ネルシェン・グットマンのガンダムスローネアインによる大きな打撃→アレハンドロ・コーナーのアルヴァトーレ、アルヴァアロンによる大きな打撃
です。
トランザム、TRANS-AM SYSTEM。
イオリアさんがGNドライヴに託した極秘のシステム。
オリジナルの太陽炉のみに与えられたブラックボックス。
私はハロちゃんの中に内蔵されていたデータからGNドライヴを作り出した。
でも、オリジナルの太陽炉を初めて見た時に私の作った太陽炉は完全じゃないことを知った。
最初はびっくりしたけど、炉心部にTDブランケットの有無という違い。
擬似太陽炉の欠点である限界時間。
そこから太陽炉についてオリジナルも知れた私はある可能性に気付いた。
それが初めはオリジナルにのみ与えられたブラックボックスだったとは知らなかったけど、擬似太陽炉を故意に臨界状態にして半ば暴走させれば、機体の各部に高濃度で圧縮・蓄積されているGN粒子を全面開放する事で、機体の出力を通常の約三倍に引き上げて、性能を一時的に向上させることができるかもしれないという思考に至った。
一度使うと中断もできないし、擬似太陽炉は焼き切れて使い物にならなくなる。
後から知ったオリジナルのTRANS-AM SYSTEMよりもリスキーだけど、それが諸刃の刃だとしても切り札であることには代わりはない。
だから、私は奥の手としてトランザムを採用した。
その結果、人を殺してしまうとは知らずに。
トランザムを実行した時、私は初めて人殺しをした。
他人から奪ってしまった。
――命を、未来を。
だから、私は封印した。
もう二度と使わないと誓った。
でも、使った。
ネルシェンさんの駆るスローネ アインに対して、切り札を切った。
トランザム、それは奪うことの出来る力。
――私は奪わない。
奪える力で奪い合いの連鎖を撃ち抜くために使用した。
ごめんなさい、イオリアさん。
私は使い方を間違えたかもしれない。
ううん、間違えてしまった。
それでも、もう一度チャンスを。
機会をください。
戦いを止めるために――――!
『トランザム!!』
『あの光は…っ!話に聞いてたものか!』
赤く輝くサハクエルに、ネルシェンさんも反応する。
トレミーのマイスターさん達が使ってるから伝達は来てるのか、知ってる装いだ。
でも、本質は知らない。
まだネルシェンさんは体験していない。
ネルシェンさんの知らない力、もう対抗するにはこれしかない。
無駄にはできない。
これは、私に与えられた最後の
『サハクエル、駆けろ……っ!』
左腕と右脚を失ったサハクエルに声を掛ける。
サハクエルはそれに応えるように加速し、アインのGNランチャーとGNビームライフルから放たれた粒子ビームを掠りもせず旋回した。
ネルシェンさんの射撃が当たらない。
今ならあの人でも知覚できない…!
『機動性が飛躍しただと!?』
『はああああああああああっ!!狙い撃ちっ!』
『くっ…、ライフルを……!』
衛星の影を利用して高速で行動するサハクエルからアインの手に収まっていたGNビームライフルを狙撃、撃ち落とす。
初撃は手放させ、アインが拾おうとしたところを破壊した。
次はGNランチャーを狙う!
『舐めるな!!』
予想通り、GNランチャーでサハクエルを追ってきた。
でも粒子ビームはトランザム状態のサハクエルには弾道すら通らない。
機動性に長けた機体であるサハクエルには敵わない。
いくら軍内トップの
『狙い撃ちっ!』
『当たるものか!』
『狙いは貴女じゃない…!』
『なっ……』
多方向から狙い撃った弾道をネルシェンさんは避けた。
だけど、目標はアインの傍にあった6つの衛星。
それを粒子ビームで粉砕する!
『ぐあっ…!』
『今だ!』
粒子ビームじゃ溶かしてしまうけれど、ある程度の大きさを持つ衛星ならば中央を撃ち抜くことで残骸が辺りに散らばる。
その一部はアインを背後から襲い、ネルシェンさんには隙ができる。
ここで一気に詰めるしかない。
時間のない中、トランザム状態のサハクエルは高速で距離を縮める。
『私の間合いに来るか…!』
『今は私のだよ!』
なんたって
今の私にとっては全てが私の間合い。
全力のサハクエルと私は伊達じゃない…!
『狙い撃ちっ!』
『そうはいかん…!』
『外した…っ』
後からの衝突で反るように体勢を崩していたアインに弾道を走らせたけど、避けられた。
かなり無理な戻り方をしてたけど、そうまでしてGNランチャーを奪われたくないみたい。
当たり前か。
もはや唯一の遠距離用武装。
逆に捉えればGNランチャーさえ奪えば私に勝機がある!
『貴様の狙いは分かっている!』
『分かってても避けられない!』
『ははっ、いつまでも対応出来ないとでも思ったか…!』
『当たらない…!』
一旦接近を止め、飛び回りながら射撃するけどアインは被弾しつつも避ける。
……本当に対応が追いついてきた。
このままじゃいつか弾道が完全に読まれる。
高機動で動けても打撃を与えられなければ意味がない。
何か、打開策を…!
『そんなの狙い撃つのみ――!』
────《Zero Mode Burst System》────
私の瞳が色彩に輝き、サハクエルのメイン端末に文字が浮かぶ。
何度でも限界を超える。
例え脳が焼き切れるとしても!
『今度こそ、狙い撃つよ…!』
『狙イ撃ツゼ!狙イ撃ツゼ!』
ハロちゃんも呼応する。
両耳をパカパカと開閉して照準のサポートをしてくれた。
『いっけぇぇぇええええーーー!!』
『なに!?』
GNガンバレルを残り全て四方八方に展開する。
サハクエル、ガンバレルのそれぞれの方角から銃口で捉えられるアイン。
もう私達の網の中!
この中では圧倒させてもらうよ……!
『――狙い撃ちっ!!』
引き金を引く。
GNガンバレルとGNツインバスターライフルから放たれた粒子ビーム。
さらにトランザムにより、圧縮粒子解放の原理でそれぞれが縦横無尽に動き回る。
さしづめ粒子ビームの檻がアインを襲った。
『全方位から…っ!ぐっ!』
アインの左腕、右足から右脚、左脚へと繋がる関節部――そして、GNランチャーも奪った。
これで中距離と長距離間に対応できる武装はない!
『貰ったよ…!』
『……ッ!舐めるなと言っているだろう…!』
『捨て身!?』
アインが檻を強引に突破しようと加速した。
でも、違う。
これは捨て身じゃない!
サハクエルとガンバレルに囲まれた時から片腕と両脚、GNランチャーを意図的に被弾させたんだ。
自身の的を小さくするために。
接近を予め考慮して、後に繋いだ…!
『柵を回避して…!』
『この機体ならば当たらん!』
『そうだとしても…!』
距離を詰めてくるアインに対してGNガンバレルが追いかけ、撃ち落とそうとする。
でも、ネルシェンさんは反射能力と対応力で弾道を通らない。
『その機体状況でどうして!』
『全てはナオヤの為に…っ!』
『個人の為に他人から奪うなんて…!貴女は歪んでいる!』
『私は至って純心だ。ナオヤへの愛がその証…!』
『くっ……!』
バスターライフルの粒子ビームも避け、遂に近接の間合いに侵入してきたアイン。
GNビームサーベルを振り下ろしてきたのをサハクエルはトランザムで回避する。
本来なら避けた後にGNランチャーで追われるけど今はその心配もない。
だから、慎重に尚且つ制限時間内に倒さないと…!
『焦っているな』
『えっ?』
距離を取った筈なのに近くからネルシェンさんの声がした。
慌てて振り向くと、サハクエルに肉迫するアインの姿が、GNビームサーベルを手に私を捉えている。
『詰められた!?』
『動きに無駄が出ているぞ…!』
『……っ』
斬撃を躱す。
ネルシェンさんの一言で分かった。
回避行動の後、追撃されないのをいい事に少し油断してた。
だから、無駄な旋回時に詰められたんだ。
でも、それさえ分かれば同じ徹は踏まない!
『今度こそ貴女を倒す!』
『私が負けることなど、ないっ!!』
バスターライフルの射撃を止め、さっき切り落とされた腕部と共にあるGNビームサーベルを拾って刃を形成。
トランザムの加速を利用して斬りかかってたけど、ネルシェンさんはそれに対応してビームサーベルの刀身をぶつけてきた。
『これにも対応できるというの!?』
『タイミングは読んでいる!』
『なら…!』
トランザムによる高速移動でアインの周囲を飛翔し、全方位から刃を振るう。
その度にネルシェンさんは胴体部の角度を変え、刀身で防ぎ、あるいは背に刃を回して弾いた。
『残量粒子が…っ』
『攻め手に欠けているな。その状態もいつまでも持たんのだろう?』
『トランザムの限界時間を…!』
『無限に持つのなら初めから使っている筈だ!』
今度はネルシェンさんから斬り掛かってきた。
トランザム状態の動きが読まれてる。
違う、トランザムを使った私の動きを…!
『なら読み切られる前に決めるっ!』
『ぐうっ…!?』
アインの剣を避け、サハクエルの足で蹴り込む。
体勢を崩したアインはそれでも私に食らいついてきた。
『私は負けん!負けることなど許されない!!』
『ぐっ…!どうしてそこまで!』
GNビームサーベルを用いての競り合い。
サハクエルのモニターにネルシェンさんの顔が映される。
『貴様を倒せば功績として認められる。そうなれば、ナオヤの有用性がまた向上する…!』
『貴女の功績を与えるというの!?そんなのナオヤさんの成長には繋がらないよ!』
『そんなものはどうでもいい!貴様に何がわかる!?ナオヤは、いつかイノベイター共に捨てられる…。奴らはナオヤのことを同胞としては見ていない。だからこそ、証明する必要がある!!』
『ぐっ…!何を!?』
一瞬圧され、刃を叩きつけられた。
顔を顰めつつ尋ねるとネルシェンさんは身を乗り出すが如く叫んだ。
『言っただろう…!ナオヤの有用性だ!!』
『……っ!』
『イノベイター共にナオヤが必要だと知らしめる!』
『その為に戦うというの!?』
『そうだ!』
『そんなの身勝手過ぎるよ!なんでヨハンさんとミハエルが奪われなければならないの!?』
『ならばナオヤは奪われていいというのか!』
『あっ……』
ネルシェンさんの指摘で矛盾に気付いた。
私は奪う側なの…?
『それは……』
『ナオヤの未来は私が保証する。私が築く。その為の犠牲に貴様もなるがいいっ!!』
『……っ』
私の躊躇の隙を利用して、アインがサハクエルのビームサーベルを切り上げる。
さらに勢いを殺さずに回転して、左側から横薙ぎに振り払おうとする。
私の視界、右端から迫るサーベルを捉えるも戸惑う私は反射的に反応しつつ対応していいのか躊躇している。
ネルシェンさんを倒すことが本当に奪い合いの連鎖を無くすことに繋がるの…?
彼女を超えた先にはナオヤさんの未来を奪った私がいるのに――。
ここでネルシェンさんを淘汰することが正しいのか……分からない。
奪うことをやめたヨハンさんとミハエル。
その二人から全て奪い、連鎖を再開させたネルシェンさん。
そんなネルシェンさんを私が倒せば、今度は私が奪うことに――連鎖を生むものになる。
私は……。
――――『俺はレナのために戦ってやんよ。もう無茶はさせねえ。その為に戦いを終わらせてやる。俺のガンダムでな…!』
………ッ!
違う。
ナオヤさんは既に奪われている。
自分で歩くはずの未来を。
ミハエルのように自分の意志で突き進む明日を。
ネルシェンさんに…!
他人によって決められる運命。
そんなもの、誰も求めていない。
だから――だから……っ!!
『私の、ガンダムは……』
『終わりだッ!!』
高出力の刃が迫る。
トランザムの限界時間は残量粒子から推測するに、あと3秒もない。
決めるなら、今。
『私のガンダムは…!戦いを終わらせるための……っ!!』
『なんだと……っ!?』
スローネ アインの右腕を切断し、流れるように横薙ぎされた刃をくぐり抜ける。
再びGNビームサーベルを構えたサハクエル。
剣先はただ一直線に敵を捉える!
『私が破壊する、奪い合いの絶えないこの世界を!私のガンダムで……っ!!』
『しまった…!』
擬似太陽炉を、壊す…!
『はああああああああああああーーーっ!!』
剣先をスローネ アインに向けて加速させる。
狙うは顔面部から背中のGNドライヴ。
トランザムはまだあと2秒もつ。
1秒で破壊して、残った1秒でコクピットを掴む。
ハッチはマシンキャノンで強制的に開ける。
これで――っ!
『よせ、やめろ……っ!』
『………っ!』
スローネ アインにサーベルが触れようかという時、ネルシェンさんの制止の声が耳に入る。
同時に脳裏に記憶がフラッシュバックした。
全く同じ構図、状況下のあの時が。
――――『よ、よせ!待ってくれ!話を――』
――――『え?』
――――『ひぃっ!?うああああああああああああーーーーっ!?』
制止に戸惑い、突き刺してしまったあの時。
私が初めて人を殺した時。
悲痛に叫び、無慈悲にも身体が切り裂かれる『あのイノベイド』の声が谺響する。
瞬間、私の集中が切れた。
『あ……っ』
『がはっ…!?』
振り下ろしたGNビームサーベルはスローネ アインのコクピットを的確に穿つ。
それと同時にトランザムの限界時間が訪れた。
サハクエルから赤い輝きが消える。
『あああああぁぁぁぁああああ……っ!貴様ぁ…!ぐっ…、あっ……!』
『あ、あぁ……っ』
有視界線通信越しに鮮血を散乱させながら苦しむネルシェンさんが映る。
スーツに血液が滲み、バイザーはひび割れ、ネルシェンさんは確実に損傷した。
……私が狙いを外したせいで。
『貴様…、よくも…っ!ごふっ!?』
『ネルシェンさん!』
恨めしく私に手を伸ばしたネルシェンさんが鮮血を吐く。
ヘルメットのバイザーが血に濡れてネルシェンさんの表情が伺えなくなった。
それでも分かる。
私を、憎み、強く睨んでいる。
彼女の眼光が私を捉えている。
『これが……貴様の言う…奪わない、という……ことか…っ。笑わせるな……!!』
『……っ』
息が詰まるのを感じる。
焦りと動揺から背が蒸れる。
私は、また……。
『違う……そんな、つもりじゃ…』
『やはり、貴様も…同類だ…。はは、はははははっ。ははははははははははは!!うっ!』
『ネルシェンさん…!』
吐血の漏らしを耳にしてレバーを引く。
けれど、サハクエルは動いてくれない。
システムも落ちかけてる。
「そんな…!」
『太陽炉ブッコワレタ。太陽炉ブッコワレタ』
「擬似GNドライヴのオーバーヒート…!」
トランザムの影響で擬似太陽炉が焼き切れてしまった。
残量粒子も粒子貯蔵量も底を尽きた。
サハクエルは、もう飛べない。
『ネルシェンさん!』
『……待て、なぜ私が…負けている……。あれ…?なんで?はは…っ、悪い夢だ…!そうだ、そうに違いない!』
『……錯乱してる』
私のせいで…。
『クソ…何故だ…。私は強い、筈だ……。強者だからこそ、この強さを…ナオヤに……与え…っ』
半壊し、むき出しになったコクピットからネルシェンさんの様子が窺える。
錯乱したと思ったら正気を取り戻して今度はヘルメット越しに頭を掻き毟るように抱え始めた。
凄絶な混乱に襲われている。
『翼持ち……貴様の方が、強いと…いうのか……』
『……』
サハクエルに手を伸ばすネルシェンさん。
その呟きに対する答えを私は持っていない。
『あぁ…ナオヤ……っ、私の…存在価値は―――』
『ネルシェンさん…?』
有視界通信が、切れた。
胴体部だけとなったスローネ アインは黒煙を上げながら
このままじゃ外宇宙に…っ!
「サハクエル、動いて!ネルシェンさんを助けないと――」
『―――ところがぎっちょんっ!!』
「え?」
刹那、狂気を含んだGNファングが視界に映る。
8基の反応。
その全てがサハクエルへと迫る。
これは――ツヴァイの―――。
「…………ッ!!」
『レナ。レナ』
敵機を知らせるハロちゃんの警告。
掴めなかったネルシェンさんの手。
GNガンバレルの砲撃とGNマイクロミサイルによる弾幕を潜り抜けたファングのうち2基が襲ってきた。
右肩部と胴体部のみ残ったサハクエルが
その中で――。
『ぁぁ……っ。そん、な…』
爆煙から抜き出したサハクエルのコクピットの中で
遥か先のラグランジュ1では赤と緑の光が交差してる……まだ戦いは終わってない…。
こんな、ところで……っ。
『ミハ…エル……』
ミハエルの為にも。
奪い合いの連鎖を断ち切り、戦いを止めるって決断したのに……。
また、私は……。
『お兄ちゃん…戦いを、止めて……』
まだ兄が残ってる。
最後の希望を、あの人に……。
そして、スローネ ツヴァイのGNハンドガンから粒子ビームの凶弾が放たれた。
ボツ案
マイン「見つけたわよ、ガンダム…!」
↓
ネルシェン「あの時の狙撃手か…!」
↓
サーシェス「ところがぎっちょん!!」
↓
ダリル「そこにいたかー!ガンダム!!」
↓
???「会いたかった……会いたかったぞ、ガンダム!!!」