ネルシェンの紹介を活動報告に投稿しました。
2ndに移ればわかる内容でもあるので気が向いたら目を通してください。
地下施設こと本拠に帰ってきてまずはガンダム各機を格納庫に収容。
スローネ3機が追加されたことで格納庫も随分とゆとりがなくなり、同時に整備する機体が増えたことでデルの表情から死相が窺えた。
哀れなり、知識がないので手伝えん。
悪いな。
連れてきたトリニティは、メディカルルームに直行させたヨハンを除き、ミハエルとネーナは格納庫で大量のガンダムを見て壮観といった感想を叫び合っている。
具体的にはやべぇ!とかなんで黒ばっかなの?地味でださぁーい!など。
後者は深雪が鬼の形相になったのでヨハンを看てやれとメディカルルームに放り込んでおいた。
危ない、折角増えたマイスターが射殺されるところだった。
まあ流石にないだろうけど。
どうでもいいけど深雪は黒に謎の拘りがあるよな。
うちにある機体は全部黒の塗装が施されてるし。
以前理由を聞いたところかっこいいからとしか答えなかったが、前世で特に黒が好きと聞いた覚えもない気がする。
寧ろ俺の知ってる深雪ならEカーボンの原色でいいとかいいそうなんだよなぁ。
あいつ前世じゃガンダム、というかロボ系にあまり興味無さそうだったしな。
と、まあミハエルとネーナに俺という監視付きの自由行動をさせつつ、待っていたら目的の男が目を覚ました。
当然ヨハン・トリニティだ。
メディカルルームにミハエルとネーナを連れて訪れると何故かヨハンにおかゆを食べさせてる深雪と鉢合わせた。
何してんの?
「どういう状況なんだ、これ」
「いや、その…ヨハンさんお腹空いてたみたいだから、つい…」
「ヨハンもヨハンで素直に食ってんなよ…」
「……貴方が、我々を助けてくれた…」
まだ病み上がりなのか顔色は宜しくないヨハン。
多分深雪が事前に紹介したんだろう。
ただ随分と虚ろな目で見られてる。
……大体何が原因かはわかるが。
それよりも深雪がヨハンに飯を与えてる構図が餌付けにしか見えないのは何故か。
「餌付けじゃないし。レナって呼んでよ、お兄ちゃん」
「悪かったな。あと思考読むな」
いつものやり取りを交わすが脳量子波云々を知らないトリニティ兄妹共は首を傾げてる。
知る必要は無い。
とりあえず本題に入ろう。
「ヨハン。俺はレイ・デスペアだ、よろしく」
「……はい。話は、彼女から聞いています」
「そうか。なら話が早い。結論から言うぞ、お前ら俺達の仲間になれ」
ほんとに尻から話した。
突然の誘いにヨハンは目を丸くする。
最初は驚いただけのようだったが、暫くすると表情が曇った。
「貴方方の事情は、把握してまいます…。しかし、私達は、私は…」
「ガンダムマイスターじゃない。それどころか人間ですらない、と?」
「……っ!!」
「なっ!?」
「えっ?」
俺の言葉にヨハンは図星を突かれたように目を見開き、ミハエルとネーナは虚をつかれた。
デザインベイビーどうこうじゃない。
ヨハン達は『生』としては見られなかった、というだけの話だ。
それを理解したのはヨハンのみ。
「ちょっと待てよ!ふざけんじゃねえっ!!なんで突然そこまで言われなきゃいけねえんだよ!」
「そうよ!確かに生まれはちょっとあれだけど…。私達だって人間なんだから!それも特別な――」
「うるさい、黙れ。そんなことはどうでもいい!」
今の最優先はヨハンだ。
外野は黙らせる。
俺は目線でヨハンを促した。
「……私達は、マイスターになる為のみに生み出され……その為に…生きて…。ただの、捨て駒…計画をより高い段階へと進ませるための、道具でしか…なかった…」
「そうだ。しかも光栄なことにイオリアに反発する裏切り者の計画だ。最高だな、そこまで徹底的に絶望的だと拍手喝采だぜ」
「お兄ちゃん」
「分かってる。苛めるのはここまでだ。本題に戻る」
ヨハンが現実に追い詰められ、暗い顔を上げる。
ま、今までの人生全てが他人のためで、その上要らないなら捨てられるほどどうでもいい存在なんて知ったらショックだよな。
まさに生きる価値がない。
そして、そこで絶望に明け暮れ、朽ち果てるのは楽だ。
だが、それじゃあ俺達が困る。
俺達の理想のために利用させてもらいたいのだ。
勿論俺達も利用される、何処ぞのなんたらコーナーとは違う。
あくまでウィン・ウィンの関係が欲しい。
その為にもまずは――。
「ヨハン・トリニティ。お前は、お前達は用が済めば捨てられる、その場限りで生み出されたのかもしれない」
「……」
「だが、生まれてしまえばお前にもある権利が与えられる」
「なにを…」
一拍置いて口を開く。
「戦う権利だ」
僅かにヨハンの目に光が宿った。
「どれだけ支配されてようとも、人為的に生み出されようとも。戦うことはできる。抗う権利は生きる人間全てに与えられている。人の歴史は時代の統率者に対し、変革を起こして変わってきたのが何より証拠だ」
時代は移りゆくもの。
時代が変わる度に前の統率者が退き、新たな統率者が現れる。
織田信長を討った明智光秀だって、それを討った豊臣秀吉だって、江戸時代を作り出したのは徳川家康。
誰にでも抗い、時代を作る権利がある。
全てを破壊して新たに作るのだ。
だからこそ刹那は破壊し、再生し、新たな時代を望んだ。
全てを支配する世界を壊すことが出来ると知っているから。
壊すことで再生するのだと知っているから。
それで新たな世界が誕生するのだと先人達は証明しているのだから。
そして、それはヨハン達も変わらない。
確かに支配されていたかもしれない。
捨て駒かもしれない。
でも抗っていい。
戦うことはできる。
自由を勝ち取ると願うことは罪ではない。
「ヨハン、武器を取れ。戦うんだ」
「私に…運命に、抗えと…言うのか」
「そうだ。立ち上がれ。自由が欲しいと吠えろ。自分達は人間なのだと訴えろ。……そして、兄だというなら
「……っ!」
ヨハンがミハエルとネーナを見遣る。
ミハエルは我慢出来なさそうにしていたが、2人とも俺とヨハンの話に横槍は入れなかった。
それどころか、他人事じゃない寧ろ自分たちのことに反応を見せていた。
ヨハンと目が合うとミハエルは気まずそうに、ネーナは暗い表情で目を伏せた。
心做しかネーナは
――生け贄なんだとよ!
サーシェスの言葉。
目的のためだけに生み出され、用が済めば見せしめのために死ぬ。
そんな運命をヨハンだけでなく、こいつらも理解しているはずだ。
特にネーナは俺達が来なければどうなっていたか簡単に想像がつくだろう。
ミハエルは救われず、ヨハンはサーシェスに殺され、ただ本当に簡単に捨てれる。
ラグナですら駒に過ぎなかった。
ならそれより下のネーナ達は――。
と、そんなところだろう。
本当に道具でしかなかった。
しかし、俺の言葉にヨハンの瞳に光が戻る。
戦う意志が、灯火が再び揺らめく。
自由を掴み取るために。
そして、大切な
「私は新たな使命を得た。ガンダムマイスターとしてではなく、私個人として戦おう」
「やっとその気になったか。なら俺達と組め」
断らせなどしない。
「俺達は理想を叶えるために戦っている。イオリアためではなく、自分達のためにイオリアのガンダムを使う」
「イオリアのガンダム、を…っ」
「今更躊躇うな。ガンダムは戦争を根絶するためにある。俺達の願いは、必ずそこを通る」
俺とレナの理想は出来る限り多くの命を奪わずにこの世界を変えることだ。
当然、戦争なんてもんは論外。
必ず戦争は根絶する。
ヨハンは自由を得たい。ミハエルとネーナにも自由を与えたい。
捨て駒としての運命を捨て去りたい。
その為にはアレハンドロやリボンズの手が迫るこの世界を変えなくてはいけない。
その代表例である国連軍なんてもんは早急に排除すべきだ。
つまりは戦争を根絶することになる。
結局イオリアの計画と利害が一致する。
ならばガンダムを使っても問題は無い。
それにイオリアはトランザムシステム解放時に言っていた。
――『君達が真の平和を勝ち取る為、戦争根絶の為に戦い続ける事を祈る。ソレスタルビーイングの為ではなく、君達の意思で、ガンダムと共に……』
個人の意志でも、戦争根絶を目指すのならばガンダムを用いてもいいはずだ。
もうイオリアに縛られる必要は無い。
トレミーチームもラグランジュ1の戦いを経て、自らの意思で変革を起こそうとするのだから。
「俺達の理想は、多くの命を奪わずにこの世界を変えること。お前は自由を得ることとミハエルとネーナにも与えてやること。それらすべてを達成するには戦争は根絶すべきだ。だから――」
利害は一致する。
例え粒子残量が充分にあってもトリニティは国連軍には叶わない。
それは俺とレナも同じこと。
どれほどレナが優れていて、俺が未来知識を持っていても限界がある。
故に俺はヨハンに手を差し出す。
「共に戦おう。俺達と、ガンダムで理想を叶えるんだ」
トリニティは一人、また一人と戦う決意を持ち始める。
だが、彼らの太陽炉は『ヴェーダ』によって追撃されている。
本拠が見つかるのも時間の問題…。
「簡単な話だ。こっちから攻めてしまえばいい」
5機の