ブラック家の御曹司   作:修造

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こんにちは。

今回は、ホグワーツに激震が走ります。
いろんな意味で。


第11話一族との確執

  日本から戻ってきたシグナスは、その翌日からなるべく外に出るようになった。マルフォイ家にお邪魔することもあれば、グリーングラス家に連絡をとって向かうこともあった。

 

  夏休みが始まって、まだ1週間かそこらでの急激な変化である。周りは、シグナスに何かあったのではと思ったが、別に彼本人が操られているとか入れ替わっているとかではない。

 

  最初はとても驚かれていたが、彼らに断る理由はなければ、来ると子どもが喜ぶ。双方ともに快く引き受けていた。

 

  もちろん繋がりは両家しかないので、外に出ようと思ったら頻繁にお邪魔することになる。流石に常識がないので他にも出会いの場を求めた。

 

  日本の滞在時とのギャップに悩むシグナスは、魔法による変装で、ロンドンの繁華街に繰り出したこともある。しかし、これはマグルとのギャップで怪しまれたので、早々引き返したが。

 

  また、ルシウスに無理言って払ってもらっていたパーティーにも出席し、なるべくホグワーツの学友たちとくっついて話していた。

 

  ジャックやフリントを始め、彼らもシグナスの変化に気づいていた。

 

 しかし、良い傾向かと黙認してシグナスの話に付き合っていた。案外それが面白かったので、度々パーティーの終わりまで話していたこともある。

 

  しかし、どうしても避けられなかったのはお偉方との挨拶だ。途端に始まる腹の探り合いに辟易したシグナスは、もっと演技力が欲しいと思ったのであった。

 

  そして夏季休暇も半分を折り返してしばらく、ホグワーツから新学期に必要な学用品のリストが届いた。

 

  この日は、マルフォイ家とともに、学用品を買いにダイアゴン横丁まで来ていた。

 

「久しぶりだね、シグ。夏休み始まって急に家に来るようになったらまた来なくなったけど、何かあったのか?」

 

「ああ、忙しくてね。色々とパーティーに出ていたり、お役所方と話していたりしていたんだ。」

 

「へー。あんなにパーティーが苦手とか言ってたのにね。」

 

 嫌味なドラコはなかなか鋭いところを突いてくる。

 

「まあ心境の変化ってやつさ。」

 

 シグナスはお茶を濁した。

 

  グリンゴッツでお金を下ろし、マダム・マルキンの服を見に行くというナルシッサと分かれ、ノクターン横丁はボージン・アンド・バークスという店に来ていた。

 

  ここに来るのは夏休みでは初めてだが、ルシウス抜きで度々来ていた。よって店主のボージンとも顔なじみである。

 

 カランカラン

「いらっしゃいませ。おお、マルフォイ様、ああなんとブラック様まで。ようこそ。──マルフォイ様、商談の件ですが。」

 

「ああ、早速始めよう。シグナス、ドラコ。店の中で待っていなさい。ああ、絶対に触れてはならん。どうなっても知らんぞ。」

 

  怪しげな手(輝きの手というらしい)に手を伸ばそうとしていたドラコは、ピクっとその動きを止めた。

 

  ルシウスと、店主のボージンが怪しげな商談をしている間、シグナスは貪るような目つきで商品を見ていた。そして大人しくしていたドラコに少し引かれた。辛い。

 

  やがて商談が終わったのか、2人が帰ってきた。両者がホクホク顔なので、有意義な交渉だったのだろう。

 

  最近、名家に対する魔法省の抜き打ち立ち入り調査が激しくなってきている。何故かマルフォイ家を始めとする、当時の闇の帝王に関与したことを疑われていた家ばかりが対象に選ばれている。それはルシウス曰く偶然ではないという。

 

「間違いなくアーサー・ウィーズリーめが裏で糸を引いている。奴め、閑職という立場にありながらまたコソコソと探っているようだ。全く忌々しい。」

 

 とすごい剣幕で言われたので、もう尋ねるのを辞めた。

 

  ちなみに、ブラック家は当時の闇の陣営の中心であり、現在の当主はまだ子どもだ。ということで誰よりも真っ先に立ち入られそうなものだが、ルシウスが裏で手を回してくれたらしい。

 

  シグナスが気づいて、こちらまで対象が来ないようにと工作を行おうとした時には、"現在の当主は、年齢的に闇の陣営とは関係ない"として既に捜査対象からは外されていた。ルシウスには本当に頭が上がらない。

 

  未だにマルフォイ家にも本格的な立ち入り調査は実施されていない。しかし、闇の帝王による動乱もひと段落ついて平穏な日々が戻ってきたことから、最近は抜き打ち検査自体が増えている。

 

  ルシウスは魔法省にも繋がりが多い。そのパイプを利用してマルフォイ家に立ち入らせまいと工作を行っているが、そろそろ時間の問題らしい。当時、関与が疑われていた名家などが粗方片付いてしまったからだ。

 

  これでは未だに立ち入っていないマルフォイ家が浮いてしまう恰好となる。

 

  立ち入りを拒否した場合、最悪議会の槍玉に上げられかねない。そこは権力でなんとかするんだろうが、先のウィーズリーなどは糾弾を続けるんだろう。ハイエナ精神甚だしい。

 

 という理由があって、闇に関する家の品々を売り払ってしまうようだ。難癖を付けられないように、慎重に、慎重に。

 

  さて、店主のボージンが戻ってきたことなので、こちらも買い物してしまうことにした。

 

「ボージン、商品が欲しいんだがよろしいか?」

 

「ええ、もちろんですよブラック様。」

 

  スネイプ教授の髪よりも脂ぎった粘着質な喋り口はどうにも好きにはなれないが、これでも仕事は早いし売り物の商品の評価もいい。媚びるような態度はともかく、彼はデキる男なのだ。……モテるかは別として。

 

 そして選んだ商品をカウンターに並べていく。

 

「そんなに買うのかね。」

 

 ルシウスの目が驚きで見開かれる。

 

「ええ、少し研究したいことがありましてね。」

 

「そうか、無理はするなよ。」

 

 

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  ボージン・アンド・バークスにて有意義な買い物を済ませたあとは、ダイアゴン横丁に戻ってナルシッサと合流し、ドラコがクィディッチチームに入りたいということで最新のニンバス2001を買ったり、制服の丈を合わせたりして学用品を買い進めた。

 

  そして一行は、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店で今年使う教科書を買い求めに来た。しかし、ギルデロイ・ロックハートのサイン会とかいう訳の分からないイベントによって、書店の前にはかつてないほどの人だかりができていた。

 

「これでは教科書が買えないな。」

 

「シグナス、あれは教科書なんかではない。断じて違う。」

 

「どういうことですか?父上。」

 

「今年の闇の魔術に対する防衛術で使う教科書は、あやつの"ノンフィクション"小説だということだ。小説が教科書だと?ふん、笑わせる。」

 

「なるほど、それで著者がサイン会を。こんなに人気なら印税で暮らしていけそうですね。あの人。」

 

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  サイン会の大盛況によって収拾がつかず、途方に暮れている店員に目をつけてさっさと買ってしまった一行は、早くここから抜け出さんとばかりに外へ向かっていた。

 

  すると見覚えのある赤毛の一団が見え、"ひとこと言っておくことがある。"というルシウスに合わせて2階に退避した。

 

  上から混雑している下のフロアを見下ろしていると、赤毛の一団と行動を共にしていたらしいポッターがロックハートに捕まった。

 

「みなさん、何と記念すべき瞬間でしょう! 私がここしばらく伏せていたことを発表するのに、これほど相応しい瞬間はまたと無いことでしょう!!」

 

 ロックハートは、もったいぶるように「皆さん静粛に!」と声を張り上げた。そして逃げるようとしたポッターを捕まえて言った。

 

「ハハッ、本日ハリーがフローリシュ・アンド・ブロッツ書店に足を踏み入れたのは、このギルデロイ・ロックハートの自伝を欲したからであるのは自明の理。なんて素晴らしいことなんでしょう。」

 

 サイン会にきていた人たちが拍手をする。口笛を鳴らしている者もいる。

 

 そしてポッターに自身の著書を全て無料でプレゼントすると発表したあと、再び巻き起こった拍手に気分よく頷きながら、更に続けて叫ぶ。

 

「この九月から、私はホグワーツ魔法魔術学校にて、《闇の魔術に対する防衛術》担当教授職をお引き受けすることになりました。」

 

  ──は?自分の著書を教科書にしようとしたのかコイツ。嘘だよね?

 

 ルシウスの方を見ると、諦めたように首を横に振られた。

 

 

  胡散臭い経歴が連なるこの男。

 

 成し遂げたことと、ナルシスト基質で注目されたがっている雰囲気が全くつり合っていない。

 

 今年の防衛術の授業はどうなることやら。

 

 

 

 

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  やがてウィーズリーの一家が買い物を終えたようなので、ルシウスを先頭に下に降りる。するとすぐに噛みつかれる。……シグナスが。

 

「あー!ブラック!!なんでお前がこんなところに!?」

 

「おいロン!」「我らが学友になんて言い草だ。」

 

「あいつは兄貴たちを騙しているんだよ!いい加減に気づくんだ!」

 

  いい加減にするのはお前だロナルド。1回しか喋ったことがないのに、どうしてあそこまで口が回るのか。頭のネジでも狂っているのか?

 

「いい加減にしなさい。そんな大声で。人様に向かって失礼だろう。」

 

  赤毛の男性だ。おそらく先ほどのアーサー・ウィーズリーだろう。こんなに子沢山の父親だったとは。

 

「ほうほう、息子たちにをご立派に躾ていらっしゃるのですなぁアーサー・ウィーズリー。」

 

「何のようだルシウス。」

 

  まるで長年探し求めていた恋人のような甘い口調で、しかし声は冷たく近づくルシウスに、そっけなく対応するウィーズリー父。

 

  その傍らでは、ポッターが先ほど渡されたロックハートの本を見たことが無い赤毛の女の子に渡し、それを目ざとくドラコが見つけて突っかかっていた。

 

「さぞいい気持ちだったろうね、ポッター?書店に行くだけで一面の大見出しかい?」

 

「ほっといてよ!ハリーが望んだことじゃないわ!」

 

 本、もとい教科書を渡された女の子が叫ぶ。

 

「ポッター!ガールフレンドができたじゃないか!」

 

 ドラコが弱みに付け込んで相手を黙らせた。いや、弱みなのか?

 

  だが、そんなことよりこの1年でドラコは随分と口が達者になった。ルシウスに色々と似てきたな。

 

 そして親たちはというと──

 

「いやいやアーサー。確か君は最近、とても多忙な日々を送っている聞いていたものだからねぇ。まさかこんなところで会えるとは夢にも思っていなかったよ。あれほど抜き打ち検査を行っているのだ、さぞ残業代はもらっているんだろうね?」

 

  ルシウスは、先ほどドラコにからかわれて、顔を真っ赤にして俯いている女の子の大鍋に手を突っ込み、使い古した変身術の教科書を引っ張り出した。

 

 それを見て、嘲笑う。

 

「……どうもそうではないらしいな。まったく。こんなことなら、いつか立ち入った先で金目のものでも自分の懐にいれるのではないのか?」

 

  まだまだ長く続きそうだったので、昨学期以来顔を合わせていないグレンジャーの方に向かった。彼女は家族連れのようで、一緒にルシウスたちの珍事を遠巻きに見ている。

 

「こんにちは。私はシグナスと申します。」

 

「はっはい。それで、何のようで?」

 

 意外と堅い。警戒されているようだ。

 

「お宅のお嬢さんと、夏休みに会う約束をしていたものですから。Ms.グレンジャーは優秀な魔法使いです。そんな彼女と少し話がしたくて。」

 

「まぁ。そうなんですか。ハーミー、行ってきなさい。」

 

「えっええ。ママ。」

 

 引きずり出すことに成功した。

 

「久しぶりだね。グレンジャー。全く、フクロウを待っていたんだけど。」

 

「すみませんブラック先輩。冗談だと思っていたもので。」

 

 縮こまるグレンジャー。これはロナルド・ウィーズリーに何か吹き込まれんだろう。

 

 "君、あの6男坊に何か毒されてないかい?"と前置きしてから言う。

 

「いや、本気だ。たった1年で魔法に驚くほど順応した君に、俺は興味を持っている。何をして勉強したのか、どんな努力をしたのか。誰よりも成長スピードの早い君に話を聞いてみたかったんだ。」

 

「そうだったんですか。」

 

 グレンジャーの顔が明るくなる。

 

「さっそくだが──」

 

 

「いえ、私は特別なことはやっていません。ただ勉強が好きなんです。だから、入学するまでに教科書を全部読んで、あとは杖で実践という所まで進めていました。他には──」

 

「そうなのか。いや、大変参考になった。ありがとう。それともう1ついいかい?」

 

「はい。」

 

  訝しげに頷くグレンジャー。

 

「バッテリーについて教えてくれないか──」

 

 

 質問した直後のグレンジャーの顔は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。

 

「──どうかしたのか?」

 

「いえ、まさかブラック先輩がマグルのことに興味を持っているとは思わなくて。だってあなた、純血主義じゃないんですか?私マグル生まれですよ?」

 

「家柄はね。でも何事にも例外はあるものさ。尤も、今までマグル生まれであまり優秀な人はいなかったから、友人は皆純血ばかりなのだが。」

 

「それって偏見ですね。」

 

「そうかい?まあ偏った考えを持っているのは認める。しかし、魔法に触れている時間が少ない分、そうなってしまうのは仕方ないと思うんだが。」

 

「そんなことを言っているんじゃありません。私は──」

 

「そろそろよろしいですか?」

 

「ええ。お嬢さんとは有意義な話が出来ました。グレンジャー、君の意見をまた聞かせてくれ。」

 

「あ、ブラック先輩!バッテリーなら図書館で調べた方が早いですよ。」

 

「分かった。今度行ってみるよ。」

 

 "貴様!おいブラック!!何やってるんだ!"

 

  先ほどまでドラコに噛み付いていたロナルド・ウィーズリーだろう。すごい剣幕でやってきた。なんだ?この子に気でもあるのか?

 

「気をつけろ!こいつはマグルたちを下に見てバカにしてるんだ。ついていったら殺されるぞ!」

 

  それを聞いて顔を青くするグレンジャーの一家。いや、違うから。

 

「どこをどう見たらそんなこと言えるんだいロナルド・ウィーズリー。君の耳は飾りかね?何度も言うが、君には関係ない。彼女は非常に類稀なる才能を持っている。君とは違ってね。話を聞きたかったのは君じゃない。」

 

「ブラックゥゥゥゥ!!」

 

  飛びかかってくるロナルドを、放出した魔力(・・・・・・)のみで吹き飛ばす。

 

「失礼しました。何かと因縁を付けてくる人間はいるものです。魔法界でも。……まあアレは例外だと思ってください。気にしないでくださいね。あ、あれは──」

 

  シグナスの視線の先には、今にも飛びかからんばかりのウィーズリー父と、飄々と相対するルシウスの姿。一触即発だ。

 

「──というわけなので、止めてきます。グレンジャー、何かあったらフクロウ便をくれ。何か力になれるだろう。」

 

 "キサマ!逃げるのか!!"

 

  叫ぶ声を無視して、呆気に取られている一家に一礼してから現場へ向かう。それは負け犬の遠吠えというものだよ。ウィーズリー。

 

 

  現場まで戻ると、まさに白熱していた。

 

「どこまで落ちぶれたら気が済むのかね、君の家族は。魔法界の人々の粗探しをするだけでは飽き足らず、マグルのような下等なものを相手にするから、君らはこんなことに(ry」

 

  "こんなことに"という言葉に合わせて使い古された教科書を見せつけたとき、ついにウィーズリー父がブチ切れた。

 

  こぶしを振りかぶり、ルシウスに飛びかかろうとした。

 

 "バチンッ"

 

 ウィーズリー父は、自分の右頬を殴った。もう1度言おう、自分の右頬を殴った。

 

  あまりの突然なことに驚き呆然としているウィーズリー父と、身構えていたのが拍子抜けになり、こらえ切れずに爆笑しているルシウス。あなたキャラ崩壊してますよ。

 

  そしてそんなルシウスの脇でしてやったりと口を歪めるシグナス。

 

  シグナスは、魔力のみ(・・・・)をウィーズリー父の肘に横からぶつけ、急な方向転換した拳をふっくらしている自身の頬にクリーンヒットさせたのだ。

 

  地面に座り込んでボーッとしている赤毛の大人に、そんな赤毛に爆笑している金髪の大人。そして、周りをサイン会にきていた客たちに囲まれている、というこの混沌とした状況に一石投じる者が現れた。

 

「おい、どうしたアーサー。尻もちなんてついて。」

 

  周りの客をかき分け、どしんと足音を鳴らして近づく大男、ハグリッドの登場である。

 

「いや、あいつを殴ろうとしたら自分の拳が……」

 

  何かボソボソと事情を説明しているようだ。妙な誤解を受けるのも嫌だが、流石にハグリッドを相手にはしたくない。それにルシウスが何かやったのでは?と勘ぐる不穏な雰囲気は、大変こちらの心臓に悪いです。

 

  主にルシウスへの罪悪感で。

 

「ルシウス。」

 

「ああ。」

 

  合図に応じて、ルシウスは未だにその手に持っていた、女の子の教科書を鍋に入れる。何か増えていた気がするが、きっと気のせいだろう。

 

「ほら、君の教科書だ。君の両親にはさぞ高い買い物だろうね。"大切に"使いたまえ。」

 

  こちら側から一方的に事態を収拾させたシグナス一行は、ルシウスを先頭にこの場を去った。未だにマダム・マルキンの店でドラコの服を選んでいるナルシッサがこの場にいなくて本当に良かった。

 

  その日は、2週間ぶりにマルフォイ邸に泊まることになった。それまではひっきりなしに来ていたので、ゲストルームの一室が既にシグナスの部屋と化している。

 

  夕食をとり、最後にさあ寝ようというところで、ルシウスに呼び出された。

 

 コンコン

  重厚なルシウスの書斎への扉をノックすると、すぐに入室の許可が出た。

 

「シグナス、今日はとても有意義な時間だった。どうもありがとう。」

 

「いえ、こちらこそ。非常に楽しかったです。」

 

「ふむ、ところでシグナス。ドラコから聞いたのだが、ウィーズリーが騒いでいる傍ら、マグルに接触していたようだな。」

 

「ええ、あの家族はドラコの同級生です。だから彼に近づいて誑かすなと忠告したまでのことです。」

 

「そうかそうか、では昨学期の成績の掲示の日、マグルの"穢れた血"に何を言っていたのだね。」

 

 語気こそ穏やかだが、そのギラついた目は何かを確信している目だ。やはり誤魔化すことは出来なそうだ。

 

「ご存知でしょう。ドラコに勝った彼女の優秀さを。あんなに魔法への順応が早いマグルも珍しい。本当に生まれてくるところを間違えたと思うほどに。」

 

「何が言いたい。」

 

「いえね、どんな技を使って壁を乗り越えたのか、単純に疑問に思っただけですよ。自分のスキルアップにも繋がりますし。」

 

 本当は彼女の努力がストイックすぎて、♪やはり努力あるのみだなー"と再確認したのとバッテリーの情報しかあまり収穫が無かったのだが。

 

「ふん、"穢れた血"ごときに構うな。いいことなど何ひとつない。」

 

「何ひとつ?そんなわけはありません。彼らの新しい視点によって、魔法界に貢献していることだってあります。魔法省にコネをもつルシウスなら知っているでしょう?」

 

「シグナス……お前は血の裏切り者になるつもりか。あんな"穢れた血"と交わるというのか!?」

 

 段々と語気を荒げていくルシウス。

 

「どうして交わる交わらないの話になるんですか。『いいから答えろ!』……俺は自分の血に誇りを持っています。今やブラック家は俺のみ。この血は受け継がねばならない。言われなくても分かっています。

 

 しかし──純血、混血、あるいはマグル。私がいつ、誰と結婚するといいましたか?ルシウス。」

 

「クッ!!(なんだこの雰囲気は…夏季休暇が始まった時とはまるで違う!?)

 ──シグナス、貴様、夏季休暇に入ってから何をしていた!?」

 

「我が愛箒の点検に日本へ行っておりました。」

 

「なん……だと…あの黄色い〇共と馴れ合っていたのか?純血としての義務を忘れたのか!?」

 

「義務?あんな前時代的なものに縛られなければならないのですか?それと、箒のメンテナンスをしたのはイギリス人です。」

 

「前時代的なものだと!?貴様、純血の伝統を否定するつもりか!?」

 

「時代は移り変わるものです。血を遺すためだけの政略結婚なんて、俺は御免です。俺は、恋愛結婚をする。これは俺自身が決めたことだ。相手が聖28一族だろうと、仮にマグルだろうと異論は認めない。ブラック家の当主は、この俺だ!!!」

 

「クッ……」

 

 「……それにルシウスもマグルを利用しているではないですか。ガリオン金貨を金としてポンド、ドル、円……そのときの価値の高いマグル紙幣に換金。そして元金よりも膨れ上がったガリオン金貨を受け取る──

 

 手っ取り早く資産を増やす、実にあなたらしい手段だ。それを棚に上げて、マグルとの接触を禁じようとでも言うのか!!」

 

「……もういい、この部屋から出ていきなさい。」

 

 

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  翌日、シグナスは何事もなかったかのように挨拶してブラック邸に戻ったが、この日を境にルシウスとは目を合わせなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

  そして新学期──。

 

  去年のようにダブネと待ち合わせをして、ホグワーツに向かう特急列車のなかで2人、この夏季休暇の話で花を咲かせた。

 

  気がかりなのは、特急の中でばったり出会ったドラコに無視されたことだ。

 

  ──あっという間に到着し、今年はダブネと共にセストラルの馬車に乗り込んだ。今回はダフネがいるからか、セストラルを見ても動揺しなかった。

 

 

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  今年の新学期で最も注目を浴びたのは、言わずもがなロックハートだろう。華麗に着任の挨拶を終えたロックハートを見て、シグナスは何かを思いついたかのように笑みを浮かべる。

 

  寮関係なく多くの女子生徒が彼にメロメロになっているが、意外にも、ダフネは彼の毒牙にやられなかった数少ない1人だった。そんなダフネは、食事をしながらニヤリとしているシグナスに首を傾げたのだった。

 

 

 

  さっきから人目を憚らず騒いでいるドラコは、とにかく奇行が目立った。先ほど、ホグワーツの暴れ柳に突入して登校したという噂が立っているポッターとロナルドのことを、"退学だ!退学だ!"と叫んで回っている。

 

  あの子も一応これから先輩なんだが……。今日のドラコは色々とおかしい。そして、懸念は現実となっていく──

 

 

 

 

  ──事件が起こったのは、翌朝の大広間だった。

 

  いつものようにダフネを連れ立って大広間に入ると、昨日の噂の的、ポッターとロナルドが縮こまっている。新学期が始まる前だったために減点こそされなかったものの、こってり絞られたようだ。

 

  テーブルの奥では、2人がしでかしたことを一面に載っけている日刊予言者新聞を片手に、またドラコが騒いでいる。おかしいのは昨日だけじゃなかったんだ。

 

  やがてウィーズリー母からのものと思われる吠えメールをBGMに朝食を食べ進めていると、なにやら神妙な顔をしたフリント先輩がやってきた。

 

「おはようございます。先輩。」

 

「ああ、シグナス。」

 

 何か迷っている様子だったが、決心したように顔を上げた。

 

「シグナス、シーカーを降りてくれないか?」

 

 

 

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「シーカーを降りてくれないか?」

 

 ────はい?

 

「どうしたんですかいきなり。箒の方も新調したばっかりだと言ったばかりではないですか。先輩も面白い冗談を言うものですね。」

 

 笑って"嘘だよ"という言葉を引き出そうとしたが、彼は真剣な顔のままだ。

 

「この学校のクィディッチは、キャプテンの前に支援してくれるスポンサーがいる。4寮で分担して競技場や道具の整備などをやってくれているのは知っているな。

 

 言わずもがな我がスリザリン寮のスポンサーはマルフォイ家が中心となっているんだが、急にシーカーをドラコ・マルフォイにしろと言ってきたんだ。」

 

「え?それどういうことですか?」

 

「見返りはニンバスの新型。そして拒否権を持つのは寮監のスネイプのみ。そしてそのスネイプは、棄権した。つまり黙認したんだ!シグナス、君がいかに優秀なシーカーかは俺が1番よく分かってるつもりだ。だかこればかりは逆らえん。すまない。」

 

  勢いよく頭を下げ、吠えメールに負けんばかりの大声で謝罪し、今にも土下座せん調子のフリント先輩に呆然としていた。

 

「はあ!?それ冗談ですよね?金で買収したってことですか!?」

 

「いや、そっそのぉ……」

 

「やめとけダフネ。どうせ覆らない。」

「でも!」

 

「シグナス。お前ルシウス・マルフォイと何かあったのか?こう言っちゃなんだが、去年まではお前にとても過保護だった。それをこうして手のひらを返すなんて……」

 

「いえ、いいんです。俺が悪かったんです。尤も、悪いことをした覚えはありませんがね。」

 

  ニヤリと薄ら笑いを浮かべたシグナスは、更に畳み掛ける。

 

「それと、これを機会に俺をチームから外してください。丁度よかった。このままじゃ勉強との両立も難しいと思っていたんです。それでは。」

 

「シグナス!」

 

  足早に大広間を立ち去るシグナスに、未だ地面に手を付けたままのフリント。思わず名前を叫んだダフネには分かっていた。両立ができないなんて嘘だ。どうしてすぐに受けいれてしまったのか。

 

  思わずダフネも駆けてそのあとを追う。

 

「シグ!どうして我慢するの!?シグはこの学校で1番のシーカーなのに、」

 

「ダフネ、あんまり大声で俺を困らせないでくれ。」

 

「でも!?」

 

「──ちょっと場所を変えようか。」

 

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  やってきたのは、いつかお気に入りのスポットだと教えてくれた湖のほとりだった。

 

「この件には、あまり首を突っ込んではいけない。グリーングラス家に迷惑を掛けるわけにはいかないよ。」

 

「これは家の問題なの!?シグが不当な権力のチカラで引きずり下ろされたのに!どうしてそんなに平気なの!?」

 

「いや、大丈夫じゃない。大丈夫なんかじゃないよ……」

 

「シグナス…」

 

「でも、これはどうにもならない。それにそろそろマルフォイ家とは距離を置きたいとは思っていたんだ。」

 

「今回の夏休み、私の家より入り浸ってたのに?」

 

「ああ、入り浸ってたのに。まあ、本当に距離を置いたのなら、俺が頼れるのはグリーングラス家だけになるわけなんだが。」

 

「どういうこと?」

 

「この先を見据えたとき、自ずと答えは見えてくる。その時にマルフォイ家に近すぎると危ない。」

 

「まさか、闇の帝王の話をしているの?お父さんから、"マルフォイ家は死喰い人の家だったけど、アズカバン行きを免れた"って聞いたことあるけど。でも、あの人は滅びたって。」

 

「一般的にはね。でも今は力を失っているだけだと考えている。今のところルシウスに動きはないけど、他の忠実だったしもべたちがいずれ必ず復活させるだろう。最近は魔法省による抜き打ち検査も多い。いくら恐怖の対象だろうと、そうしなければならないほど、彼らには生きにくい社会なんだ。」

 

「私の家には来なかったわよ?」

 

「もちろんそれには裏がある。魔法省…というか一部の役人が、かつて裁ききれなかった死喰い人を摘発しようと躍起になっているんだ。一応今は平和だからね。そういうことをしている余裕がある。

 

 だからこそこれからは大変なんだ。実際、去年はホグワーツで何が起こった?去年はどんな年だった?」

 

「え?確かに色々と事件は起こったけど。」

 

「Keyを握るのはハリー・ポッター。去年は"生き残った男の子"が入学し、例年にない事件が立て続けに起こった。トロール云々、未だに詳細が明かされない賢者の石の話云々。そして彼は、起こった事件のほとんどに関わっている。

 

  まあ全てが奴らの陰謀だった訳じゃないし、彼自ら突っ込んで行ったこともある。そして、これは彼がホグワーツを去るか、闇の帝王が滅びないかしない限り、ホグワーツは安全ではない。今年もきっと事件が起こる。

 

  もう時間は止まらない。始まってしまったんだ。

 

  ──ダフネ、分かっているとは思うけど、彼には絶対に近づいてはいけないよ。死にたくなければね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  シグナスの4年目のホグワーツ生活は、かつてないほどに静かになった。ドラコが離れたことによって取り巻きが完全に居なくなった。

 

  どうやら、ルシウスの手がこちらまで伸びていたようだ。スリザリン寮でシグナスの周りに居続けたのは、ダフネとジャックだけだった。

 

  だが、これだけに関しては好都合だ。これでこちらも動きやすくなる。

 

  シグナスとドラコの不和、シグナスを取り巻く明らかな変化を校内中が察知し始めた頃。

 

  再び寮どうしの関係が冷え込んだホグワーツにおいて、シグナスの周りだけは色が豊かだった。

 

  交流が続くセドリックにフレッドとジョージ。彼らはルシウスの策略によって、ホグワーツでの勢力を急速に失いつつあるシグナスの側から離れずにいてくれた。

 

  彼らはクィディッチメンバーから外されたシグナスに心から同情し、ジャックとは被らない授業のときに一緒に移動したり、図書館で人目を憚って会ったりと今まで以上に交流を重ねるようになった。

 

  尤も、クィディッチメンバーから外してくれと頼んだのはシグナスの方だったのだが。

 

 

 

 

 

 

  何が起きたかは、噂好きなホグワーツの生徒たちが理解するには、そう長くはかからなかった。

 

  ドラコ・マルフォイがスリザリンのシーカーに就任。早速グリフィンドールのクィディッチチームと衝突した。怪我などはなかったものの、グリフィンドール側からの不満が爆発。他寮からも反感を買っているという。

 

 

  今まで無敗を貫いてきたシグナス・ブラックが、在学中ながらその座を外され、現在の魔法界で最も力を持つマルフォイ家の御曹司、ドラコ・マルフォイが代わりに座ったことは、ホグワーツに強い衝撃をもたらした。

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
シーカーはシグナスのままでいいかなって思っていたんですが、ご都合主義も甚だしいので原作通りドラコがなりました。

まさかマルフォイ家と確執を生むなんて誰が思ったかね?大丈夫です。ちゃんとこのあとのプロットも固まってます。

また、スポンサー云々の話は捏造です。

Qこれって日本行った意味あった?
Aもちろんです。誰がこのあとクィディッチやらないと言ったかね?

ご意見、感想心待ちにしております。
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・外に出るようになったシグナス

日本から帰ってきた晩に感じてしまったモノが大きかったんです。あの温かみが恋しい。

・演技力が欲しいと痛感

あれ?これって……(意味深

・ボージン・アンド・バークスへ

もちろん、原作通りこの光景をハリーが見ているなんて、彼らは知りません。

・抜き打ち検査

ルシウスからの風評で、シグナスのウィーズリー家に対する評価がダウン。

・魔力を放出

映画の神秘部の戦いで、アバダやら悪霊の火をぶっぱしたお辞儀さんですが、ダンブルドアに向かってすごい"気"というか、魔力的なもの出してましたよね。"うわぁー"って雄叫びあげて。すごい風だった。イメージはあんな感じです。もちろんまだまだ威力は弱いですが。

陰陽道の修行は上手くいっているようです。

・ロンの勘違いが加速

彼って1度思い込んだことはなかなか忘れません。というか、それを考えすぎて、他の可能性を考えていないキャラという感じがします。おかげで風評被害にあっているシグナスからの評価もダウン。というかこれ以上下がるのか。

・ちゃっかり告げ口してるドラコ

彼の真意はいったいどこにあったのか。
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