ブラック家の御曹司 作:修造
昨日国立の後期試験が終わりました。
と言っても活動報告の通り合否に関わらず浪人する予定ですが。
現在高校生のみなさんへ
進路は早め早めに決めた方が良いと思いますよ。私のように後悔しないで(切実)。
さて、今回はシグナス視点中心です。
そして謝罪を。
いつか、次回はドラゴン書くぜキャッフフとか言いましたが結局入りませんでした。この次に入る予定なのでご了承ください。
オリンピック。
平和の象徴とされる言わずと知れたスポーツの祭典。
その起源は、今から2800年ほど遡ると言われている。古代ギリシアの地では、もともとは神に捧げる宗教の儀式だったそうだ。
その影響力は大きく、たとえ戦争中であっても戦いを中断して執り行ったという。
諸説あるので一概には言えないが、現代のオリンピックが"平和の象徴"と言われているのは、ここからくるのではないだろうか。
何故ここまで話したかといえば、イギリス魔法界におけるスポーツに唯一該当するのはクィディッチにおいて他は無く、この度ホグワーツにて、クィディッチのエキシビションマッチが行われる運びとなったからである。
賢者は言った。
──曰く、スポーツには人を笑顔にする力がある。
──曰く、スポーツには人を勇気づける力がある。
──曰く、音楽とは何にも勝る魔法じゃ。と
──曰く、さぁ、試合の前にみんなで校歌を歌いましょう──と。
この日、ダンブルドアの予告の通り、エキシビションマッチが行われた。カードは言わずもがなスリザリンVSグリフィンドールである。
あくまで楽しむことが目的であるので、今回ばかりはメンバーに対して理由を問わずラフプレーをやめてもらった。
そして試合は拮抗した。
得点を取ったらまた取り返され、それをまたこっちが取ってひっくり返す──
会場が盛り上がって熱狂に包まれていくと、狙いすましたかのようなタイミンクでシーカー対決が起こった。
両者の位置的関係は同等で、ほぼ同じタイミングで飛び出した。ピッチ外周の観客席の下の骨組みの方へスニッチに誘導されたが、僕もポッターも構わず突入して行った。
そのままスニッチは外周の暗幕を突き破り、観客席のちょうど真下へ入りこむ。僕らも入っていくとあら不思議。思ったよりも骨組みはスカスカで、大きな隙間がある。
どう考えても性根が腐っているスニッチはその隙間へ潜り込み、僕たちから逃れようと逃げ回る。
急激に方向転換する事の出来る魔法が掛けられたスニッチとは違い、僕らは直角に曲がることなどはできない。
隙間もそこまで大きくないから、常人には飛ぶだけで精一杯だ。
しかし、一瞬でもブレーキを掛けることは、すなわち敗北に直結することを僕らは直感で分かっている。上手く骨組みの柱を避けなければ、相手のリードを許してしまう。
己のスキルを用いて、限界を超えるまで追跡し続けるしかないのだ。当然、それには多大なる危険を伴う。
ほぼMAXスピードのまま突き進むこの速度、ひたすらスニッチを追い続ける現在の前傾姿勢のままでは、万が一柱に衝突するとタダでは済まされない。
最悪首の骨が折れる以上に酷い結果が待っているだろう。
尤も、首の骨が折れるような大怪我でも命を失うほどにはないということが前回の事案で証明されている。我らが校医はただものではない。
それにこのようなチキンレースの場合、石橋を叩いて渡るよりも本能の赴くままに突っ走って行った方が案外イケちゃう場合もある。
この場合は後者か。
少なくとも、僕は猛スピードのまま柱に突っ込み無様を晒すほど拙いスキルを持っているわけじゃない。そのようなことで怯むような脆弱な度胸は持っちゃいない。
日々厳しく、尚且つ悪質になっていく練習のなかで、そんな心はどこかへ捨ててしまった。
スニッチは木製の柱の隙間を縫うように奔った。
僕らはその動きに合わせて時には柱の右へ、時には左へ、またまた時には互いの身体を接触させて作用反作用の法則を利用。2人の間の空間を開け、その間に柱が通るように通過し、スピードを落とすことなくスニッチを追いかけていく。
この超悪質な環境下においても一向に引く気配を見せない僕らに業を煮やしたのだろうか。
スニッチはあっさりと暗幕を抜けて外へ抜けると、そのまま広いひろい大空へと駆けていった。
この極限ともいえる状態が長引く度に、両者の明暗は分かれていく──
僕は、暗幕を抜けると無理に機首を起こして急上昇させていく。急に生じた高低差による三半規管の乱れに耐えつつ、今度は横旋回に入ったスニッチの後方にま回りこもうと次は強烈なGに耐える。
しかし、ポッターはそうもいかない。僕と比べると学年の差もあってどうしても体格で劣り、身体も出来上がっていない。三半規管の乱れはより大きく感じるハズだし、Gの負荷に耐えられるかどうか。本来ならば、1年生は選手になれないという理由は主にここからくるのだが……
当然ポッターは強い影響を受けているのにも関わらず、その瞳の奥にはスニッチを焼き付けて飛び続ける。強いGを受けるとハンパな鍛え方をしていれば背骨は折れてしまうが、ポッターはそんなのにも構わず突き進んでいく。
その姿は賞賛に値するが、この明暗が勝負を決めた。
たとえコンマ1秒の差であっても、ことクィディッチに限ってはその条件の有無は致命的な差を生む。
ようやくスニッチが水平運動に戻ったとき、ポッターは少しずつ出遅れていた。
最後の直線でのデッドヒートで僕が競り勝ち、ようやくスニッチを掴み取った。
スリザリンの勝利である。
スタジアム全体が歓声に沸く中、試合後のキャプテンどうしの握手では、いつもは互いの手の握り潰し合いをしていた仲とは思えないほどの晴れやかな表情で握手が行われ試合は締めくくられた。
―――
この日、大広間では全校を巻き込んだ打ち上げが行われた。勝っても負けても観戦していても関係なく盛り上がった。
この中で、僕はハッフルパフのセドリック・ディゴリーと意気投合。すぐに仲良くなった。
彼は以前から僕に注目していたらしい。打ち上げが始まるとすぐに話し掛けてきた。
そして僕も彼のことを知っていた。
ハンサムで誰にでも優しくとても聡明で、最近人気急上昇中の生徒だ。それを彼に言ってみると赤面して下を向いた。反応がかわいらしくて好感を持った。
何でも、セドリックはシーカーの座を狙っているらしい。ご贔屓にしているプロチームも一致したので、すっかり話し込んでしまった。
彼はイタズラ仲間(フレッド&ジョージ)を除き、他寮では1番の親友になった。
そして、普段の生活でも変化が現れた。
朝、いつものようにダフネと朝食を取りに大広間に向かっていると、数多くの人から話し掛けられるようになった。
それは取り巻きたちが取り囲む移動教室でも同様で、これを機に、いつも引っ付いてくる取り巻きの人数を削減することに成功した。
ホグズミード休暇でも変化が起きた。
以前はジャックと2人か、セットで取り巻きたちと一緒だったのだが、ジャックもこの頃他寮の生徒と交流を持つようになったので、2人で行くことは無くなった。
それが一時的なものなのかは分からないが、ジャックにとっても良い傾向だと思う(意味深)。
そして今回は、約束通りとある人物とホグズミード村へ行くことになった。
「お待たせしたかしら?」
とある人物──アルメリア・バーネットとの出会いは、例の事件後に面会が解禁になり、ダフネが1日早く退院した日まで遡る。
彼女はレイブンクローの6年生で監督生だそうだ。そして、並びに"シグナス・ブラックファンクラブ"の代表らしい。
何じゃそれ!と思わず反応してしまったが、本人非公式でやっていたと告白。
彼女曰く、ココ最近新入生が入学したこともあって会員の数が異常に増えているそうで、とある問題が発生したらしい。
──あなた、今年からいつも一緒にいる女子生徒(ダフネのことだ)がいるわね?あなた自身は入学以来全く女の気配がなかったからみんな焦っているらしくて…
んなもん知るか。思わず心の中で毒づいたところで、シグナスにとって特大の爆弾が投下された。
──彼女?の出現によって過激派が生まれたわ。このままだと彼女、(違う意味で)また襲撃に遭うわよ。
女の嫉妬は怖いものである。このとき、シグナスはまた一つ教訓を学んだ。
そこで、彼女が提案した打開策──
"クジで当たったファンクラブ会員とホグズミード村へ"というサービスの開始──
もともと活動としてはあまり大したことをやっていなかったらしいが、この度新たな活動を開始する。ということで事後承諾を求めに来たのだった。
本人そっちのけで勝手に進められた事案ではあるが、これを無視して本当にダフネが襲撃されたらたまらない。シグナスには断るという選択肢は無かった。
そして今回はサービスの試験運用的なものを兼ねて代表のアルメリア氏と2人で行くことになったわけで──
「いえ、今来たところですよ。おはようございます。今日はよろしくお願いしますね。」
「え、えええ、ええ。そっ、そそそそうね。こっこちらこそよろしく。」
クィレルもびっくりの吃り具合である。
「先輩、そんなに緊張しないで自然体でいて欲しい。ほら、リラックス。」
「ありがとう。落ち着いたわ。
さあ、行きましょう!」
頭を撫でると落ち着いたようで、手を取って駆け出した──
端的にまとめると、彼女とのホグズミード探索(アルメリア曰くデート)はとても楽しかった。
最初こそ「1度でもいいからあなたとデートしてみたかったの。」とか恥ずかしそうにまくし立てていたが、やがて慣れてくるとレイブンクローらしく勉強の話になった。
(アルメリアの独断と偏見が混じった
また、彼女はブラック家ではなく、等身大の"シグナス・ブラック"を見てくれていた。一緒にいてこんなにも居心地が良いのは、同世代では本当に稀だ。
そしてホグワーツまで戻り、別れのとき──
人が寄りつかない所まで連れ添い、今日はありがとう。と言おうとしたところを抱きしめられた。
シグナスは家系の血に逆らわず高身長だが、学年の差もあってアルメリアとはほぼ同じ高さだ。
「ごめんね。でも今はこのままで居させて。」
そう言った彼女の表情は切なげで、もともとレイブンクローどころか学校でも整った容姿をしているのも相まって、不覚にも見とれてしまった。
やがてアルメリアは抱擁を解いた。
「今日はありがとう。とても楽しかったわ。」
「ええ、こちらこそ。」
「ねえ、あなたと毎朝大広間に向かっているあの娘はあなたの想い人よね?」
「いえ、そんなことは…」
何も言えなかった。いつからだろう。
彼女のことを考えると胸の奥が苦しくなる感覚を感じるようになったのは。今の僕には、この気持ちをまだ名付けることはできない。
「フフフ。いいわ。やっぱり私は本気であなたに恋してるけど、この気持ちは伝えるだけで…やめとく。
ファンクラブのサービスとか言ってあなたを景品扱いしたことは申し訳なく思ってる。普通ファンクラブって本人には知られないところで活動するものなんだけどね。
でも今回のデートで分かったわ。あなたは、このままだときっと彼女を幸せにはできない。」
「!!!」
どこか悲しげだった表情が毅然とした表情に変わり、告げられたことに動揺を隠せない。
「確かにあなたは成績優秀スポーツ万能容姿端麗で紳士的で優しくて人当たりも良くて気を遣えて…(ry」
「おい。」
「──だけど、あなたにはまだ足りないものがあるのよ。それは自分で探しなさい。…今回のおためしは成功だと報告するわ。次回のホグズミード行きから始まるから是非とも経験を積んで欲しい。それはきっとあなたのためになる。」
余計なお世話だーと内心ぐったりであったが、そう言うアルメリアの表情はとても真剣で、思考回路はともかく本気でシグナスのことを考えていることがわかった。
「……分かった。」
―――
最近、シグナスがあまり構ってくれなくなった。
もちろん朝食を食べに行くときも一緒だしあの湖のほとりに行くときも一緒だし談話室にいるときはずっと話していた。
でも、例の事件のあと、シグナスは他の寮の人たちとも話すようになり私だけに向けられていた意識が周りに向けられるようになった。
そして談話室にいることが極端に減った。
本人曰く、取り巻きに引っ付かれるのがイヤということだが嘘だと思った。女の直感というやつね。
この前のエキシビションマッチは大盛況のうちに終わり、4つの寮の間(というよりスリザリンとほか3つ)の仲は驚くほど緩和した。
かつてないほど交流の輪が広がり、今ではスリザリン生とグリフィンドール生が一緒にいても珍しくないようになった。
ダンブルドアの手腕には感心させられたけど、その結果シグナスが他の寮に取られている。
やっぱり寂しい。
この頃、いつにも増して女子からの熱い視線を集めるシグナスは明らかに変わった。
一人称を僕から"俺"に変えて、言葉遣いにもちょっぴり男っぽい印象が現れるようになり、少し制服を着崩すようになって楽な恰好をしている。それが余計に視線を集めることになっていることに気がついているのだろうか(怒)
3年生になると、ホグズミード村行きが許可される。シグナスは、相変わらず私の好きなお菓子のお土産を買ってきてくれるけど、最近はいつも一緒だったハワード先輩とは行っていないらしい。
そんなハワード先輩も容姿端麗だからモテる。シグナスによると、今回の宥和政策を機にグリフィンドールの彼女を持ったそうだ。
そんなことより、最近シグナスは誰と行っているんだろうと疑問に思った私は、シグナスの取り巻きの1人に調査を依頼した。
そしてホグズミード村行きの日────
取り巻き(3年生)によると…
──曰く、最近のシグナスはなんと寮を問わず女子生徒を取っかえ引っ替えしている。
──曰く、相手は必ず1度の休暇で変わる。
──曰く、例外なく2人の雰囲気はとても良好。
──曰く、…(ry
さらに、最近はハッフルパフの英傑、セドリック・ディゴリーや学校きっての問題児、グリフィンドールの双子フレッド・ウィーズリー&ジョージ・ウィーズリーとも移動教室などでよく行動を共にするらしい。
不意にボヤけた視界の中で思う。
───シグナス、いったい何があったの?
―――
やがて迎えたクリスマス休暇。
シグナスは例年通り帰宅する。
やはりスリザリン寮の中で学校に残っている者はいない。
「そういえばシグ、今年は家に来てくれるんだろう?」
言わずもがなパーティーのことである。
「もちろんさ。いつか俺の屋敷でやってみたいな。クリーチャーが美味しい料理を作って……
ホームパーティー的な小規模のものでいいからいつかかろう。」
「ねえねえド・ラ・コ。
私もパーティーに行くのよ?」
「分かった。分かったから僕に引っ付くなパーキンソン!」
ドラコは同じ1年生のパンジー・パーキンソンに好かれているようだ。…そんなことより向かいに座るミリセント・ブルストロードの視線が痛い。
なまじいい体格をしてないから内心ガクガクブルブルである。隣のダフネが何か落ち込んでいたのが気になった。
(こういう時ジャックはどうやって慰めるんだろうな。)
シグナスは、今はこの場にいない親友のことを思う。ジャックは、今頃めでたく結ばれた彼女と一緒の個室でイチャついてることだろう。
終始空気となっていたドラコの取り巻きクラッブとゴイルをよそに、ホグワーツ特急はやがてロンドンに着いた。
「クリーチャー! (バチン!) ──帰ろうか。」
この日はクリーチャーが腕を振るって作った料理に舌づつみを打ち、クリーチャーや先祖の肖像画に学校生活のことを報告したりしていた──
翌日、迎えたクリスマス。
朝、友人や知り合いからのプレゼントを開けるのことは、ここ数年ですっかりシグナスの楽しみになっていた。何よりホグワーツに入学するときよりも格段に多い。
ドラコからはエメラルドが装飾してある綺麗なペンダントを。
ルシウスからは高級感溢れる腕時計を。
シシーからは、現在在庫不足で入手困難な簡易医療セット(性能が高く、現在の魔法界で評判になっているとっても高級な一品)を頂いた。
メッセージカードに"クィディッチ頑張りなさい。"と書かれてあるのを見て、思わず頬が緩んだ。
その後、ホグワーツの自分の部屋に帰ったときに出来ていたプレゼントの山…というか城に驚いたのは余談である。
午後になれば、今夜の晩餐会に向けて準備を始める。今年もマルフォイ家主催のパーティーだ──
夜、イギリス南部のウィルトシャー州にシグナスの姿があった。何を隠そう、マルフォイ邸の前である。
招待状を受付に見せて通してもらうと、一直線に主催者のもとへ歩いて行く。
「ルシウス。この度はお招き頂き感謝致します。」
「シグナス、今日はようこそ。」
「おや、そこに飾られているのは生け花ですか?とても神聖な雰囲気がします。」
「最近のマイブームなのよ。
今日はゆっくりしていってね。」
「はい、ありがとうございます。シシー。」
主催者への挨拶が終わると、擦り寄ってくる他の招待客を交わしつつ周りを見渡す。すると見慣れたサラサラの金髪が目に入る。
「ダフネ!メリークリスマス。」
「メリークリスマス。あら、シグ、そのネクタイピン…」
「ああ、とても素敵なプレゼントをありがとう。似合うかな?」
「ええ、とってもお似合いよ。私もプレゼントをありがとう。とっても気に入ったわ。」
「そうか。それは良かったよ。」
ダフネからはスリザリンカラーのネクタイピン(もちろんブランドものの高級品だ)を貰っていた。ちなみにこちらからは、精巧な白鳥の置き物を送った。
ダフネと言葉を交わしたあとは、すぐに後ろに控えるグリーングラス家のみなさんとのご挨拶が待っている。
「メリークリスマス。どうやら元気そうだね。」
「はい、お義父さまもお変わりないようでなによりです。」
「シグナスくん、今度我が家に来てくれることを楽しみに待っているわ。」
「はい、私も心待ちにしております。お義母さま。」
そう、この2人には、そうやって呼ぶことを強制されている。その原因は──
「お義兄さま。メリークリスマス。
お姉ちゃんをよろしくね。」
……年齢的にとてもませてしまったダフネの妹、アステリア・グリーングラスである。
「やあアステリア。ごきげんよう。」
何でも、ご両親お2人も息子が欲しかったようなのだ。断りきれないことを悟ったシグナスは、まあ呼ぶだけならいっか。と割り切っている。
その後、ドラコやジャック、招待されているスリザリン生たち(主催がマルフォイ家なので自ずとスリザリン出身が多くなる)に
ファンクラブの会員(当然パーティーに呼ばれるほど家柄の高い家系も入っている。また、シグナスはこのファンクラブを非公式のままで押し通している)
の方々と挨拶をしてパーティーを楽しんでいた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、お開きとなった。
こんなにもパーティーが楽しかったのは、きっとルシウスがホグワーツの学生を多めに招待してくれたからだろう。貴族特有の駆け引きなどを気にせず談笑できたので、シグナスは今度のパーティーも楽しみになった。
パーティーが楽しみなんて以前のシグナスにはなかなか考えられないことである。ルシウスの配慮には今後も頭が上がらない。
──程よくアルコールが回った身体でブラック邸まで帰ったシグナスは、気持ちよく眠ることができた。
数日後、今度はグリーングラス邸の前に立っていた。ブラック邸とは決して近くないところに建っているが、クリーチャーの付き添い姿くらましがあれば簡単にアクセスすることができる。
クリーチャーさまさまである。
グリーングラス邸に訪れるのは夏季休暇以来だ。ブラック邸やマルフォイ邸に比べるとやや規模は小さいが、それでも一般庶民からすればビックリの豪邸である。
「いらっしゃいシグナスくん。他のみんなは奥にいるわ。さあ、入って?」
「お邪魔します。これ、よろしければ。」
「まあ、これは上物のワインね。
あとで開けましょうか。」
見慣れたエントランスを通り、お義母さまのあとに続く。
「シグナスくん。今日はよく来てくれたね。ゆっくりしていってくれ。何なら泊まっていってもいい。」
「はい、せっかくですが家の者に今日は帰ると言ってしまったので……今日はどうぞよろしくお願い致します。」
「ねぇあなた、これシグナスくんが持ってきてくれたのよ。あとで開けましょう?」
「お前は本当にお酒が好きだな…」
グリーングラス邸でのひと時はあっという間に過ぎていった。久しぶりに家族の温もりを感じるいい時間だった。
お義父さまと魔法界の情勢について話し合い、お義母さまの淹れた紅茶でアフタヌーン・ティーを楽しみ、姉妹とお部屋で遊んだ。
アステリアは2年後に迫ったホグワーツ入学に興味があるようで、今回は魔法を見せて欲しいとせがまれた。1年生のダフネもこれから学ぶ呪文に興味があるようなので、広大な庭に出て見せることにした。
途中からはグリーングラス夫妻も後ろから見ていたようで────うん、我が娘に申し分ない才能を持っているなぁ。いいえ、勿体ないくらいよ。なんてボヤかれていたのは余談だ。(呪文に集中していたので、毎度のごとくシグナスには聞こえていない)
最後に、アステリアに付き合っていて、あまり喋れなかったダフネをダイアゴン横丁のデートに誘ってグリーングラス邸をあとにした。
そしてデート当日。
意外にも今冬はとても忙しいシグナスは、あるときはノクターン横丁へ、またあるときは魔法省まで出向き、色々な役人の相手をしなければならなかった。
そこには、年齢もキャリアも関係ない。ただ、ブラック家の当主としての責務があるだけである。
この日、待ち合わせの集合時間よりも随分と早くやってきたシグナスは、高級クィディッチ箒専門店という店へ赴いていた。
カランカラン
「いらっしゃいませ。…おお!ブラック様ではありませんか。今日はどういったご要件で?」
「はい、実はこの箒のメンテナンスをして頂きたいのです。」
そう言って愛箒のシルバーアローを差し出す。
「おお!?これはシルバーアローではないですか。とっくに生産終了になって現存していないかと思っていましたが!!」
どうやらクィディッチの専門店らしく、その界隈には詳しいようだ。それは彼の興奮ぶりからも分かる。
「ふーむ。こんな傑作に出会えたのは信じられないことですが、やはり交換用の備品は当店にはございません。私で宜しければ、これでも一流の箒職人を自負しておりますのでチューンナップを致したいと思うのですがね
…実は最近シルバーアローを作っていた当時の職人の居場所が分かりましてですね。私自己流のチューンナップよりかはやはり製作者さま御本人による手でメンテナンスされた方がよろしいかと思います。ブラック様のような一流の選手なら尚更。」
「いえいえ、私なんてまだまだです。
しかし…そうですか。では、その職人は今どこにいらっしゃるのですか?」
「聞いて驚いてくださいよ………………………………………なんと日本なんです!
現在、日本の山奥で細々と活動なされているようで、クィディッチナショナルチームのトヨハシテングの方にも箒を提供しているとか。」
「へぇ!東洋の神秘、日本ですか!!
その職人さんはいい就職先を見つけられたようですね。さぞ他より箒の注文が多いかと。」
日本のナショナルチームは、試合に負けると乗っている箒を燃やすという伝統がある。
シグナスはそれを皮肉った。
「そうですね、箒職人としてはそうそう燃やして欲しくはないんですがね…」
シグナスの皮肉に気づかない店主は、どこか物憂げにつぶやいた。
「分かりました。では今度の夏季休暇に直接会ってみたいと思います。その方の連絡先を教えて頂けますか?」
「シグ!お待たせ!!」
「いや、今来たところだよ。
その服とっても似合ってるね。」
さらっと嘘をついて、ダフネのファッションセンスの良さを褒めた。
今日のダフネは、黒のタートルネックに上品な藍色のバルーンスカート、ファー付きの赤いダッフルコートというコーディネートである。
ダッフルコートでどこか幼く見えるのに、金髪が映える赤色と、もこもこしたコートは清楚でフェミニンな雰囲気を醸していてとても可愛らしい演出となっている。愛でたい。(意味深)
「それじゃあ行こうか。」
ダフネと手を握って横丁に繰り出すシグナスは、いつの間にか箒を持っていなかった。
どうやらその手に持つカバンに入っているらしい。
有名な観光名所を周り、2人でショッピングをして楽しんでいたら、あっという間に夕方になった。
「ダフネ、最後にあそこへ行こうか」
そう言ってシグナスが指さした場所は、ダイアゴン横丁でも知る人ぞ知る名所となっている丘である。
幸い最後の店からも近く、5分と経たずに丘の頂上までやってきた。
「うわぁー…すごい綺麗……。」
広がっていたのは、燃えるように赤い夕焼けだった。
「ダフネ、少し目を瞑ってて。」
「えっ!?ええ。」
何か首元に感じる感覚がある。
「…ねぇシグ、まだ目を開けちゃダメなの?」
「もういいよ。目を開けてごらん。」
「 Woah, it’s so cool!」
「どんな夕焼けよりも一段と美しいお嬢様に、僕からのプレゼントです。君に似合うと思って買ったんだ。」
彼女の胸元で青緑色に輝く宝石はアレキサンドライト。今日のショッピングの合間に買ったものだ。
「シグナス!」
何やら感動していたダフネが抱きついてくる。
「すごいわ!これ高かったでしょう?」
「…アレキサンドライトは、俺の母上が好きだった宝石なんだ。今は夕日に照らされて青緑色だけど、基本は燃えるような赤い色をしているんだ。」
「シグナス…」
「どっちの色もダフネの髪によく映える。」
そのまま耳元に口を近づけ…
「とっても綺麗だよ。」
~お楽しみタイム~
「今日はとっても楽しかったわ。
コレ、大切にするわね。」
「ああ、俺もとても楽しかった。
今度はイースター休暇にまたどこか行こう。」
帰るとき、ダフネは心底嬉しそうな顔で頷いてくれた。
──アレキサンドライト。
その石言葉は、"秘めた思い"
彼女はこの意味に気づいただろうか……
ふぅー。いかがでしたか?
過去最高の10,000文字超え(と436文字)となった第7話。1話あたりの平均文字数が平気で10,000文字を超えてくる作者の皆さまを尊敬します。私には無理や…。
宝石に込められたシグナスの思いとは──。
あ…ありのまま 起こったことを話すよ!
〝私はさっさとパーティーに出して主人公をホグワーツに帰したげようと思っていたら、いつのまにかラブコメになっていた〟
な、何を言っているのかわからねぇと思うが、私もワケがわからねぇ。(困惑)
デートだけでお家に帰ってからの内容の半分を占めているという(トホホ・・
これもプロットしっかり組んでない宿命なのか…
ご意見、感想お待ちしております。
──ここから解説!※今回はネタバレ注意⚠︎
一部に今後の展開が書いてあります。
(2行だけですがね)
❁❀✿✾❁❀✿✾のラインまで進めば回避できます。軽くスクロールすればちょうどいいのではないでしょうか。どうかご了承ください。
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・セドリックとお友達に
設定上シグナスと同学年で原作ではやがてシーカーになるすごい人です。これは絡ませない訳にはいきません。
現在のところ思いっきり彼を救済するプロットになってます(予定)が…大丈夫ですよね?
❁❀✿✾❁❀✿✾❁❀✿✾❁❀✿✾❁❀✿✾❁❀✿✾
お目汚し失礼いたしました。多分ネタバレ要素はもうありません。
・ファンクラブの代表と接触
アルメリア・バーネットさんはオリキャラで今回限りの出演予定です。どうもありがとうございました。
……一応茶髪にハシバミ色の瞳、ボリュームの多い胸元に下は華奢なスタイル(何か矛盾。ボンキュッボンって感じで)という裏設定。ああ、読者の夢が詰まってますね。え!?私の願望?いやーまさか(目そらし)
とりあえずこのファンクラブのサービスはクリスマス休暇まで続けられます。この2ヶ月弱の経験で、シグナスはかなり女の子の扱いが上手になりました。これも微チートってやつですかね?(成長速度的な意味で)
・シグナスの一人称を変更
ハリーもドラコも"僕"ですから、なかなか区別しづらくてですね?ええ。本編において、セリフの大半はシグナスとダフネが占めており、ハリーもドラコも実はあまり発言していません。
ドラコは今回はセリフ2つのみ。
ハリーに至っては出演したけど空気。
まあ脚本もセリフ回しも悲惨な駄作者のせいで出番を奪われているだけですが……。
こういうSSなんだと割り切ればそれでいいんですが、個人的にすっごい違和感なのでこれから挽回していきたいと思います。
シグナスに春が来たようなのでこれを機に変えてしまいました。(汗)
・ブルストロードの視線
彼女もシグナス・ブラックファンクラブの一員のようです。
・パーティーを楽しむシグナス
以前からゴマすりに辟易としていたシグナス。ルシウスは、この年齢からそんな駆け引きをしなくてはならないのかと不憫に思って手を打ちました。
段々マルフォイ家が美化されていますね(悩)
・既に義父、義母呼び
アステリアちゃんの策略?天然?な行動で、本人の預かり知らぬところで外堀が埋められています。
・シグナス、日本へ
日本食によって日本への興味が尽きないシグナス。愛箒のメンテナンスのために飛んでいきます。(来夏)
箒のメンテナンスはご自分でやられているSSさんも多くありますが、
箒には複雑で堅固な守りが施されており、多少ぶつかった程度では壊れず、未成年が扱う呪いくらいじゃ箒に悪さなどできやしない。とハグリッドも証言していましたし、精々綺麗に磨いてピカピカにすることくらいしかできないと考えています。
下手に分解しても魔法組み直さなきゃだし。
・試合に負けると箒を燃やしてしまう日本ナショナルチーム
※公式設定。
なお、木材がもったいないという理由から、この伝統は国際的に批判を受けているようです。
まあ日本は風土的に森林は豊富ですし、そういう発想に至らないと考えるのが妥当ですかね?
・ダフネとデート
シグナス本人も知らぬうちにダフネ成分が足りなかったのだろうか?(推測)
アレキサンドナイトの石言葉、今後の伏線になるのか結局回収されないのか?作者の記憶力と気分次第。
しかし"あくまでも"特別な想いに気づいただけで恋におちているわけではありません。あしからず。
宝石のくだりはひと通り調べてありますが、何か間違いがございましたらご指摘ください。
お楽しみタイム………ご想像にお任せします。