブルドアの合図で、スリザリン以外は徐々に静かになる。

 

 レイブンクローも、ハッフルパフも、スリザリン以外は次の言葉を誰もが期待して待っていた。

 

「勇気にも色々あるじゃろう。敵に立ち向かうのには確かに勇気が必要じゃが、仲間に立ち向かっていくのにも勇気が必要じゃ。よって、ネビル・ロングボトム君に10点を与えたい。」

 

  まるでテロでも起こったかのように大声が上がる。グリフィンドールは、土壇場で勝利を勝ち取ったのだ。

 

 途中から期待していた通りの結果に、レイブンクローにハッフルパフの生徒も、グリフィンドールに続くように歓喜の声を上げる。

 

 あの憎かったスリザリンを、寮杯の座から引き摺り下ろしたのだ。それがどんなに異常な手段でも。

 

 この大広間にいる生徒たちは、スリザリン生を除いて正常な感覚が麻痺していた。グリフィンドールが一年かけて積み上げた得点の半分以上をこの一瞬で与えたのだ。これを職権乱用と言わずしてなんと言うだろう。

 

 何という贔屓、なんという残酷な仕打ちだろう。

 

 歓喜鳴り止まぬ大広間の傍らで、7年連続の寮杯を逃したスリザリン生たちのすすり泣きが聞こえる。

 

 しかし、あの爺は校長。しかも無駄に強すぎるから、寮全体で立ち向かっても適いっこない。つまり、どんなに不当な加点であっても絶対に覆ることは無い。

 

「従って、飾り付けをちょいと変えねばならんのう」

 

 ダンブルドアが杖を振ると、大広間中の装飾がグリフィンドールカラーの真紅と金色に変わり、グリフィンドールの象徴、ライオンが現れた。

 

 

 更なるサプライズにますます盛り上がる大広間をよそに、シグナスはもはや半泣きのドラコとダフネを連れて大広間を出ていった。

 

 ──もう耐えきれないと思った。あの爺の横暴に。あのままあの空間に留まっていたら、抗議の呪文を1発くらい撃ち込んでいたかもしれない。

 

 必死に涙を堪えるドラコと、服にしがみついて泣いているダフネを連れ立ち、シグナスは必要の部屋に向かった。厨房の屋敷しもべ妖精たちにも掛け合って、そこで精一杯の祝福をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試験の結果が発表された。成績の貼り出された掲示板では、成績優秀者たちの名前が堂々と輝く。

 

 シグナスは、他を寄せ付けぬ圧倒的な得点を叩き出し、3年連続の首席となった。

 

 シグナス自身も英才教育を仕込んだドラコは、予想外にも2位だった。誰だ?ドラコの上をいく者は?

 

 

 

 

 ──グレンジャーだった。早くから図書館の住人となり、見どころがあるなと思っていた彼女が、ドラコに勝ったのだ。

 

 ドラコも決して悪くはなかった。おそらく例年の得点と比べたら、首席でも全くおかしくなかったのだ。そう、グレンジャーが規格外すぎた。

 

 ドラコによると、彼女はマグル出身だという。魔法界を知ってまだ1年しか経っていないのに、幼い頃からの下地をもつドラコに勝ってしまった。末恐ろしい才能だ。

 

 脇で人知れず落ち込んでいるドラコを取り巻き2人に頼んで、グレンジャーに話しかけにいった。彼女はちょうど同寮の生徒たちからの祝福を終えて、みんなの輪から出てきたところだった。

 

「ご機嫌よう。グレンジャー。1位おめでとう。」

 

「ブ、ブラック先輩!」

 

 思わぬ反応に、今まで祝福していたグリフィンドール生たちがギョっと振り返る。

 

 "シグナス・ブラック!ハーマイオニーに何のようだ!!"

 輪の1番奥にいたウィーズリーが突っかかってきそうなので、さっさと要件を伝えて戻ることにした。

 

「君はものすごい才能を持っているようだ。もし良かったら、今度一緒に話でもどうかな?都合がつくようならフクロウを飛ばしてくれ。それでは。」

 

 "おい、シグナス・ブラック!逃げるのか!!ハーマイオニー、奴の言葉なんか信用しちゃダメだ!あいつはコテコテの純血主義者だぞ!?"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、ダフネも大健闘してTOP5にランクインした。お祝いに、夏休みに何かごちそうすることになった。

 

 

 

 

 

 そして、かつてないほどの歩み寄りを見せていたスリザリンとの交流は、この日を境に、再び互いを憎み合うホグワーツ1000年の伝統に逆戻りするのだった。

 

 それも仕方ない話だと思う。詳細を語らずして、よく分からないまま寮杯をひっくり返されたのだ。7年生が泣きながら、"来年こそは勝ってくれ"と頼むものだから、こちらから歩み寄ることはもうない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~帰りのコンパートメント内にて~

 

「よし、お前ら準備はいいか!?」

 

『おー』

 

「よし、このお菓子は俺の奢りだ!食え!」

 

 いつも空気になっている2人にはご退場頂き、今回はジャックが入った。どうやら、彼のガールフレンド(グリフィンドール)は、再び険悪になった寮どうしの雰囲気に耐えきれなかったらしい。ジャックは一方的にフられてしまった。

 

 傷心のジャックは大盤振る舞いしてお菓子を奢り、何とか立ち直ろうとしていた。

 

 そんな彼の再出発の健闘を祈りながら、汽車はロンドンへ進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?

原作とのズレを極力戻して第一章フィニッシュでごさいます。

Q.主人公なのに賢者の石の攻防に参加しないの?

A.はい。寮の違いや学年の違いなど理由はたくさんあります。ドラゴンの件で1度決別しましたし、絡ませるのは難しいかなと。

しかし、1番の理由は、思ったよりも1章が長くなりすぎて駄作者が焦ったことです。書くには書きましたが、もう2話増えてしまってキリが悪くなるのでカットしてしまいました。

ただ個人的に不完全燃焼なので、今度からは絡ませると思います。




ドラコがめっちゃ有能になってます。怖がりなのは変わりありませんが、それを上回る技量による自信によって魔改造されています。

それをハリーはどうやって超えていくのか?






―――――――――

・ドラゴン終結

思ったよりも長くなって持ち越してしまいました。スリザリン大嫌いっ子筆頭のロンとの関係が修復できないほど冷え込んでいます。また、騒動にスネイプが介入。三頭犬の怪我もすっかり治ったようです。

・グリフィンドールの優勝

原作や映画ではどうしてもグリフィンドール視点になるので、最初は私もああ良かった!と喜んでいました。しかし、スリザリン主のSSさんとか見ていると、視点が変わるだけでこうも感じることが変わるのかと考えさせられました。

シグナスのダンブルドア嫌いが加速。耐えきれずに大広間から脱走しました。

・勘違いを加速させるロン

シグナスは、自分の情報を極力渡していません。兄たちに何かを吹き込まれたのか、自分で捏造して信じ込んでいるのかは分かりませんが、シグナスを悪役認定しています。

シグナス自身も、聞いてみると"いつそんなこと言ったよ"ときっと呆れ果てます。

ハー子からの返事は届くのでしょうか。
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