調子が悪い時に書き溜めをしても仕方ないのでこれからも不定期でやっていきます
書き溜めできれば週一配信などもできたのですが……申し訳ないです
ネルシェンのアヘッドとアルケーガンダムが衝突する。
即座にバスターソードIIに斬り上げられた。
『ぐっ……!』
『突然何かと思えば、おらよ!』
『がは……っ!?』
切り返しでアヘッドの腹部を的確に狙ったアルケーの脚でネルシェンが蹴り飛ばされる。
奇襲に対応するだけじゃなく、反撃するとはなんて技量だ……!
離されて体勢を建て直したネルシェンのアヘッドは赤く輝く四つ目でアルケーを睨んだ。
『吐け。ナオヤの居場所を……っ!』
『おうおう、誰かと思えばあの時の嬢ちゃんか。暫く見ねえ間にえれぇ別嬪になりやがって。もうすっかり姉ちゃんになっちまったなぁ!』
『無駄口を……叩くな!!』
通信越しでも伝わるネルシェンの気迫。
強い語気と共にアヘッドはさらにアルケーにビームサーベルを振り下ろした。
ネルシェンにしては単調な動きだな。
あいつ……冷静じゃないのか?
『ハッハァー!いいぜぇ、相手してやるよ。戦争はこうでなくっちゃなぁぁ!!えぇ?そうだろ!!』
『ぐっ……うっ……!』
再び衝突する刃。
だが、完全にネルシェンが圧されている。
ネルシェンから斬り掛かったというのに既に押し返されつつある。
さらにアルケーの腰部ユニットが開く。
ネルシェンは冷静さを失っていてそれに気付く素振りすら見せなかった。
『ネルシェン!』
『隙あり―――なに!?』
『………っ!』
思わずアルケーに照準を合わせて引き金を引き、ガルムガンダムの2連装ビームライフルから放たれた粒子ビームがアルケーとアヘッドの間合いを裂く。
ネルシェンもようやくアルケーから距離を置いた。
『ネルシェン。迂闊に飛び込むな、死ぬぞ!』
『貴様……誰かと思えば!邪魔をするな。貴様には関係のない話だ』
『そうだとしてももう少し冷静に―――』
『いけよぉ!ファングゥーーー!!』
『『………っ!』』
ガルムガンダムはGNシールドを構えていたが、アルケーが射出したGNファングの最初の餌食となり、ファングに貫かれた。
……というか速い!
射出タイミングからシールドを奪うまでの到達時間が俺が知るよりも!
このファング、新型か。
『クソ、俺の後ろにつけ!俺を盾にするんだ!』
『何?』
縦横無尽に飛来するGNファングを反射神経を頼りに回避する。
だが、俺もネルシェンもアヘッドとガルムガンダムのスラスターじゃ限度がある。
第一波は良くても第二波からは被弾を避けられない!
『早くしろ!この機体はGNフィールドを張れるんだ!』
『………っ!』
ネルシェンがようやく俺の意図を察し、アルケーを一瞥してガルムガンダムの陰に隠れる。
最初からそうしておけば良かったものの……やはり思考が鈍っているな。
同時に前方から飛来するGNファングが俺を狙って粒子ビームを放ってきた。
『GNフィールド!』
ガルムガンダムのGNシールドを中心にGN粒子の壁が俺達を包む。
粒子ビームはGNフィールドに阻まれ、粒子の塵となって霧散した。
そして、ガルムガンダムと共にGNフィールドの恩恵を得たアヘッドは即座にGNビームライフルの銃身をガルムガンダムの肩に設置し、狙撃台として固定する。
その照準は一寸の狂いなく目の前のGNファングに充てられていた。
『外すなよ!』
『当然だ』
ネルシェンの淡々とした一言と共に引かれた引き金。
ガルムガンダムの肩からの狙撃はGNファング2基を決して逃がさず、粉砕した。
『他のも砕く!GNシールドを!』
『あぁ』
四方から飛んでくる粒子ビームを防ぎながらネルシェンのアヘッドからGNシールドを預かる。
両腕に構えたシールドで遂に直接突っ込んできたGNファングを弾き返した。
『そこ!』
『ふっ……!』
弾かれて一瞬、空中で機動を失ったGNファング2基もネルシェンが的確に撃ち抜く。
粒子ビームはGNフィールドで防ぎ、突撃に移ってくるファングはGNシールドで叩いて放り出された所をネルシェンが狙撃する。
俺の反射神経で防御を担当し、動体視力でタイミングを図る。
そして、ネルシェンの正確な狙撃。
二人の能力を併せたスタイルで射出から数秒もしない間に俺達は10基確認できたGNファングを蹴散らした。
『あの反応……なんだあいつは!?』
GNファングを収容する余裕すら与えない。
厄介な武装は無くなった!
『行くぞ、ネルシェン!フォーメーションγ-07だ』
『……いいだろう』
借りたGNシールドを投げ渡しつつGNビームサーベルを抜刀して加速する。
ネルシェンも受け取りながら左肩にマウントされていたGNビームサーベルを手に後に続いた。
二人で一気に距離を詰める。
『はあっ!』
『野郎が!うおっ……!?』
間合いに侵入した後も加速を緩めず、衝突し、アルケーの振り下ろしたGNバスターソードIIと俺のGNビームサーベルがぶつかり弾かれ合って、両者共に体勢を崩す。
機動性と技量差がない限り、本来なら行うであろうこのまま間合いを再度詰めて先手を取る、という戦法を試みることはできない。
アルケーは機動性でガルムガンダムを上回っている。
だから、戻るのは俺の方が遅かった。
『はっ!馬鹿が!』
『………っ!』
アルケーが先にスラスターで無理矢理戻り、刀身を振り下ろす。
だが、それより早く間合いに侵入した機影があった。
―――アヘッドだ。
『貰った!』
『なっ、何だと!?』
ガルムガンダムとアルケーの合間に飛び込んだアヘッドが振るう光刃はその軌道にアルケーの胴体を捉えている。
このままいけば敵機の両断は成功する。
タイミングの難しいレベルSのフォーメーションだが、完璧だ!
『ぐっ、まずった……っ!』
『なっ……!』
後退して回避した!?
ビームサーベルはギリギリ装甲に掠って空を斬る。
クソ、なんて反射だ!
『デスペア!』
『あぁ!』
2連装ビームライフルを構えてアヘッドの後方からアルケーを狙い撃つ。
だが、大半の散弾が避けられ、残りもGNバスターソードIIを盾に防がれた。
その様子を目撃したネルシェンもすぐ様ビームサブマシンガンで追撃するがアルケーには当たらない。
『くっ……!』
『そぉらよ!』
『ぐあっ!?』
『ネルシェン!』
アヘッドの射撃を全て回避して、アルケーは間合いに飛び込みネルシェンを蹴り飛ばした。
凄まじい技量だ、ネルシェンに引けをとっていない!
『オラオラオラァ!そっちの兄ちゃんも墜ちちまいな!』
『………っ!』
GNバスターソードIIを右腕に装着し、ライフルモードにしたアルケーが次はガルムガンダムを狙ってくる。
それらを躱す合間に間合いを詰められ、叩きつけられるバスターソードをビームサーベルで対応した。
『ぐっ……!』
『良い筋いってたがちと物足りねえなぁ!そんなもんかよ、えぇ!?』
『まだだ!』
『何?』
火花を散らす刀身の競り合いとは別に、腰辺りに用意した2連装ビームライフルの刀身がスライドし、展開する。
開いた銃身の奥から新たな砲口を晒し、2連装ビームライフルはその姿を変えた。
ガルムガンダムの最大武装、GNメガランチャーだ。
その砲口を零距離でアルケーに突きつける。
展開した砲身に紫電が走り、蓄積された圧縮粒子は砲撃と化した粒子ビームとなって放たれた。
『こいつは……っ!?』
『喰らいやがれ!!』
サーシェスは発射直前に察知したのか、引き金を引く前に退ったが、もう遅い。
粒子ビームはアルケーの左腕を捉え、消し飛ばした。
機体の損傷に伴う爆発の衝撃を受けてアルケーも体勢を崩す。
その隙をネルシェンは逃さない。
『はあーーっ!』
『なに!?』
気迫と共にビームサーベルで斬り掛るネルシェンのアヘッドにサーシェスは驚愕し、咄嗟にGNバスターソードIIで迎え撃つ。
衝突する双方の刃が紫電を散らす中、ガルムガンダムのGNメガランチャーはアルケーを捉えていた。
『貰った!』
『また砲撃か……!』
動きを止めたところに放った粒子ビームは躱された。
やはり反応が良い!
『舐めんじゃねえよ。こちとら動きは見えてんだ!』
『クソ……!』
ライフルに変形したバスターソードの粒子ビームを躱しつつ苦虫を噛む。
寄り付くアヘッドをアルケーは刃同士を衝突させ、圧し飛ばしてからガルムガンダムにも接近してくる。
俺はGNメガランチャーで迎え撃ったがやはり回避された。
間合いに飛び込んできたアルケーにすぐ様GNビームサーベルの刃を生成して対応する。
『ぐっ……!ファングは失った、もうお前の負けだ!』
『ところがぎっちょん!てめぇには隠し武器をくれてやる!!』
『なっ!?』
突如アルケーの両脚部爪先から発生した赤い
生成されたGNビームサーベルは可動域の広い脚の動きに合わせて目前に円を描くようにガルムガンダムの左腕を落とし、GNメガランチャーを切断した。
当然ガルムガンダムに小破の衝撃が襲う。
『ぐああ……っ!?』
『ハッハァー!やっぱ物足りねぇなぁ?もっと魅せろよ、てめぇもガンダムだろうがっ!!』
『……っ!』
クソ、そうは言われても汎用型の装備じゃ近接特化のアルケーに分が悪過ぎる……。
せめて何か打開策がないとこのままずっと押されたままだ!
『ちょいさーーっ!!』
『ぐあっ!?』
再度蹴り入れられ、GNシールドで防いだものの脚部爪先から伸びたビームサーベルによってシールドも切断されて失う。
そして、ガルムガンダムは完全に体勢を崩して高度を落としていく。
アルケーには絶好の
だが、その背後からはネルシェンのアヘッドがビームサーベルを両手持ちに構えて切迫してきていた。
『調子に乗るな!』
『おっ、今度はそっちの姉ちゃんか』
ビームサーベルを振り下ろすアヘッドにGNバスターソードIIで迎え撃つアルケー。
しかし、さっきと違うのはもう一つの赤い刃がアヘッドの関節部分を狙って弧を描こうと振り上げられていることだ。
さらにアヘッドの四つ目と頭部の動きから、恐らくネルシェンはそれに気付いていない。
普段なら有り得ないがまた冷静を失っている可能性がある。
クソ、ネルシェンもやられる!
『てめぇも切り刻んでやるよぉ!』
『ふっ、所詮その程度か』
『何?』
サーシェスが顔を顰める。
対するネルシェンは口端を吊り上げ、挑戦的な笑みを浮かべていた。
モニターに映る彼女が顎で軽く上を指す。
……なんだ?
『見上げろ』
『あぁん?一体どういう―――ッ!!』
ネルシェンの命じた通りに戦闘空域よりさらに高度を見遣る。
すると、アルケーがその四つ目で赤い閃光を捉え、咄嗟に軸をズラしたものの上から振り落ちたGNビームサーベルはアルケーの胴体部から脚部に掛けて貫いた。
同時に背部はコア・ファイターとして分離し、機体から離れる。
串刺しになったモビルスーツそのものは地上へと重力に従って落ち、大きな爆発音が響いて四散した。
ビームサーベルを捉えてから瞬時に機体から離脱したアリー・アル・サーシェスも恐ろしいものだが……それを見越して手の内をわざと見せたネルシェンはさらに恐ろしい。
あいつ、わざと命を奪わなかったのか。
『墜ちたのは貴様だったな』
『チィ!』
コア・ファイターの機動に先回りしたアヘッド。
GNビームライフルの銃口を向けられたコア・ファイターは行く手を阻まれる。
旋回しようにも背後はガルムガンダムが取った。
これでコア・ファイターに逃げ場はない。
『……仕方ねえ、降参だ』
さすがにこの状況ではどうすることも出来ないと判断したサーシェスが抵抗を止める。
それを確認して俺はビームサーベルの刃を消したが、ネルシェンは依然としてビームライフルの銃口を突き付け続ける。
そして、そのまま尋問を始めた。
『吐け。ナオヤはどこだ?』
『知らねえな』
『なに……?』
サーシェスの声音から嘘はついていない。
だが、ネルシェンは思い切り顔を顰め、眉に力を込めて憤った。
『そんな筈はない。嘘を吐くな!少なくとも生死くらいのことは知っている筈だ』
『嘘じゃねえよ、本当に俺ぁ知らねえよ。ナオヤってやつに関しては大将に名前すら聞かされたことはない。姉ちゃんに聞いたのが初めてだ』
『貴様!そんな嘘が―――』
『落ち着け。ネルシェン』
『なんだと』
興奮しているところを制止する。
嘘をついてない人間からない情報を得るのは無理だ。
ネルシェンも気付いているからこそ焦燥している。
ここは一旦冷静にならなければならない。
『こいつは嘘をついていない。それに俺ですらナオヤが行方不明なんて知らなかった』
『ふん。身内に拒絶されている貴様が知るはずもないだろう』
『まあ待て。そうじゃない、よく考えろ』
『……?』
ネルシェンはやはり思考が鈍ってる。
俺に伝わっていないということはリボンズがそれほど隠したいことということだ。
ナオヤがリボンズの手中に収まってる収まってないにせよ、どちらであっても俺に伝えて有益を得れる情報ではない。
寧ろ隠した方が得策だ。
そして、もし死んでいるのなら俺に隠す必要は一切ない。
ナオヤを手中に収めているのならリジェネ辺りが知っている筈だ。
だが、リボンズの寝首を狙っているリジェネですら何処にもそんな情報は漏らしていない。
リボンズが隠し通す基準は俺が離反した時にネルシェンを連れてしまわないかという一点のみ。
ナオヤが囚われていれば、ネルシェンはプライドを捨てて俺と組むことを選ぶ。
気に食わなかろうがナオヤ一人を奪い返すくらいならそれが最適な選択肢だからだ。
少なくとも俺はネルシェンよりイノベイターの内情に詳しいし、戦闘時のネルシェンとのコンビネーションの高さも練度がある。
連れて歩くには充分に利用しがいがあるだろう。
俺も人助けなら手伝いたいし、利害の一致もある。
他に、ナオヤの所在をリボンズ達が掴んでいないとしたら、俺に足を掬われる可能性も高く、これもまた利害の一致で俺は戦力が、ネルシェンは捜索が助力になるために組む。
イノベイターの捜索範囲も俺ならばある程度分かるからな。
だが、ナオヤが既に死んでいる場合は俺とネルシェンは別の行動に出ると見て間違いない。
ナオヤの死が発覚した時、ネルシェンはイノベイターに真実を求めて襲いかかるか、復讐鬼となるか……何にせよ、俺がネルシェンと組まない。
敢えてリボンズの観点でいえば、俺は負の感情を持った者と戦うような性格ではないからだ。
だから、リボンズが隠している今、ナオヤの所在はどちらにせよ、まだ死んではいないと言える。
『……ナオヤは少なくとも生きてはいる』
『あくまで可能性だけどな』
俺と同じ発想を辿ったネルシェンが同じ考えに辿り着いた。
あともう少し情報があれば結論は出るが……。
『本当に何も知らないのか?』
『しつけぇなぁ。何度も言わせんなよ、俺ぁはほんとに―――いや、待てよ』
改めてサーシェスに尋ねると思い当たり始めた。
サーシェスが言うには数ヶ月前の話だという。
『確か大将は人探ししてたな。誰かまでは聞いてねぇが』
『チッ!』
『……判断材料としては足りないな』
ないよりかはマシな情報ではあるが、リボンズが探している人物は一人や二人じゃない。
4年前、姿を消したフォン・スパークは当然のことレナ達のことやフォン・スパーク同様に姿を眩ませた
他にもビサイド・ペインの所在が10年以上前から不明だ。
一概に誰か断定できないのが苦しい。
俺もナオヤの所在は気になるんだけどな……。
『ないものを探っても仕方ない。これ以上は無駄だ』
『そんなことは貴様に言われずとも分かっている!くっ……、こいつは生かしておけん!!』
『なっ、おい!?』
コア・ファイターに向けた銃口をさらに鋭く突き付け、サーシェスに殺意を向けるネルシェンの前に塞がる。
するとやはり彼女は怒気の込もった剣幕で俺を睨んだ。
『邪魔をするというのなら貴様も討つ』
『待て!何も殺す必要は―――』
『―――ある。私の探りがバレた以上生かしては帰せん。退け、今なら貴様は逃してやろう』
『ネルシェン!』
アヘッドの肩を掴もうとしたが少し近付いただけで銃口の奥に緋色の閃光がチラつく。
ネルシェンは本気だ。
俺が立ち塞がるなら俺ごと撃ち殺すつもりだ。
クソ、こうなったら仕方ない。
『なら聞け。殺すよりもっと良い方法がある』
『何?』
ネルシェンにだけ通信を繋いで隠密に交渉を始める。
彼女を打ち崩すには口でやるしかない。
『奴を泳がせる。奴ならリボンズ達から有益な情報を引き出せる筈だ』
『……何かと思えば。馬鹿馬鹿しい、それは奴を脅す材料があればの話だ。私はそんなものを持ち合わせていない』
『いや、持ってるさ』
『何?』
ここでようやくネルシェンの表情に変化が現れた。
訝しむように眉を顰め、俺の言葉に耳を貸し始める。
『少なくとも俺は持ってる。俺の乗るガルムガンダムはこれが完成系じゃない』
『……ほう』
目を細めるネルシェン。
これだけの情報では絵空事だと思われるだろう。
だから、俺はあるデータを彼女に送り付けた。
一つはガラッゾとガデッサのデータを用いて構築したプログラム。
もう一つはアロウズの技術主任を任された男の情報だ。
ネルシェンは二つに目を通して俺を見遣る。
『貴様が考えていることは大体理解した』
『……それで、どうする?』
『……』
暫くネルシェンとの間に沈黙が続く。
やがて、彼女は油断のない鋭い目付きのまま鼻を鳴らした。
『いいだろう。貴様に乗ってやる。だが、この男に私を会わせることが条件だ』
『……分かった』
交渉は成立した。
ビリー・カタギリ技術大尉には後で連絡を入れておこう。
さて、と……まだ本題が残ってる。
ビームサーベルを生成し、その刃先をコア・ファイターに向けた。
『よぉ、話はついたようだが何のつもりだぁ?』
『なに。簡単な話だ。お前には少しの間、俺達の言う通りに動いてもらう。言ってしまえばナオヤの所在を探ってこい』
『……なんだと?』
意外だったのか、サーシェスは目を見開く。
そして、暫く拍子抜けになった後、大袈裟に吹き出した。
『ふっ、はは……っ、ははははははははっ!!何を言い出すかと思えば、奴さん頭おかしいんじゃねえのか!?』
『そうかもな。だが、状況は把握した方がいい』
『あぁ?』
どうやら俺の態度が気に入らないらしい。
サーシェスの語調から苛立ちを感じる。
それでも構わず俺は続ける。
『実の所、俺達はいつでもお前を殺れる。ただ今日は特別に見逃してやろうって話だ』
『んだと!?てめぇ、1回勝ったくらいで調子に乗るなんて良い根性してんじゃねえか!!えぇ!?』
『吠えてもらうのは大いに結構だが、俺もネルシェンも今日は万全ではなかった。これから新型のモビルスーツがチューンする。それが何よりの証拠だ』
『……っ、てめぇ……!』
半分真実、半分嘘だ。
まずネルシェンも巻き込んだが彼女の事情なんで俺は知らない。
パーティー会場にネルシェンが現れたのは十中八九サーシェスが目的だろう。
そこを敢えて新型のモビルスーツという嘘をついた。
だが、俺に関してはそこまで嘘ではない。
既にガルムガンダムを受け取ったが、これから
その為のビリー・カタギリだ。
そして、いつでもやれるという話も半分は真実だが、半分はハッタリだ。
もちろん口ではホラを吹く。
『俺にはヴェーダがある。ネルシェンには今日お前を見つけた観察眼がある。つまり……万全でない俺達に苦戦したお前に次はないということだ』
『口からでまかせを……!』
『でまかせではない』
『何?』
突如、口を挟んだネルシェンもサーシェスを巧みに惑わせる。
『私は今回とある飛行艇の護衛の任務を受けてここにいる。貴様はそのついでだ。その飛行艇には私の新型モビルスーツが搭載されている。その機体の出力はなんと―――アヘッドの10倍らしい』
……………は?
アヘッドの、10倍!?
とんでもないことを言い出したネルシェンの口は愉快そうに笑っている。
待て。
これは嘘か?辺りに飛行艇はない。
だが、もし仮にネルシェンが護衛の任務を受けていたとして、サーシェスに襲い掛かることを予定していたなら戦闘空域から離脱させることを怠りはしないだろう。
だからこの場に居なくても嘘だと断定できる材料にはならない。
とにかく嘘ならばネルシェンにしてはかなり大胆なホラを吹いた。
正直、予想外だ。
真実だった時のことも考慮して、だが。
『……おい、本気で俺をゆすごうって腹か?』
『全て真実だと言っている。疑いたいのなら好きにしろ。貴様の身体が明日を迎えられないだけだ』
『………っ!』
サーシェスが揺れている。
かなりデタラメだがネルシェンの陽動が効いているようだ。
戦いの中で俺と彼女の能力の高さはサーシェスが一番感じている。
そう単略的な判断はしないだろう。
さて、どう出るか……。
『…………』
沈黙がこの場を支配する。
大袈裟な嘘にも聞こえるおかげで相手も逆に判断に躊躇している。
少しでも賭けに負ければ最悪の場合、ここでサーシェスを殺すことを容認するしかなくなる。
少なくとも俺にそれは止められない。
『……いいぜ。飲んでやる』
先に沈黙を破ったのはやはりサーシェスだった。
俺達の要件を飲み、誘いに乗った。
そして、忌々しそうに表情を歪める。
『チッ!口約束で痛い目にあっても俺ぁ知らねえぜ?』
『その時はその時だ』
無けなしの嫌味だけを残してコア・ファイターは戦闘空域を離脱した。
残ったのは俺のガルムガンダムとネルシェンのアヘッドのみだ。
アヘッドの四つ目がこちらを捉えてくる。
『貴様の要望は受け入れた。その男の元へ案内してもらうぞ』
『……分かってるよ』
まったく、流れとはいえ変なことになってしまったな。
それにしてもビリー・カタギリに会ってどうするつもりなんだか。
大方新型のモビルスーツの件、なのだろうが。
飛行ルート上に確かに飛行艇はいた。
だが、その中に眠る化け物の姿だけはこの時見ることは叶わなかった。