息抜きで書いたイノベイター転生   作:伊つき

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やっと1話分書けた…。


塩基配列パターン0000の秘密

デスペア。

……俺と同じセカンドネームだ。

 

「デスペア……!?」

「もし良ければお兄さんのお名前も教えて欲しいな」

「えっ?あっ、お、俺は……」

 

同タイプのイノベイド、俺はマイスタータイプで彼女は俺と同じセカンドネーム。マイスタータイプの線が濃くなった。

ガンダムを操り、スローネと渡り合い、俺を助けるくらいの腕前があるなら情報タイプの可能性はかなり低い。

情報タイプだってアニューの例があるようにヴェーダを使って戦闘データを取り込んで操縦できるだろうけど、俺を助ける為だけにガンダムに乗るなんて現実的じゃない。

 

そもそも独自で作ったってのはどういうことだ。

ソレスタルビーイングを影で支える組織フェレシュテでは第二世代ガンダムの改良型とGNドライヴを1基扱っているが、第二世代ガンダムを作ったにしては若過ぎるし、『個人』で作ったと言い張るのだから組織には属してなかったんだろう。

 

ならもはや確定事項だ。

マイスタータイプでリボンズと知り合っていないイノベイド。なら生まれた時からマイスタータイプであると自覚しているなら予め埋め込まれた知識としてリボンズのことは知っている筈だ。

だが、そこは知っていなくても改変が関わったらどうとでもなる。多少辻褄が合わなくても強制力のようなものが働くことも有り得なくはない。現に俺はこの子を知らない。ならどんなイレギュラーでもおかしくはないだろう。

これはリボンズも知らないイノベイドである可能性も高くなってきたな……。

 

「お兄さん?」

「えっ……」

「自己紹介……してくれないの?」

 

あ、忘れてた。すっかり考え込んで無視していた。

えっと、レナだっけか。

俺の名前と一文字違い……どう考えても反応に困るよな。名乗りづらいなぁ。

 

「レ、レイ・デスペアだ」

「レイ……デスペア……」

 

俺の名前を反復するレナ。やはり驚いているのか目を見開いている。

暫く俺の名前を繰り返し呟き、顔を上げた。見つめ合う虹色の瞳。

 

「同じセカンドネーム……。実はね。ずっと貴方から何か繋がりのようなものを感じてたの。だから、あの時私は助けたんだ」

「あの時……?」

 

一瞬何のことかと思ったが。思い当たることが一つ。

仲間を除いて俺が救われたのはガンダム鹵獲作戦時のキュリオスを撃退したあの粒子ビームだけだ。

そうか、あれは――。

 

「キュリオスに殺されかけた時、あの時……俺を助けてくれたのは君か」

「うん……ハロちゃんが『共鳴』してるって言ってた……」

「ハロ?」

 

ハロまで居るのか!?

噂をすればなんとやら、黒いハロが入室してきた。

 

『レナトドウタイプ。レナトドウタイプ』

「この子がハロちゃんだよ」

「見た事のないハロだ……」

 

はたまた覚えのない存在。どう考えても改変だな。

粒子ビームは赤色だった。つまりレナが所持するのは擬似太陽炉を詰んだガンダム。

スローネと同じだが、スローネはコーナー家が作った機体で、個人で作ったレナはコーナー家との繋がりはないと思われる。

 

「同じ名前で同タイプ……運命を感じないではないがどうしても尋ねたいことがある」

「……うん。大体何が聞きたいか分かったよ」

「すまない。レナ、お前は一体何者なんだ?」

 

尋ねずにはいられない。

自身の立場を明確に証明できない相手を信頼することは難しい。

 

「ごめんね、それには答えられない」

「……」

 

レナが悲しそうに俯く。

 

「別に隠したいわけじゃないんだけど……。ただ説明が難しいっていうか……」

「そうか」

 

気持ちは分かる。同タイプだからというのもあるが、俺も何者かと尋ねられると答えづらい。

そう、レナのはそんな息詰まりだ。

 

「なぁ。ちょっと変なこと聞いてもいいか?」

「……?いいよ」

「もしかして……別の世界から来た、経験とかないか……?」

「……っ。お兄さん、どうしてそれを……」

 

やっぱり。説明しづらい自己証明。それだけなら可能性は多々あるが、脳量子波の共鳴、感情から導き出せば自ずと辿り着いた。

恐らく俺と同じ存在(転生者)でこの世界の人々には伝わりづらい者。同じ目線だからこそ分かった。

 

「……やっぱりお兄さんもそうなんだ」

「どういうことだ?」

 

もっと動揺するかと思ったらレナは納得するように俯き始めた。

レナは俺の疑問を感じ取ったのか、飛び跳ねていた黒いハロを捕まえて卓の上に置く。何やらハロにコードを繋ぎ始めた。

ということは俺になにか見せたい情報があるのか。ハロは情報端末だからな。

 

「これ、見て」

「ん?なんだこれ……『塩基配列パターン0000について』……?」

「うん。ここに私達のことが乗ってるの」

 

ほう。ハロと接続した端末の画面に映る文字の羅列。そこには塩基配列パターン0000とやらの説明が記されていた。

塩基配列パターン0000……確か俺の塩基配列パターンだよな。生まれた時にチラッと見た記憶がある。俺の、ということはレナのものでもある。

ご丁寧に説明があるとは……随分と特別な扱いじゃないか。読んでみるとしよう。

 

「えーと、なになに?『塩基配列パターン0000は、異界から来たる者の為に用意されたイノベイボディ。彼らの自我を収納する器であり、これを用いて現界を可能にする』、か……」

「どういう意味か分かる?」

「あぁ……塩基配列パターン0000のイノベイドは全て、転生者……ってことだよな」

「その様子じゃ信じられないかな」

「………」

 

当たり前だ。聴いたことがない。イノベイターに詳しい訳じゃないがこんなものはなかったと断定できる。まるで、いや、明らかに転生者のためだけにある存在。

本当にイオリアが作ったのか…?何の為に。分からない。イオリアの考えが全く理解できない。

 

疑問といえばもう一つ。このデータ、どっから持ってきたのだろうか。

イノベイドの情報……どう考えても『ヴェーダ』に記載されてるよな、通常は。ならレナは盗んだのか。

 

「むっ、失礼な……。私は盗んでないよ」

 

思考読むなっての。まあ盗んだって表現もおかしいな。ある程度の権限を与えられているイノベイドならヴェーダの情報を扱うことは自由だ。

自覚のない情報タイプなんかは計画に沿って、ヴェーダから情報を受信する一方だが、まあなににせよ盗んだってのは言い方が悪かったな。

そもそも盗んでないって話ではあるけど。

 

「悪い悪い。じゃあ、どうやって手に入れたんだ?」

「ハロちゃんに入ってたの。私がこの世界に来た……十年前かな。目が覚めた時からハロちゃんとはずっと一緒なんだ」

『イママデイッショ!イママデイッショ!』

「へぇ……」

 

そうなのか。それにしても十年前とは。随分前からこの世界にいるんだな。

ナオヤは俺と同時期に生まれたとリボンズは言っていた。つまりまだ一年も経っていない。

そういえばナオヤは転生者だから塩基配列パターン0000のイノベイドってことになるのか?説明によると転生者の器としてこのイノベイボディが用意された。つまりはこの肉体にしか転生者の行先はないということだ。

 

「お兄さん、何を悩んでるの?うーん……ナオヤ、って人……誰……?」

 

だから思考読むなって。

まあいいや。

 

「俺が最初に出会った転生者のイノベイドだ」

「じゃあ私達と同じ……。他にも居たんだね」

「まあな……。ただ、あいつの髪色は金髪なんだ。同タイプなら基本同じ髪色の筈なんだが……」

 

そういえばリボンズのやつ、俺とナオヤは別タイプとか言ってたな。

……もしかして嘘か?今の情報量じゃどっちを信じていいのか分からんな。

 

「うーん……私はその人に会ったことないから判断できないかなぁ……。良ければ話を聞かせて欲しいな」

「いいぞ。だがあんまりいい奴じゃないというか…てゆーかそれでもいいか?」

「聞かないことには結論に辿り着けないよ」

「それもそうだな」

 

承諾してナオヤについてレナに話すことにした。とりあえずリボンズの話と食い違うところとかは放置しよう。

まだ出会ったばかりだけどレナの持つ情報量は多そうだ。話を聞き出してから考えても遅くはない。

それにしても何処から話すか…。何処から話しても酷い話しかないのはどうなんだあいつ。

 

「うーん……」

「聞きたいのはその人の人柄とかじゃなくて特徴かな。何か私達と同じ点か違う点はない?」

「おっ、それなら……」

 

レナが答えやすく条件を提示してくれた。気が利くな。

そうだな、あいつが何者なのか。それについてはナオヤの性格や言動に触れる必要はあまりない。

まあ転生先の世界で浮かれてるっていうのと諸々があれば充分だろう。

 

「まずはあれだな。あいつがどういう境遇なのかは知らんが危機感がない気がする。まあ俺の知る転生者ってああいうのが多いけどな」

「うーん……それに関しては人間性だね。もっと能力的な私達との違いはない?」

「そうだな……。あいつはマイスタータイプだが俺と同じくMS(モビルスーツ)の操縦技術が特に高いってことはなかったな……」

「度合いは?」

「ん?まあ正直言って俺よりかは格段に弱いな。軍の階級で大尉まで登りつめたとか言っていたが本当なのやら分からんくらいだ。決闘の時もズルしてただけだしな……」

「あー、あれは確かに酷かったね……。あれって相手はナオヤさんだったんだね」

「え……?決闘のこと知ってるのか?」

 

こいつは驚いた。まさか見てたのか?

確か俺との共鳴に反応して俺の近くに何度か来ているのは聞いたな。ガンダム鹵獲作戦時とか合同軍事演習の時も今考えれば粒子ビームの正体はレナだろう。

だが、決闘の時に粒子ビームの介入はなかった。どこにいたんだ。

 

「見てたのか?」

「うん。ちょっとね」

「そうだったのか……」

 

介入せず観察してたのかもな。俺の脳量子波に反応して近くにまで来てたならナオヤの脳量子波にだって気づけただろうに、と思うわなくもないが……あの時のことについてはあまり思い出したくもないのでいっか。

動かなかったイナクトが突然動いたのも疑問だったが、まあ結果的に勝てたしそれももう考えなくていいだろう。

 

「話を戻すけどお兄さんより能力値は低いんだよね?」

「あぁ、リボンズ――知り合いのイノベイドは俺達はまだまだ完熟じゃないって言ってたけどな」

「それはどうかな」

 

ん?レナがリボンズの言葉を否定した。

なにか知ってるのか?

 

「このデータの続きを見たら分かるけど、私達は通常のイノベイドとは違うの。マイスタータイプなら能力は通常より落ちる……みたいに」

「そうなのか!?」

 

マジかよ……!じゃあ俺がこれまで自分の弱さに苦悩していたのは俺の遺伝子のせいかよ!

おのれ、塩基配列パターン0000。許さん。

 

「……とにかく詳しく聞かせてくれ」

「うん。データによると私達転生者はイノベイドの肉体を利用できる代わりに能力値は半分しか利用できないんだよ。だから私はマイスタータイプでも近接戦闘は苦手なんだ」

「詳しい原理はこれを読めば分かるか?」

「そうだね」

 

レナも頷き、俺に端末画面を向けた。俺はレナから端末ごと借りて読みたい事項を見つける。

どうやらこの塩基配列パターン0000にも欠点があるらしく、異界から人格をイノベイドの肉体に寄越せる代わりに本当にイノベイドの能力そのものは半分死んでしまうらしい。つまりはマイスタータイプならMS操縦技術やらを得られるがそれは完全ではなく穴があるとのこと。

半分を得られ、残り半分は転生前の肉体から引き継がれると記されている。つまり前世に左右されるということか。

 

そうか、そういうことだったのか。俺の射撃性能。あれはイノベイドの能力が反映されていなかったんだ!だから、前世の、一般人の俺としての腕だけが反映され、素人が引き金を引いている状態だったと。

なんだ……そういうことだったのか……。くそ、あのリヴァイヴの冷たい目線やこれまで落胆されてきたことについてこれで弁解したい!

とにかく俺は悪くなかった。普通だった。俺はノーマル、やったぜ。

全く……イオリアはこんなものを作るならもっと完全に作って欲しいな。

 

「……っぁ」

「お兄さん、なんで泣いてるの?」

「はは……長年の悩みが解決したんだ……」

「そ、そっか……良かったね……」

 

レナが引いてるが知るか。

俺の射撃は決して俺が劣ってるわけではなかった。とても報われた気分だ。

まあそれはそれとして、話は終わってない。

 

「で、何の話だっけか。俺がポンコツではない、って話だっけか」

「なにそれ何の話?違うよ、ナオヤさんって人の話。まあ全面的には塩基配列パターン0000の話かな」

「あぁ……そういえばそんな奴いたな。で?他に何が聞きたい」

「その人って総合的にお兄さんより劣ってたの?」

「まあ射撃以外は……」

「射撃は得意だった?」

「いや?そんなこともなかったと思うぞ」

「え……?」

 

俺の話を聞いてレナが首を傾げる。なにかおかしなこと言ったかな。

予測するに塩基配列パターン0000の詳細と食い違ってるのか。確かに半分は能力が反映される筈だが改めて俺が思い返してもナオヤには半分すら身についてないような気もする。

なんだあいつ、バグったのか?ざまぁみろ。

 

「おかしいな……。そんな筈は……」

「髪色も違うし、特にイノベイドとして目立った部分もなし。よく分からんなあいつは」

「う、うん……。それに名前も日本人っぽいのが気になるね……」

「ん?そういえばそうだな」

 

確かに日本人っぽい名前だとは思ってたけど気にしてなかったな。『ヴェーダ』からコピーか分離かしたかと思われるデータの中から対象の名前について調べる。名付け親は『ヴェーダ』か。

他のイノベイドと差異があまり生まれないような名称を……って書いてあるが金色の地毛に金色の肉眼、どう考えてもハーフでも日本人でもないアイツの容姿にナオヤじゃどう考えても目立つだろ。

 

「お兄さん、ナオヤさんのフルネームは分かる?」

「ん?えっと……確かヒンダレスだったかな……」

「ヒンダレス……」

 

リボンズが口にしてた筈だ。正直あまり覚えてないから合ってるか不安だが多分大丈夫。

それにしてもなんであいつのことをこんなに話し合なきゃいけないんだ。あまり好きじゃないからな。終始不快だ。

 

「ヒンダレス……『邪魔』……?」

「ははは、邪魔って会ったこともないのにそれは酷いだろ。まあ邪魔だが」

「いや……そうじゃなくて……」

 

まあ基本邪魔だよな、あいつ。いつか何かやらかしそうな気がする。

今のところ世界的には無害だが俺的には有害だ。決闘の時のことや合同軍事演習の時も始まる前に突っかかってきて邪魔だった。

考えてるとイライラしてくるな。よし、あいつの話はもう止めよう。

 

「そうだ。まだレナの話を聞けてなかったな」

「え?」

「ほら、助けて貰ってから難しい話ばっかでさ。自己紹介はしたけどそれから色々分かったし」

 

とにかく話を変えたくて振ったが、そうだ。あんな奴の話よりしなくてはいけない話があるだろ。同じセカンドネームなんだ。そこを気にしないでどうする。

目が覚めた時の懐かしい気持ちといい上手くて覚えのある珈琲の味といい何か深い繋がりを感じるんだよなぁ。お互い転生者なのは分かったんだ。もしかしたら前世で知り合いだったのかもしれない。

だから同じセカンドネームになったのかもな。

 

「もし嫌じゃなければ前世の話とか聞かせてくれよ。まあファンタジー世界とかに転生した訳じゃないから前の世界が恋しいって訳じゃなけどさ。同じ境遇に会ったんだ。話くらい聞きたいだろ?」

「う、うん……。そう、かも……?」

 

おっと。ちょっと興奮しちゃったか。こういうとこオタク特有だよな。

結局根っこは転生者のオタクだったってわけだ。

レナをこれ以上引かせるわけにもいかないので一度咳払いして落ち着く。

 

「まずは俺から話そうか?」

「ううん……同じ境遇でホッとしてるのは私も同じだし、こうやって出会えて嬉しいよ。私もちゃんと話すね」

「おう」

 

若干楽しみだ。

もしかしたら知り合いかもしれないからな。

 

「私の前世の名前は(たちばな) 深雪(みゆき)。普通の高校生だったんだけど実は事情があって死んじゃって――」

「………………………………え?」

 

一瞬、世界が止まった。

衝撃が走り、思考が停止する。

 

「……お兄さん?」

「え、あ、え……嘘、だろ……?」

「どうしたの?お兄さん?」

 

動揺する俺を前にレナはただ困惑する。

視界の全てが彼女で埋まり、瞳はただ彼女だけを捉える。

 

「み、深雪……?」

「え?」

 

レナも瞳を色彩に輝け、強くなった共鳴を感じている。

そして、俺の思考を的確に読み取った。

 

「もしかして……深也(しんや)お兄、ちゃん……?」

「深雪……」

 

レナが驚愕した表情で俺を見る。出会ってから一番感情を露わにしている。

俺は目を見開く彼女の顔が前世で俺より先に死んでしまった実の妹と重なる。レナ、いや深雪は硬直し、信じられないものを見るような目で俺を捉えていた。

 

そして、この夢にも思わなかった再会が俺をまた戦場へと導いていく。

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