息抜きで書いたイノベイター転生   作:伊つき

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戦う理由

アラビア海 海上。

ベーリング級海上空母にて、アロウズは3小隊規模の戦力を搭載しつつ海底へと逃げたソレスタルビーイングの足取りを追っている。

そんな館内の一室ではアーサー・グッドマン准将とカティ・マネキン大佐が対面していた。

ちなみにアーサー・グッドマン准将並びに宇宙(そら)の部隊は一部小隊を引き連れて地上に降りてきている。

 

「捕虜のガンダムパイロットを奪われ、その上カタロンにまで遅れを取るとは……。失態だなぁ、大佐」

「ソレスタルビーイングの戦力を見誤っておりました」

「言い訳は聞かん。無能な者はアロウズには不要だ」

「なに…?」

 

対談の席に同席していたネルシェンがアーサー・グッドマン准将の言葉に反応する。

眉が揺れ、眉間にシワがよった。

見てわかるほどに不機嫌だ。

 

「今のは聞き捨てならんぞ。マネキン大佐が無能だと?貴様、大佐の実績を知らないとでも言う気か」

「大尉……っ!」

「なんだぉ……!」

 

マネキン大佐が制止するが、遅かった。

ネルシェンの言葉に今度は准将の方が机を叩いて立ち上がる。

頬がヒクヒクと揺れ、怒りは最高潮だ。

 

「貴様っ!上官に対してなんだその口の聞き方は!?」

「黙れ。貴様に見る目がないから言っている」

「貴様ではないわ、貴様!私は准将……!アーサー・グッドマン准将だ!階級で呼びなさい!!」

「はっ、心眼も持ち得てない。ただの肥満体質の無能に対する敬意など持ち合わせてはいない」

「なにをぉ……っ!?」

 

両者激しく睨み合い、二人の間に紫電が走る。

ネルシェンは見下すが如く准将を軽蔑し、准将は歳に似合わぬ怒りの形相を浮かべている。

両者は一歩も譲る気がない。

さっそく居心地が悪くなってきた…。

 

「た、大尉。落ち着け」

「申し訳ありません、大佐。大佐の為にも私は譲るわけにはいかない」

「ネルシェン!私に歯向かう気か!准将であり、総指揮官であるこの私に……っ!一介の兵士であるお前が!」

「今までは義理を通してやったが、私の恩人を無下にした時点で貴様はもう上官ではない!」

 

ネルシェンがバッサリ切り捨てる。

対する准将はぐぬぬ…と厄介そうに表情を歪ませ、八つ当たりをするかのようにマネキン大佐を睨む。

教育がなっていない、とマネキン大佐に訴え、彼女も形だけは申し訳なさそうに顔を伏せたがそのやり取りをネルシェンは見逃さなかった。

 

「貴様……っ!今は私が相手だ!何か言いたいのならば私の目を見て言うがいい。それともその程度の覚悟もないのか?貴様の器も程度が知れる…!」

「なっ…!?言わせておけばぁ!!口が過ぎるぞ、グッドマン大尉!!」

 

怒りを燃やしたネルシェンの再燃料投下により、再び二人はいがみ合い睨み合う。

だが、まあ第三者から見てこれでもグッドマン准将は一応配慮している。

マネキンに対する評価はどうか知らんがネルシェンに具体的な罰則を口にしない。

 

本来なら謹慎ものだというのに、中々言い出さないところを見るにネルシェンに対しては甘さが垣間見える。

二人のことは詳しく知らないが、セカンドネームが同じである血縁関係であることは周囲の目から見ても明らか。

そこに何らかの事情があるんだろうな。

 

「貴様、私に対する恩を忘れたか!?」

「恩だと?はっ。人を見る目もない、貴様のような無能に恩など一度たりとも―――」

「そこまでだ」

 

准将も我慢がならなくなってきた頃、俺が声を掛けると本人も口を滑らしたと言わんばかりに額に汗を浮かべる。

逆に完全に冷静を失っていたネルシェンは失言をしそうになったことにハッとした。

 

「思ってもないことを言うのはやめろ」

「……っ。き、貴様には関係ない…!」

 

肩に手を置くと珍しく取り乱したネルシェンが払う。

一瞬、思い詰めた顔を垣間見せ俯いたと思ったら何かを思い出したのか、今度は鋭く俺を睨んだ。

まあ大体予想はつくが、まだ火薬投了する気なのかお前は……。

 

「ならば聞く、()()()()殿()。デスペアは地上部隊に合流したにも関わらず、私情で戦線参加に遅れたという。大佐よりこの男を責めるべきではないのか?」

「はぁ……デスペア大尉はそもそも作戦に参加する予定ではなかった。故に駆け付け、被害を防いだだけでも功績ものだ」

「くっ……!」

 

顔を顰めるネルシェン。

ま、結果は見えていたし、彼女も元から理解していた。

それでも出し惜しみなく交渉し、大佐を庇いたいんだろう。

疲れたように手でネルシェンを払う仕草をする准将も相手をするのも面倒になって、話を切り替えるように背後に立たせていた白髪の男に目を向ける。

 

「アーバ・リント少佐。見苦しいところをすまない」

「い、いえ……」

「次の作戦指揮は貴官に任せる。いいな?」

「はっ!」

 

気まづそうにしていたリント少佐が准将の指示に敬礼する。

同時にマネキン大佐を挑発しようと嘲笑を向けたが、ネルシェンの鋭い視線にヒッと怯えて借りてきた猫みたいに引っ込んだ。

気が立ってるネルシェンの前で、タイミングが悪かったな。

ていうかそれくらい予測できただろうに。

 

「以上だ。リント少佐以外はもう下がれ」

「「はっ!」」

「……了解した」

 

俺と共に敬礼を返し、承諾したマネキン大佐を見てネルシェンも不満げながら目を瞑る。

終始腕を組んで背中を壁に預けるなど態度は変わらなかったが、大佐には逆らえないんだろう。

そして、恐らくこれからの作戦を立てるであろうアーサー・グッドマン准将とアーバ・リント少佐を残して俺達は退室した。

三人で歩く廊下でマネキン大佐が口を開く。

 

「掃討作戦を得意としたアーバ・リント少佐。まさかあの男を連れてくるとはな……」

 

愚痴、というよりは驚愕に近いといった反応か。

さっきのリント少佐の登場と作戦指揮権限の移行に対する感想。

俺もあの人に指揮を任せるのは一抹の不安がある。

 

「掃討作戦ですか…。俺もあまり乗り気にはなれませんよ」

「当たり前だ。圧倒的な物量で敵に有無を言わせず、尽く先手を打つ。迅速かつ確実な大佐の作戦こそが至高です。効率もいい」

「フッ。褒めても何も出んぞ、グッドマン大尉」

「素直な気持ちです。マネキン大佐」

 

俺をダシにネルシェンがマネキン大佐を持ち上げる。

目の前で賞賛するなんて、一見媚を売ってるようにも見えるがネルシェンの場合、心の底から言ってるのが見てわかる。

マネキン大佐のことを本当に尊敬しているんだな。

 

「まあなんだ。私は下ろされた身だ。リント少佐の指示をしっかりこなせ、いいな?グッドマン大尉」

「お断りします」

「なに…?」

 

まさか拒否されるとは思ってなかったのか、断言するネルシェンにマネキン大佐は目を見開く。

そんな大佐にマネキンは真に敬意を込めて敬礼する。

 

「私が参加するのはマネキン大佐の作戦のみです。故に次の作戦はライセンスを使わせていただきます」

「……まったく。貴官という者は…」

 

呆れたながらに微笑むマネキン大佐。

ネルシェンの信仰もここに極まれりだな。

まあ次は俺もライセンスを使うつもりではあるけども。

 

「では後は任せたぞ」

「「はっ!」」

 

マネキン大佐に託され、応答する。

次第に彼女の背は小さくなっていった。

完全に見えなくなっていった頃にネルシェンがふと口を開く。

 

「……さっきは助かった。すまない」

「えっ?」

 

それだけを言い残し、ネルシェンは去る。

恐らく向かうのは格納庫……シミュレーションで本格的に頭を冷やそうとしているようだ。

なにを反省しているのか一応検討はつくが、あまり触れないでは置くか……。

 

「さて、と……」

 

腕を組んで上に伸ばす。

重苦しい空気もなくなってやっと肩の力が抜けた。

今日はさっきのミーティングもあって、訓練は半日だが残り時間で何をするのかあまり決まってはいない。

ちょうど腹も減ったし、飯でも食うかな。

 

「はぁ。食堂にでも行くか……」

「デ、デスペア中尉!」

「ん?」

 

大した目的もなく歩いていると、声を掛けられた。

十字廊下の分かれ道を見遣ると白髪を揺らす少女がアロウズの軍服に身を包んでなにやら熱っぽい視線で俺を見ている。

ソーマだ。

 

「あぁ、そういえばもう1回会うって言ってたな。悪い。作戦の後色々あってこんな形になっちまった」

「い、いや。大丈夫だ。それより、その……本当にっ。中尉……なのか?」

「……」

 

ソーマが不安げに問い掛けてくる。

瞳は一心不乱に俺を捉えて揺れていた。

今にも泣きそうなまである。

まあ死んだはずの大切な人が現れたら誰だってそうなるよな。

 

「あぁ。俺は、元人革連軍所属レイ・デスペアだ」

「……っ!」

 

思わず口を抑えるソーマ。

肯定した俺にソーマの瞳からポロポロと雫が落ち、頬を伝っていく。

 

「そんな……っ。ほんとうに、生きて……っ」

「あぁ。俺は生きてる。あの時は帰られなかったけど、またこうしてソーマと会えてるよ。だから、泣かないでくれ」

「う、うぅ……ああ…っ」

 

ソーマの涙を指で拭う。

膝から崩れ落ちたソーマを俺はそっと抱き締めた。

涙が収まるその時までずっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーマが落ち着いてから周囲のこともあって甲板へと移動した。

そこで俺たちの間にできてしまった空白の時間について触れる。

 

「5年、か……」

「あぁ……」

 

俺は遠いものを見るように海を見つめ、ソーマは海に背を向けるように僅かに頷く。

俺達は小指が触れ合うか合わないかという距離で話していた。

 

「ごめんな。あの時、すぐに戻らなくて……」

「……いや、戻れなかったことくらいは…その、なんとなく……分かる」

「そっか」

 

ソーマが複雑そうに目を逸らし、俯く。

俺はそんなソーマにできるだけ優しく微笑んだ。

 

「でも、何年隔てたとしてもまたこうして出会えた」

「……っ」

 

顔を上げてソーマが声にならない喜びで震える。

俺もソーマと再会出来たことは素直に嬉しい。

アロウズにいて会えるなんて思ってなかったからな。

ソーマが俺にずっと会いたかったように、俺も同じだ。

 

「そういえばソーマはどうしてアロウズに?」

「上層部に招集されて転属した。大佐は反対していたが……」

「スミルノフ大佐が?一緒にいたのか?」

「あぁ。大戦のあと、4年間お世話になった。まるで娘のように大切に私のことを……」

「そうか。それは良かった」

 

実は心配だった期間も大佐が面倒を見てくれていたのか。

確かにあの人ならソーマのことを大切にしてくれるだろう。

娘のように、か。

本当に娘だと思って共に過ごしてきたんだろうな。

ソーマの話を聞いて思い出したが、ソーマが招集されたことはリジェネに聞いてたのを今思い出した。

あいつの話半分は聞き流してるから時々忘れるんだよな……。

ま、なににせよ4年間の間ソーマが1人じゃなくて安心した。

 

「でも、いつも私の胸にポッカリと空いた穴は塞がらなかった。とても苦しくて……心臓が締め付けられるような……そんな感覚を、貴方を思い出した時にいつも感じる」

「ソーマ……」

 

今にも涙が溢れそうなのを堪える瞳で俺を見上げる。

ソーマの手は胸の上で力を込めて握られていた。

今もまた、締め付けられるような感覚が襲っているのだろう。

そんなソーマを見つめて……俺はどうすればいいのか分からない。

ソーマと向き合える資格があまりにも無さすぎる。

俺は帰れなかったんじゃない、帰らなかったんだ。

その結果、ソーマに苦しい想いをさせてしまった。

以前なら絶対にそんなことはしなかったのに。

 

「すまない。本当に……」

「いえ、もういいの。またこうして逢えたから…」

 

嬉しさ溢れる微笑を浮かべるソーマ。

そんな彼女の笑顔が眩しい。

俺は直視できない程に。

だから、目を逸らして謝ることしかできない。

 

「それでも…ごめん……」

「デスペア中尉……」

 

今ソーマがどんな顔で俺を見つめているのかは分からない。

だが、そっと俺の手に触れる温かい感触があった。

 

「大丈夫。本当に、本当に私は今嬉しい。中尉とこうしてまた逢えたことが。だから、中尉にも喜んで欲しい……ダメか?」

「ちょ……っ」

 

俺の手を取り、熱を帯びた温かい手で包み込む。

そのままソーマは自身の胸へとそれを押し付けた。

すると、心臓が大きく脈打つように鼓動する音が伝わってくる。

それに伴うようにソーマの頬も火照り始め、上目遣いで俺の目を熱っぽく見つめていた。

流石に俺も顔が熱くなるのを感じる。

 

「……っ!そ、その…俺も嬉しい!最初から!そう思ってるから……だから、その……勘弁してくれ…」

「ふふっ。中尉もそう思ってくれたか。なら良かった」

 

そう言ってソーマは俺の手を下ろすが、決して離しはしない。

名残惜しそうに優しくそれでいてしっかりと握っている。

顔を真っ赤にして頭を抱える俺にソーマは悪戯っぽく笑った。

一瞬、目を疑ってしまった。

こんなにも表情豊かに笑みを作るなんて……。

変わったんだな、ソーマ。

大佐には感謝しないといけない。

 

「中尉が帰ってこなかったことについては不問にする。一度は中尉の声が戦闘中に幻聴として聞こえることもあったが……うん。気の所為だろう」

「……」

 

気のせいじゃない。

あの時、俺はソーマと出会っていた。

言いたい気持ちはあるが、折角許してくれたところに火薬を投了するのは申し訳ない。

という建前で黙るしかないとは……。

本当に俺って情けないな。

 

「そういえばデスペア中尉はなぜアロウズに…?」

 

さっき俺がした質問を今度はソーマが俺に問い掛ける。

まあ、それについては全然答えられる。

イノベイターに関してだが、もはやソーマにこれ以上隠し事をしていたら罰が当たりそうだ。

それに既に知れ渡ってことだしいいだろう。

だが、その前に訂正しなければならないことがひとつある。

 

「ソーマ。一応言っとくが、俺は大尉だ」

「あっ……も、申し訳な……ありません」

「いや、無理に敬語じゃなくてもいいけども……」

 

ソーマが慌てて敬礼するので止めさせる。

俺達の間に今更不要だろ、そんな礼儀。

一応館内では階級間違えはあまり宜しくないので訂正しておいたが、俺としては正直どうでもいい。

ま、そのうち慣れるか。

 

「さて、俺がアロウズに配属された理由か……。まあ経緯はソーマと大して変わりはしない。俺も上層部に呼ばれて配属された。『イノベイター』としてな」

「イノベイター?」

 

聞き覚えのない単語にソーマが首を傾げる。

それに俺は瞳を金色に輝かせて彼女を瞳を捉えた。

ソーマの瞳の中に俺の瞳が映る。

 

「……っ!」

「イノベイター。それは人類の進化した姿。俺は、進化したんだ。脳量子波が使えるイノベイターに」

「デスペア中……大尉が、脳量子波を!?」

 

驚きのあまりソーマが目を見開く。

当然の反応だ。

脳量子波はナノマシンを体内に埋め込まれた超兵が為すもの。

ただ人間には使えない。

だが、超兵よりも完全な脳量子波を使う存在が今ソーマの目の前に現れた。

 

「分かるか?ソーマ。俺の気持ちが……」

「あっ……」

 

ソーマの髪に触れ、そのまま耳にまで手を伸ばす。

そして、ソーマと脳量子波で繋がる。

お互いの思考が、想いが筒抜けになり、通じ合う。

ソーマは唐突だったからか、俺のことを何の抵抗もなくソーマの意識の中に招き入れてくれた。

落ちた雫が広がるように俺の脳量子波がソーマの脳量子波に浸透し、互いに想いを交わらせる。

ソーマはほんのり頬を桜色に紅潮させていた。

 

「流れてくる……デスペア、大尉の…想い…。気持ち…温かい……」

「あぁ」

 

心地よさそうに伸ばした俺の手を両手で包むように触れるソーマが目を瞑る。

しかし、直後に何か核心に触れてしまったかのような驚愕に包まれ、目を見開いた。

 

「……っ。これは……」

 

ソーマが俺の強い想いに触れる。

それは、俺が戦う理由となっているもの。

誰かを失い、張り裂けるような胸の痛み。

目の前で命が散っていく。

無残にも罪のない命が消えていく。

それに対する深い哀しみ。

奪い、奪われる――そんな世界を変えたいという想い。

そして、凶弾に頭を撃ち抜かれて吹き飛ぶ少女の笑顔――。

 

「そこまでだ」

「あっ……」

 

瞳の輝きを消し、脳量子波を断ち切る。

ソーマに触れていた手も引っ込めた。

それを名残惜しそうに、さらに哀しそうにソーマが目で追う。

クソっ、ソーマを入れ過ぎた。

俺の知らない記憶にまで及びそうだった。

いや、でもあのままいけば思い出したかも……あぁ、クソっ、そんなソーマを利用するみたいなことをまたしても…!

とにかく物凄い汗が俺の背に伝う。

 

「……っ!」

「デスペア大尉……っ!す、すまない…」

「いや……今のは俺が……っ」

 

頭痛がする。

最後に見た笑顔がきっとその原因だ。

だが、今はそれよりもソーマに教える必要もない感情まで漏らしてしまった。

こんなの見せられても困惑するだけだ。

急いで頭を下げなければ……。

 

「俺の方こそすまない。今のは別に、見せるつもりじゃ――」

「……っ!」

 

瞬間、何かが俺の胸に飛び込んだ。

俺より小さな身体が、華奢な腕が俺の腰を巻く。

 

「ソーマ?」

「デスペア大尉の想いを知った。苦しい…気持ち…」

「……」

 

ソーマが俺から離れて涙を拭う。

そして、複雑な表情で俺を見上げた。

ただでさえ綺麗な顔立ちは夕日を背景にさらに美しい。

 

「デスペア大尉が戦うのは……」

「……あぁ。奪い合いのない、恒久和平を実現するためだ。その為にも俺達は犠牲を出してはならない。矛盾してるんだよ、今のアロウズは……っ!」

「デスペア大尉……」

 

ソーマがなんとも言えない表情で俯く。

俺の思考を読んだから、彼女も俺の考えは理解しているんだ。

ソーマが黙って聞いてることをいいことにどんどん話す必要もない想いが漏れていく。

 

「犠牲は無くす。犠牲のない恒久和平を築く。その為に、カタロンであろうとも命は奪わない。彼らは世界が統一しようという今の現状の中で孤立する反逆者達だ。だからこそ、彼らの資源は限られている。その有限の資源であるMSを破壊さえすれば命を奪う必要はない。なのにアロウズは……」

「掃討作戦により、虐殺する……」

「そうだ」

「それで……だから、大佐は反対を……。それに大尉にそんな想いがあったなんて。いつの間にか、私の知らない『デスペア大尉』になっていたのか……」

「……っ」

 

ソーマが悲しげに呟く。

この4年の空白を再び実感したのだろう。

 

「ソーマ……」

 

俺はそんな彼女を見つめることしかできない。




エースパイロット達がガンダムを追い詰める。
しかし、カタロンの介入による激戦化する戦場の中で、レイに危機が迫った。
次回『過ち』
彼を守る刃が命を奪う。


サブタイ変わる可能性大です。

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