整備士も引き上げた静寂の格納庫で、唯一物寂しげに佇む機体があった。
アヘッド・スマルトロン。
ソーマがここにいた証。
彼女の為に用意された脳量子波対応型のアヘッドだ。
「………」
俺はただそんなスマルトロンを眺め続けている。
あの時の選択が本当に彼女の未来に繋がっているのか、分からない。
だが、少なくともソーマじゃない彼女はアレルヤと共にいた方が幸せになれるだろう。
だからこそ、不安はあっても後悔はない。
問題があるとすればそれは俺自身の話になる。
『必要なのは人と人とが分かり合える道、だから!』
『共に生きているからこそ、皆同じだ』
レナの言う人と人とが分かり合える道を。
ソーマの言う共に生きているということを。
その真意を俺は考えなければならない……。
犠牲のない恒久和平。
それが俺の理想だった。
だが、命だけが人間の全てじゃない。
きっとまだ何かある筈なんだ。
「あ、あの!」
「ん?」
前線には合わない若い女性の声が掛かった。
どうやら随分と考え込んでいたらしい。
近付いてきたのに気付かなかった。
声を掛けてきたのはルイス・ハレヴィ准尉だ。
「どうした?俺に何か用か」
「は、はい。その……よろしいでしょうか?」
なんだか遠慮がちだな。
早く本題に入ればいいものを……とそうか。
ソーマのことは戦死で言い伝わっていたんだった。
しかも上層部に報告したのは俺だ。
そりゃ遠慮もするか。
「別にいい。要件はなんだ」
「はっ。大尉にお願いがあります。この機体、私に任せて頂けませんか?」
「なに?」
ハレヴィ准尉の目を見ると……本気だった。
それでいて隠しきれていない怒りと強い力を感じる。
復讐、か。
そもそもソーマとハレヴィ准尉に接点があったことを今初めて知った。
だから、自覚させられる。
そんなにも俺はソーマと向き合えていなかったんだと。
でも今は違う。
少なくとも向き合いたいとは思っている。
「戦果を挙げてご覧にいれます。そして、中尉の仇も!」
「敵討ちは要らない」
「えっ?」
アヘッド・スマルトロンに目線を戻した俺を困惑した表情で捉えてくる。
微かに脳量子波を感じる。
彼女は即座に勘違いをした。
「別に俺が仇を取りたい訳じゃない」
「な、なぜ!?デスペア大尉はピーリス大尉を想っていたのでは―――」
「だからだよ」
だからこそ、もし仮にソーマが本当に戦死でも仇は取らない。
そんな奪い合いの連鎖を彼女が望むはずもない。
「本人の望まないことを俺はできない。俺は、ソーマの望むことを果たす。俺の私情で仇を討っても……あいつが哀しむだけだ」
「そんな……」
ハレヴィ准尉の表情に失望が見える。
だが、心も揺れているようだ。
俺の言葉に納得しているところがあるのかもしれない。
それか思うところか。
俺も、ソーマの望むことを見つけなければならない。
この模索に答えがあるのかも分からない。
それでもレナやソーマを信じて俺は変わりたい。
「スマルトロンは使ってやってくれ。ただし、俺の一存じゃ決められない。ちゃんと上に申請しろよ」
「ありがとうございます!」
最初から俺の許可なんて必要ないことくらいは知っての行動だろう。
准尉は真摯に俺に敬礼した。
俺が知らなかっただけであいつにはこんなにも想ってくれる部下がいたんだな。
とりあえずはソーマの仇討ちを目的にスマルトロンに乗せるつもりはないことも准尉は承諾してくれたし、もうあの機体は彼女に任せていい。
問題は甲鈑に出た先にある。
ベーリング級海上空母の滑走路に優雅に降り立つモビルスーツが1機、俺を嗤うようなフェイスで見下ろしてくる。
【GNZ-003 ガデッサ】。
イノベイター専用に作り出された擬似太陽炉搭載型のモビルスーツだ。
剥がせばガンダムタイプのフェイスが現れるため、フェイスカバーをした機体だが随分と狂気的な顔をしている。
それこそ見つめていると嘲笑われているような気分だ。
そんなガデッサから、作られた美形を持つ同胞イノベイターがワイヤーを掴んで降りてくる。
リヴァイヴ・リバイバルだ。
「前線では初めましてだな、リヴァイヴ」
「ふっ。まさかこの僕がアロウズに入隊することになるとは……」
「無視かよ」
折角迎えに来たというのにリヴァイヴは俺を素通りしてヘルメットを抱えたまま、辺りを見渡してほくそ笑む。
あぁ、またこりゃ随分なご挨拶だな。
リヴァイヴ?
「おっと失礼。脳量子波を感じないものだから別人かと思ってしまったよ」
「はっ、下手な冗談ならこくなよ」
本当に笑えない。
こいつ、思考を送ってやっと振り向きやがった。
成果を出していない俺を見下してる人間と見分けが付かなかったとでも言いたいのか。
なるほど、リヴァイヴでこの評価なら
「それであれはなんだ?」
「見ての通りさ」
俺が視線で指したモビルスーツにリヴァイヴはヘルメットを肩に掛けて白を切る。
見上げた先、ガデッサに続くように飛行艇で運ばれてきたモビルスーツはガデッサのプロトタイプとも言える存在。
【GNZシリーズ】のベースとなった機体、【GNZ-001 ガルムガンダム】だ。
「俺が頼んだのはガラッゾの筈だろ」
「失敬。注文を聞き間違えた……という訳でなく、今我々が君に対して用意出来る機体はあれが限度ということさ」
「なに?」
リヴァイヴが挑発的な笑みを浮かべる。
こいつ……いや、こいつらは敢えてガルムガンダムを選んだのか。
俺に圧を与える意味も込めて。
「それに、君にはお似合いだろう?」
「……っ!」
リヴァイヴの視線の先、周囲を見渡す。
すると―――
「あ、あれって」
「ガンダ、ム……?」
「どうしてこんなところに……」
新型を見に来た連中がガルムガンダムを見遣って戸惑いながら忌々しげに呟きあっていた。
そして、必ず視線は機体から俺へと移っている。
くっ……!
「これが狙いか!」
「さぁ、どうでしょう。なににせよ我々は君に期待していますよ」
「何を……っ!」
勢いよくリヴァイヴを睨む。
そんな俺の鋭い視線にリヴァイヴは金色の瞳だけを俺に向けた。
「……っ」
「犠牲のない恒久和平とやらの実現。その為の君の行動を……ね」
また歩みを再開するリヴァイヴ。
通りすがったネルシェン・グッドマン大尉に何かを手渡しすると、艦内へとその背は消えていった。
代わりにネルシェンが俺の元にやって来る。
珍しいな、こいつから会いに来るなんて。
いつもは偶然かブリーフィング、俺から用があるかの三つだ。
「あれが貴様の新型か?」
「お前も文句か」
「いや」
来るなりガルムガンダムを見上げて目を細める。
まったく。
用意されたガンダムの存在もあって今日は特に風当たりが強い。
ネルシェンは一瞥して瞼を伏せると一言だけ告げてきた。
「貴様では無理だな」
「は?何が?」
「アヘッドの性能では対抗できん。だが、この機体も足りていない。精々私の邪魔をするなよ」
「いや、だから何の話だよ……」
全く本題が見えてこない。
しかも言い残すだけ残してネルシェンは去ってしまった。
一体なんだってんだ。
まあいい。
とにかくこのガルムガンダムをどうするかだ。
ソーマはもういない。
戦うのならアロウズにいる限り、彼女のいるプトレマイオスとガンダムを相手にしなければならない。
リヴァイヴも口にした犠牲のない恒久和平。
俺はその為に戦ってきた。
それが正しいと思っていたから、目指すべき理想だと思っていたからだ。
だが、今は本当にそれが正しいか、目指すべきなのかは分からない。
レナは否定した。
それが間違っていると。
なら何が正しいのか。
その答えを見つけなければならない。
「この機体を使って俺は……ん?あれは……」
ガルムガンダムを見上げていると、丁度滑走路から離陸した飛行機とそれに続くアヘッドが視界に入った。
アヘッドはネルシェンだ。
さっきパイロットスーツを着ていたのはそういうことか。
ただ何処へ向かうんだ?
俺の所には何の話も来てないが……。
近くのやつに聞いてみるか。
「すまない、あれはどこへ向かったんだ?」
「え?あぁ……確か経済界のパーティーだとかなんだとかにハレヴィ准尉が参加するらしいですよ。何でもリント少佐からの指令だとか。スミルノフ中尉も護衛で同行しました」
なるほど……ってこの状況で欠員を2人出すのか?
あとネルシェンも同じ方向へ向かったな。
ソーマの戦死で特別小隊は解体されたからどこへ行こうが構わないが、大佐のいる戦場を放るのは意外だ。
何らか指令を受けたのか、あるいは……。
「そのパーティーの場所は?」
「さ、さぁ?リント少佐かマネキン大佐なら知ってると思います」
「分かった。ありがとう」
リヴァイヴの態度を見るに俺はイノベイター側にもあまり信用されていない。
だからという訳でもないが一応探らせてもらおう。
それに、アロウズの出席するパーティーならカタギリ司令が連れてくるであろう人物にも会いたいしな。
さっそくガルムガンダムを使ってパーティー会場へと潜入した。
まあ呼ばれてないからな。
パーティーそのものに参加する必要はない。
ウェイトレスに紛れてこのパーティーを開いた意味、リボンズ達が何か隠していないかを探る。
まずは個人的に用がある人物に近付いた。
「どうぞ」
「あぁ、すまない」
俺の差し出したグラスをホーマー・カタギリが手に取る。
何度か顔合わせもして言葉も交わしているが気付いていないようだな。
彼の目を盗み、そのまま隣の細身の男にも手渡す。
「貴方も」
「あぁ、ありがとう」
「ビリー・カタギリ技術大尉ですよね?後でお話があります」
「……なんだい?君は」
ワインを注ぐ時を利用してカタギリ司令の甥であるビリー・カタギリに耳打ちする。
当然訝しんだカタギリ技術大尉は俺にだけ眉を顰めた。
その問いに対して去り際に答えを置いていく。
「イノベイター。レイ・デスペア」
「……っ!」
周囲に動揺を悟られないよう視線だけで驚愕を示してくるカタギリ技術大尉。
上手いじゃないか。
先に戦場に送った俺を使ってリボンズはイノベイターの存在を軍内で公にしている。
だからこそ、彼も知っていると睨んでいた。
どうやら当たりだったようだな。
「出たところで待っている。貴方の力を借りたい」
「応じると思っているのかい?」
「あぁ。貴方ならきっと」
「……分かった」
静かに頷く彼から了承を得てその場を離れる。
やり取りは一瞬。
周囲から見ればウェイトレスが下がっていくようにしか捉えられない。
「ん?どうかしたか」
「いえ」
「………」
本人もシラを切った。
よし、これでフェイスカバーには対応できそうだ。
後はリボンズ達の思惑に対する偵察だが、もうこのパーティーの目的は掴んだ。
どうやらアロウズに出資している経済界の人間を集めて、これからもよろしくっていう魂胆らしい。
まあ出資を止められては困るからな。
定期的にこういった関わりの場を儲けないといけないのは頷ける。
これまで1回もなかったことの方が不思議だ。
とにかく偵察の必要はなかったというのが結果論になってしまった。
「……出るか」
もうここに居ても意味はない。
ささっとビリー・カタギリに俺のガルムガンダムの改造に取り掛かってもらわなければな。
周囲の目を伺ってこっそりと退場しようとする―――が、脳内に過ぎった一筋の閃光に足を止めた。
この脳量子波はリジェネに近い……。
となると奴か。
「あいつ……」
「君か。アロウズのイノベイターというのは」
出口のルートに差し掛かっていたからか、声が聞こえる範囲には誰もいない。
この場で全くの包みのない凛とした声が俺の耳に届いた。
どうやらこのパーティーに潜入している奴がいるようだな。
……仕方ない、対応してやるか。
「そうだが、何の――――は?」
「リジェネ・レジェッタから聞いた。君に話がある」
知ってる声を俺は右から左へと聞き流す。
声の主は分かった。
リジェネと同タイプのイノベイター、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターであるティエリア・アーデだ。
だが、振り返った時に瞳に映ったその容姿が俺の知っているティエリア・アーデとかけ離れている。
腰まである麗しい髪、整った顔立ちにその美貌を惹き立てる紫のドレス。
―――そう、まさしく可憐という言葉が当てはまる姿だった。
「君もやはりイノベイターなのか?イオリア・シュヘンベルグの計画を実行していると聞いたが」
「え、話進めんの?
駄目だ。
混乱でついていけない。
ここは一度落ち着こう。
そうだ、冷静に……冷静に……。
ていうかなんでこいつ女装してるんだ?
「待て、まずその格好について説明しろ。話はそれからだ」
「マイスターは男だと知られている。戦術予報士の指示に従ったまでだ」
「あぁ……なるほど」
まぁ納得はできたけどさすがに説明なしでまともに話し合いに導入はできないだろ。
そうか、でも中々やるな。
良い案だ。
こいつの非常識さ以外は。
「それで?俺に何の用だ」
「質問しているのはこちらだ。答えてもらうぞ、君達は―――」
「あー、あのさ。もうすぐリボンズが来る。多分お前が求めてるのはあっちだ」
「リボンズ?誰だ?」
「ほら、来たぞ」
「……?」
奥の方が騒がしくなり、俺がそっちを指すとティエリアもそちらに注目する。
脳量子波でリボンズの接近は気付いてた。
ティエリアも俺と話すよりはあいつの方が有益な情報を得られるだろう。
ということで俺は逃げる!
「じゃあな」
「なっ……待て!君はまた戦場に出てくるつもりか!?」
なんだその質問。
わざわざ向けた背にティエリアが問いかけてくる。
……だが、それに対する答えを俺は持ち合わせていない。
今は何の為に戦えばいいのか分からないからだ。
「さあな」
曖昧な答えを残してパーティー会場を後にする。
外に出たと同時にウェイトレスの衣装も脱ぎ、コートに着替えた。
「何の為に戦うのか……」
白い吐息が空に上がり、星空を霞ませる。
柱に背を預けて思考の中で見上げた。
今は会場から漏れる光すらぼやけて見える。
俺は変わらなければならない。
そうは思ったもののレナの言葉の意味もソーマの言葉の意味も依然として分からない。
何をどう変わればいいのか、分からないが今の俺が間違っていることだけは理解出来る。
だからこそ、これから俺はこの力をどう使えばいいのか、何とどう戦うのか……それを見つけることが俺に今必要なことだ。
頬に触れる冷えた空気を感じつつ目を瞑る。
すると、背後からコンクリートにかかった土を散らす足音が聞こえた。
俺を見つけて彼は足を止める。
「まさか本当に待っているとは……」
「ビリー・カタギリ技術大尉。お受けしてくれる気になりましたか?」
「いや、まずは話を聞かせてくれないかい?事情と注文内容を聞かないとこちらも個人的な依頼までは受ける気にはなれないよ」
「なるほど……分かりました」
とりあえず建物から離れる。
カタギリ技術大尉が車で来たとのことで、続きは車内で話すことになった。
ガルムガンダムは後でリジェネに持ってこさせる。
ティエリア・アーデを押し付けてきやがった礼だ。
「ちなみにこれは仕事の話ですよ」
「ははっ、悪いね。君に敬意を払おうとはどうも思えなくて」
「イノベイターを信じておられないのですか?」
「いや、その話を聞いた時、僕は驚いた。是非一度会ってみたいとも思っていたのだけれど……君は何故か個人としてしか見れないな。あまりイノベイターとしての魅力を感じないというのかな?」
酷い評価だな。
どうやら俺はご想像していたイノベイターとは違ったようだ。
いや、ほんとに酷い評価だ。
初対面の印象があれでは良くならないとはいえ、これは頬をひくつかせるしかない。
「あぁ、失礼。別に君を侮辱した訳じゃないよ。親しみやすい……うん、そうだ。親しみやすいんだ。僕はそれが君の魅力だと思うね」
「言っとくが全くフォローになっていない」
というかビリー・カタギリという人物はこんな奴だったか?
調べた人格と予想からかなり外れてるんだが。
失礼極まりない。
あとちょっと酒臭いな。
原因はそれか。
「はぁ……ん?」
駐車場にまで来たところで噴水の方を見遣ると偶然にも隣合っている男女がいた。
男の方はどうもパーティー仕様の正装というよりは運転手の制服に身を包んでいて、女の方は可愛らしく、それでいて色合いは大人しいドレスを着ている。
少し離れた所にはもう一人お付と思われる男が……ってあれはアンドレイ・スミルノフ少尉か?
よく見たらドレス姿の女性はルイス・ハレヴィ准尉だ。
そういえばハレヴィ准尉はアロウズ最大の出資者、ハレヴィ家の当主か。
なるほど、ここに呼ばれた訳だ。
「ん?どうしたんだい?」
「いや……」
カタギリ技術大尉も俺の視線に先に気付いて様子を見る。
すると、突然ハレヴィ准尉が苦しみの声を上げて蹲り始めた。
「うっ!ぐっ、あ……あぐっ……!」
「どうした!?」
即座に傍にいた男が寄り添う。
アンドレイ少尉も駆け付けた。
斯く言う俺は二つ、気になることを発見している。
ハレヴィ准尉に起きた突然の異常に男から聞こえたあの声……。
「……っ!大変だ!」
「あっ、おい!」
ダメだ、止める前にカタギリ技術大尉も行ってしまった。
仕方ない……俺も後に続くか。
「どうしたんだい?」
「分からない、急に苦しみ出して……」
駆け寄ったカタギリ技術大尉はかなり迅速に対応する。
落ち着かせようとハレヴィ准尉の背を撫で、近くにいた男から事情を聞き取ろうとした。
だが、その顔を覗いた瞬間、彼の表情が崩れる。
「なっ!?き、君は……っ!」
「……!」
―――やはりか。
灯りに照らされて俺もようやくその正体を掴んだ。
男の名は刹那・F・セイエイ、ガンダムマイスターだ。
「ソレスタルビーイング!!」
カタギリ技術大尉が世界の敵の名を叫び、驚愕する。
見た感じ、顔を見ただけで正体を看破したのか?
なら面識があるのか。
ソレスタルビーイングの刹那・F・セイエイに。
「くっ……!」
「警備兵!警備兵ーー!!」
正体がバレた刹那がこの場から逃げ出す。
その後を近くにいた警備兵二人が追って行った。
本来なら訓練を受けている俺も追うべきだが……。
「大丈夫か?ハレヴィ准尉」
「はぁ、はぁ……うっ!」
呼吸の荒いハレヴィ准尉に声を掛けるアンドレイ少尉。
だが、彼女が手にぶちまけた錠剤を見て表情を一変させた。
それを飲み込み、ハレヴィ准尉はやっと発作を止める。
そして、俺には分かる。
あの錠剤は……ナノマシンだ。
「准尉……君は……」
「……リボンズめ」
会場の二階を睨む。
またしても偶然に二階の一室の窓を突き破って脱出したティエリア・アーデの姿を捉えた。
そして、その奥には―――リボンズが笑みを作りながらこちらを見ている。
「俺達の支配の下で生まれる人類初のイノベイター……。ハレヴィ准尉に人間の先導者をさせるつもりか、リボンズ!」
歯を食いしばる。
あぁ、これだけは確信できる。
リボンズ達は間違っている。
犠牲を生み出し、画一することで人類を統率する。
その頂点にイノベイターが立ち、来るべき対話へと導く。
だが、こんなことをしていては人類は選択肢を失う。
全てイノベイターに委ねられ、裏から操られてるとは知らず、踊らされて破滅する。
ならば俺の敵はリボンズ達なのか?
あいつらを倒すために戦うことが俺に必要なことなのか……。
なににせよ、リボンズは危険だ。
念の為に保険をかけるか。
「カタギリ技術大尉。先に帰還を」
「えっ?」
「後からモビルスーツで追い掛けます。ソレスタルビーイングがいる以上、貴官の護衛を微力ながら一任させて頂けませんか?」
「……そうだね。任せるよ」
カタギリ技術大尉の承諾を得た。
ハレヴィ准尉に関しては今ここで解決することは出来ない。
だが、今日は様々なことを掴めた。
それだけで充分な収穫だ。
カタギリ技術大尉が車に乗車して駐車場から出たのを確認し、俺も森の中にGNステルスで隠していたガルムガンダムの座標まで駆ける。
目標まで数kmはあったが、辿り着き、ステルスを解かせた。
『GNシステム、リポーズ解除。プライオリティをレイ・デスペアへ。外壁部迷彩皮膜解凍。GN粒子散布状況のまま、ブローディングモードへ』
コクピットに乗り込み、システムを起動させる。
カタギリ技術大尉の車の現在地も特定できた。
一気にレバーを引く。
『レイ・デスペア。出る!』
俺の意思に従ってガルムガンダムは浮上した。
すぐにカタギリ技術大尉の追跡を始める。
そして、その道中、レーダーに映る珍しい機体を捕捉した。
真っ赤なカラーリングに染ったアルケーガンダムだ。
「あれは……リボンズが雇った傭兵か。何故こんな所に、……っ!」
例の如く一筋の閃光が走る。
これはティエリア・アーデか。
まだそう遠くはない。
どうやらガンダムとの交戦から帰った後のようだな。
刹那・F・セイエイとティエリア・アーデは俺と同様にガンダムを何処かに隠していたんだろう。
これもスメラギ・李・ノリエガの予報か。
それにしてもリボンズはアルケーを用意していたとは……。
『俺もガンダムで来て正解だったな……ん?』
レーダーに新たな反応が生まれた。
なんだ?アルケーに急速接近する機影!?
端末が機体の型式番号を特定した。
GNX-704T アヘッドって……まさか!
『あれは……!』
『はあっ!』
『なに!?』
俺がアヘッドの姿を視認したと同時にアヘッドがGNビームサーベルを抜刀してアルケーに斬りかかった。
アルケーは即座にGNバスターソードIIで対応し、刃が衝突する。
『なんだぁ、てめぇは!?』
『貴様に用がある。ただそれだけだ』
サーシェスとネルシェンの会話が通信で拾われる。
彼女の言葉にサーシェスは顔を顰めた。
『あ?』
『答えてもらうぞ。イノベイターの犬に成り下がった貴様にな』
『ぐっ……!』
アヘッドがアルケーに圧し勝ち、突き飛ばした!
ネルシェンは再びビームサーベルの切っ先をアルケーへと向ける。
そして―――。
『ナオヤの居場所を吐け!もはや貴様らの言いなりになる必要はない!!』
叫びと共にネルシェンはアルケーにGNビームサーベルを振り下ろした。
『共に生きてる』にてソーマのセリフを修正しました。
・共に生きているからこそ、みんな同じ筈だ→共に生きているからこそ、皆同じだ
次の主人公機はガルムガンダムをベースに改造機にする予定です。
NNN様の案を勝手がら一部お借りしました。