なんてこった。
夢なら覚めてくれ。
生後数十日で
本来ならまだ離乳食すら食べてないだろ。
歩くより先に操縦とか笑えない。
とまあ現実逃避はここまでにして。
さっそく人革連のお偉いさんとの挨拶は済ませてある。
軍の入隊についてはリボンズかアレハンドロかは知らないが手回しがしてあるそうだ。
どっちも人革連とは直接的関係はないから間接的だろう、そこら辺は聞かされてないし興味も示したくない。
色々と経緯があって今はとある部隊の配属が決まっていた。
隊長の挨拶のためキム司令に呼び出されて、今は司令の部屋の裏口前にいる。
ここまでくれば大体誰の部隊に配属されるかは分かったようなものだが、決定打となる要素が一つ。
俺の隣には可憐な乙女がいると言っておこう。
尚、戦闘用改造人間。
彼女と指示があるまで待機している間、キム司令の部屋から話し声が聞こえる。
渋くてかっこいい声だ。
もう声だけでかっこいいって分かるのほんとずるい。
とりあえず呼ばれるまで暇だからキム司令のことでも考えておこうか。
キム司令といえば無能の印象が強いな。
2ndで中佐抹殺任務の意図を見抜けなかったし、特に活躍した場面の印象もない。
ただ1stで中佐を評価し続けたところを見るに人を見る目はある。
劇場版では現実を認められないまま退場したし、おっと上司に対して不安が出てきたぞ。
まあ配属される部隊の上司が最高だから文句は言わないでおこう。
人革連とかいうブラック企業であの人の部隊に入れるのはでかいよな。
あ、話変わるけど
シミュレーション訓練なら1時間程受けたけどな。
たった1時間、されど1時間。
何がされどだよ。
1時間如きで身につくわけないだろ。
ちなみに射撃訓練の結果が一番酷かった。
まさか全弾当たらないなんてな。
エリートとしてスカウト配属された設定の俺が醜態晒すもんだから見に来てたお偉いさんは開いた口が塞がってなかった。
ざまぁみろ、なんの恨みもないけどてか恥ずかしい。
「専任の部隊を新設する。人選は君に任せるが、二人だけ面倒を見てもらいたい兵がいる」
「ん…?」
「入りたまえ」
考え事をしてたら向こう側から聞こえていた会話が大分進んでいた。
ていうか出番じゃないか。
俺の隣で一緒に待機していた女の子が開いた扉を潜っていく。
……俺は少し出遅れた。
「失礼します。超人機関技術研究所より派遣されました超兵1号、ソーマ・ピーリス少尉です」
先に前に出た女の子がセルゲイ・スミルノフ中佐に挨拶を済ませる。
そう、戦闘用改造人間もとい可憐な乙女はソーマ・ピーリス少尉。
マリー――は禁句だからアレルヤの彼女――もダメだ、なんて紹介したらいいのだろう。
改造人間、戦争のために作られた対ガンダムの超兵だ。
まさかのスミルノフ中佐とマリー……じゃなくてソーマ・ピーリスとの初対面にお邪魔できるとは思わなかった。
ファンなら興奮必須、俺からしたらできれば扉を開ける係をやりたかった。
なんでソーマ・ピーリスと並んでるんだろう。
「超人機関…?司令、まさかあの計画が…」
「水面下で続けられていたそうだ。上層部は対ガンダムの切り札と考えている」
「本日付で中佐の専任部隊に着任することになりました。宜しくお願いします」
淡々と挨拶するソーマ・ピーリス。
「それにしては若過ぎる…」
超兵だからといって戦いに介入するには若過ぎるのは頷ける。
これだから超人機関はダメなんだよ。
しかも女の子。もはや犯罪じゃ――。
まあそういうツッコミは控えておこう。
ソーマ・ピーリスに渋る反応をみせるスミルノフ中佐。
その顔が俺へと向く。
出遅れた俺はまだ挨拶をしてなかった。
「それで、貴官は?」
「レイ・デスペア少尉。ピーリス少尉と同様に本日付で中佐の部隊への配属が決まりました。経歴については大したものではないのでお暇な時に資料に目を通していただければ結構です」
「彼の資料は追って送る。素晴らしい経歴の持ち主だ」
「ふむ…」
俺に関しては特にないのか。
まあ普通に入隊してきた兵にしか見えないもんな。
スカウトであることはキム司令が話した。
後で偽造だらけの資料を見てくれることだろう。
大したことないと謙遜して、間を開けずに経歴を褒めてくるキム司令はなんなのか。
とにかく俺の配属はセルゲイ・スミルノフ中佐が専任する部隊となった。
まさか超兵と肩を並べることになるとは思わなかったな。
当然イノベイターってことは伏せなければならない。
だからヒリングとかが遊びで俺に脳量子波送ってきたらソーマ・ピーリスにバレるので危険だ。
頼むからやめろよ、やりそうで怖いんだよあいつ。
スミルノフ中佐の部隊としてこれから動くことになり、さっそく俺とソーマ・ピーリスは中佐と共に行動することになった。
本部を移動中、折角だし数少ない善人の中佐と話しておこう。
偽りの経歴とは違って俺は戦闘初心者だ。
何か学べるかもしれない。
……半分はファンとして話したいだけだが。
「スミルノフ中佐。中佐はガンダムと交戦したとお聞きしました。ガンダムと対峙した際の感想をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ふむ。貴官もやはりガンダムに興味があるのか」
「興味を持たない者はいないかと」
「ふっ、確かにな」
「……」
なんと俺の目の前で経歴の記されている資料に目を通してくれているスミルノフ中佐。
部下の事を把握しておこうとする姿勢がもはや良い上司であることを感じさせる。
でもそれ全部偽造です。ほんとごめんなさい。
そんな中佐は既にガンダムエクシア、刹那と交戦している。
尋ねてみると嫌がる様子なく答えてくれた。
「司令にも話したがあのガンダムという
「それは、何故……」
「一番は機動力だ。ガンダムの機動力は凄まじい。私の考察ではないがガンダムが放つ光――粒子があの機動力を生み出していると考えられている。ガンダムの使う武器も然りだ」
「粒子ですか」
「あぁ」
間違いなくGNドライヴ、太陽炉だ。
確かにガンダムの機動力はGNドライヴの賜物。
初期の段階で見破っている人革連と中佐は大したものだ。
転生者とはいえ作品を見てなければ俺は今頃そこにはたどり着けなかったかもしれない。
いや、イノベイター側の情報で知れるか。
どうでもいいことを考察している間に今度はソーマ・ピーリスが前に出て口を開く。
会話に参加してくるとは思わなかったから少し驚いたな。
「中佐。ガンダムのパイロットについては何か感じることはありましたか?例えば年齢とか」
「未だ全貌のハッキリしないガンダムのパイロットとは通信を取れないのでは?」
「いや、実際に刃を交え、戦えば言葉を交わさずとも分かることはある。私は彼らの覚悟と信念を試したつもりだったが、返ってきたのは『若さ』だった」
「若さ?」
スミルノフ中佐の言葉にソーマ・ピーリスが首を傾げる。
可愛い。
「
「ガンダムを操縦しているのは若者……。機体がどれだけ優れようと、そこに着け入る隙があるかもしれませんね」
「私の私見が正しければな」
「着け入る隙とは……一体どういう……」
「折角のガンダムを若さ故の乱暴さで能力を下げてしまうということさ。ガンダムが万能だとしてもパイロットは違うって言った方がわかりやすいかな」
「なるほど……。ありがとうございます、デスペア少尉」
「あぁ」
仲間になるとソーマ・ピーリスは案外素直だな。
俺の言葉に納得して自身の考察を練っているのかしきりに頷いている。
ソーマ・ピーリスも若い。
自分に当てはまるかもしれないとでも考えてるのかもな。
ところでソーマ・ピーリスってフルネーム言いづらいな。
後で呼び方考えておくか。
そんなこんなでスミルノフ中佐と話すことに成功した。
上司と部下のコミュニケーションは大切だ。
ちゃんと部下の質問には的確に返してくれるし、意図も汲み取ってくれる。
移動を終えるとスミルノフ中佐にはまだ仕事が残っているようで別れることになる。
新しい新設部隊の編成などやることは多いそうだ。
ちなみに別れの際には俺の資料を全て読んでいたようで思わず恐縮してしまうようなお言葉を頂いた。
「素晴らしい経歴だ。それでいて話している限り目の付け所も悪くない。これからの活躍を期待している、少尉」
「あ、ありがとうございます」
色んなお偉いさんにもあって賞賛の言葉は浴びてきたけど一番腰を折ったのはスミルノフ中佐となった。
偽りがあるかもしれない、寧ろ真実は偽りだけの文字を見て経歴だけで賞賛の言葉を浴びせて来る奴らは大体下心がある。
でもスミルノフ中佐は実際に俺と言葉を交わしてからレイ・デスペアという人材を評価した。
正直凄く嬉しい。いい上司に出会えてよかった。
偽造の経歴なのが本気で申し訳ない。
経歴が偽造でも嘘にはならないよう全力で期待に応えようと思う。
マイスタータイプの能力が発揮されるなら全力で使ってやる。
リボンズの制止があってもそこは譲れない部分となった。
俺と硬い握手を交わしたスミルノフ中佐はソーマ・ピーリスにも言葉を置いていく。
俺一人を贔屓目で見ることはないのだろう。流石だ。
「ピーリス少尉も期待している。まだ若さ故に物事を見抜く力はないようだがこれからの経験が恵んでくれるだろう。急がなくていい、自分のペースで成長してくれ」
「はっ!」
ソーマ・ピーリスが敬礼すると共にスミルノフ中佐は去る。
少し微妙そうな顔をしていたのは的確な言葉をあげられなかったと思っているのだろう。
仕方ない、スミルノフ中佐は超兵計画には思うところがある。
ソーマ・ピーリスに期待するなんて言いたくなかったのだろう。
だからこそ咎められない程度に彼の言葉にはソーマ・ピーリスを焦らせないよう諭す言葉が混じっている。
なんて良い義父なんだ…。
あぁ、まだソーマ・ピーリスは養子じゃなかった。
それどころか結局なることはなかったな。
「では私もこれにて失礼します!」
「あ、あぁ…」
ソーマ・ピーリスが敬礼して去っていこうとする。
アレルヤのヒロインだけあって美形だがこの時はまだ誰にも優しくされないただの兵器だ。
淡々としている。
そんなソーマ・ピーリスの背中に声を掛けた。
「ピーリス少尉。少しいいですか?」
「はっ。なんでしょう」
「いや…その…」
うーん、中佐がかっこよくて嫉妬したのか先に声を掛けてしまった。
でもまあ同期みたいもんだし、これから同じ部隊でやっていく仲間。
これから身近にいる原作キャラで歳が最も近いのはソーマ・ピーリスだ。
少しは仲良くなっておくべきだろう。
問題は何を話すかだ。
やばい、話題もないのに話し掛けてしまった。
何も話題を切り出さない俺にソーマ・ピーリスは怪訝そうな顔になってしまう。
「あの…何もないのでしたらこれで」
「あ、えっと…そうだ!名前!」
「は…?」
咄嗟に出てきた言葉を言ったら首を傾げるソーマ・ピーリス。
なんか俺コミュニケーション能力に問題あるみたいになってる。
やめろ、俺はそんな奴じゃない。
ってそんなのはどうでもよくて。
そう、名前だ。
ソーマ・ピーリス、フルネームは面倒臭い。
何か呼び名を決めておこう。本人も承諾した方が呼びやすい。
あと同期みたいなものなのに敬語で話し合ってるのは違和感ある。
よし、口調についても話し合おう。
「折角同時期でスミルノフ中佐の部隊に配属されたんだ。いつまでも階級付けで呼ぶのもなんだかな…と思ってさ」
「そうでしょうか。自分は特に問題はないと思いますが」
「あぁ、あとそれ」
「……?」
「敬語だよ、敬語。歳が近い…わけではないけど多分ピーリス少尉から見たら俺が一番年齢が近い。スミルノフ中佐の部隊は中佐ご自身が選別するパイロット達が集まる。そうなると自然に年齢層は高いはずだからさ、ピーリス少尉が早く馴染めるのも考慮して俺とはタメで話さないか?俺もその方が気が楽だしさ」
「は、はぁ…。構いませ――構わないが名前というのは?」
「あぁ。ソーマ・ピーリス、ピーリス少尉。いちいち長いからさ。畏まったりするのはなしでソーマとかで呼ぼうかなと思って。どうだ?俺のこともレイとかデスペアでいい」
「分かった。確かに超兵である私に掛かる
「だろ?じゃあタメ口で、呼び方も階級なし。これで決まりだ」
半ば強引な気もするがソーマも納得したしこれで良いだろう。
そういえば原作でソーマ・ピーリスに関してはアレルヤですらピーリス呼びだったな。
ちょっと出来心でソーマ呼びしてみたけど大丈夫だよな。
誰も呼ばないから『ソーマ』に何かとんでもない意味が込められてたりしたら怖い。
何処かの言葉で兵士とか超兵とかだったらどうしよう。
ソーマ自体もピーリスって名は捨てたくないとか言ってたな。
……一応後で調べるか。
「これからよろしくな、ソーマ」
「あ、あぁ…」
一緒に戦う仲間として。
手を差し出す。
差し出された手にソーマは少し戸惑いながら、ゆっくりと自身の手を伸ばした。
触れ合う肌、掴み合う手。
柔らかい感触から伝わってくるのは人間の少女の温もりだ。
困惑していたソーマも俺の手を取り、少しだけ微笑んだ。
「よろしく頼む。デスペア少尉」
呼び方固定なのかよ。
ま、まあまだ慣れてないだけかもしれない。
ソーマが何の意味なのか。
同タイプでないイノベイドは脳量子波を送り合えなかった気もする。
など不安点はありますがあくまで息抜き程度に書いておりますのでスナック感覚で読んでくださるとありがたいです。
>追記
ソーマの名前は多分お酒の神様のソーマからきてるのかな。