息抜きで書いたイノベイター転生   作:伊つき

17 / 88
戦いは守る為に

遂に来た。

部隊総数52、参加モビルスーツ837機。

ユニオン、AEU…そして、人革連の合同軍事演習。

空にはAEUのイナクト部隊が飛び交っている。

さらにはオーバーフラッグが15機、当然そのパイロットのフラッグファイターが15名。

ユニオンの対ガンダム部隊【オーバーフラッグス隊】。

 

異常だ。

絹江・クロスロードがそう称したように俺も同意する。

絶対に手を結ぶことのなかった三国家群がたった4機のMS(モビルスーツ )と1つの組織のために総力を結集させた。

戦争根絶を掲げた相手に対して寧ろ世界が一丸となって戦力を上げることに。

とんだ、皮肉だな。

斯く言う俺も今は大規模合同演習に参加していた。

勿論命令で、人革連の『頂武』としてだ。

 

『レイ、機体状況はどうですか』

「オールグリーンです。いつでも出撃できます」

『了解しました。これほどの大規模演習…緊張するかもしれませんが、肩の力を抜いて。貴方の最善を尽くしてくださいね』

「はっ!」

 

音声越しにミン中尉に敬礼し、ティエレンを降りる。

既に機体状況は万全でいつでも出撃可能な状態。

俺の機体、元々複座式だったこの機体も俺だけのために改造された。

 

「ティエレン、チーツー…」

「デスペア中尉」

「ソーマか」

 

チーツーの単眼と俺の双眼、見下ろす側と見上げる側で見つめ合っていたところにソーマが訪れた。

まったく、熱烈な視線を交わしているところに来るとは空気が読めないな…なんてな。

ソーマもチーツーを見遣る。

 

「タオツーはどうだ」

「問題ない。あの機体であれば必ずや任務を完遂することが可能だ」

「ソーマは?」

「え?」

 

俺の問いにソーマは呆気に取られたように振り向く。

質問の意図への理解に困惑し、暫く俯いた後、決心したように顔を上げる。

 

「生きて戻る。それも私の任務。そして…貴方との約束だ」

「あぁ。覚えててくれて嬉しいよ」

 

俺やナオヤのせいで何が起こるか分からないからな。

ソーマが生き残るという確証もない。

だからこその保険という建前の切なる願望、もしもの時ソーマには生きて帰還することを優先してもらいたい。

例えそれが任務の失敗を意味するとしてもだ。

中佐は勿論ミン中尉だっている。

ソーマが役割をこなせなくても守ってくれる、庇ってくれる人は沢山いるんだ。

勿論俺もこの命ある限りソーマは守り切ってみせる。

 

俺は覚悟を決めた。

どうせリボンズによって戦場に立つ以外選択肢がないのなら。

成長するための義務ではなく、俺の意思で戦場に立ちたい。

俺は軍に所属している間に出会った仲間達を守るために戦う。

それが素直な願いで我儘な行動理念。

何がしたいのか、戦うのか戦わないのかそんな自問自答は終えた。

心残りがないわけではない。

だが、この守りたいという願いは悩んでいては叶わないんだ。

 

「デスペア中尉も…」

「ん?」

「私は貴方と共に帰りたい」

「……そうだな。俺もソーマと生きたい」

 

ソーマは人間らしさを持ちつつある。

その証に俺や仲間達と生きたいという願いを聞き届けた。

ならばやる事は1つ。

子供の望みを叶えるのは大人の仕事だ。

それぞれの戦う意思が交差する。

戦場へと臨む俺とソーマの手は絡み合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司令部から巡り巡って指示が飛んできた。

ガンダムを鹵獲せよ、と。

定例通り、ガンダムが飛来していると断定できる通信遮断ポイントを発見。

ルート上には濃縮ウラン埋設地域がある。

大規模合同演習ではなく、何の部隊もない場所へと向かったガンダムに確かマネキンが訝しんでいた。

 

だが、まあ例のごとく俺は知ってる。

施設に襲撃しようとしているテロリスト。

モビルスーツ3機、人員輸送車3台を上層部はわざと見逃した。

国家首席の判断でもあり、ガンダムを上手くおびき寄せる。

つまりは網に掛かったガンダムを集中砲火するという若干引くほどの物量作戦。

予め事情を把握していなかった人革連側も戸惑いながら指示に従った。

 

勿論『頂武』も出撃することになり、俺もティエレンが並ぶ中、迷わずチーツーに向かった。

 

「デスペア中尉」

「……?」

 

ワイヤーに捕まろうとしたところで声を掛けられ、振り返る。

そこにはスミルノフ中佐を初めとした『頂武』の仲間達が並んでいる。

 

「皆…?」

「デスペア中尉。この作戦、我々は必ず完遂させなくてはならない」

「は、はい。存じております…。これほどの大規模な戦力は今後ないでしょう」

「分かってるのならば生きて帰ることも視野に入れろ」

「……っ!」

 

息を呑む。

別に図星を突かれたわけじゃない。

死ぬ気はないし、そもそも死ぬのは怖いし嫌だ。

ただ俺の我儘を叶えるためには多少の無茶は必要だ。

例えばガンダム1機を破壊とか。

 

破壊とまではいかなくても暫くは1機だけ行動を取れなくしてもいい。

それくらいの保険が必要だと俺は転生者のせいで多少変わってしまった今の世界に感じている。

だが、ガンダムを倒すにはイノベイターとチーツーの能力だけでは劣る。

だからといって仲間を巻き込むのは本末転倒だ。

ならばやる事は簡単、死を覚悟で俺が特攻するしかない。

 

自分を省みず最悪四肢を奪われてでも実行する。

そうだな、いつかのヴァーチェみたいに加速砲の弾丸で装甲を貫けばいい結果が出るかもしれない。

勿論ヴァーチェ相手じゃ火力が足りないからダメだ。

だが、他のガンダムならそれで暫く使い物にならなくできる。

パイロットとGNドライヴさえ安全なら他は後からどうにでもなるから大丈夫だ。

唯一大丈夫で済まないのは俺の身体。

だから、覚悟を引き締めていたんだが恐らくそれを中佐に看破されてしまったようだ。

 

「中尉…」

「ソーマ…」

 

ソーマが前に出て俺を見つめる。

どうやら裏切られたとでも感じてるようだ。

確かに俺が死ぬ気なら先程交わした約束を破ることになる。

それは裏切りだ。

しかし、俺にその気はない。

 

「俺は死にません、中佐。生きて帰ると約束したんです」

 

笑みを作って宣言する。

約束を口にする。

これで俺に逃げ道はない。死ぬことは許されない。

 

「……っ」

「ふむ」

 

俺の言葉にソーマの表情から曇りが消え、スミルノフ中佐が満足そうに頷く。

ミン中尉や他のみんなも俺に会釈を送った。

そう、彼らを守るために戦う。

仲間が大事だからそんな思いを抱く。

そんな彼らを悲しませるようなことをする意味が無い。

不安要素が無くなった『頂武』はティエレンへと向かう。

 

「総員、出撃っ!命を無駄にするなよ!」

『了解…!!』

 

中佐の命令に全員が応答し、ティエレンが全て稼働した。

戦場に特殊部隊『頂武』のティエレン達が出現した。

 

濃縮ウラン埋設施設を襲撃したテロリスト、MS(モビルスーツ)3機と輸送車3台は飛行形態のガンダムキュリオスがデュナメスを背に乗せて出現、テロリストを瞬殺した。

高速移動、離脱とデュナメスの狙撃能力。

三つを掛け合わせて一撃離脱戦できるようになっているという凄まじい連携だ。

やはりサブ・フライト・システム的な役割をこなせるのはでかい。

 

だが、今回はそれが裏目にで出て、テロリストに気を取られていたアレルヤは突如飛んできたミサイルに対応できず。

アレルヤに回避を任せきっていたロックオン、デュナメスもが餌食となった。

その後に連鎖的に急襲する大量のMS(モビルスーツ)

 

キュリオスがミサイルを放つも撃ち逃した結果、銃撃を浴びてキュリオス、リアルドの自爆攻撃によりデュナメスが地上に落下。

墜ちたガンダム2機にティエレン 長距離射撃型の集中砲火が行われ、キュリオスとデュナメスはTF4122ポイントに釘付けにされた。

ちなみにユニオンと人革連の連携、三国家群が協力していると実感する場面で密かに感慨深いと感じていた。

 

まあそんなどうでもいいことは置いといて、スメラギの言うプランB2とやら、エクシアとヴァーチェが手薄なTF2123ポイントに出現。

その報告を聞いたマネキンがMS部隊を派遣、ヴァーチェがGNバズーカでキュリオスやデュナメス付近のMSを一掃するとキュリオスとデュナメスが離脱。

だが、すぐにエクシアとヴァーチェの元に大量のミサイル攻撃が開始され、到着したMS部隊の集中砲火により今度はエクシアとヴァーチェが釘付けになった。

 

計画的で圧倒的な物量での大規模作戦。

全てが順調に、こちらの思う通りに進んでいる。

やはりマネキンは優秀な指揮官だ。

鉄の女もといマネキンとロシアの荒熊もといスミルノフ中佐、二人が肩を並べて指揮を取るとここまで恐ろしい。

 

さて、ここまで戦況が進めば『頂武』の出番も近い。

俺もティエレン チーツーで重い1歩を踏み込みながら指示された現場へと向かっている。

1歩ってのは例えだ、のそのそと歩いて向かってるわけじゃないからな。

スラスターあるし普通に加速している。

と、そんな冗談を言ってる間に辿り着いた。

 

『先行します』

 

ソーマの通信、タオツーが前に出る。

そして、そのまま飛び降り、キュリオスへ一直線に突撃した。

 

『あぁ…、……っ!』

『……』

 

脚部のスラスターを噴射し、キュリオスに有無を言わせず連れていくタオツー。

ソーマの無言の突撃でキュリオスは連れていかれてしまった。

これについてはソーマに任せる。

俺の仕事は別だ。

 

『ミン中尉を筆頭にピーリス少尉の援護に回れ。部隊を半数に分け、私と共に来る者でデスペア中尉の援護に回る。いいな!』

『了解…!』

 

中佐の命令に応答し、俺はチーツーでソーマとは別の場所に跳ぶ。

眼下に見えるのは随分と身持ちの硬いデュナメスだ。

連れていかれたキュリオスの元へ向かおうとしている所に上から衝突し、チーツーが立ち塞がる。

 

『ぐあっ…!?』

『お前の相手は俺だ、ガンダム!』

『思う壷かよ…!』

 

GNビームピストルを取り出し、銃口を向けてくるが発砲された粒子弾を回避。

近接に持ち込まれた時のロックオンの動きは分かりやすい。

そして、近接は俺の範疇だ。

 

『避けた!?』

『蹂躙する…!』

『ぐあああああああっ!?』

 

中佐達のティエレン 高機動B型による援護射撃とミサイルによってデュナメスはGNフルシールドを前方へと展開、それでも衝撃とダメージは受ける。

守りに入ったところで俺のチーツーが再び接近した。

 

『はあっ!』

『ぐっ…!』

 

まあまずは突進、ティエレンは頑丈だからこそそれも取得だ。

デュナメスを壁に押し付けて、500mm多段階加速砲を突きつける。

もちろん装甲に零距離で。

 

『お、おいまさか…』

『砕けろ…っ!!』

 

500mm多段階加速砲の引き金を引く――直前、レーダーに反応があった。

 

『くっ…、これは…っ!?』

『粒子ビーム!?』

 

突如チーツーとデュナメスの()()()に入ってきた赤い粒子ビーム。

間違いない、いつかキュリオスを狙撃したものと同じだ。

あの時は俺達を助けてくれたが…。

 

『今度は邪魔するのか…っ!』

 

咄嗟に後退する。

クソ、加速砲が破損して使い物にならなくなった…。

ていうか加速砲を狙ったのか?まさかな。

だが、あまりにピンポイント過ぎるというか…まるで加速砲だけは破壊し、チーツー自身は回避できるように考慮されたような狙撃に感じられる。

なんでか根拠はハッキリとは説明できない。

明確に言葉にするならそう感じる、という曖昧なものか。

 

と、そんなことを考えているうちにデュナメスが態勢を少し立て直し、俺にGNビームピストルを向けている。

まずい、これ回避できないぞ!

 

『撃つぜ――ぐああああっ!?』

『一旦離れろ、中尉!』

『中佐…!』

 

デュナメスを再び襲ったティエレン 高機動B型で形成された部隊の総射撃によりデュナメスはGNフルシールドに身を隠す。

後から来たティエレン 長距離射撃型の後方支援もあり、デュナメスは完全に防御態勢に入った。

仕方ない、一度離れるか。

チーツーのスラスターを噴射し、上へと上昇する。

 

『デスペア中尉、我々も羽付きの元へ向かうぞ』

『……っ、しかし…!』

『これは命令だ。貴官に与えた時間は終わりだ、ここからは指示通りに動いてもらうと事前に打ち合わせた筈だが?』

『そ、それは…』

 

戻ってきた俺に命令する中佐。

確かに中佐は俺の我儘を聞いてくれた。

予定になかったデュナメスの相手、ほんの少しでもいいから時間を俺にくれた。

貴重な作戦時間の一部を使っても俺はデュナメスを破壊できなかった。

これは俺のミスだ、反論するのは筋違いとなる。

 

『中尉、行くぞ』

『……了解』

 

ただでさえ我儘を聞いてくれたのにこれ以上時間を無駄にはできない。

仕方なく、頷いた。

技量が及ばなかったことくらい認めるさ。

なに、キュリオスに標的を変えればいいだけのこと。

それに他にもやらなければならないことがある。

 

「敵さんが退いた…?ぐあっ!」

 

首を傾げるロックオンだが、すぐに長距離射撃によりまたしても固定される。

 

俺はチーツーで中佐達と共にタオツーの部隊の後を追った。

といっても辿り着いた時にはキュリオスは弾圧の海の中。

タオツーも一旦退いたのか、高機動B型に乗った皆と共にキュリオスに射撃を繰り返していた。

 

暫くキュリオスを釘付けにした後、作戦通り部隊ごと後退。

後はティエレン 長距離射撃型の部隊の総狙撃や数十機近い機体の弾圧を浴びることになるだろう。

元々作戦はガンダムを固定し、そこを集中砲火することでパイロットを疲弊させることだ。

流石にガンダムの装甲を舐めてはいないので砲火だけで潰せるとは思っていないらしい。

圧倒的な物量があってこそだが、よく出来た作戦だ。

 

『デスペア中尉。無事だったか』

『ソーマこそな』

 

合流し、再会を果たした俺とソーマはチーツーとタオツーで手を取り合う。

その後も降り注ぐ弾圧の雨。

作戦通り、規定時間が来るまでチーツーに乗りながら待機した。

だがまあチーツーの中はそんな快適じゃないからな、一応非常食を持ってきたけど戦場が揺れる度機体も揺れる揺れる。

ゼリー落とした時は大事なとこには落としてないか軽く慌てた。

ゼリーはほぼ水分だから人革連の発達してない機械(システム)に干渉すると危ない。

幸い、何ともなかったが。

 

そんなどうでもいいことで焦るくらいには待ち時間は長い。

予定では夜になるまで続くらしい。

最初の交戦から15時間程か。

これほど(こっち)側で良かったと思ったことは無いな。

例えガンダムの装甲があるとしても15時間も耐え続けるのはきついしな。

ティエリアも苦しんでるし、俺もしんどいだろう。

 

『ところでソーマ、大丈夫か?』

『……問題ない』

 

さり気なく待ち時間でソーマに尋ねる。

深く聞かなくとも伝わったようで、ソーマは空けた後応答した。

超人機関壊滅後、少し経ってからソーマも報告を受けた。

仲間(同類)の死に衝撃受けつつキュリオスの操縦者アレルヤへの疑問。

アレルヤも超人機関の出身者である可能性もソーマは聞いていた。

 

何故同胞を撃つのか、疑問に渦巻かれていた筈だ。

そんな悩むソーマに俺はできるだけ寄り添った。

超兵という非常識な存在であれどもソーマはまだ子供、死を受け止めるには辛い年頃だ。

助けになるかは分からないが慰める役割は俺が引き受けた。

『頂武』のそれなりに若者の層も支持してくれたし正しいと信じてる。

ソーマの返答に俺は少しだけ微笑んだ。

 

『彼らの分まで生きよう、ソーマ』

『あぁ…。今度こそ作戦を完遂させ、生きて帰る…デスペア中尉と』

『そうだな』

 

言葉を交わし合い、頷く。

ソーマとの約束を果たす為にも次に来る脅威に立ち向かわなければいけない。

俺は勝ってみせる、スローネに。

決意した俺の戦う意味、仲間を守る為にも。




修正 833機→837機(2018/02/08 07:26)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。