「集まってもらったのは他でもない。次はお前達の宿敵が相手だ、トリニティ」
『……っ!』
ミーティングルームでの宣言にヨハン、ミハエル、ネーナが息を呑む。
トリニティは自由を目的に戦っている。
そして、その第一歩、これを踏まえなければその道は確実に途絶え、必ず通らなければならない敵。
それがこいつらの支配者でもあり創造主ある、アレハンドロ・コーナーだ。
「コーナー家を攻める。そして、奴を炙り出し、慌てて出てきたところを蹂躙する。これが大まかな作戦内容だ」
「遂に…我々の生みの親と…」
「俺達を支配してる偉そうな奴か!ぜってぇ倒す!」
「あたし達を作り出して、戦わせて…あたし達のこと人とも思ってないクズ…!そいつだけは許さない」
「ネーナ…」
レナがネーナを見遣って呟く。
気付いたネーナは少しだけ顔を顰めた。
「……これくらいは許して。あたしは抗いたい。兄々ズとただ楽しく自由に生きたい。あたしのやってきたことはもう今更取り返せないし、その気もないけど…全て終わったら出来る限り清算はしてやるつもり」
「それはどう意味で言ってるの?」
「これは、ケジメよ」
「……そっか。うん、じゃあ協力してあげる」
「レナ…」
ネーナも人の事を言えないからな。
人間性からして非協力的だったレナも同意した。
これからネーナは目を逸らさずに自身の犯してきた罪と向き合い、前向かって進み続ける。
だが、今は束縛する支配に縛られて一歩進むことすら許されない。
もう道具じゃない。
人間であるために…そして、この世界の歪みを断ち切るためにアレハンドロ・コーナーを倒す。
作戦決行から数時間。
導入した機体はガンダムプルトーネブラック、サハクエル、スローネだ。
5機のガンダムでコーナー家の領地を蹂躙する。
命は奪わない。
施設だけを破壊し、奴に資産的なダメージを与えることにした。
当主のいないコーナー家が崩れるのは簡単だった。
ガンダムに狙われる一族――それはソレスタルビーイングの裏切り者で、国連軍に支援を行う者であることを絹江によって世界に発信させたことにより、俺達がやってるのは一見ただの破壊工作だったが意味のあるものとなる。
『本当にいいの?わざわざ私と外部を切断させたのに…』
『必要なことだ。それに、もう絹江のことは信頼してるよ』
『デスペアさん…。分かったわ、各所と連絡取ってみる。証拠もあるんでしょ?』
『あぁ。情報操作も回避する、こっちには取っておきがあるからな。頼んだ』
出撃前に
これでアレハンドロ・コーナーに逃げ道はない。
嫌でもトリニティと向き合うよう仕向ける。
道具であるあいつらと同じ目線まで引き下ろしてやる。
『あらかた回り終えたな』
『うん。次は…』
レナと通信を交わして段取りを確認する。
次に行けべき場所に決まっている。
アレハンドロは必ずそこを通り、そこにいる。
遂に対面し、もし奴がアルヴァトーレを用意していれば戦うことになる。
『軌道エレベーターに向かう。……恐らく奴はそこにいる』
『了解した』
『…了解だぜ』
『ラジャ。遂に…』
俺の指示にトリニティ達は力強く頷く。
サハクエルを除く4機のガンダムはレナの操る飛行艇に収容され、そのまま軌道エレベーター『天柱』に進路を変えた。
既にフェレシュテとレオから奴らしき宇宙艇が月を去ったと報告が入っている。
今の時代、地上と
だから、アレハンドロは必ずそこを通る。
俺達はそこを叩くんだ。
だが、軌道エレベーターへと向かう道中のこと。
当然
「粒子反応…!え、えっ!?なにこれ…とてつもなくデカイのが来るよ!」
「なっ!?しまった。大型GNキャノンだ!」
操縦席のレナが驚愕すると共に俺はその正体に気付いた。
だが、まだ軌道エレベーターは見えてすらいないぞ!?
深い森を経由していた時のことだ。
まさかルートを先読みされていたのか。
リボンズめ…!
「避けろ!レナ」
「む、無理!完全には…きゃあああっ!?」
「ぐっ…!」
「うおおっ!?」
「きゃっ…!?」
飛行艇に極太の粒子ビームが掠り、機体が激しく振動する。
痛てぇ…。
頭ぶつけたぜ。
トリニティも踏ん張ったが、各々悲鳴を驚いたり悲鳴を上げたりしている。
クソ、今どういう状況だ!?
「左翼被弾!高度がどんどん下がってる…!」
「敵はどこだ!?」
「前方約30km先…!」
「はぁ!?」
遠過ぎるだろう。
知ってはいたが、その距離から狙えるなんて反則過ぎる。
なんて機体だ。
さすが太陽炉を7基も詰んだ
最高に意味がわからないくらい厄介だ!
「まだ補足されてる…!」
「くそ…!」
「レイ・デスペア!一体どこに!?」
俺は席を外し、飛行艇の後方へと走った。
パイロットスーツはこれまでの出撃から一度も脱いでいない。
ま、外に出たら基本脱がないけどな。
リボンズに脳量子波で正体を看破されてしまう。
「レナ…!」
「……っ!発進まで25秒待って!粒子ビームが来る!」
「了解!」
確かさっき補足されてるって言ってたからな。
仕方ない、それにレナの対応が良い。
文句を言うつもりはない。
回避行動で機体の傾きが起きる。
その後、レナならすぐに立て直すだろう。
それまでに俺ができること…それは出撃準備を完璧にすることのみだ。
だから、飛行艇の格納庫に収まっているプルトーネブラックのコクピットハッチを開ける。
そういえばハッチが下を向いてるため、乗りにくいんだった。
タイムロスは有難いくらいだな。
機体が傾くのは面倒だけど。
「回避するよ!きゃあっ…!?」
「くっ…!このままではもたない!」
「おい、どうすんだよ。レイ!」
「まさか出撃するつもり!?」
操縦舵を握るレナは精一杯飛行艇を駆る。
ヨハンは顔を顰め、ミハエルは困惑している。
その中でネーナだけが俺を見て目を見開いて叫んだ。
「当たり前だ!このままじゃ全員死ぬぞ!この飛行艇も不時着する!」
「む、無理よ!出撃する暇なんて与えてもらえない!あんなの勝てっこない…!!」
「なに…?」
ネーナが既に諦めかけている。
アルヴァトーレに、アルヴァアロン。
アレハンドロの機体について事前に説明している。
だが、目にするのは初めてで当然対峙するのも初めて。
そして、不意打ちされた今の状況は最悪だ。
ネーナにとってはもはや絶望の最中なのかもしれない。
あいつには覆せない盤面に見えているのか…。
そんなの、俺も同じだ。
大体前世じゃただの一般人だ。
MSの操縦だってマシになってきたのがつい最近。
そんなのがあんな悪趣味な金ピカデカブツと対峙してどうにかなると考えるか?
答えは否だ。
正直、粒子ビームが放たれる度に死を覚悟してる。
今はレナの機転で助かってるがこれが何度続くかなんて想像出来ない。
それでも、俺には諦めずに戦う理由がある。
「ネーナ。お前が諦めるのは勝手だ。俺達はそれぞれ自分のために戦っている」
「え…?」
「でも、俺は諦めない。約束したんだ。理想を叶えると。その為なら俺は戦える、己の意思で」
「レ、レイ…」
「……お兄ちゃん」
レナの操縦舵を握る力が強くなる。
俺の視点から彼女の表情は窺えないが、それでも俺には分かる。
きっと深雪は笑みを浮かべている筈だ。
俺はそれに応える義務がある。
兄として。
2人で交わした誓いはどんなに絶望の最中でも朽ちない。
「くっ…!」
「お兄ちゃん!」
「分かってる!」
機体の振動で少し態勢を崩した。
だが、俺の手は既にプルトーネブラックのコクピットハッチに掛かっている。
片手に力を入れて身をハッチへと寄せ、力に任せてコクピットに乗り込むことに成功した。
そして、コクピットハッチを閉めてシステムを再起動する。
「スタンバイ完了、いつでも行ける!」
『了解。機体の平行バランス安定、ハッチオープン!』
左翼とメインエンジンをひとつやられた状態の中、レナが技術に任せて機体の態勢を立て直す。
この態勢を維持するのは極めて困難なのは俺でもわかる。
だからこそ、いつでも出れるよう集中する。
『プルトーネブラック、先行する!』
格納庫のハッチが開いたのでプルトーネブラックを空に晒す。
落下するように出撃し、粒子を散布し、GNドライヴを完全起動する。
GNバーニアで機体の維持に成功すると、すぐに飛行艇から離れ、30km先の敵へと加速した。
「アルヴァトーレの正確な座標は!」
『高度はプルトーネブラックと一致してるよ。そのまま前進を続けて。でも粒子ビームには気をつけて!』
「了解!」
右手にGNビームライフル、左腕にGNシールドを構えるプルトーネブラック。
レナの指示通り、トップスピードでアルヴァトーレへと向かう。
しかし、そんなプルトーネブラックを無視するかのように極太の粒子ビームが横切った。
あの粒子ビームの狙いはまさか――!
『レナ!!』
思わず振り返ると背後で爆発が起きる。
距離があって飛行艇が墜ちたかは確認出来ない。
だが、やられた…!
『てめぇえええええええーーーっ!!』
まだ見えぬ先にいる敵に吠える。
よくもやりやがったな。
絶対に倒す!
『もっと速く!気合い出せ、プルトーネブラック!』
プルトーネブラックに無理を言ってるのは分かってるが、土壇場だとどうしてもガンダムに声を掛けてしまう。
乗馬中に馬に掛け声をするのに近いがこっちは自我がない。
でも刹那の気持ちはこういう時にはわかるかもしれない。
と、そんなことはどうでもいい。
早急に奴を見つけ、砲撃を止める!
そんな俺の元にも大型GNキャノンの粒子ビームが飛んできた。
『当たるかよ!』
俺の双眼が輝く。
GNバーニアを噴射し、後方へと退りながら粒子ビーム着弾までの距離と時間を稼ぎ、下方に急速落下することで避ける。
一発粒子ビームを放った今がチャンス。
次の発射までのタイムロスのうちに距離を詰める。
その為にも機体の態勢を整える暇はない。
無理をいってプルトーネブラックを下から上、左から右へと胴体を反転させ、目的の地へとさらに加速した。
約8km程詰めた時、奴の姿が視界に映る。
圧倒させられる巨体、大量散布されられている黄金のGN粒子。
恐ろしさを感じる程に威圧感のある太陽炉の数に、悪魔のような凶器さを身に纏っている。
擬似太陽炉搭載型MAアルヴァトーレ。
通常のMSの5倍はある巨体が空を支配していた。
『あれが、アルヴァトーレ…っ』
現物で見るとこれ程の圧があるのか…。
正直勝てる気がしない。
地上での飛行運用には適していないとはいえ、空に浮いているその様はまるで空飛ぶ要塞だ。
本当に勝てるのか…?
「いや、勝つしかない!何の為にここまで戦ってきた!気張れ、レイ・デスペア…!!」
アルヴァトーレを前に怖気付く自分を奮い立たせる。
やるしかない。
俺は己の意志で戦うと決めたんだ。
掴みたい理想がある。
俺達自身の為に諦めてたまるか!
『目標を蹂躙する…!!』
前進しつつGNビームライフルから粒子ビームを放つ。
アルヴァトーレ自体は方角も高度も固定したまま動いていない。
やはり浮上しているのがやっとか。
ならば動かない的を狙うまで。
射撃が苦手な俺でも当てられる。
当然、狙い通り二閃の粒子ビームはアルヴァトーレ本体に吸い込まれていった。
しかし、着弾する直前赤黒い光の壁に阻まれる。
『GNフィールド…!』
『フッフフフフ……その程度でアルヴァトーレに対抗しようなど、片腹痛いわ!!』
『この声は…、アレハンドロ・コーナーか!』
音声が繋がり、高々な笑い声が聞こえてくる。
この声、物言い、確実にアレハンドロだ。
アレハンドロは変声期で声を隠した俺の言葉に小さく笑みを浮かべるのが耳に入った。
『フッ。やはり私を知っているか…。貴様は何者だ、プルトーネのパイロットよ』
『答える義理は、ない!!』
GNビームライフルでさらに粒子ビームを放つ。
しかし、全てGNフィールドで防がれてしまった。
『フハハハッ!効かぬ効かぬ!何処の誰だか知らないが、もはやどうでも良い。この私、アレハンドロ・コーナーが、貴様を新世界への手向けにしてやろう!』
『ふざけるな!!』
くっ…やはり硬い!
元から粒子ビーム類は効かないのは知っていた。
対策としてGNブレイドを装備してきたが、武器が不足している今一本しかないのが現状だ。
せめて接近しないことには話にならない。
『蹂躙されるのは……貴様だッ!!』
『……っ!』
大型GNキャノンの砲口がプルトーネブラックへと向けられる。
マズい、この距離、あの威力に射程範囲じゃ避けきれない!
『塵芥と成り果てろ!プルトーネ…!』
『しまった…!』
機首部の大型GNキャノンの砲口が内に光を秘めて輝く。
確実に当たる。
だが、諦めはしない。
せめて生き残ってみせる!
『うおおおおおおおおおーーーっ!!』
俺の双眼が色彩に輝く。
その時、プルトーネブラックの機体に衝撃が走った。
コクピット内にも横殴りされたかのような振動が伝わる。
『うわっ!?』
『なに!?』
いつの間にかプルトーネブラックは元いた場所からは大きくズレ、大型GNキャノンの極太粒子ビームを躱していた。
そして、プルトーネブラックに突っ込んできた赤い機体が桃色の瞳で抱き抱えるプルトーネブラックから俺を見下ろす。
それは紛れもなくガンダムスローネ ドライ、ネーナだった。
『ネーナ!?』
『遅れてごめんね!でもレイを助けられたし、結果オーライね』
モニター越しにネーナが俺にウインクを送る。
その表情には曇りのない笑顔が浮かんでいた。
『トリニティか…!ぐうっ…!?』
音声越しにネーナを睨むアレハンドロだったが、すぐに衝撃に襲われる。
俺にも見えた。
アルヴァトーレの機首部にある大型GNキャノンに粒子ビームが直撃したのを。
破壊は出来ていないみたいだが。
『この正確さ…レナか!』
『お待たせ、お兄ちゃん!』
粒子ビームの飛んできた方角を見遣ると丁度サハクエルがこちらへ向かってきていた。
マントは剥がれていて、双翼は自由を主張するように展開されている。
両手には勿論GNツインバスターライフルが握られていた。
『スローネ アイン、目標に到着。これより戦闘を開始する』
『よっしゃあ!カマすぜぇ…!!』
『ヨハン!ミハエル!』
サハクエルと共にスローネ アインとツヴァイも姿を現す。
良かった、みんな無事だったのか…。
これで5機揃った。
チーム・トリニティ&デスペア、揃い踏みだ。
『くっ…!死に損ないの役たたず共が…っ。道具の分際で私に歯向かおうと言うのか!』
アレハンドロが現れたトリニティに対して苦虫を噛み潰したような反応を示す。
遂に本性現したか。
そうさ、あいつらはこいつに作られて戦わされて自由を迫害されてきた。
トリニティの罪は重い。
だが、こいつの罪はもっと重い…!
『貴様が、アレハンドロ・コーナー…。やはり我々を道具としてしか見ていないというのか!』
『当然だ。貴様らは我が計画遂行の為の布石でしかない。万に一つも主に噛み付くような駄犬であってはならないのだよ…!!』
『てめぇ…!!』
『あたしらはあんたの犬なんかじゃない!』
モニター越しにアレハンドロとトリニティが言い合う。
アレハンドロは相変わらずトリニティへの意識を断固として変えるつもりはなく、見下している。
そんな態度に当然トリニティは怒る。
『否、犬以下の道具同然だ。使い捨てのな』
『貴様…っ!』
『切り刻まれてぇのか、てめぇ!!』
『絶対にぶちのめしてやる…!』
『フハハハッ!そこまで吠えるならやってみろ。創造主に逆らえなどしないことをその身に叩き込んでやろう…!!』
アレハンドロの凶悪な笑みと叫びにより戦闘の火蓋が切られる。
戦場に大量のGN粒子が舞い、それぞれの機体がパイロットの想いによって動き出す。
『これは我々の存亡を掛けたミッション…!必ず完遂させる!』
『行けよ、ファング!!』
アインがGNランチャーから粒子ビームを放ち、ツヴァイがGNファングを6基射出する。
サハクエルも上空へと飛翔し、GNツインバスターライフルを構えた。
『あの人は世界の歪み!サハクエル、行くよ…!』
『翼持ちのガンダム…未知の機体である貴様だけは鹵獲する。掛かってくるが良い…!』
『貴方が向き合わなければならないのは私じゃない!この戦いでその目を覚まさせてあげる』
レナの想いに応じてサハクエルからも粒子ビームが放たれる。
プルトーネブラックを駆る俺はアレハンドロがレナに意識を割いてることを利用してアルヴァトーレの背後を回り込んで、GNソードを抜刀する。
多勢に無勢を利用する!
『銃弾に重いも軽いもない…。それはあんたを撃つのも同じ。あたしはあたしの意思でこの引き金を引き、あんたの支配から抜け出す。まずはあたし達と同じところまであんたを引き摺り下ろす!!』
『道具が吠えるか…!!』
二方向から迫る粒子ビームをアルヴァトーレはGNフィールドで防ぎ、GNファングには大型GNファングで対応する。
そして、大型GNキャノンの砲口をドライへ向けた。
それに対してネーナは叫ぶ。
『ガンダムスローネ ドライ、ネーナ・トリニティ!目標を駆逐する…ってね!』
一瞬ウインクと笑みを浮かべ、ネーナなりの気合を入れて立ち向かう。
トリニティの反逆が始まった。
罪も何もまずは支配を抜けなければ贖罪も反省もできない。
咎は受ける、必ず。
その為にもトリニティは自由を吠え、創造主を撃つ。
理想を抱く兄妹と共に。
アルヴァトーレに関して疑問うんぬんはあると思いますが、なんか書いてたらいつの間にか浮いてたのでお許しを。
ただ自由に行動はできないです。
座標は固定されたままで、爆積みGNドライヴの出力でなんとか浮上している感じですね。
ま、浮いてる方が叩き落とせるので個人的な趣味でもありますが。
大型GNキャノンVSツインバスターライフル
大型GNファングVSGNファング
とか次回は書いてみたいなと思ってます。
必ずしも書くとは言ってない。
あと誤字は修正しましたが、まだ隠れGN大型キャノンがいるかもしれないので見つけた際は報告してくださると助かります。