超長距離射撃で殺し合いを防ぐ。
それが私が自分で定めた使命、そして与えられた役割。
トレミーチームと国連軍の衝突。
その中でどうしても命を落としそうになる人が現れる。
その危機を救うのが私のサハクエル。
思考が擦り減るが如く集中して、『殺し』というその行為に至る寸分前に妨害している。
でも、それだけじゃ戦いは終わらない。
それにいつか火種がこっちにも飛んでくる。
だから、私も撃たなくてはならない。
『狙い撃ち!』
ジンクスを1機、無力化した。
国連軍のMS部隊は遥か彼方から飛んでくる粒子ビームに戸惑い、編隊を崩しつつある。
でも優秀な指揮官がいるみたい。
すぐに立て直される。
まずはその人を狙い撃たないと…!
『敵機セッキン!敵機セッキン!』
「え…?」
ハロちゃんが両耳をパカパカと開閉させて警告する。
て、敵…?
この宙域に?
サハクエルの位置する座標はラグランジュ1とラグランジュ2の境目、両終点のはず。
戦場はかなり離れてるのに、なんでここに…。
「ハロちゃん、敵の情報は?」
『スローネ。スローネ』
「……そんなっ!」
思わず照準から目を離す。
そして、付近を見渡すけど……遅かった。
赤黒い粒子ビームが既に私の視界に映っている。
『狙い撃ちっ!』
即座に反応してGNツインバスターライフルで相殺する。
粒子ビームのきた方角は、北東45度。
直線コースをずっと進んだところには国連軍の艦隊が……まさか一直線でここに向かってきた!?
『最初から私を狙って…!』
『あははははははは!!見つけた、見つけたわよガンダム!私がぶっ殺してあげるわ!!』
『この声は…!』
サハクエルのレーダーが敵MSを捉える。
この識別番号、記録がある。
スローネ ドライ……。
そして、この甲高い声は、
『視界に入った!狙い撃ちっ!』
『きゃっ!?』
GNツインバスターライフルで先制を仕掛ける。
すると、粒子ビームはドライのGNハンドガンを貫いた。
これで射撃はしてこなくなる。
なら間違いなく近接に徹してくる筈…!
『貴様あぁぁぁぁああああーーー!!』
『え…?きゃああっ!?』
な、なに!?
突然私の知らない速度でスローネ ドライが切迫してきた。
サハクエルは蹴りを腹部に受けてそのまま衛星に叩きつけられる。
『がはっ…!?』
『あははははは!糞虫にはお似合いの格好ね!』
『なん、で……っ!』
まさか。
ハロちゃんかが自動拡大してくれたモニターを見遣る。
そこにはドライの脚部に装備したブースターユニットが映っていた。
これで加速を…!
『くっ…!ガンバレル!』
『なに!?』
身動きの取れないサハクエルの代わりにGNガンバレルを4基放つ。
それぞれの砲門がドライを背後から狙った。
照準、ロックオン……。
狙うはブースターユニット!
『チッ!!』
『逃げても無駄!』
ドライが照準から逃れようとサハクエルから離れるけど、もう遅い。そんな人間の通常心理、もうとっくに読み切ってる!
ブースターユニットはドライの脚部に付いている。
つまり最も加速が掛かるのは前進、または上方への移動。
なら、下方に2基のGNガンバレルを設置すれば自ずと上方へと逃げる!
『ふん、そんなものあたるわけ――ぐうっ!?なっ、馬鹿な…!!』
GNガンバレルの砲門から放たれた粒子ビームでブースターユニットを破壊。
回避ルート、さっきの加速度から敵の次の予測座標を導き出した結果が的中した。
……まあこんな読みは楽だけど。
『この…!』
「ハロちゃん!」
『任セロヤイ。任セロヤイ』
ドライがGNビームサーベルを抜刀したと同時にサハクエルも刃を生成する。
近接のサポートはハロちゃんに任せて、私は
『クソ!死ね…!』
『私は死なない。貴女も殺さない…!』
『戦場で甘ったれた事言ってんじゃないわよ!』
『くっ…!』
ドライが叩きつけるようにビームサーベルをサハクエルに振るう。
なんとかハロちゃんが弾いてくれてるけど、なによ、このデタラメな攻撃。
こんなの…!
『ガンバレル!マシンキャノン!』
『ぐあっ…!?よくも…!』
ドライの背後からGNガンバレル、サーベルを捌きながら正面からマシンキャノンで圧倒する。
ドライの顔面部が吹き飛んだ。
ごめんね、このくらいなら後で治せるから…!
『ドライを返して!!』
『はぁ?返すわけないでしょ。ふざけないでよ、もう私のガンダムなのよ』
『ふざけてるのは貴女だよ!その機体は、貴女のものじゃない…!』
GNビームサーベルの刃が衝突し、競り合う。
メインモニターが落ちても食らいついてくるなんて…!
私のモニターに映った赤髪の女。
ドライに乗る確かマインと呼ばれていた人からもはや狂気すら感じる。
『そこまでして何が望みなの…!』
『ハッ、何も知らないというのはお気楽でいいわね!』
『何の話を…っ!』
『この世界はいずれ支配される。イノベイターとかいう上位種気取りの奴らにね!!』
『……っ!』
今の一言で分かった。
この人は、ナオヤさんの傍にいて気付いたんだ。
イノベイドの、リボンズ・アルマークさんの存在の大きさを。
だから、必死にガンダムを倒そうと、自分の有用性をナオヤさんを通して伝えようとしてる。
……汚い女。
『どうせ支配されるなら私は今から行動を起こす。そして、私は選ばれた。サーシェスとかいう傭兵に協力するのはリスキーだったけど、イノベイター共は私を頼った!これで私の未来は保証される…!』
『ナオヤさんを利用して…!』
『私が幸せになればそれでいいのよ。大体あんなキモい男興味ないわ。貴女もそうでしょう?』
同意を求められてる?
冗談じゃないよ…!
『私はそんな自分のことばかり優先するような貴女とは違う!!』
『あ、そ。じゃあ、死になさい!!』
『そうはいかない!』
GNビームサーベルをもう一刀振るうドライに対して、サハクエルの双翼――ウイングバインダーで機体ごと叩き飛ばす。
『くっ…!こいつ!』
『貴女はここで淘汰する…!』
『なっ……』
GNツインバスターライフルをドッキングさせて構える。
連なる二門の砲口はドライを捉え、マインさんも気付いた。
でも遅い!
ドライとの間合い約百M、この距離は絶対に外さない!
『狙い撃ちっ!』
『い、嫌!待っ――』
ドライとの間にGNガンバレルを1基挟んで狙撃した。
粒子ビームはガンバレルと衝突し、ドライの目前で爆炎を巻き起こす。
これで相手のパイロットの命を奪わずに戦闘不能にすることができた。
「ハロちゃん、ドライは?」
『ソンショウジンダイ。ソンショウジンダイ』
「そう…」
成功したとは確信してたけど一応ハロちゃんに確認して黒煙から露出したドライに接近する。
ドライは胴体部以外が破損していた。
この状態での戦闘は絶対に不可能だね。
『まだやる?』
『ひっ…!』
GNツインバスターライフルの銃口をドライのコクピットへ向けると、マインさんの怯えた声が耳に入る。
これで理解したと思う。
あの程度の実力で、ガンダムに……マイスターには敵わないってことを。
『イノベイド達に媚を売るのは勝手だけど、その為に他人を踏みにじるの……やめてくれないかな?』
『や、やめます!やめますから命だけは…!』
『……ならドライから降りて。それは貴女の機体じゃない』
『は、はいぃ!』
脅すと簡単に降りてくれた。
数年後の自分の在り方に不満を持ったのは旧人類として用済みにされるのが怖かったからかもしれない。
この臆病さを見てると…ね。
『あ、あの…私はどうすれば…』
『さぁ?この宙域に迎えが来るのかは知らないけど、誰かが拾ってくれるんじゃない?』
『そんな…!た、助けて!』
『……戦場でそれは甘いと思うよ』
私は奪わない。
殺さないけど情けをかける程、甘くはない。
私はサハクエルでドライを抱えたままマインさんに背を向けた。
一応、国連軍の艦隊に救援要請を依頼して。
『さようなら』
『お願いします!待って――』
否定されるのも嫌、支配されるのも嫌。
我儘だけで人から奪ってきた人に与える情けはない。
そして、GNバーニアで加速したサハクエルはデルに伝えた宙域に半壊したドライを置いて、また元の座標へと戻る。
ちなみにスローネ ドライの擬似太陽炉は道中で捨てた。
あれがあると追跡されてしまうから。
『急がないと…。持ち場から離れちゃった』
襲撃を受けたせいでまた最初から作業をやり直さなきゃいけなくなった。
さすがに迷惑だ。
戦場はどうなったんだろう……。
早く、戻らないと。
お兄ちゃんが戦闘に入ってくれてればいいけんだけど…。
『敵機セッキン!敵機セッキン!』
「また!?」
目標座標まであと1kmもない地点での警告。
まさかこの場所は割れてるとでもいう気!?
とにかく敵の情報を仕入れないと…!
「きゃあっ!?」
『被弾シタゼ。被弾シタゼ。敵機、イッキ!敵機、イッキ!』
「くっ…先制を取られた!」
すれ違いの際に粒子ビームが飛んできた。
恐らくビームライフルの類……。
サハクエルに後方を振り返らせ、奥で旋回する機体をモニターに捉える。
1機だけで攻めてくるなんて次は一体何が――。
瞬間、息が詰まった。
私の瞳に映る黒い機体、放つ擬似GN粒子。
そう…あれは…。
あれは……!
『スローネ アイン、ネルシェン・グッドマン…!』
『その声、あの時の
サハクエルとスローネ アイン。
双方が対峙したと同時に通信が繋がる。
私も驚愕し、ネルシェンさんも僅かに口角を上げている。
このタイミングでエンカウントするなんて…!
『狙い撃ちっ!』
『当たるものか!』
中距離の間合いで回避された!?
その後も数発放つも私の粒子ビームが当たらない…!
スローネ アインであの機動、最大値を引き出してる!
『貰ったぞ!』
『ハロちゃん…!』
一気に詰められた間合いに、ハロちゃんへ近接サポートを要請する。
そのおかげで即座にサハクエルはGNビームサーベルを抜刀し、同じく斬りかかってきたアインに対応できた。
でも、刹那の間で刃が斬り上げられる。
『え…?』
『そんな機械じみた剣筋が私に通用するものか!』
『なっ…!?』
そんな…!
切り上げたと同時にもう一本を抜いて私のビームサーベルが壊された。
それ以外損傷はないけど危なかった。
後退が間に合って良かった…。
『サハクエル!』
『距離を取るつもりか……そんな猶予は与えん!』
サハクエルで大きく旋回してGNランチャーの狙撃を回避する。
鳥の如く自由に飛び回るサハクエル。
なんとか避けてるけどこれはいつか当たる。
行動パターンが読まれるだろうし、私の脳内で構築したそれも底を尽きかけてる。
ここは一旦衛星の影に隠れて狙撃態勢に入ろう。
距離さえ取れば私の間合いになる!
『衛星の影に隠れるか…。無駄なことを』
サハクエルが衛星の後に回り、アインがGNランチャーから高出力の粒子ビームを放つ。
当然、衛星は粒子ビームが直撃して溶けるけど……そこにサハクエルの姿はない。
『なに?』
『狙い撃ちっ!』
『左か!』
隣の衛星から飛び出たサハクエルにネルシェンさんは瞬時に捕捉した。
まったく、どんな反射神経してるのって愚痴りたいくらいに早い!
『くっ…!』
『避けられた。でも…!』
ドッキングしたGNツインバスターライフルから放った砲撃もアインは躱す。
そこにもう一撃、粒子ビームを撃ち込んだ。
無茶な回避行動の後は避けられない…!
さらにいつもの避けても当たる狙撃だから尚更。
『これで…!』
『チッ、仕方ない。あの男の真似をするのは癪だが……』
『……っ!』
ネルシェンさんは呟くと腰部のパーツを切り取って、GNランチャーでそれを撃ち抜いた。
爆発の衝撃で粒子ビームの回避に成功。
あれはお兄ちゃんの……でも、驚くのはそこじゃない。
『嘘、どうして!?』
『視覚情報に騙されるとでも思ったか?』
『カラクリを…!』
私が驚愕している隙に接近しようと加速するアイン。
そうはいかないと後退しながら射撃するサハクエルに、アインのGNランチャーで応戦する。
間違いない、ネルシェンさんは必中狙撃のカラクリを理解している。
あれの真相は相手のコクピットから見た視覚情報の誤差を利用したもの。
相手には右に向かう弾道に見えても実際は左に向かう弾道、それが回避しても被弾することになる。
それをネルシェンさんは見破った。
でもどうして?
ネルシェンさんに必中狙撃を見せたのは1回だけなのに……。
『1回で見抜いたとでも言うの…!?』
『貴様の技は全て見切っている。回避誘導による挟撃もな』
『あぁ……っ!』
たった今アインを追うように放つ粒子ビームで、ある座標へアインを導こうとしていた。
そこに到達した時、追いついていない射撃に見せかけたフェイクをやめ、先回りして狙い撃つ。
そんな挟撃を実際に行ってネルシェンさんはまた避けた。
私が私の間合いで遊ばれてる……!
『そんなこと!』
『甘い…!』
『……っ』
間合いを詰めようとするアインに放った粒子ビームもGNランチャーで相殺される。
完璧に入られた、近接は免れない。
GNビームサーベルの刃を生成して迎え撃たないと…!
『ハロちゃん!』
『私にその剣は通じん!』
『くっ…!』
刃が衝突して火花を散らす。
でも完全に圧されている。
技も見破られてる今、近距離も遠距離もネルシェンさんに劣ってる!
でも、それでも…!
負けるわけにはいかない。
もう奪い合いのない世界を作るために。
連鎖を再開させたネルシェンさんを倒す。
────《Zero Mode Burst System》────
私の瞳が色彩に輝き、サハクエルのコクピット端末に文字が表示される。
ここからは全力でいく!
私のありったけの力を振り絞ってネルシェンさんの剣と真正面からぶつかった。
『なんで貴女は他人から奪うの!?ミハエルから奪ったのはなんで!!』
『なに?何故奪うかだと?軍人に戦いの意味を問うなどナンセンスだな、人である限り奪い奪われるのは当然の摂理だろう』
『そんなことない!奪おうとするから奪い合いが絶えない!ヨハンさんとミハエルはもう奪わないと誓ってくれた…なのに、貴女がっ!あの二人から奪ったの!』
ウイングバインダーでアインを突き、そこに蹴り込む。
空いた間合いで右腕に装備したGNツインバスターライフルでの射撃、それをアインは躱しつつGNランチャーで牽制してくる。
回避に意識を割いたサハクエルにアインは再び斬りかかってきた。
左のサーベルで刃を防ぐ。
『甘えた事を!奪い合いは始まれば終わりなどない!唯一終わるとすればそれは全てが滅んだ時のみだ』
『その考えが連鎖を生む…っ!』
『くっ…!』
マシンキャノンを発砲しながらサハクエルがアインへ頭突きする。
アインの目は片方壊れ、僅かな隙の間に機体を蹴り飛ばした。
さっきのドライみたいに顔面部を破壊する手はモニターなしで充分戦えるネルシェンさんには効果が薄い。
ならモニターに障害を与えつつ蹴り込むのが正解だった。
それにこれなら距離が取れる。
私は負けられない。
連鎖を撃ち抜くと決めたから。
ミハエルの為にも、例え通じなくても常に最善手を打つ。
『もうこれ以上、奪わせない!貴女をここで狙い撃つ…!』
『やれるものならやってみろ…!』
GNツインバスターライフルの粒子ビームを連発しても、ネルシェンさんは避ける。
それでも狙いを変えない。
極限の『集中』を保ち続ける!
『絶対に許さない!ヨハンさんとミハエルの想いを踏みにじった貴女を…!私の大切な人から奪った貴女を!!貴女は戦いを生み出す
『喚いていろ。貴様らも同じ穴の狢だろう』
何度も衝突し合い、火花を散らし叫び合う。
私の振り下ろしたサーベルを競り合いで防ぎ、GNランチャーの弾道をサハクエルの顔を傾けて避ける。
またウイングバインダーで距離を取り、後退しつつ粒子ビームを放った。
『違う!私は、止める…!その為に戦う!』
『矛盾しているな。戦いが生むのは奪い、奪われるだけだ…っ!』
『うっ……!』
遊撃戦に移り、何度もぶつかり合っていたサハクエルとアイン。
その末にネルシェンさんが私の懐に侵入し、ビームサーベルを下段から振るう。
GNツインバスターライフルを一丁両断されてしまった。
でも、諦めない。
左腕用のライフルを右に持ち替えて、右腕用のサーベルを左に持ち替える。
ドッキングなしでもやりようはあるはず、そう信じて…!
『私は奪わない!』
『くっ……!』
腰にマウントしてあるビームサーベルの刃を形成して蹴り飛ばし、アインを妨害したところに射撃する。
粒子ビームがアインに命中し、GNシールドで防がれたけど追撃の斬撃でそれを両断する。
苦手な近接でシールドを奪えた!
だからといってここで気を抜いたらその隙をつかれる。
そこで意識を割くほど集中力は落ちてない。
寧ろ私の能力はまだ健在している。
『貴女からも奪わない。絶対に…!』
『無駄だ。いずれは奪う側になる。今は被害者面をしていられるかもしれんが、それもいつか終わりが来る…!』
『うぐっ……!?』
切迫していたサハクエルにアインが腹部に蹴りを打ち込む。
手は抜いていない、全力の接戦でネルシェンさんの機動にやられた。
マズい、態勢が…!
『狙い撃ちっ!』
『貰った…!』
蹴られた衝撃で後ろに引っ張られるような感覚を背負いながらGNツインバスターライフルの銃口から粒子ビームを放つ。
ネルシェンさんとの戦いはコンマで決まる。
体勢を立て直す暇はないけど、それでも間に合わなかった。
ネルシェンさんは私の弾道を避け、GNランチャーでのネルシェンさんの弾道がサハクエルの右脚を通る。
そして、赤黒い粒子ビームで抉り取られた。
『きゃあ…!?』
『生温い貴様に教えてやろう。貴様の並べる御託など所詮は理想論だということをな…っ!!』
『……っ!』
二本のサーベルを手にアインが迫ってくる。
この速度、避けられない。
ネルシェンさんの技量なら必ず私を貫く。
近接は彼女の間合いで私では足元にも及ばないから。
でも、それでも諦めない。
ネルシェンさんの否定を私は否定する。
もう悲劇は見たくない。
だから、どんなことをしてでも戦いを止める。
奪い合いを終わらせる。
その為に必要な『力』、この状況を打開する『力』は――!
ふと、脳裏に浮かぶ。
私が自分で作り出した擬似太陽炉。
初めてオリジナルの太陽炉を見た時、私はすぐに違いに気付いた。
その違いを埋めるには何十年と年月を掛けないといけないことも。
そして、オリジナルの太陽炉の可能性。
計算上可能だと想定されるブラックボックスの存在も見抜いた。
それが、やりようによっては擬似太陽炉でも使えるということも……。
今、迫り来るこの刃を避けるため。
私の信念を壊させないために、あの『力』を使う。
例え一度
私は理想を叶える…!!
『墜ちろ…!』
『それが――』
『なに!?消えた…?』
忽然と。
ネルシェンの振るった刃はサハクエルの左腕だけを斬り落とし、サハクエルは消失した。
ネルシェンでも予想だにしていなかったために驚愕する。
だが、すぐさまモニターではなくレーダーを確認したのは流石だった。
でなければ、高速で動く機影を知ることはなかったのだから。
『これは…!このスピードはまさか…っ!』
視界の中で捉えられない双翼の機体にネルシェンは表情を苦しくする。
通達は来ていた。
ソレスタルビーイングのガンダムは謎の赤い光に包まれると機動性が格段に上がるという話が。
そして、それが――。
『トランザム!!』
TRANS-AM SYSTEM。
レナ・デスペアが自ら発見したイオリアの産物。
赤く輝くサハクエルは縦横無尽に飛翔し、