ブラック家の御曹司   作:修造

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こんにちは。
とりあえず連続投稿は次回までとなります。

不定期更新となりますが、どうぞよろしくお願いします。


第13話 決闘クラブ

 スリザリンの敗北から一夜明けた。

 

 双子によると、グリフィンドールの1年生1人が石化したという。

 

 その症状はミセス・ノリスの事件と同じだそうだ。ハリー・ポッターの熱狂的なファンだったその1年生は、カメラのレンズ越しに何かを見たらしい。

 

 そういえばロックハートとポッターのサイン会とかやっていたな。そしてまだ小さいグリフィンドール生が写真を撮っていたはずだ。きっとその子だろう。

 

 

 その日の授業では、ほとんどの生徒が寝てしまう魔法史の授業にて、"秘密の部屋"について質問をした猛者がいたようだ。

 

 おかげで"秘密の部屋"の伝説が校内中に共有されることになり、この事件が"スリザリンの継承者"の手で開かれたのではないか、という疑惑がホグワーツ城内に広まった。

 

 "継承者"による犠牲はこれで2件目だ。石化から治すにはマンドレイク薬が必要であり、熟したマンドレイクをとろ火で煮つめる作業が要るという。

 

 幸いにも、薬草学のスプラウト教授がマンドレイクを仕入れていた。現時点では成熟しきっていないので、マンドレイクの成長を待つ他はない。校内は、マグル生まれの生徒たちを中心として、いつ我が身に降りかかるか分からない恐怖に苛まれた。

 

 余談だが、スリザリンでは驚くほどその人数が少なかった。

 

 まず、スリザリンにはマグル出身者は少なく、名実ともに純血の割合が多いことにある。つまり、"この学校で教えを受けるに相応しからざる者"ではないから余裕でいられるというわけだ。

 

 しかし、純血でないと生きにくい独特のコミュニティによって"自分は純血だ"と偽っている者も少なからずおり、そういう者たちは影でビクビクしている。

 

 だが、純血の者たちといれば自分は襲われることはないと皆分かっている。他寮の生徒たちに比べればまだマシだろう。

 

 

 

 そして現在、そのスリザリンの継承者は一体誰なのかが校内中で囁かれていた。

 

 当然"スリザリン"の継承者というくらいなのでほとんどがスリザリンの生徒に疑いが向けられたが、その中でもドラコを疑う声が圧倒的に多かった。

 

 彼の変化ぶりを見ると一目瞭然だろう。父親が魔法界で勢力を広げ、理事会を通してホグワーツに干渉してきている。

 

 今年はその力を使ってシーカーに成り上がったと憶測されており、(実際その通りなのだが)横柄な態度が顕著になって、特にグリフィンドールとの衝突を繰り返していた。

 

 一部では、ブラック家に連なるシグナスの継承者説や外部犯説なども流れているが、大筋ではドラコが疑われていた。

 

 そのため、ドラコが歩くと道が割れ、スリザリン生でさえも継承者はドラコなのではないかと考えるようになった。

 

 尤もドラコ自身がその説を否定したので、スリザリンの中では疑いが払拭されたのだが。

 

もはや、四六時中ドラコのそばには取り巻きたちがくっついているという事実もあるので、物理的に不可能だという認識が広まったということもある。

 

 しかし、彼はこの一連の事件をきっとこの学校の中で一番に喜んでいる。内心はどうであれ、大っぴらに喜ぶ態度を示しているのはドラコだけだ。そういった理由があって、他の寮からの悪感情は増すばかりであった。

 

 "あの日"以来ドラコに接触していないシグナスには、全く関係ない話ではあるのだが。

 

 

 

 

 

 

 クリスマスが間近になったある日、朝食をとりに大広間に向かったシグナスとダフネは、進行上に人だかりが出来ているのを発見した。

 

「あれ、何かあったのかな?」

 

「また犠牲者が出た……とか?」

 

「シグ!冗談でもよしてよ。……でも、そんな感じじゃなさそうね。」

 

  どうやら人が集まっているのは、ある張り紙が原因らしい。告知のようだ。

 

「何だろう?気になるけど人混みがジャマね。」

 

「そうだな。人が捌けるのを待つのもいいけど、まずは大広間に行かないか?そこで話は聞けると思うよ。それに空腹だ。」

 

「はぁ──そうね。行きましょ。」

 

 

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 予想通り大広間で朝食を食べていると、何が原因で人だかりができていたのかが分かった。

 

 その筋によると、どうやら"決闘クラブ"が開催されるらしい。今回、その1回目が20時から大広間で行われるそうだ。

 

「"決闘クラブ"ね。シグはどうする?」

 

「行ってみるよ。人と決闘する機会なんてなかなかないし。損はないと思うな。」

 

「そうね。なら私も行くわ。それにしても、一体誰がこんなことを計画したのかしらね。タイムリーな企画だと思うけど。」

 

「あ。」

 

 なんか嫌な未来予想図が頭をよぎった。

 

「え?何、誰か分かったの?」

 

「いやー外れて欲しいんだけど、こんな目立ちそうなことやりそうなのってあの人しかいないんじゃないかな?」

 

「え。」

 

 ダフネの顔もみるみる曇っていく。

 

「じょ、冗談だよ。きっとフリットウィック教授だよ。うん。"決闘チャンピオン"の称号でもなければそんなの開催できないって。」

 

「そ、そうよね。きっと……そうよね?」

 

「分からん。」

 

  スリザリンのテーブルの傍らでは、取り巻きに囲まれたドラコが、自分がいかに決闘が得意か自慢していた。ドラコ、決闘の経験なんて"あの"1回だけだろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  そして迎えた夜8時。

 

 大広間の中央には舞台が設置され、大勢の生徒がそれを囲ってざわざわしていた。ほとんどの全校生徒が勢揃いしているのではないだろうか。いつも使っている寮のテーブルは片付けられている。

 

 "講師の先生は誰だろうか。""どんなことを教えてくれるんだろう。"と期待が最高潮に達しているなか、"決闘クラブ"の指南役が登場した。

 

 きらびやかな深紫のローブを身につけたロックハートが黒装束のスネイプを従え、女子生徒の黄色い声援に酔いしれながらやって来たのだ。

 

「うげっ、マジかよ。」

 

「シグの予想ってよく当たるのね。ロックハートの相手でもさせられるんじゃないの?」

 

「こんなときまで演技なんてやだなぁ。」

 

 なんてボヤいていると、2人が舞台の中央に着いた。

 

「はい、静粛に!」

 

  ロックハートの一声に、一部の女子生徒からさらなる歓声が上がったものの、すぐに収まった。

 

「さあ、皆さん。集まって集まって! 私の姿はよぉーく見えますか? 声は届いていますか? ハハッ、よろしい!この度、ダンブルドア先生から"決闘クラブ"を開催する許可をいただきました。

 

 今までに私自身が数え切れないほど経験してきたように、皆さんも自分自身を護る必要が生じた場合に備えてしっかりと学んでいきましょう。詳しくは私の著書を参考にするといいでしょうね。ハハッ!では、助手のスネイプ先生をご紹介いたします。」

 

 ここまで噛まずに言い切ったロックハートは、横で盛大な顰めっ面を披露しているスネイプを紹介した。明らかに嫌々来ました感満載のスネイプに臆さず、笑顔で紹介を始める姿には敬服する。メンタルだね。

 

「ハハッ、こちらにいらっしゃるのは、皆さんよくご存知、スネイプ先生です。はい。スネイプ先生がおっしゃるには、決闘についてわずかながらご存知らしい。訓練を始めるにあたって短い模範演技をするのに、勇敢にも私の助手役を買って出てくださいました。

 

 さてさて、皆さんはご心配をする必要はありませんよ!ハハッ、私が彼と手合わせした後でも、ちゃーんと皆さんの魔法薬の先生は存在します。ご心配めされるな!」

 

  我らがスネイプ教授を正面から馬鹿にするロックハート。スネイプはスリザリン生以外には嫌われているが、この時ばかりは誰もが彼に同情しただろう。

 

 皆がみな、ロックハートは口だけであると気づいている。シグナスとの茶番劇の効果で好感度だけは(一部で)維持しているが、彼の能力については言うまでもない。

 

 そんなロックハートに馬鹿にされたスネイプは既に睨みだけで人を殺せるような形相となっているが、そんな彼を誰が責められようか。手を出さなかっただけマシである。

 

 ちなみに、自分の演説に酔っているロックハートは全く気付いていない。

 

 そして、今度は2人で"短い"模範決闘をするようだ。

 

「皆さんのご覧のように、私たちは作法に従って杖を構えています。」

 

  スネイプとロックハートは向き合って礼をした。ロックハートが大げさに一礼するのに対し、スネイプはぞんざいに頭を傾けただけだった。

 

「3つ数えたら最初の呪文を仕掛けます。もちろん、どちらも相手を殺すつもりはありません。」

 

 ロックハートは余裕たらたらだが、スネイプは歯をむき出しにして、もはや鬼の形相をしている。ロックハートを本当に殺してしまうのではないだろうか。

 

 もしそうなら、シグナスの演技を磨く時間がなくなるのでそれはそれで困る。

 

 

「では。1,2,3……」

 

  2人は杖を振り上げた。

 

「エクスペリアームス!」

 

  スネイプの杖から真紅の閃光が放たれ、ロックハートは「あっ」と情けない声を出して壁まで吹き飛んだ。

 

  大広間中が歓声に包まれる。"スネイプ、よくやった!"と言わんばかりの歓声のように、この時のスネイプはヒーローだった。

 

  吹き飛ばされたロックハートは、痛そうに背中をさすりながら、「ふー」と立ち上がって表情を取り繕った。

 

「さあみなさん、わかりましたか? あれが武装解除の呪文というやつです。ご覧の通り、私は杖を失ったわけですね。はい。しかしスネイプ先生、あれが先生の全力ですか?

 

 "短い"模範演技という目的ですから仕方なく受け入れましたが、とても見え透いた攻撃でした。あの程度では私の相手にはなりませんねぇ。」

 

 "終わった。"と大広間にいた誰もが思った。さっさと終わらせて呪文の1つでも2つでも教えればいいのに。なぜ、既に爆発しそうなスネイプの導火線を煽るのか。

 

「ほうほう。ロックハート教授は"この程度"大したことはないと言うのですな。それでは吾輩が"殺す"つもりでやった方が丁度いいと見える。それでは──」

 

「ひっ!も、模範演技はこれで十分でしょう!これから皆さんの所へ降りて行って二人ずつ組にします!!す、スネイプ先生、お手伝いしてください!」

 

 ようやくスネイプの殺気に気付いて怯んだロックハートは、上ずった声で半ば強引に模範演技を閉めて舞台を降りていく。それはそうだろう。今世紀最大に不機嫌なスネイプに、公開殺害予告をされたのだから。

 

 しかしながら、そんなときにも振りまく笑顔を忘れない。大した精神だ。

 

 

「ダフネ、せっかくだから、どこまでできるようになったか見てあげようか。」

 

「そうね、こんな機会はないものね。──────優しくしてね?///」

 

「お楽しみのところ申し訳ないが、ミスターブラックはミスターディゴリーと組みたまえ。これは強制だ。それとミスグリーングラスは──」

 

 スネイプとロックハートの2人は、実力が合っているだろうと思われる生徒をペアにしていく。シグナスはセドリックと、ダフネは同学年のレイブンクロー生となった。

 

「やあ、セドリック。元気かい?」

 

「ああ。シグナスは余裕だね?」

 

「いや、楽しみでたまらないよ。」

 

 

『いきなりやれと言われても、初めはどうすればいいか分からないでしょう。そこで、上級生のみなさんに見本を見せてもらいます。では──』

 

『ミスターブラック。君がやりたまえ。』

 

 ロックハートが指名するのを、スネイプが遮った。しかし、ロックハートも同じことを考えていたのか、"さあさあ、上がっちゃって!"と満面の笑みだ。

 

 一般的に、シグナスといえば何かと有名な生徒である。昨年までのシーカーであり、あのブラック家であり、成績優秀容姿端麗高身長とあってファンクラブまで存在していると囁かれるほどだ。(女子の間では暗黙の了解となっているわけだが)

 

 今年の始めのスリザリンシーカー事件やロックハートの茶番劇など、校内の話題をよく攫っている。

 

 また、セドリックも有名な生徒である。

 

 第4学年の次席で品行方正なイケメンであり、今年ハッフルパフのシーカーに就任してからは、その人気はもはや留まるところを知らない。

 

 こんな2人の対決とあって、2人をよく知る人物から興奮が伝播し、大広間中が騒ぎになっている。

 

 

 

「あー、ごめんセドリック。君の醜態を晒すことになりそうだ。」

 

「うーん、殴りたいこの笑顔。」

 

 といっても、満更でもない様子で舞台に上がるセドリック。やはりシーカーに就任したとあって、皆に注目される大舞台には慣れているようだ。

 

「それではお2人とも、作法に従って杖を掲げ、相手に礼をしてください。」

 

 先ほどの茶番とは違い、今度は優秀な生徒どうしの対決とあって、周りもボルテージを高めていく。高まっていく緊張感のなか、シグナスは祖母直々に仕込まれた優雅な礼をする。セドリックも純血名家の名に恥じない礼をした。

 

 雰囲気に呑まれて言葉を発しないロックハートの代わりに、スネイプがカウントを行う。

 

「再度の注意事項だが、あくまで杖を取り上げるか、試合続行不可能とみなした場合に限りそこで試合終了だ。

 

 では、ホグワーツの生徒に恥じない戦いを。1,2,3……」

 

 

『エクスペリアームス!』

 

 互いの杖から放たれた真紅の武装解除呪文が衝突して、弾ける。しかし、シグナスは己の呪文が描く軌道を確認せずに次のスペルを詠唱する。

 

「ステューピファイ!」

 

「ぷっプロテゴ!」

 

 失神呪文特有の赤い閃光が迫るもギリギリで防御呪文が間に合う。しかしシグナスは第二陣、第三陣と攻撃の手を緩めない。やがてセドリックが防戦一方となっていく。そして──

 

「デパルソ!退け、グリセオ!滑れ。」

 

「うぉっ!?」

 

 一瞬の隙を突いて放たれた呪文が命中し、よろけたところを滑って体勢が崩れていく。

 

「(Power me like a battery. )」

 

 ────大広間が騒然とした。

 

 倒れかけていたセドリックに一瞬で詰め寄ったシグナスが、その体を抱きとめ、その首に杖を突きつけていたのである。

 

「以上だ。勝者、シグナス・ブラック。」

 

 冷静な声で伝えるスネイプの声に、スリザリンやファンクラブを中心に歓声が上がる。先ほどの茶番劇よりも大きな歓声が身を包み、シグナスは久しぶりにこの快感を感じた。

 

 一部の腐女子が"この攻め受けもいいかも。"と言っていたのは聞かなかったことにした。うん。"セドリックが受けね"とか聞いてない。

 

「シグナス、今のって……」

 

「ただ駆け寄っただけだよ。」

 

 未だに状況が把握できていないのをいいことに、シグナスははぐらかした。否、駆け寄ったのは間違いない。そう、"身体強化呪文"によって駆け寄った。

 

ただし、周りからは動きがブレて見えるほどのスピードなのだが。

 

 

 ホグワーツ入学時には既にオリジナルスペルを開発していたシグナス。現時点での"この"集大成は、バッテリーの理論によって完成した。

 

 1年生の時に大人数で襲撃されたときから考えていた"身体強化呪文"。ただでさえ人間の動きより早い速度で飛んでくる呪文は、囲まれるといっそう避けるのが困難になる。

 

 1度は断念したものの、昨年の襲撃によって今度は身を守ることを考えた。そう、式神である。そしてグレンジャーから勧められた図書館にて、ついにシグナスは見つけた。

 

 "電気"を貯めるバッテリーは、鉛製の極板に硫酸とか色々とこむずかしい理論によって成り立っているが、シグナスはこの結果だけを引き出して複雑な構造を排除したものを考えた。

 

 当初、式神を半永久的に運用するためのエネルギーポットとしてその媒体になる原料を探していたのだが、予想以上に式神の完成が遅れてしまっていたので凍結された。

 

 式神の形成には、どうしても魔力を手に集中させる必要がある。夏季休暇中、一時はやりすぎで魔力の通り道、経絡系に負担がかかり、手に通ずる経絡系が悲鳴をあげて式神を作り出す訓練が出来なかった。

 

 そこで行ったのは、1年生の時に断念してお蔵入りになっていた"身体強化呪文"だった。このバッテリーの理論を応用して、自分の体の中に、魔力を溜めるエネルギーポットを創設。

 

 非常に繊細な魔力操作によって経絡系を歪めなければならなかったが、この術は既に式神の訓練で培われていた。とはいえ、あまりの激痛に2日ほど立てなくなり、クリーチャーに甲斐甲斐しく介護されたことは余談だ。

 

 自分の体内のバッテリーに魔力を溜め、いざという時に解放して素早く、力強く、身体の能力を跳ね上げる。これがシグナスの"身体強化呪文"である。

 

副産物として、使用期間中に魔法を行使するとその魔法の威力も上がるというおまけ付きである。2年越しの挑戦は、身を結んだのだ。

 

 溜められる魔力こそ限りがあるために制限時間つきではあるものの、ここぞというときの切り札になる。無詠唱の代わりにイメージを必要とするが、これは姿くらましなどとそう大差ないだろう。

 

 そして初のお披露目となった今回、シグナスの狙い通りの結果となった。公衆の前でやらなければならなかったのは予想外だったが、パフォーマンスとしては十分。

 

 スネイプなどはポーカーフェイスで隠しているが、さぞ内心で焦っていることだろう。

 

 

 興奮が冷めぬなか、「さあ、武装解除呪文からやってみましょう。皆さん、杖を構えて!」とロックハートが音頭を取り、ようやく個別練習に入った。

 

 シグナスはセドリックと一緒に、"呪文の威力は込める魔力によって変わるんじゃないか?"とか、"あんまり強すぎても暴発するだけだよね。"と談義を交わしながらやんわりと打ち合っていた。

 

 2人ともクールダウンと言ったところだ。しかし、周りはそんな平和ではなかった。近くにいた生徒たちは自由気ままに呪文を撃ち合い、仲が悪ければそこ一帯は戦場になっていた。

 

 たまたま見つけたグレンジャーと、その相手、ドラコの取り巻きミリセント・ブルストロードに至ってはプロレス技の応酬となっている。否、ブルストロードが一方的にヘッドロックを掛けていた。いや、それはあかんて。自分の体格を自覚しろ。

 

「悪いセドリック、殺しが発生しそうだから止めてくるわ。」

 

「え、ちょっとシグナス!」

 

 急いで2人の元に行き静止する。

 

「ブルストロード、君は人を殺す気かね?完全に技かかっているぞ。やめてやれ。」

 

「先輩……はっいえ、先輩には関係ありません。」

 

 何か見つめられたが、すぐに何かを思い出したのか断られた。

 

「関係ある。我がスリザリンから人殺しを出すわけにはいかん。それに君は退学どころかアズカバン行きだろう。君は自分の人生を自らの手で終わらせたいのかね?」

 

 そう言うと、青い顔をしてようやくヘッドロックを外した。アンロックされたグレンジャーが何かを言おうとしていたが、一瞥しただけで戻った。

 

「いやーごめんセドリック。お待たせ。」

 

「はぁ、全く。まあいいけどね。」

 

「ありがたいね。」

 

 明らかに無法地帯となっているなかで、この惨状を指南役が黙ってるはずもなくすぐに全組中止となった。

 

 静まり返って次の指示を待っていると、「むしろ非友好的な術の防ぎ方をお教えした方がいいようですね。」ということで、今度はドラコとポッターが舞台に呼ばれた。

 

 学年2位のドラコはともかく、昨年の成績上位者の掲示には載ってさえいなかったポッターをぶつけてくるとは、スネイプもひどい男である。

 

 いや、もしかしたらポッターの"闇の魔術に対する防衛術"の成績はいいのかもしれない。だからスネイプは指名したのではないだろうか?

 

 尤も、ただ朗読するだけだった昨年の教師の授業をまともに聞いていたとして、実際に実力が付くとは思えないが。

 

 そしてスネイプがドラコに何か耳打ちしている。そこまでして勝たせたいのか?

 

 

……スネイプはポッターを憎んでいる──というのは昨年からの有名な話だが、そこまで嫌っていたとは。ドラコに対して露骨すぎる過保護っぷりだが、そこまでしなくてもドラコは強いよ。

 

 気を取り直したロックハートによって耳障りなカウントダウンが始まったが、途中で2人とも杖を振り上げて呪文を打った。

 

 ポッターも意外に頑張っていたが、家庭教師だけでなくシグナス直々に鍛えられたドラコには勝るまい。やがてドラコが追い詰めていく。

 

「サーペンソーティア! 蛇よ出よ。」

 

 詰めにしてはチョイスを間違えたか?

 

 ドラコの杖からは大蛇が現れる。

 周りを囲んでいた生徒は後ずさり、広く隙間が空いた。

 

「動くなポッター。吾輩が追い払ってやろう……。」

 

 スネイプは、ボロボロのポッターが蛇を怖がっているのを見て嬉しそうに申し出てくる。なるほど、あの呪文はスネイプの差し金か。

 

 しかし、それをロックハートがしゃしゃり出て阻む。

 

「私にお任せあ~れ!」

 

 ロックハートが杖を振るうと、なぜか蛇が上に大きく弾き飛ばされた。当然蛇は怒り狂って"シューシュー"と鳴くと、のろのろと動き始める。

 

 あれは対処ではない。単なる挑発行為だ。大蛇はそのまま近くで野次馬をしていたハッフルパフ生に向かっているように見える。

 

 次の瞬間、ポッターが口を開いて何かを漏らす。人間の言葉ではなかったが、今の蛇と同じ声だと皆が気づいた。

 

 大蛇は動きを止めて彼の危機は去ったが、その顔は恐怖に見舞われたままだ。何を思ったか、ポッターが彼ににっこりと微笑みかけている。

 

 そして彼は怒り狂って出ていってしまった。そして中途半端なまま"決闘クラブ"は幕を閉じられ、皆は今起こった出来事について話しながら去っていく。

 

「シグ!」

 

 模範演技から離れていたダフネが追いついてきた。

 

「シグ、あれって一体何が起こったの?」

 

「パーセルタング、蛇語さ。大体は血統や才能でしか受け継がれない、非常に珍しい能力だよ。イギリスではサラザール・スリザリンとか、闇の帝王とかね。彼らがパーセルマウス、蛇語使いだったと言われている。」

 

「え、じゃあポッターはスリザリンの血を……」

 

「継いでいるかもしれない。だが彼は1000年も前の人間だ。突き詰めれば俺たち聖28一族にも混じっているだろうが、その血は薄れているはずだ。きっと隔世遺伝とかでポッターに現れたんじゃないのかな?」

 

「でっでもシグ、今回の石化事件ってスリザリンの継承者がやっているのよね?スリザリンって言ったら蛇だしし、ポッターが継承者なんじゃ……」

 

「否定はできない。でもパーセルタングだと分かったからといって決めつけるのはまだ早い。スリザリンが遺したという怪物は、生前から彼を象徴してきた蛇だと考えるのが自然だ。

 

だけど、実際に蛇をけしかけて石化させたのかは分かってない。誰も見ていないんだから。

 

 それにポッターは、2年前までマグルのところに預けられていたって話は有名だろ?さらに彼はグリフィンドールだ。それを鑑みるとちょっと考えにくい話ではあるよね。」

 

 2人は寮まで戻ると、談話室で学友と意見交換をしてから眠りについた。

 

 

 翌日、ドラコ継承者説はどこへやら、校内は、ポッターがスリザリンの継承者だと思うようになった。まあ無理もない。秘密の部屋について断片的にも調べあげられ、その情報から見るに彼が最も近いのだから。

 

 疑わしきは近寄らない。それが1番だ。よって、ポッターは同寮生からも避けられるようになり、彼が廊下を歩くと、出エジプト記のモーゼの奇跡のように人波が割れる。

 

 昨年の減点事件のときのような熱い手のひら返しにより、彼は一転、校内一の嫌われ者になった。いや、避けられるようになったと言った方がいいのか。

 

 代わりに継承者の疑いが晴れたドラコが、なぜか決闘クラブの後から不機嫌になっている。……まあ常に取り巻きに囲まれていると流石にストレスが溜まるよね。

 

 そして同日、"決闘クラブ"で蛇をけしかけられたハッフルパフ生、名はジャスティン・フレッチリーと、ゴーストの首無しニックが犠牲となった。彼はポッターと同級生らしい。

 

 2人とも石化してしまった状態で発見されたのだが、ポッターが2人を見下ろしているところを大勢の生徒が目撃したらしい。

 

 そしてそのハッフルパフ生はマグル生まれ。現場を押さえられたポッターの継承者説はますます高まり、"どうしてあいつを捕まえてくれないんだ!""現行犯で見つかったじゃないか!!"と涙混じりに悲鳴をあげて訴える生徒がちらほら見られた。

 

 しかし、ポッターは英雄、"生き残った男の子"である。露骨な贔屓をするダンブルドアが彼を捕まえることはあるはずもない。万に一つもありえない。

 

 こちら側にとって多少、いやかなり理不尽なことが起きたとしても、ダンブルドアなら全権をなげうってでもポッターを守りそうである。

 

 "決闘クラブ"後初めての魔法薬学の授業で、スネイプの薬品棚へ最近盗みを働いた者がいるとのことで忠告をもらい、機嫌が最悪な彼の授業を受けることになった。

 

 

 

 

 

 

 ここで、間がいいのか悪いのか、クリスマス休暇を迎えた。

 

 どうやらダンブルドアが上手くやってくれたようで、一時はブラック家にお鉢が回りそうだった魔法省の抜き打ち検査もマルフォイ家に決まったらしい。

 

 おかげで、珍しくもドラコがクリスマスをホグワーツで過ごすことになったようだ。元祖取り巻き2人もドラコに合わせている。

 

 本人は家に帰れず不満たらたらだったが。

 

 

 シグナスは、おそらく初めてダンブルドアに感謝を捧げた。

 

 

 

 そして帰宅する日──。

 

「ダフネ、そろそろ行こうか。」

 

「ええ。そういえば、今年はどのくらい私の家にいてくれるの?」

 

「うーん、そうだなー。去年よりはいると思うよ。」

 

「なによ、曖昧ね。」

 

「まあクリスマスの間に色々とあるんだ色々と。場合によっては、マルフォイ家と完全に対立してしまうことになる。そこまではいかないように傷口を塞いでおきたいんだ。」

 

「え、一大事じゃない。そんなに上手くいくの?」

 

「ダンブルドアから、まー簡単に言えば"全部わしのせいにすればいいんじゃよ。"って言われたから、それに従うつもりだ。本人も了承済みだし、手っ取り早く場を収めてくるさ。」

 

 2人乗せたホグワーツ特急は、ロンドンへ向け走っていく──。

 

 

 




いかがでしたか?
前回よりかはましですが、難産でした。これ書いたの随分と前ですが、何度も手直しした記憶があります。
なかなか難しかったです。
とにかくクリスマス前まで終わりました。

ご意見、感想をお待ちしております。

❁❀✿✾❁❀✿✾❁❀✿✾❁❀✿✾❁❀✿✾❁❀✿✾

・楽しい楽しいセドリックとの決闘

ここは最初から模範演技をさせてから原作に合流させました。

経験値的に見てもシグナスが圧倒しています。伊達に襲撃を受けてないってことです。

また、この決闘はシグナスがだいぶ手加減しています。無言呪文使ってないし。やろうと思えば、開幕koできたのではないでしょうか。そうしなかったのは興が削がれるからというのと、シグナス自身戦いを楽しみたかったからです。

・グリセオ滑れ ※原作より

床をつるつるにする。ワックス塗りたての廊下を思い出してください。多分あんな感じです。

原作では違う効果でしたが、作者が最初に連想したのはこんな感じなので、本作の独自設定です。ご了承ください。

ちなみに、セドリックはデパルソ(退け)によって体重を傾けていましたから、あっさり滑ってしまいました。まあ転ぶ前にシグナスに助けられたわけですが。


・身体強化呪文

完全に独自理論てか独自設定です。はい。原作には書いてないし仕方ないよね。
イメージはNARUTOの百豪の術(額に集めていませんし、印とかもありませんが。)です。3年間も貯める必要はありませんがね。

今後のシグナスの切り札となっていくでしょう。


・Power me like a battery. (バッテリーような力を俺にくれ!!)

意訳ですが。イメージするために用いる心の中の詠唱。口には出してないから無詠唱と同じ。

とある国民的アイドルグループの1曲の一節から持ってきました。私、この歌結構好きです。

・ドラコ強化キャンペーン

本来ドラコは臆病な性格なので、あまり意味は無い。戦う前に逃げるから。
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