軍事用ファクトリーを破壊し、他のファクトリーの居場所の座標を手入れた。
ついでに倒したジンクスの上体を切り取り、擬似太陽炉を2つ頂戴してきた。
これでレナも出撃することが可能になる。
問題は…。
「ミハエルとネーナ、か」
「……」
レナが俺の隣で帰ってきて早々見せた映像とにらめっこしている。
スローネ ツヴァイが敵を蹂躙する映像と、スローネ ドライが暴走する映像だ。
何度か再生を繰り返すと端末を閉じる。
「……ごめん、お兄ちゃん。もっと楽観視してたよ」
「いや、大丈夫だ。会ったことも見たこともなかったんだから仕方ない」
「うん…とりあえず2人とも私に任せて?」
「なに?」
突然何を言い出すんだ?
ただでさえ問題児だというのに2人とも任せろとは…。
「何か考えでもあるのか?」
「うーん、特にないけど。多分なんとかなると思う」
なんという曖昧な…。
まあしかし、本人が任せろというのなら任せるしかないだろう。
そもそもレナは一度言ったら基本曲げてくれない。
俺の意見を取り入れてくれないわけではないんだけどな。
「……まあ、分かった。任せる」
「うん」
とりあえず一任するとレナは満足そうに頷く。
ま、ただでさえ手一杯なんだから代わりにやってくれるなら助かる。
でも四六時中機体の整備やら開発やらを担当してるんだからちょっとオーバーワークじゃないのか?
まあ言っても聞かないだろうから黙っておくけどな。
さて、ちんたらはしてられない。
軍事用ファクトリーを攻め落としたことでアレハンドロは混乱しているだろうが、すぐに対策をしてくるはずだ。
そうなる前に別の場所を襲撃する。
世界地図規模で展開されている軍事用ファクトリーだが、その中でも重要なのは南極と軌道エレベーターにある極秘ファクトリーだ。
出来れば対策される前にどちらかを落としておきたいが…。
「じゃあ私はサハクエルの太陽炉をつけてくるね」
「ん?あぁ」
考え込んでいると隣にいたレナは格納庫の整備へと戻っていった。
忙しいこった。
その上ミハエルとネーナのことを頼むなんてちょっと負荷かけ過ぎかもしれないな。
……今更か。
何かあったら駆け寄ろう。
ちなみにサハクエルにつける太陽炉はプルトーネ ブラックにつけていた擬似太陽炉を用いるらしい。
わざわざ取り替える意味が分からんのだが…聞いても答えてくれないんだよなぁ。
確かプルトーネ ブラックの擬似太陽炉はレナが作った太陽炉だったか。
それが関係しているのか…本人が話してくれないから真相は闇の中だ。
分からないことを考えても仕方ない。
今は考えるべきことを考えるとしよう。
レナを見守りながら再び思考に耽る。
といっても大したこと考えてないけどな。
これからのことだが、やはりミハエルの更生とネーナをなんとかしなくてはいざと言う時に纏まった戦闘ができない。
戦力増強のためにトリニティを勧誘したのにこれでは2人が足を引っ張ってそれにヨハンとレナが付き添う――結果的に人数が減ってしまった。
これでは駄目だ。
せめてあの2人をなんとかした後に南極か軌道エレベーターを攻めるべきだ。
しかし、そうなると相手に猶予を与えてしまう…。
最低でもあと3回の襲撃の後にはどちらかを攻めたいな。
それに持ち帰った擬似太陽炉、トリニティの擬似太陽炉は『ヴェーダ』に追跡される。
ここが割れる前に計5回の襲撃をするつもりだ。
本拠に来るのは恐らく国連軍の頂武ジンクス部隊。
もしくはユニオンとAEUのジンクス部隊も来るかもしれないが、そうなったらトレミーチームと合流する時間もあり、好都合だ。
劣勢になる可能性があるとしたら擬似太陽炉搭載型以外の
やはり数は武器だ。
今のうちに何かしら対策を立てておくか…。
「っと、対策といえば…」
擬似太陽炉の取り替えとガンダムの整備、新装備の開発などに取り組むレナを見遣り、端末に視線を落とす。
端末画面にはとあるフォーメーションが記されていた。
もしもの時のために用意したものだ。
しかし、計算上完成度は40%となっている。
どうも足りない要素が多過ぎるんだよな。
このまま使ったとしても成功率は著しく低そうだ。
必要な3つの要素、そのうち2つが足りない。
それを揃えない限りこいつの完成はないだろう…。
「やっぱ過度な期待はできねえなぁ」
もしも、にしては保険になってなさ過ぎる。
どうにかしたいものだがこればっかりはな。
奥で休憩しているトリニティの様子を見に行き、食事と睡眠を済ませると取り敢えず太陽炉の取り替えは完了していた。
いざ出撃だ。
ちなみにトリニティは休憩中だった子供たちと遊んでいたらしい。
どちらかというと遊ばれていた、の方が正しいが。
道理でやつれてるわけだ。特にミハエル。
目的のファクトリーが視界に入ったところで敵の
ユニオンリアルド15機に、AEUヘリオン15機、ファントン15機と随分とバラバラの部隊だ。
他にもワークローダーやジャーチョーなどもパラパラと見える。
これを無力化するのは骨が折れそうだ。
まあその苦労をスッキリ最悪の方法で解消してくれる奴がいるのだが…。
『いけよ、ファング…!』
飛び交うGNファングがリアルドとヘリオン、ファントンを蹂躙していく。
コクピットが次々と貫かれていった。
『やめろ…!』
『寧ろ追加してやるぜぇぇええ!!』
なっ…さらに2基射出しやがった!?
ミハエルの奴、完全に虐殺するつもりだ。
流石にヨハンも止めに入る。
『よせ!ミハエル…っ!』
『どけよ、兄貴!俺はもうあんたの指示は聞きたかねーんだよ!』
『なに…!?』
なんだと!?
ミハエルがヨハンに背くなんて…!
反抗期か?ちくしょう!
タイミングを考えろ、タイミングを。
そういえば使命に生きるヨハンが変わってからミハエルは首を傾げていた。
態度も変化したヨハンが気に食わなかったのか。
なににせよ、あのミハエルがヨハンの制止を振り切った…!
『ミハエル!』
『俺は俺のやりたいようにやるぜぇぇええ!』
『う、うわあああああああああ!?』
『ぎゃあああああああああああ!?』
『ひっ!?』
ファントンのパイロットと思わしき悲鳴がスピーカーを通して響く。
手前にいた2機をミハエルがGNハンドガンで撃ち抜いたのだ。
たった一閃にて、目の前の味方が散っていくことに他のパイロットが腰を抜かしている。
そのパイロットのものと思わしきファントンにミハエルのスローネ ツヴァイが切迫する。
マズい、あのままではまた死人が…!
『そこまでだよ』
『なっ…!?』
だが、俺のプルトーネ ブラックが間に入る前にサハクエルがスローネ ツヴァイの進行を塞いだ。
避けて通ろうとしても展開される双翼に行く手を阻まれる。
『邪魔すんなよ!』
『邪魔なのは貴方だよ』
『あ?……っ!何!?』
当然GNビームサーベルを抜刀し、ツヴァイのバスターソードを両断したサハクエルにミハエルが驚愕する。
レナ…!?
『言ったよね?私達は被害を最小限に抑えるために戦ってるって』
『てめぇ……!やりやがったなぁ……!』
『………』
攻撃されたことによりミハエルはレナを敵として認識する。対するレナは頰が揺れることすらないほどに珍しく険しい顔をしていた。
……ガチで怒ってらっしゃる。
『私欲のために人を殺すのやめて欲しいって言ってるの。聞こえないの?』
『はぁ?知るかよ。つまんねえことは兄貴に任せるぜ!俺は殺して、殺して楽しむんだよ…!』
『――――そう、じゃあ貴方は私達の敵だね』
刹那、冷たいものが場を横切る。
翼を羽ばたかせたサハクエルの姿が消えた。
『なっ……』
ミハエルもサハクエルを見失って唖然としている。
そして、俺はサハクエルを見つけた。
スローネ ツヴァイの背後に。
『サハクエル……目標を淘汰するよ』
『なっ!?いつの間に俺の背後に…!?』
『ミハエル!』
ヨハンが叫ぶが遅い。
サハクエルは既にGNツインバスターライフルの銃口でツヴァイを捉えていた。
銃口が火を噴くと赤黒い粒子ビームがツヴァイの両腕を抉る。
『うわっ!?何しやがるてめぇ…!』
『淘汰するって言ったでしょ』
両腕を吹き飛ばされ、振り返るツヴァイだがそこにサハクエルの姿はない。
俺の角度からは見えた。
またしてもツヴァイの背後だ。
降り立つ天使のようにゆっくりと現れている。
『貴方は私達の敵、だから墜ちて』
『ぐっ…!いけよ。ファング!』
ツインバスターライフルによって片足を失ったツヴァイが後退して、GNファングを放つ。
レナのやつ、手加減してるな。
スローネを上回る機動力そのものはウィングバインダーの恩恵だが、レナならばGNファングの収容ユニットを破壊できたはずだ。
それを片足吹き飛ばすだけに止めた。
つまり、本気で倒す気はないということか。
『ミハ兄…!』
『レ、レナ・デスペア、どうかやめて頂きたい!』
『いや、大丈夫だ。ヨハン達は予定通りに進めてくれ』
『レイ・デスペア!?なにを…!?』
『俺を信じろ』
『……っ』
押し黙るヨハンは暫く考え込む。
まあ俺が残るから了承はしてくれると思うが。
『…了解した。こちらは任せます。不出来な兄ですまない』
『気にするな。ガキのケツを拭くのは慣れてる』
それだけ言葉を交わすとヨハンのスローネ アインは申し訳なそうに降下する。
それに続くようにドライも降下するが、ミハエルが気になっているのが傍から見てもわかる。
レナが何をしようとしているのか大体分かったが、限度は弁えないとネーナが暴走しそうだな。
『ヨ、ヨハン兄…ミハ兄が!ミハ兄が…っ!』
『ネーナ。彼らとて本気でミハエルを墜とすわけではない。今は作戦の続行に集中しろ』
『でも…!』
『命令だ』
ヨハンが一言放つとネーナは諦めたように押し黙る。
ただ凄い形相で俺達を睨んでいた。
モニター越しでわかる。
『さて…』
ファクトリーの破壊はヨハンとネーナに任せよう。
可能な限りの人命救助はヨハンがいれば徹してくれる筈だ。
敵の無力化も然り。
サハクエルとツヴァイの交戦を見ると明らかにツヴァイが劣勢だ。
ツヴァイのGNファングもサハクエルには通用していない。
『狙い撃ちっ!』
まず初撃で既に2基は破壊されていた。
続いてウィングバインダーを用いたサハクエルの機動力を活かした回避術で大きく旋回し、直線コースのGNファングは避けている。
通り過ぎたGNファングの中の2基を後から今しがた撃ち落としたところだ。
『貰ったぜ!』
ツヴァイがサハクエルの背後に出現、武装のないツヴァイはGNファングを回避していたために背中を向けていたサハクエルに蹴りを打ち込もうとしている。
しかし、実はサハクエルの脚部の方がリーチが長い。
『遅い…!』
『ごはっ!?てめぇ…!』
サハクエルが背後に放った蹴りがツヴァイのコクピットを的確に突く。
予めGNファングに集中するために先に腕を奪ったようだな。
腕を失えばツヴァイはバスターソードとハンドガンという武器を失う。
そうなればファング以外の攻撃方法は蹴りのみだ。
脚部のリーチまで考えてツヴァイの接近を気にせずに済むようになっている。
『そこだ、ファング!』
『狙い撃ち!』
前方から迫る1基のGNファング。
ツヴァイを蹴り飛ばし、後方に足を伸ばしたサハクエルには回避は不可能だ。
まあ迎撃はできるが。
頭部だけをファングに向け、サブマシンガンで撃ち落とした。
あの小さい標的に一切のズレなく照準を合わせられるのはレナだからこそできる手腕だな。
俺なら即死だ、任せてよかった。
『くそっ、まだだ!』
『……次のファングの機動は』
『演算完了。演算完了』
『ありがとう、ハロちゃん。でもちょっと違うかな』
またしても接近するツヴァイ。
今度はサハクエルがツヴァイを飛び越えるように旋回して回避し、そこにファングが2基向かってくる。
地に顔を向けているサハクエルからすれば左右から迫り来る感じだ。
あぁ、あの態勢なら。
『これで7基…』
『んだとっ!?』
突然左右にGNツインバスターライフルを広げ、双方狙いを定めて火を噴く。
銃口から放たれた粒子ビームはファングを2基とも撃ち抜いた。
これで残るファングは1基か。
『う、嘘だろ…』
ただミハエルが戦意を喪失し、残ったファングは収容された。
勝負あったか?
『クソ!一体なんなんだよ!』
『……目標を淘汰するよ』
『え?』
ミハエルが苛つくと同時にレナが呟く。
ミハエルとしては訳も分からずお叱りを受けた程度に考えていたんだろうが、違う。
今のミハエルはレナに『敵』として見なされている。
つまり…。
『がっっ!?』
スローネ ツヴァイが蹴り落とされた。
墜落したツヴァイをサハクエルは追う。
ミハエル視点では空から迫り来る殺戮の天使にでも見えているだろう。
それはさぞかし怖いだろうな。
『うっ、うああああ!』
『淘汰するって言ったでしょ。まだ終わってないんだから』
サハクエルがツヴァイの脚部関節部を踏みつけ、固定する。
これでツヴァイは身動きが一切取れない。
レナはサハクエルを操り、そこらに落ちているリニアライフルを取って振り上げた。
『な、なにを…』
『これは罰だよ』
『うわあっ!?』
そして、ツヴァイのコクピットに叩きつける。
コクピットは強い衝撃を与えられるだろうがリニアライフルで殴った程度では損害しない。
……なんか既視感があるな、気のせいか。
レナはリニアライフルを鈍器代わりにしてコクピットを何度も一定のリズムを刻んで叩きつける。
『ねえ』
『ぐあっ!?』
一打。
『私欲に身を任せるのは楽しい?』
『うっ!』
さらに一打。
『楽しいよね。楽だよね。でもね、それじゃダメなんだよ』
『うああっ!や、やめろっての!』
さらにもう一打。
『止めるわけないじゃん。寧ろなんで止めてもらえると思ってるの?私達はもう味方じゃ、ないんだよ』
『うぐっ!』
……俺は残ったリアルドとファントンの無力化でもしておこう。
よし、それがいい。
GNビームライフルで照準を合わせて敵
当たらねえ…。
『お兄ちゃん、帰ったら射撃訓練』
『え…』
思わぬ所で水が向いた。
蘇るトラウマ、恐怖で身が震えてきた。
射撃じゃなくて接近すれば良かった。
今日のレナは特段に機嫌が悪い、射撃訓練も普段より地獄風景になるだろう。
冗談ではなく死んでしまう。
『ねえ、私達が死人を出来るだけ出さないようにしてるの、知ってよね?』
『う、あぁ…』
『貴方がしてることは私達の理想を、叶えようとする行動を邪魔する行為なんだよ?』
『わ、分かったからやめろっの!』
『やだ』
何度も鈍い音が響く。
コクピットから逃れた敵でさえ真っ青な顔してる。
リニアライフルなんかもう折れかけてるな。
と思ったら持っていたリニアライフルを捨てて、ミハエルが少しだけ救われたような顔をした。
しかし、すぐに新しいのを用意してミハエルの顔から色が無くなる。
『……どうして、素直になれないの』
『え?』
一瞬ミハエルが目を見開いたが、すぐに衝撃を加えられて身体を打ち付けられる。
気が緩んだせいで舌噛んでるな。
それでも容赦なくサハクエルはリニアライフルを叩き落とす。
『前向きに、自分の意思で生きるようになったお兄さんに…劣等感を抱いている』
『……っ』
ミハエルが驚愕すると同時に再度コクピットに衝撃が伝わる。
『でも、そんなお兄さんが眩しくて自分には真似出来なくて…反抗して…本当にそれでいいの?』
『そ、それは…』
珍しくミハエルが動揺している。
俺も珍しくファントンの足を綺麗に撃ち抜いた。
しかし、レナは微塵も触れてくれないしましてや褒めてくれない。
無念。
『貴方は自由になりたくないの?誰かの計画のための捨て駒のままで本当にいいの?』
『良いわけねえだろ!でも、俺は兄貴みたいにはできねえ…』
『我慢出来ないだけでしょ。自制心の一つや二つ、ミハエルにも持てるよ!』
『……っ』
レナの叫びがリニアライフルの打撃に乗って衝撃が伝わる。
いい加減大人になれ、と。
そして、共に戦いたいと。
『自分の理想のためにぐらい一生懸命挑んでよ!やる前から諦めて、逃げないでよ!』
『お前、泣いて…』
レナの言葉が微かに震えている。
モニターは切ったので真相はわからんが、雫が頬を伝ったのだろう。
『私は…ミハエルと一緒に理想を目指したい。誰の犠牲もない平和な世界で3人にも生きて欲しい…。もう、人が死んでるところは見たくないよぉ…!』
『う、あっ…』
俺の知らない10年間。
何があったかは聞いていない。
ただ1つ言えるのはレナは人の死に敏感になっている。
都合上死人を0にすることはできないが、ファクトリーの話をした時も作戦会議の後にレナの嗚咽が部屋から漏れていた。
軍人だった俺だからわかる。
きっと人の死を目の前で見たことがあるのだろう。
それも恐らく自分の手で……。
『……』
そんなレナの目の前で何人もの人間を虐殺したミハエル。
本人も目の前で泣き崩れるレナの姿を見て悪気を感じたようだ。
言葉が詰まっている。
『私欲に身を任せないで!戦ってよ…!戦え!!』
想いを叫ぶとレナは息が切れて言葉が続かなくなる。
いつの間にかサハクエルがツヴァイの胸倉を掴んでいた。
サハクエルのコクピットからはもう嗚咽か聞こえない。
『レナ…』
ミハエルが深雪の今の名を呟く。
俺はモニターをミハエルにだけ繋いだ。
『そろそろ運命と向き合え。嫌なら抗え。決して難しいことじゃない。俺の妹の前でもう逃げることは許さないぞ、ミハエル』
『……うるせえな』
口では文句を言いながらも特に悪意は感じなかった。
丁度、ヨハンとネーナが施設の破壊に成功したようだ。
そういえば今回はレナの提案を取り入れ、子供達の中でも最年長の男の子が施設に潜入していた。
混乱時なら誰が避難誘導しても、その誰かまで確認することは早々ない。
故にその子には外での戦闘が激しくなったと同時に避難誘導してもらった。
もちろんリスクもあるが、本人の強い希望により実行した。
俺を地上の戦力に回すこともできて、本人の無事は確認できたので最善の結果だろう。
今回は前回と比べ、格段に被害が減った。
避難したと思わしき生体反応は数倍に増えていたので確かだ。
あとは潜入した男の子が無事に抜け出せれば、完璧だったがヨハンが無事に拾ったので問題ない。
もう用もないのでファクトリーを立ち去ることにした。
その際、仰向けになったツヴァイを置いてサハクエルが浮上する。
『……っ。理想のために戦う気があるなら付いてきて。ミハエルが運命に立ち向かうなら……もう私達は敵じゃないから』
『お、おい…!』
一言だけ残して飛び去るサハクエル。
ガンダムプルトーネ ブラック、サハクエル、スローネ アイン、少し遅れてスローネ ドライは帰還ルートを辿って飛翔した。
『俺は…』
残ったミハエルは辺りを見渡す。
戦闘区域は悲惨なものになったが、沢山の生体反応をスローネ ツヴァイもキャッチしていた。
ミハエルはそれを目に焼き付けて沈黙する…。
暫くして俺達に並行するように緋色の機体――ガンダムスローネ ツヴァイが並んだ。
それを見てレナが俺にモニターを解放してくる。
『お兄ちゃん』
『あぁ』
俺は軽く頷き、レナは満足そうにモニターを切った。
その時のレナは涙ながらに精一杯、破顔していた。