息抜きで書いたイノベイター転生   作:伊つき

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先行投稿です。2ndの試し読みだと思ってください。


2nd season
天使再臨


西暦2312年。

国連軍とソレスタルビーイングによる大規模な戦闘『フォーリンエンジェルス』の終結から、4年の歳月が経過した。

各国家群は地球連邦として統一を果たし、世界は1つになりつつある。

 

地球には、国連を母体とした地球連邦政府が設立され、連邦政府が主体となった新たな支配体制が築かれていった。連邦軍はその中で、さらなる国家の統合と人類の意思統一を謳い、連邦軍とは別の独立治安維持部隊『アロウズ』を設立する。

アロウズは反政府勢力の撲滅を活動とし、恒久和平を目指している。

我々が相手とするのは反政府勢力『カタロン』、そして――。

 

 

『プラウドまで距離2300』

『GN粒子の散布、通常濃度を維持』

 

オペレーターの声が耳に入る。

俺は出撃準備のためハッチへと上げられたMS(モビルスーツ)のコクピットにて待機していた。

もうすぐ反政府勢力に対する作戦行動が開始される。

暫くするとアーサー・グッドマン准将による指示が入った。

 

『反政府勢力の掃討作戦を開始する!』

「了解。アヘッドの機体状況を確認します」

 

システムのオールグリーンを端末の操作で全て目に通す。

武装も完璧だ。

擬似GNドライヴも正常な数値を示している。

4年前は圧縮粒子に人体への有害という問題があったが、今はそれも解決した。

そんな擬似GNドライヴを搭載するアロウズの最新鋭機。

それがGNX-704T アヘッド。

俺の駆るこの機体で恒久和平の実現を為すのだ。

 

「作戦内容は……オートマトンを用いたプラント襲撃か。やり方は相変わらずだな」

 

思わず嘆息ついてしまった。

そこまで掃討作戦がしたいか。

しかも、GNコンデンサーを積んだオートマトンだとか。

殺意が高すぎやしないか?

まあ俺が何を言っても通りはしない。

黙って従うけどな。

 

『大尉。出撃準備は整ったかね?』

「ハッ!勿論であります、アーサー・グッドマン准将」

 

まさか直々に通信を繋いでくるとは…。

急に繋ぐのやめろ。

いつでも対応可能なわけじゃないんだよ。

直接言える立場でもないから内に秘めておくけど、愚痴りたい気持ちは抑えられない。

即座に答えた俺に、准将は快く頷いた。

そして、試すように俺に挑戦的な笑みを浮かべる。

 

『レイ・デスペア大尉。イノベイターの実力、見せてもらいますぞ』

「了解。ご期待に応えましょう」

 

敬礼すると通信が切れた。

満足のいく答えが貰えたようだ。

やれやれ…。

気に食わないからってちょっかい出すのやめて頂けませんかね。

 

『ハッチオープン。繰り返します、ハッチオープン』

「アヘッド、オートマトン搭載コンテナ、接続完了。各機能異常なし。オールグリーン」

 

アナウンスが響く中、ハッチが開き、アヘッドの頭部が露わになる。

主に宇宙で運用されるアロウズの戦艦バイカル級航宙巡洋艦は出撃用ハッチに頭部を向ける形で格納されているからな。

発艦の際はハッチが前方へスライドし、そのままカタパルトとなる。

俺も最終確認を済ませ、射出準備が完了した。

そして、タイミングを俺のアヘッドに譲渡される。

 

『アヘッド デスペア機。出撃』

「了解。アヘッド、レイ・デスペア。出る…!」

 

指示の通りにタイミングを合わせてカタパルトから飛び立つ。

現れるのは図太い機影。

擬似GN粒子を放つ、俺のアヘッドはそのまま進路方向へと凶悪な四つ目を輝かせて宇宙(そら)を飛翔した。

 

向かうは建設途中のプラウド。

バイカル級航宙巡洋艦が位置する宙域から距離2300の座標にあり、主にカタロンの内通者などの違法者を高重力で強制労働させている。

いわば環境の悪い収容所だ。

そんなプラウドにカタロンの艦隊が構成員の救出作戦を行うとの作戦がこちらの耳には既に入っている。

まあこっちにはバックにリボンズがいて、『ヴェーダ』を掌握してるんだ。

事情を知ってる身である俺からすれば当然の結果だな。

 

『……まったく、骨が折れる』

 

上手く立ち回ってるこっちの身にもなって欲しいものだ。

なんて思いながら目標地点へと到着した。

レーダーにカタロンのものと思われるMS(モビルスーツ)部隊を補足する。

他には、戦艦が1隻か。

……俺の目が正しければプラウドに突っ込んでいる。

モニターを拡大して見ると、どうやらあの地点から救出を行ってるらしい。

なんとも必死な作戦だな…。

 

と、状況整理のために観察していたら接近する機影を確認した。

ちょっと悠長過ぎたか。

カタロンのMS(モビルスーツ)部隊が戦艦を守るように展開されている。

放たれる弾幕は避けるまでもないが、一応躱す。

アヘッドだと余裕だな。

相手の機体はリアルドを中心とした旧型。

もはや敵ではない。

 

『作戦行動を開始する』

 

たった一言、それだけを口にして加速する。

弾道を避けつつ引き金を引くとGNビームライフルの銃口が粒子ビームを噴き、手前にいたリアルドの武装と脚部を奪った。

そのまま加速は緩めず敵部隊の中央を突破する。

 

『なっ!?速い…!』

『ひ、怯むな。撃て!』

 

通り過ぎた俺にリニアライフルでの実弾で後ろから襲うが、アヘッドには当たりはしない。

擬似太陽炉を詰んだ最新鋭機の機動性に旧型の射撃武器など何発放っても結果は同じだ。

 

『諦めろ』

『ぐあっ!?』

『そんな……っ!』

 

残った2機のリアルドも四肢を撃ち落とした。

先に潰したリアルドはさっきスラスターを破壊しておいたから既に戦闘不能だ。

通りすがりの時に背後から撃たせてもらった。

 

『い、一瞬で…』

『トドメを刺さないのか…?』

 

敵パイロットから唖然とした声を拾う。

悪いが伊達にイノベイターは名乗ってないんでな。

さて、MS部隊は片付けた。

次は対艦を……じゃなくてオートマトンか。

戦闘に大して時間は食ってない。

作戦時間通りに降下させれそうだ。

これなら――。

 

『プラウドに到着。コンテナ分離。新型オートマトンの稼動を開始する』

 

何の迷いもなくオートマトンを下ろす。

オートマトンは即座に展開し、プラウドへ侵入。

すると、すぐに中からの断末魔が響いた。

 

『む、無人のオートマトン!?』

『うわああああああ!!』

 

『……』

 

正直、こればかりは()()()救えん。

まだ生体反応は減っていない。

頼むから間に合ってくれよ…。

 

『ん?』

 

ふと視界の隅に妙な緑光が写った。

見間違えでなければGN粒子のような気がしたが…。

粒子の色は連邦の赤ではない。

だとすれば彼らだが――と、思考を巡らせるとEセンサーが何やら反応を拾った。

なんだ?

これは――上からの機影!!敵機か!?

 

『────────!』

『……っ!』

 

突如上空から振り下ろされた一閃を避ける。

一瞬、目前にチラついた粒子。

あの色は連邦のものじゃない…!

まさか――。

 

『ガン、ダム……』

『────────』

 

俺の見上げる視線の先に青と白の塗装に身を包んだガンダムが浮遊していた。

左肩から腕部は無く、それを隠すようにマントで覆われている。

眼も右はティエレンから流用したものか。

何処かで見覚えがあると思えば……元ティエレン乗りだからこそ気付いた。

GNソードを構える隻眼隻腕のガンダム――俺はこの機体の名を知っている。

 

『エクシア、ガンダムエクシア……』

 

GN-001 ガンダムエクシア、マイスターは刹那・F・セイエイ。

戦争根絶を掲げるソレスタルビーイングが武力介入に用いたオリジナル太陽炉搭載型MS。

だが、それは5年前の話だ。

 

『……執念の中、さ迷っていたか。来る…!』

『────────っ!』

 

GNソードを展開し、エクシアが突っ込んでくる。

よく見ればソードの刀身も折れている。

そんな機体状況で…!

 

『アヘッドに敵うと思うか!』

『破壊する!』

 

アヘッドのGNビームサーベルとエクシアのGNソードが衝突し、火花を散らす。

その中でエクシアのパイロット――刹那・F・セイエイの声が聞こえた。

 

『なに…?』

『ただ破壊する…!こんな行いをする貴様達を!!』

『……っ』

 

どうやらオートマトンでの掃討作戦を目にしてご立腹らしい。

気持ちは分からんでもない。

俺も乗り気ではない上に手回しはしてあるからな。

だが、当然俺の考えなど知る由もなくエクシアは競り合いながらブーストする。

 

『くっ…!』

『この俺が駆逐する!!』

 

圧されて思わず後退した。

アヘッドに対して力技とは、腐ってもガンダムというわけか。

エクシアはさらにGNソードをライフルモードに即座に変更して、粒子ビームでの追撃射撃を放ってきた。

実弾とは違い、破壊力の高い粒子ビームに防いだGNシールドが抉られる。

さすがに使い物にならないのでGNシールドは捨てた。

 

『レナの教えがあれば…!』

『……っ!』

 

エクシアの粒子ビームをGNビームライフルで狙い、撃ち落とす。

レナのように全弾命中するほど精度は高くないが半数は相殺した。

あとは避けつつ、距離を詰めるのみ。

右肩にマウントされたGNビームサーベルを抜刀して加速する。

 

『距離を…!』

『間合いに入った!』

 

証拠にエクシアがGNソードの刀身を戻す。

振り下ろした刃は再び衝突した。

今度は俺が叩き落としたおかげで、俺が優勢だが。

 

『はあっ…!』

『ぐっ…!』

 

火花が散る中、力比べが始まる。

だが、まだ俺の方が余裕がある。

ならこの際思ったことを言ってやろう。

 

『お前達の武力介入の結果がこの惨状だ!』

『……っ』

『ソレスタルビーイングの掲げた戦争根絶のために俺の仲間は死んだ!武力で解決するなんて矛盾を起こすから……っ!』

『ぐあっ!?』

 

競り勝ち蹴り飛ばす。

そこに粒子ビームを叩き込んだ。

 

『うぐっ…!!』

『俺達は奪わない。だが、お前達は違う。仲間の無念は張らさせてもらうぞ…!』

『……っ』

 

そうさ、協力はしたが思うところはあった。

俺は忘れない。

奪われた命を、起きた悲劇を。

その分の咎は受けてもらう…!

 

『墜ちろ、ガンダム!!』

『ぐああーーっ!しまった…!』

 

投擲したGNビームライフルでエクシアは体勢を崩す。

そこにGNビームサーベルを左肩からも抜刀して距離を詰めた。

そのまま一閃、エクシアの両腕を斬り落とす。

そして、隙だらけの機体に二刀で斬り刻もうとしたその時――別方向から粒子ビームが飛来した。

 

『なに!?』

『……っ!?』

 

咄嗟に後退したが、ビームサーベルが破壊された。

クソ、武器が…!

一体どこのどいつだ!

いや、本当は()()()()()

しかし、聞いてたよりも早い。

 

『まさか…!』

 

丁度さっき粒子がチラついた方角に目を向けると、こちらへ接近する機影をEセンサーが同時に察知した。

俺の肉眼も捉える。

白黒の塗装に重装甲――だが、5年前の『デカブツ』程ではない。

両肩と腰部に二門の砲門。

そして、この機体も緑のGN粒子を散布している。

このMSはリボンズからも聞いていない…!

 

『新たなガンダム!』

『──────────』

 

両肩の砲門に捕捉されている。

面倒な…!

 

『……っ!』

 

予測通りの弾道に放たれた粒子ビームを回避し、大型のガンダムとの距離を取る。

恐らく、レナに聞かされていた『新型』…。

口頭で伝えられた情報と姿も武装も酷似している。

 

「セラヴィーガンダム。確かパイロットはティエリア・アーデか。奴も俺達と同じ……」

 

『セラヴィー、目標を確認。戦闘を開始する』

 

「……っ!攻撃態勢!」

 

セラヴィーが得物を構え、俺のアヘッドを捉える。

主武装は確かGNバズーカIIだったか。

デカブツとは違い、上下分離可能の砲撃武装。

言わば速射性のある二門の砲口…!

 

『攻撃を開始』

 

『避けるしかないか…!』

 

セラヴィーのGNバズーカIIから放たれる粒子ビーム。

砲撃に近い射撃をアヘッドの機動で後退しつつ回避する。

遠距離型のMSにしては攻め寄り、推進してきたが、どうやらエクシアから俺を遠ざけるためらしい。

実際距離を取られた。

それにしても武装がない中、あの重装甲と重武装に対抗するのは不可能だ。

ここは撤退するしか――。

 

『セラヴィー、バーストモード』

 

「……逃がしてもくれないか」

 

俺の視界にGNバズーカIIを連結させ、ダブルバズーカを構えるセラヴィーガンダムが映った。

背を向けようとしたが止める。

全力で推進しても恐らく逃走ルートを逆算されて塵にされる。

だが、だからといって目の前の砲撃に対する対策もない。

ここまでか…!

 

『目標アヘッド、狙い撃つ――ぐあっ!?』

 

『増援!?』

 

砲撃体勢だったセラヴィーが粒子ビームの横槍を受ける。

GNフィールドも張っていなかったからか、被弾して砲撃を中断した。

俺のレーダーも友軍機を捉えた。

セラヴィーを狙撃したアヘッドが1機、戦闘区域に侵入する。

友軍機が介入してくるには早過ぎる。

指揮官が余程有能ではない限り、発進させない。

ガンダムが現れるなんて予想されてないからな。

ならば、自ずと選択肢は限られる。

この土壇場に独自の判断で無断出撃できるライセンス持ち、恐らく――。

 

『ネルシェン・グッドマン……』

『大尉だ。気安く呼ぶな』

 

俺の隣にまで飛来するアヘッドのネルシェン機。

隣接すると、モニターが解放されていつもの仏頂面が表示される。

そして、すぐさま鋭い視線を敵機に向けた。

 

『ガンダム……ッ、ソレスタルビーイングだと?』

『そのようだ。5年前の機体に新型もいる。未だ活動していると見て間違いだろう』

『それでこの失態か。イノベイターも程度が知れるな』

『ぐっ……』

 

プラウドに射出したオートマトンは既に全機ロストしている。

さらにガンダムとの交戦で武装を失い、カタロンに収容者救出の時間を与えてしまった。

現にカタロンの戦艦は戦線を離脱しようとしている。

今回無理を押し通して単独出撃を申し出た結果がこれだ。

嘲笑われても仕方ない……。

 

『フォーメーションα(アルファ)-12、これより作戦行動に介入する。異論はないな?』

『……あぁ』

 

GNビームサーベルを二刀受け取って、頷く。

アヘッドのネルシェン機はGNビームライフルを構えた。

フォーメーションα-12。

俺とネルシェンに与えられた144通りの連携の一つ。

互いに武装を交換し、ネルシェンが二丁銃、俺が二刀流のスタイルで近接と共に後方支援で敵を圧倒するというもの。

だが、俺のGNビームライフルは投げてしまったから、今回は俺が先行してネルシェンが拾いに行くまでの時間を稼いで体勢を立て直してから攻めなければならない。

まあこれも俺の失態といえばその通りだろう。

 

『行くぞ』

『了解!』

 

『新手か…』

 

俺のアヘッドが加速し、ネルシェン機がGNビームライフルから粒子ビームを放ちながら俺のライフルを拾いに行く。

セラヴィーもGNバズーカIIを分裂させて迎え撃つが、俺はその弾道を避ける。

そして接近し、刃を振り下ろしたが、粒子の壁に阻まれた。

 

「その程度…!」

『GNフィールドか!』

『チッ』

 

ネルシェンも射撃が通らず舌打ちする。

くっ…、肩部のGNキャノンIIの砲門が俺を捉えている。

この体勢じゃ避けきれない!

 

「墜ちるがいい!」

『クソ…!』

 

逆噴射で離れようとするが、距離を取れぬまま粒子ビームが放たれる。

だが、直撃するかと思ったその時にGNシールドが俺のアヘッドとセラヴィーの間に投げ入れられ、粒子ビームを弾いた。

 

「なに!?」

『ふん』

 

ネルシェンか……。

どうやら後方から投擲して助けてくれたらしい。

GNビームライフルと共にシールドも浮遊していたようだ。

ネルシェン機を見遣るとGNビームライフルを二丁手に持っている。

さすがの機転だ、エースパイロットなだけはある。

 

『今だ!』

『ぐっ……甘い!』

 

攻撃の際、GNフィールドが剥がれた。

そこにGNビームサーベルを叩き下ろすが再度展開されて防がれる。

だが、予測済みだ。

即時、展開が、可能なのは把握している。

振り下ろした刃は言わばフェイク、本当の狙いは――。

 

『……っ!』

『なに!?回避しただと…!』

 

GNビームサーベルを手放して高度を下げ、GNキャノンIIによる近接射撃を避ける。

そして、隙だらけのセラヴィーの胸に蹴り込んだ。

 

『ぐあっ!?』

『グッドマン大尉…!』

『私に命令するな!!』

 

衝撃を受け、無防備なセラヴィーに二丁のGNビームライフルからの粒子ビームが撃ち込まれる。

正確無慈悲な連射撃はセラヴィーを抉った。

 

『ぐああああああああーーっ!?』

 

肩部のGNキャノンIIと胴体部の装甲を被弾して白煙を上げるセラヴィー。

そのまま圧されて流れるかと思ったが、ダブルバズーカの砲口が一直線上の俺とネルシェンを捉えていた。

 

『タ、タダではやられない!』

 

『しまった…!』

『ぬかりがない!』

 

俺もネルシェンも直線上から抜け出そうと回避行動を取る。

だが、それより速くセラヴィーが球状に圧縮された粒子ビームが発射した。

 

『ぐっ…!』

『チッ!』

 

なんとか射程から逃れたが、俺のアヘッドは左腕と左脚を被弾して失った。

ネルシェン機は右手と右脚を同じく失っている。

 

『エクシアを連れて離脱する!』

 

『ネルシェン、逃げられるぞ!』

『気安く呼ぶなと何度言えば……っ!言われなくても分かっている!』

 

セラヴィーが半壊したエクシアを回収して逃亡する。

その背中をネルシェン機が撃ち落とそうと狙うが、放たられる粒子ビームは一筋だ。

GNビームライフルを一丁破壊されたか。

二丁での速射性を失ったせいか、セラヴィーは逃げられた。

まだ視界には捉えているが、あれでは粒子ビームは届かない。

これだけ離れていれば追っても撒かれるだろうな……。

 

『チッ、仕留め損ねたか。貴様の失態だぞ』

『……分かってるさ』

 

モニター越しに睨んでくるグッドマン大尉を一蹴して思考する。

リボンズからはソレスタルビーイングが滅んだと聞いていた。

しかし、俺の目の前にこうして再び現れた。

ソレスタルビーイングは、まだ生きている。

リボンズは彼らをやり損ねていたようだ。

 

「再起したか。ソレスタルビーイング……」

 

セラヴィーの去った宙域を見つめて呟く。

背部に見えた巨大なフェイスが復活を宣言しているように感じた。

数分後、俺とネルシェンは帰投命令を貰い、ソレスタルビーイングの再起は一瞬で伝達した。

アロウズはもちろん、世界にも。

 

 

 

 

 

『独立治安維持部隊は新たなガンダムと接触しました。そのガンダムがソレスタルビーイングであるかは未確認ですが、連邦政府はこの事態を……』

 

ガンダムの再来により、ソレスタルビーイングの再起が報道によって囁かれた。

その結果、止まっていた時間が動き出す。

 

「あのガンダムは……エクシア、刹那か。それに新型も……」

「世界が、動き出す」

「……レナ」

「ソレスタルビーイングによって。また、戦いが始まる……また、お兄ちゃんは……」

「大丈夫。大丈夫さ」

「うん…」

 

オートマトンの残骸の中、二人の狙撃手(スナイパー)が抱擁する。

黒髪の元少女と右眼に傷跡のある男。

それぞれの想いを抱いて、互いに宇宙(そら)を見上げる。

 

「そうか。現れてくれたか。自分が乙女座であった事を、これ程嬉しく思った事はない」

 

ある男は歓喜に震えながらも仮面を手にする。

 

「あ…あ、ああ……っ!ガン、ダム…」

「ふん…。何故こんな奴がアロウズにいる」

 

ある者はその存在に動揺し、狂気を抱える。

そんな彼女に革新者(イノベイター)は微笑んだ。

 

「ルイス・ハレヴィ……良かったね。これで君にも戦う理由が出来た」

「リボンズ、面会だよ」

 

そして――

 

 

「連邦軍独立治安維持部隊よりソーマ・ピーリス中尉をお迎えに上がりました。第5モビルスーツ中隊所属、アンドレイ・スミルノフ少尉です」

「アンドレイ……いつアロウズに……」

「あなたにお答えする義務はありません。父さん。いや、セルゲイ・スミルノフ大佐」

「父…さん……?」

 

過去の戦士の元にも争いの手が届く。

幸せを知り始めた少女もまた、戦場へと戻される。

それが皮肉にも再会を呼ぶとは知らずに。

戦いに身を宿す彼の元へと――。

 

 




破壊を望む者、拒む者。
様々な想いを受け、今、ダブルオーが覚醒の時を迎える。
次回『ツインドライヴ』。
それはガンダムを駆逐するガンダム。


抜けている部分を追加しました。お待たせして申し訳ありません(2018/07/06 15:14:16)
次回は中旬頃の投稿を予定しています。

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