息抜きで書いたイノベイター転生   作:伊つき

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スローネ4号機、スローネフィーアがすごく気になる…。
プラモはよ。


イノベイターの使命(後)

一週間後。

ビリー・カタギリ技術大尉から機体のチューンを終えたとの連絡が届いた。

丁度アロウズ全体に任務が入った時だ。

無茶な注文にも関わらず本当によくやってくれたとは思うが、作戦が開始されるまでに宇宙(そら)に送って欲しい趣旨を伝えたところ、了承の返答を得た。

 

当人がどんな反応をしているか容易に想像できるが、やり取りの中にそんな私情は一切挟んでこない。

技術屋としてのプライドだろう。

大したものだ。

あちらが機体を宇宙(そら)へ上げる手筈に追われている中、俺も宇宙へ向かうつもりでいる。

今回の作戦がそういうものだからな。

―――時は三日前、艦内の司令官室で決まったことだった。

 

「申し訳ありません。遅れました」

「よくぞ来た。大尉も参加しろ」

「はっ」

 

マネキン大佐に呼ばれた俺は、作戦プランを練っていたらしい大佐とリント少佐が端末の映像を挟んで対談している間にお邪魔した。

どうやら俺に声を掛ける前に始まっていたらしく話の流れから俺が必要になって呼ばれたようだった。

既にリヴァイヴも参加していて、入室した際に俺を見るなり脳量子波による意思伝達を完全に拒絶し、意味深な笑みを秘密裏に向けてきた。

リボンズの忠告は虚言ではなかったらしい。

 

「ガンダムをロストしたポイントと経過時間、移動速度から、敵艦はこの辺りの海底を航行していると推測されます。我が隊は6機のトリロバイトでエリアを包囲し、発見次第攻撃を開始します」

「制空権の確保は?」

「モビルスーツ2個小隊もあれば十分でしょう。保険としてデスペア大尉も配置していいもいいですが、彼らは海中から出る事がないでしょうから」

 

リント少佐が自身の考察と作戦プランを誇らしげに提示し、マネキン大佐の疑問にも即座に回答する。

ソレスタルビーイングの母艦、プトレマイオス2は現在海中を潜航している。

経過時間や移動速度の計算は戦艦の規模からしてほぼ間違いはない。

確かに少佐の予測した座標は正しいものだ。

 

普通に考えれば袋叩きにされるために敵艦が海上に浮上することはないだろう。

だが、リント少佐は一つ大きな見落としをしている。

……その指摘は俺が口にするまでもなかったが。

 

「その戦術には異を唱えさせて欲しいですね」

 

即座に発言権を取ったのはリヴァイヴだった。

リヴァイヴの第一声にリント少佐は顔を顰める。

 

「お忘れになっていませんか?敵艦は大気圏を突破し、地上に降下して来たのです。ならばその逆も有り得るかと」

「そんな事は……!」

 

そう、プトレマイオス2は5年前とは違って大気圏を突破することができる。

GNフィールドの展開、そして、トランザムによる装甲の強度化と突発的な加速だ。

それだけのことができる艦なら無論その逆もできるだろう。

 

「私も同意見だ。ガンダムのGNドライブには、トランザムと呼ばれている高濃度粒子全面解放システムがある。それを利用すれば……おそらく」

 

マネキン大佐も肯定的だ。

 

「静止衛星軌道上に展開している部隊との連携をお薦めしますよ。敵の作戦指揮官も今のオーソドックスな戦術は先刻お見通しでしょうし」

「無礼な、上官である私を愚弄する気か!?」

「ライセンスがあります」

「何だと!?」

 

作戦プランを否定された挙句、貶されたリント少佐が卓上に強く拳を叩き落とす。

それでもリヴァイヴの表情は頬すらピクリともせず動じない。

一方、マネキン大佐はリヴァイヴの物言いに目を細めた。

 

「貴官もワンマンアーミーだというのか?」

「ミスター・ブシドーと違い、大佐の戦術に従う事をお約束しますよ」

「それは有難いな」

「くっ……!」

 

これまた絵に描いたような構図だ。

どういう思惑か、リヴァイヴがマネキン大佐を持ち上げ、リント少佐が忌まわしそうに表情を歪める。

毎回やるのか、これ。

俺達以外のライセンス持ち、ミスター・ブシドーは命令に従順ではなく、ネルシェンは新型モビルスーツの改装を待っている。

 

だが、そもそもネルシェンの新型に改装する必要はない。

リヴァイヴが裏でどういうつもりにせよ、完全に私情で任務に参加していないところを見るに従順なライセンス持ちの兵士はここに来て珍しい。

マネキン大佐も口角を上げる訳だ。

リント少佐は妬んでいるみたいだが。

 

「デスペア大尉には宇宙(そら)の部隊に合流してもらう。リバイバル大尉のガデッサに搭載されているこのGNメガランチャーという装備の射程と威力が嘘偽りないのならば、海中から飛び出した敵母艦の上昇角度をリバイバル大尉が変え、誘導した座標でデスペア大尉にはこれを叩いてもらう」

 

リント少佐の作戦プランを下地にマネキン大佐が要修正していく。

トリロバイトによるプトレマイオス2の包囲は変更せず、進路を塞いだところに集中砲火。

ミサイルを回避する為に深度を上げる敵母艦はすぐさまトランザムを発動し、海中を飛び出すとの予測。

宇宙へと上昇する敵母艦を地上のMS部隊が追撃し、それで撃沈できればいいが、失敗した場合は大気圏突破へと差し掛かった辺りでガデッサのGNメガランチャーで敵母艦の飛行進路を変える。

 

その先に待つ宇宙の部隊から俺が発進し、無防備な敵母艦を迎え撃つ。

大佐が言うにはこの時に敵はガンダムを発進することはできないらしい。

つまり俺と味方のMS部隊がプトレマイオス2を集中的に攻撃すれば―――敵艦は沈む。

だが、問題を唱えたいやつがいるらしい。

修正した作戦プランを聞いたリヴァイヴの視線を感じる。

 

「マネキン大佐。本当に彼に宇宙を一任するべきと判断を?」

「何か問題でもあるか、リバイバル大尉」

「いえ。私は適任ではないと思ったので……ですが、大佐の指示とあらば宇宙は彼に任せるとしましょう」

 

ただの嫌味じゃない。

この一瞬で俺が失敗しても自分たちは関係がない、元から信用していないと言い張れる。

暗に身内ではないと告げていた。

マネキン大佐も大体の事情を察したのだろう、俺に目配せした後、リヴァイヴの言葉を修正した。

 

「安心しろ。大尉は実績がある。それにこれまでの作戦で私は信頼に値すると評価している」

「それはそれは、失礼しました」

 

恭しくお辞儀をするリヴァイヴ。

だが、大佐の言葉も耳に流して目線は試すように俺を捉えていた。

顔を上げたリヴァイヴは、では失礼しましたと、大佐に敬礼し、退室前に俺の隣を微かに横切る。

 

「今回の作戦での成果、期待していますよ」

「……分かっている」

 

最後の脅しを囁いてリヴァイヴは退室する。

あとはマネキン大佐とリント少佐のプランの最終確認となるため、俺も不必要だ。

去らなければ、と管制室に背を向けた。

 

「待て、大尉」

「……何か?」

 

しかし、大佐が俺を呼び止める。

振り返るとリント少佐が端末上のプランを目で追うのを止め、怪訝そうに大佐を見遣っていた。

大佐はその視線に目敏く気付き、立ち上がって俺の傍まで寄る。

 

「貴官のことはスミルノフ大佐に聞いている。イノベイターとしての立場、失うなよ」

「……はい。分かっています」

 

俺にだけ聞こえるように声を潜めてくれたマネキン大佐の心遣いに頷くしかない俺は、ただ僅かに顎を引く。

イノベイターとしての立場……やはり、イノベイターとしての俺以外に価値なんてない。

だが、リボンズ達のやり方に、あいつらの望むものに俺は賛同できない。

レナの言う分かり合うことが本当に大切なのだとして俺達の力は何のためにある?

……まだ答えは分からない。

 

 

そして、迷走が続く中、三日後は何の配慮もなく訪れた。

宇宙(そら)の部隊と合流した後はバイカル級航宙巡洋艦艦内にて待機。

既に艦内の格納庫に俺の機体は届けられている。

収容されているアヘッド、ジンクスIIIに並ぶ黒い塗装の施されたガルムガンダム。

 

通称【GNZ-001B ガルムブラック】。

 

背部に積んだコア・ファイターを撤廃して搭載した新たなバックパックシステム。

ガンダムフェイスを隠すフェイスカバー。

全てが新調された俺の新型モビルスーツ。

格納庫に佇むガルムブラックを俺は見上げていた。

どんな状況にも対応できる程の力を持つこの機体で何を為すのか。

俺はこの力で何がしたいのか。

 

俺が持つ力の意味を、やるべきことを見つけなければならない。

それはとても重要なことでおざなりにはできない。

だから、この場で即決することはできないのかもしれない。

ならば俺が今避けられない戦いで、その戦闘でするべき事は―――。

 

『モビルスーツ部隊、発進。繰り返します。モビルスーツ部隊、発進』

「……っ、来たか」

 

艦内にアナウンスが鳴り響く。

格納庫から整備兵が退去し、大気圏を突破した敵母艦に即座に対応できるよう、宇宙の部隊は作戦開始予定時間より早期に展開する。

アヘッドを隊長機としたジンクスIIIを導く3機の機影。

計6機の2個小隊が大気圏付近の宙域にてプトレマイオス2を待ち伏せの態勢を取った。

 

俺はヘルメットを被り、ガルムブラックのコクピットで待機している。

そう命じられた訳ではない。

寧ろバイカル級航宙巡洋艦プトレマイオスのように射出型のコンテナを搭載していない為、既に出ていなければならない。

だが、俺はまだ出撃しない。

 

――やがて、成層圏付近で一筋の閃光が煌めく。

ガデッサのGNメガランチャーだ。

同時に、艦に急速接近する大気圏を突破した艦の反応を艦内の優秀な搭乗員によってキャッチした。

モビルスーツ部隊、そして俺も肉眼で捉える。

二対のコンテナが特徴の多目的攻撃艦………プトレマイオス2だ。

 

GNフィールドを纏い、全面解放されていた圧縮粒子の赤いヴェールを剥いでこちらへ向かってくる。

ガデッサのGNメガランチャーによって逸らされた進路。

その先に待つバイカル級航宙巡洋艦はその好機を逃さず、モビルスーツ部隊は各砲撃武装で迎え撃つ。

しかし、敵母艦が砲撃を浴びる中、別方向から粒子ビームが飛来した。

これは……。

 

『うあああっ!?』

『て、敵機だ!砲撃を集中しろ!』

 

別方面から現れたのは、【ダブルオーガンダム】。

モビルスーツ部隊が対応するが、機動性に優れるダブルオーガンダムはこちらの砲火をものともせず掻い潜る。

一瞬にしてモビルスーツ部隊は突破された。

そして、ダブルオーのGNソードIIの銃口に粒子が蓄積され、照準はこちらの母艦を捉える。

――そのタイミングを見計らって俺は操縦舵を引いた。

 

『ガルムブラック。レイ・デスペア、発進する!』

 

GNバーニアを噴かし、ガルムブラックがバイカル級航宙巡洋艦から飛び出し姿を晒す。

黒とグレーを基としたカラーリングのフォルム。

フェイスカバーに覆われ、隠された顔と露出する赤い双眼。

特徴的なバックパックを背負った機体はGNフィールドを張ってダブルオーの粒子ビームを弾いた。

安堵を表すジェジャン中佐の吐息が聞き取れる。

 

『新型か!』

 

『ジェジャン中佐、モビルスーツ部隊を艦の護衛へ』

『……っ。あ、あぁ』

 

ガルムブラックの姿を捉え、即座にGNソードIIをソードモードにして構えるダブルオー。

こちらも他のモビルスーツ部隊を退らせて対峙する。

そして、ガルムブラックの瞳に赤い閃光が宿ると同時に、二本のGNビームサーベルを柄の部分で連結させ、ダブルオーへと直進した。

 

『なっ……!』

 

GNバーニアが粒子を噴き、加速する。

両断しようと振るったツインサーベルをダブルオーは躱した。

だが、双方に伸びた刀身が逃がさまいとその胴体を捉え、背後に振るう。

 

刃は届き、ツインサーベルをダブルオーは右に手にしているGNソードIIで弾く。

しかし、衝撃で後退した機体を戻し、ガルムブラックはさらにツインサーベルを振り下ろした。

ダブルオーも回避できず、GNソードIIを胸の前で交差させて斬撃を防ぐ。

 

『貴様!』

『………っ』

 

両者の刃が競り合い、火花を散らす。

その衝突の中で俺は思考に耽り――"一つの答え"を見つけた。

リボンズと俺自身の過ちに気付き、レナの言葉が理解できず、自分の持つ力の意味すら見失った俺が導き出したたった一つの答え。

そう、俺は……俺は………っ!

 

『俺はまだ、選ばない……!!』

『ぐあっ!?』

 

推進力で勝り、押し切ったダブルオーの腹部に蹴り込む。

蹴り飛ばされたダブルオーは無重力に捕われた状態で無防備な体勢になり、そこにツインサーベルを投げつけるとGNソードIIで身を守ろうとした。

だが、ツインサーベルはGNソードIIを巻き込んで外宇宙へと溶けていく。

ダブルオーはメインの射撃武器を失った。

この隙を利用してバイカル級航宙巡洋艦に通信を繋ぐ。

 

『ジェジャン中佐!ソード・バックパックを!』

『何?』

 

モニターに映る中佐が表情を曇らせる。

事前には話してあった筈だ。

それでも慣れない作業に困惑しているらしい。

少し手際が悪い、ダブルオーが体勢を立て直す前に換装したいが……仕方ないか。

ジェジャン中佐も必死に格納庫を確認して目的のものを把握してくれた。

 

『か、確認した。ソード・バックパック、射出!』

 

バイカル級航宙巡洋艦より煌めく光が放たれる。

すると、ブースターで加速する飛行ユニットが姿を晒し、ガルムブラックの元まで飛来してバックパックとの接続を解除した。

ガルムブラックもバックパックを捨て、飛行ユニットが射出したバックパックにセンサーを充てる。

 

センサーに沿い、導かれるようにガルムブラックの背部へと接続されるソードバックパック。

これが、この姿が、改装の施されたガルムの新たな姿!

ガラッゾの武装を換装した―――ソードガルムブラック!

 

『はあああーーっ!!』

『くっ……!』

 

バックパックに腕を回し、ビームクロー搭載型の腕に換装したガルムブラックでダブルオーへと迫る。

生成したGNビームクローの刃を開き、叩き込むように振るった。

 

『こいつ!』

『ぐっ……!』

 

機体に掠めようかというところで突如出現したビーム刃にビームクローは阻まれた。

咄嗟にGNビームサーベルを生成したようだ。

ビームサーベルは粒子を纏わない実体剣に優位だが相手もビームサーベルの場合は相打ち以外の選択肢はない。

ならば……!

 

『でりゃあああーーーっ!!』

『なっ……!』

 

ビームクローでビームサーベルの相手をしつつ左方のビームクローを束ねてビームソードにする。

その刀身をビームクローの斬撃を防ぐGNビームサーベル、それの柄を掴んでいる腕部に目掛けて振り下ろした。

ダブルオーは、いや、刹那・F・セイエイは反応するも間に合わない。

ビームソードは弧を描いてダブルオーの腕を両断する。

 

『くっ……まだだ!はあぁぁぁああーーっ!!』

『なっ!?』

 

斬り込んでいた俺の視界に粒子の光が過ぎる。

間髪開けずにガルムブラックのビームソードが湾曲し、暫くして左腕が千切れていることに気付いた。

こいつ、もう一本のビームサーベルでガルムブラックの腕を持っていきやがった……!

 

『この……!』

『ぐっ!』

 

互いに片腕を失ったが、この程度で形勢を逆転させはしない。

即座に蹴りを入れて距離を取った。

そして、再度母艦に通信を繋ぐ。

 

『中佐!ランチャー・バックパックを……!』

『了解した。バックパックを射出する!』

 

二度目ともなればジェジャン中佐の対応も迅速になり、バイカル級航宙巡洋艦からまたしても異なるバックパックが放たれた。

煌めく光を目撃すると共にソード・バックパックに腕を回して腕を通常のものに戻し、そのままバックパックを捨てる。

 

新たに宇宙(そら)を漕ぐ飛行ユニットから分離(パージ)されたバックパックにセンサーを通して接続し、ガルムブラックの換装が完了した。

それがガルムブラック、第三の姿―――ランチャーガルムブラック!

 

『これで……、―――っ!!』

 

バックパックからGNメガランチャーを取り出し、砲口をダブルオーに合わせた直後、後方からの粒子反応をキャッチして躱す。

六筋の粒子ビームが過ぎ、その逆を辿るとガルムブラックに直進する【セラヴィーガンダム】を捉えた。

 

『刹那!』

『ティエリア……!』

 

『チッ!』

 

ダブルオーの救援に来たのか。

セラヴィーはガルムブラックとの間合いを阻むかのようにダブルオーとの間に乱入してきた。

……だが丁度いい、メガランチャーの火力をダブルオーに当てる訳にもいかなかったからな。

 

『砲身展開。GNメガランチャー、喰らえっ!!』

『なっ―――』

 

換装した時、既に粒子を蓄積していたおかげでGNメガランチャーの照準を合わせるだけで粒子ビームを放つことができた。

元が2連装ビームライフルであるガルムガンダムのメガランチャーとは違い、ランチャーガルムブラックが装備しているのは元が3連装ビームライフルなガデッサのもの。

その分高威力な粒子ビームがセラヴィーへと迫る。

 

『くっ!GNフィールド!!』

 

背後に損傷したダブルオーを庇っているセラヴィーは当然回避の選択肢は取らない。

GNフィールドを展開して直撃に備える。

あの圧縮濃度のGNフィールドならば大破に持ち込むことはできない。

だが、この位置ならダブルオーものとも蹴散らせる!

 

『ぐっ……うあああああああーーーっ!?』

『ぐああっ!?くっ……ティエリア………っ!』

 

破損は防がれても勢いまでは殺せない。

GNフィールドでメガランチャーの砲撃を受けたセラヴィーは背後のダブルオーも巻き込んで粒子ビームと共に何度もアステロイドを貫いていく。

辛うじて途中でセラヴィーが粒子ビームの軌道をズラし、最後はアステロイドに叩きつけられるだけで済んだが、満身創痍の両機にランチャーガルムブラックは既に照準を合わせて次弾をチャージしている。

 

逃げられはしない。

しかし、その砲身に光が漏れ始めたところで粒子ビームの一閃に貫かれ、GNメガランチャーが破壊された。

爆破に巻き込まれる寸前にメガランチャーを捨てて新たな敵反応に意識を割く。

 

『刹那!ティエリア!』

 

『あれは……』

 

飛行形態からモビルスーツ形態に変形し、駆け付けた【アリオスガンダム】。

2連装ビームライフルの射撃を回避しつつ即座に対応する。

 

『中佐。ガルムスタイルで行きます!』

『了解。フォース・バックパック射出……!』

 

ランチャー・バックパックを分離(パージ)して駆け付けた飛行ユニットから新たなバックパックを受け取り、センサーに従って換装する。

バックパックに積まれている武装はガルムガンダムの標準装備と変わらない。

ガルムブラックは2連装ビームライフルとGNシールドを構え、ガルムブラック第一の姿、フォースガルムブラックとなった。

2連装ビームライフルでアリオスに対抗する。

 

『聞こえるか。アリオスのパイロット』

『この声!貴方は……っ!?』

 

アリオスのパイロット、アレルヤ・ハプティズムと通信を繋ぎ、フォースガルムブラックはGNビームサーベルを手に、同じくビームサーベルを抜刀したアリオスと衝突する。

俺は仲間内との通信を切り、アリオスに極力詰め寄った。

 

『アレルヤ・ハプティズムだな?』

『君は……マリーの、確か……』

『レイ・デスペアだ。これから言うことを聞き逃すなよ』

『え?一体どういう―――』

『スメラギ・李・ノリエガに伝えろ、戦闘中域にスモーク弾を撃てとな』

 

アレルヤ・ハプティズムの困惑も押し切って端的に要件を伝える。

モニターに映るアレルヤも目を見開き、驚愕した。

 

『な、なんだって?』

『スモーク弾を撃て。混乱に乗じて撤退するんだ。俺は追撃する振りをする。その間に逃げろ』

『………』

 

俺の言葉にアレルヤは無言で頷く。

一瞬悩みはしたが、すぐに覚悟を決めたようだ。

この判断力、いや、俺達の間に()()がいることでアレルヤが俺を信じる切っ掛けが生まれてくれた。

俺は賭けに勝った。

 

アレルヤが即決してくれたおかげでダブルオーとセラヴィーが体勢を立て直して乱戦になることも、変に仲間に怪しまれることもない。

アリオスとの競り合いもいつまでも持たせることはできない。

だから、賭けに勝った今……手筈通りになった。

 

『分かった』

『ぐっ……!』

 

アレルヤが端的な一言を発した直後、アリオスによってフォースガルムブラックが突き飛ばされる。

その衝撃に耐えながらも俺はアレルヤにアイコンタクトでコミュニケーションを取った。

 

―――今だ。

 

『スモーク弾、発射!』

 

ダブルオーとセラヴィーが持ち直したと同時、プトレマイオス2から放たれたミサイル型のスモーク弾が戦闘中域を割いていく。

ミサイルが目の前を過ぎり、その後を追うように視界を白く覆うスモークが展開される。

スモークはガンダムを隠し、プトレマイオス2もその中へ自ら飛び込んで行った。

 

『逃げるつもりか!モビルスーツ部隊、追跡せよ!』

『俺が行きます……!』

 

フォースガルムブラックで真正面からスモークの中へと飛び込む。

だが、モニターが白く覆われ、視界は霞んで何も見えない。

……この様子ならば見失っても責められないだろう。

通信障害のあるスモークを抜け出してジェジャン中佐に報告をする。

 

『中佐。敵母艦とガンダムがロストしました』

『そうか……モビルスーツ部隊は二つの小隊に分かれて周囲を探索。もし見つからなかった場合はこのまま撤収する』

『……了解』

 

中佐の指示通り、アヘッド1機が隊長機としてジンクスIII2機を連れた1個小隊が二方面に分かれて探索を始める。

母艦の周囲からモビルスーツ部隊は消え、ガルムブラックだけが残った。

動かないガルムブラックにジェジャン中佐が不審に思う。

 

『どうした?デスペア大尉。貴官も探索に参加しろ、せめて敵の足取りくらいは掴まねば―――』

『失礼します』

 

ジェジャン中佐の言葉は聞き入れず、格納庫に戻る。

そして、並べられていたガルムブラックのバックパックをあらかた回収してまた再出撃した。

バックパックは全三種、コードで繋いで全てかっさらった。

 

『な、何をしている!?』

『申し訳ありません。俺は……アロウズにはもう居られない』

『何?』

 

モニター越しに目を見開くジェジャン中佐と向き合って答える。

 

『俺は、アロウズが間違っていると判断しました。アロウズを背後から操るイノベイターが……。だから、俺は決めた。答えを見つけるまで俺は今間違っていると判断したものは全て否定する!!』

『なっ……』

 

ジェジャン中佐だけじゃない、俺の顔が見える艦内の者達が唖然と俺を見ている。

さらに言葉を無くしたジェジャン中佐に間髪入れずに続けた。

 

『俺はアロウズの残酷な虐殺行為を認めない。そして、ソレスタルビーイングとアロウズの抗争に介入し、誰も殺させない!イノベイターの望む恒久和平の実現は力尽くで止める』

『貴様、自分が何を言っているのか分かっているのか……!』

『分かっている!俺は俺が正しいと思った道を行く。もう間違った道は進まない!』

『………っ!』

 

ジェジャン中佐を始め、仲間達が皆息を詰まらせるのが分かる。

怖気付いたその隙に俺はガルムブラックで母艦から離れていった。

 

『ま、待て!認めん!認めんぞ、貴様が……貴様らが我等を導くイノベイターなどっ!』

『俺は俺だ。今はそれでいい』

 

それだけを言い残して艦に背を向ける。

モビルスーツ部隊が戻ってきても間に合わない。

既に展開し切っている今、戻って追い掛けてもロストするだけだ。

追跡は免れた。

―――ガルムブラックはただ行く宛のない宇宙(そら)へ姿を消す。





レイ専用の新型モビルスーツ【GNZ-001B ガルムブラック】の独自設定を活動報告に上げています。
個人的にガルムブラックの語呂が凄くいい感じ…。
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