リリカルな戦闘民族 (ドラゴンボールZ×リリカルなのは) 作:顔芸の帝王
アースラに到着したバーダックははやての無事を確認した後、窓際で一人地球を眺めていた。
「…………」
「こんな所にいたのか」
「…クロノか。何か用でもあるのか?」
「闇の書…いや、夜天の魔導書について進展があった。なのは達にも報告をするから少し来てくれないか?」
「…分かった」
バーダックはクロノと共に歩き出す。しばらくは無言でいた二人だったが、道中でクロノが話を切り出す。
「…そう言えば君にはもう一つ話しておく事があった。」
「あの猫女のことか?」
「ああ。グレアム提督とあの二人は別の方法で闇の書の封印を考えていたんだ」
クロノはざっくりとグレアム提督の作戦を伝え、彼らに悪意は無かった事を話した。
「…なるほどな」
「まぁその氷結魔法は君が見た通り大して防衛プログラムの動きを止めることはできなかったんだがな」
「それで奴らはどうなるんだ?」
「…正当な理由があったとはいえ彼らのした事は立派な犯罪だ。具体的には分からないがこのまま何も無いという事は多分ない」
「そうか…ならいい」
「………」
「…まだ言いたい事でもあるのか?」
「いや、そういう訳じゃないんだが…なんというか意外と冷静なんですね」
「なんだ、俺が奴らをどうにかするとでも思ったのか?」
「そこまでじゃなくても少なくとも愚痴ぐらいは言うと思ってたんですけど…」
「…私利私欲のために動いていたなら殺していたかもしれねぇがな。それにもう終わった事をいちいち掘り返していたら面倒だろうが」
「…君がそんな風に思っていたとは意外だったよ。まぁこちらとしてもその方がありがたいしな。…っと話している間に着いてしまったな。この部屋だ」
二人が部屋に入るとそこにはなのは達四人が椅子に座って待っていた。
「あっ…クロノ君にバーダックさん」
「待たせて済まなかったな。それで話なんだが…」
〜〜〜
「夜天の書の破壊…?」
「どうして…?防衛プログラムは破壊したはずじゃ…」
「これは夜天の書の管制プログラムからの進言だ。」
「管制プログラムって…なのは達が戦ってた銀髪の?」
「ああ。防衛プログラムは無事破壊できたんだが、夜天の書本体はすぐにプログラムを再生してしまう。夜天の書が存在する限りどうしても危険は消えないんだ。…だから防衛プログラムの破壊されている今のうちに自らを破壊するよう申し出た」
「そんな…」
「でもそれじゃあシグナム達も…」
フェイトがそう言いかけた時、ちょうどやって来た本人達がそれを否定する。
「いや、私達は残る」
「シグナム…!」
「防衛プログラムと共に我ら守護騎士プログラムも本体から解放したそうだ。」
「それで…リインフォースからなのはちゃん達にお願いがあるって…」
「お願い…?」
「それからパラガスさんからもバーダックさんにお話があるって…」
「俺にか?」
「ええ。なんでも二人で話したい事があるって…」
「…まぁ面倒だが行ってやるか。」
そう言ってバーダックは席を立つと、パラガスの待つ部屋へと向かって行くのであった。
***
バーダックが教えられた場所に向かうと、備え付けの椅子に腰掛けたパラガスが待っていた。
「来たか」
「…一体何の用だ」
「…まぁ立ち話もなんだ。そこに座ってくれ。」
バーダックは言われた通りパラガスの向かい側に座ると、パラガスはゆっくりと口を開き始める。
「少しお前に聞きたいことがあってな。」
「…………」
「夜天の魔導書の破壊の事はもう聞いたか?」
「…ああ。確か破壊しねぇとまたあの化け物が蘇るんだったな」
「その通りだ。明日の午後には決行するらしい」
「………」
「なぁバーダック、本当にこれでよかったと思うか?」
「…何が言いたい?」
「俺はあいつが…リインフォースが自身の破壊を申し出た時、何も言ってやれなかった……俺には直接的なリスクは無い上に魔法プログラムの事は全く分からない。そんな俺が覚悟を決めたあいつに生きろと言うのは無責任な気がしてな…」
「………」
「だができることならあいつにも生きて欲しい…バーダック、俺はどうすればいいのだ…」
「…そんなことは俺が言う事じゃねぇ。自分で考えろ」
「……そうかもしれんな。変な事を言ってすまなかった」
「…だが一つ教えてやる。いいか、死ぬってのはそこで終わることじゃねぇ。そいつの願いや意志を一人でも継ぐ奴がいる限り終わる事はねぇんだ」
「意志…」
「状況から言って奴を生き残らせるのは無理があるのはお前も分かるだろう。だがどうしても奴を終わらせたくねぇなら……後は分かるな?」
(リインフォースの願いや意志…そうか…!)
「…ああ。おかげでするべき事が分かった。感謝する」
「フン…気が済んだならとっとと行きやがれ」
「あ、ああ分かった。…お前も何か困ったことがあれば遠慮なく言えよ」
(全くあの野郎…この世界に来てすっかり毒されやがったな…だがこれで奴も少しは安心して逝けるだろう……この俺のようにな)
彼は意思を継ぐ者の大切さを誰よりも強く感じていた。それは彼もまた、かつて自らのを意志を託した人間であったからである。
***
翌日の夕方、バーダックは一足早く約束の高台にやって来ていた。早めにやって来たため先客はいないだろうと思っていたが、リインフォースはすでに到着し、街を見下ろしていた。
「…お前か、バーダック」
「随分とお早い到着じゃねぇか」
「私が消えるのが遅くなれば主の侵食が始まってしまうからな。それとバーダック、昨日はパラガスに助言をしたそうだな。私からも礼を言う」
「フン…一体何の事だ」
「あいつも騎士達と共に私の意志を継ぎ…主はやてを幸せにすると言ってくれた」
「…………」
「そしてお前にも頼みたい。この先もし主はやてに危険が迫った時、助けが必要になった時…主はやての力になってはくれないか?」
「そういう事は騎士共かパラガスに頼みやがれ。……まぁ、気が向いたら考えてやらんこともねぇがな」
「フフッ…ありがとう。それで十分だ」
そんな会話をしているとなのはとフェイト、それに守護騎士達もやって来る。しかし、リインフォース以外の全員がどことなく暗い顔をしていた。
「…ああ…来てくれたか。」
「リインフォースさん…」
「そう呼んでくれるのだな。」
「貴方を空に還すの…私達でいいの?」
「お前達だから頼みたいのだ。お前達おかげで私は主はやての言葉を聞くことができた。主はやてを喰い殺さずに済み、騎士達も生かすことができた。…本当に感謝している。だから最期は…お前達に閉じて欲しい」
「シグナムさん達に聞きました…はやてちゃんとお別れしなくていいんですか?」
「主はやてを悲しませたくないのだ。」
「でもそんなの…なんだか悲しいよ…」
「お前達にもいずれ分かる。海より深く愛し、その幸福を守りたいと思えるものに出会えたらな…」
「リインフォースさん…」
「さて、そろそろ始めようか…夜天の魔導書の…終焉だ」
〜〜〜
リインフォースはなのはとフェイトが生成した魔法陣の中に入ると、静かに目を閉じる。その表情には昨夜のような悲痛なものではなく、清々しさと喜びに満ちていた。
『Ready to set.』
『get set.』
「ああ…短い間だったがお前達にも世話になった。」
『don't worry.(お気になさらず)』
『Take a good journey.(良い旅を)』
「ああ…ありがとう。」
その時だった。リインフォースは聞こえるはずのない声に自らの名を呼ばれパッと目を開ける。
「リインフォース!みんなっ!」
「あれは…」
「はやてちゃん…!」
そこには必死に車椅子を進めながら叫ぶはやての姿があった。
「あかん!リインフォース止めてぇっ!破壊なんてせんでええ!私がちゃんと抑える!大丈夫や!だからこんなんせんでええ!」
「主はやて…良いのですよ」
「良いことない…良いことなんかなんもあらへん!」
「…今まで長い時を生きてきましたが…最後の最後で私は貴方に綺麗な名前と心をいただきました。騎士達も貴方のそばにいます。何も心配する必要はありません。」
「心配とかそんな…」
「ですから…私は笑って逝けます。」
「うっ…話聞かん子は嫌いや!マスターは私や!話聞いて!私がきっとなんとかする…!暴走なんかさせへんって約束したやんか!」
「その約束はもう立派に果たしていただきました。主の危険を払い、主を守るのが魔導の器の務め。貴方を守るための最も優れた方法を、私に選ばせてください。」
「せやけど…ずっと悲しい思いしてきて…やっと…やっと報われたんやないか…!」
「私の意思は…貴方の魔導と騎士達…それからあの男が引き継いでくれました。私はいつも貴方のそばにいます」
「そんなんちゃう…!そんなんちゃうやろ!リインフォース!」
「駄々っ子はご友人に嫌われます。聞き分けを。我が主。」
「リインフォース!あっ!」
リインフォースに駆け寄ろうとしたはやてだったが、車輪が段差に引っかかり前のめりに転倒してしまう。
「なんで…これからもっと幸せにしてあげなあかんのに…」
はやては地面に這いつくばりながらリインフォースを見つめる。リインフォースはそっとはやての頬に手を差し伸べると、微笑みながらはやてを諭す。
「大丈夫です。私はもう…世界で一番幸福な魔導書ですから。」
「リインフォース…」
「主はやて。一つお願いが…」
「えっ…?」
「私は消えて…小さく無力な欠片へと変わります。もし良ければ、私の名はその欠片では無く、貴方のいずれ手にする新たな魔導の器に送ってあげてくれませんか?祝福の風…リインフォース。私の魂はきっとその子に宿ります。
そう言い残しリインフォースは再び魔法陣の中心に立つ。
「ううっ…リインフォース…」
「主はやて…守護騎士達…異世界の戦士達…そして小さな勇者達。ありがとう…そして…さようなら…」
「あっ…」
リインフォースはそう告げると光の粒子となって天に昇って行く。そしてその光も見えなくなると、代わりに金の首飾りがはやての目の前に舞い降りる。それは動くことも無ければ言葉を発することもなかったが、はやては胸元でぎゅっと握りしめるのであった。
***
リインフォースの最期を見届けたバーダックは、家でソファーに腰掛けいつものように星を眺めていた。現在の時刻は時刻は5時を少し回ったところ。普段ならまだトレーニングをしている時間だが、流石のバーダックも疲れが出たようで今日はトレーニングルームにすら入らなかった。そんな時、別室からやって来たフェイトがバーダックに話しかける。
「あの…バーダックさん」
「…なんだ。」
「隣…いいですか?」
「…好きにしろ」
バーダックがぶっきらぼうにそう言うと、フェイトは隣にちょこんと腰掛ける。
「あの…今日なのはとも話したんですけど、私管理局の仕事続けようと思うんです。今回みたいな事を少しでも早く止められるように…」
「…そうか」
「それでその…バーダックさんはこれからどうするんですか…?」
「…俺はここに永住するつもりはねぇ。だからひたすら元の世界を探す」
そう言うとフェイトは明らかに寂しそうな顔をして肩を落とす。
「そうですか…そうですよね…」
(またこれか…相変わらずガキは面倒だ)
以前フェイトが自分の生い立ちを話した時のように沈んでゆくのを見て、心の中でため息をつく。
「まぁ、元の世界に見つかるまでは…少しなら管理局の手伝いをしてやってもいいがな」
「あっ…!ほ、本当ですか?」
「少し…少しだけだ…!完全に奴らに付くわけじゃ……っておい、何しやがる…」
フェイトはぱぁっと明るい表情になると、バーダックの胸に飛び込む。
「フフッ…ありがとうございます…バーダックさん。お礼にしばらくこうしてますね…」
「チッ…何がお礼だ…ふざけたことを…」
珍しく甘えるフェイトを見ていると自らの息子のことが思い出される。
(そう言えば俺のガキは抱いてやった事は無かったな…)
バーダックは愚痴を言いつつもフェイトを引きはがしたりはせずに、フェイトの頭にやんわりと手を乗せ、しばらく物思いにふけるのであった。
「おい…いつまでそうしてやがる。いい加減離れろ」
バーダックはフェイトが自ら離れるまで待っているつもりだったが、いつまでたっても動かないフェイトを見かね声を上げる。しかしそれに対して返答が無かったため耳をすませると、フェイトは気持ちよさそうに寝息を立てていた。
(チッ…この野郎…手間をかけさせやがって…)
バーダックは仕方無くフェイトを抱き抱え寝室まで運ぶ。その間もフェイトは全く起きる気配がなく、とても静かに目を閉じていた。
(…本当によく寝てやがるな)
戦いの中に身を置いてきたバーダックにとって、子供が自分の腕の中で眠りにつくことなど今までには無かった。バーダック自身もそんな事になるとは予想もしていなかったし、したいとも思わなかった。だが、今こうしてフェイトを抱き抱えていると不思議と心が安らいだ。
「…元の世界に戻る方法でも考えるか」
フェイトをベッドに寝かせると、バーダックは小さく呟いて部屋を後にする。口に出さなければ元の世界に帰る気が無くなってしまいそうだったからだ。
(チッ…毒されたのは奴だけじゃねぇって事か。全く…)
こうして闇の書巡る戦いは幕を閉じた。しかし、新たな未来はまだ切り開かれたばかり。きっと彼はこれからも戦いの中で生き続けるのだろう。しかし、フリーザとの戦いの時のように“ たった一人”ではない。彼の周りには大切な仲間達がいるのだ。そんな未来に少しだけ希望を抱きながら、バーダックは再び星を眺めるのであった。
どうも。顔芸です。
今回はなんだか打ち切り漫画の最終回みたいな終わり方になってしまいましたが、実はエピローグ的なのがもう一話あります。正確に何話で終わらせるという計画は立ててなかったのですが、ちょうど20話完結になりそうです。
次回はいよいよ最終回ですので、また読んでいただけると嬉しいです。
それでは。