リリカルな戦闘民族 (ドラゴンボールZ×リリカルなのは)   作:顔芸の帝王

29 / 41
第九話 介入

今回ロストロギアを含めた骨董美術品のオークションが行われるのは、この広いミッドチルダでも有数の高級ホテル、“ホテル・アグスタ”。悠久な樹海の中に建てられたこのホテルには、所謂上流階級と呼ばれる人間達が都会の喧騒を避けて休暇を過ごす場所だ。そんな場所で警備をするのだから、それなりの服装をしなければ確実に浮いてしまう。そのため六課の館内警備の人間は全員フォーマルな衣装を身に付けていた。無論それはこの男も例外ではなく…

 

 

「くっ…はやての野郎…一度ならず二度までも…」

「ふっ…そう腐るなバーダック。なかなか似合っているぞ?」

「ケッ…つまらねぇ世辞を言いやがって…」

 

そう愚痴るバーダックの服装は黒のシャツにダークレッドのスーツ、首元には洒落た黒の蝶ネクタイというどこぞのハリウッド俳優のような出で立ちである。本人は今すぐにでも普段の服装に戻りたい様子だったが、比較的ワイルドなイメージの色合いが功を奏したのか、黙っていればかなり自然である。

 

「あっ、バーダックさん着てくれてる!」

「ふふっ、似合ってるやないですか」

 

明るい声に振り向くと、そこには煌びやかなドレスを身にまとった隊長三人衆の姿があった。

 

「てめぇら…また俺にこんな格好を…」

「まぁそう言わずに…今度はお世辞じゃなく本当に似合ってますよ?」

「そうそう。バーダックさんから文句が出ないようになんたって今回は三人で選んだんですから」

「三人だと…?まさかフェイト…」

「は、はい…わ、私も選びました…」

「………」

「特にフェイトちゃんはバーダックが着るからって自分の以上に念入りに選んだんでたからなぁ~」

「ちょ、ちょっとはやて…そう言う事は…」

 

フェイトがはやてのからかいに顔を赤らめながら小さな抵抗を見せる一方で、バーダックは歯牙にもかけずにムッとした表情で反論を述べる。

 

「…そこまでするなら俺を外の警備にすりゃよかっただろうが」

「うーん…まぁそれでもよかったんですけど、屋内の警備なら魔法使わんでも戦えるバーダックさん達の方が向いてますし、仮に屋内で戦闘が起きたら人命に直接関わる事態になりかねませんから、できるだけ戦いに慣れた人がよかったんです。…まぁ一番の理由はフェイトちゃんのドレス姿を見て──

「わーっ!も、もういいから!ほ、ほらそろそろオークションが始まるから早く持ち場に行かないと…」

 

そう言ってフェイトはあたふたしながら笑みを浮かべたはやてを押してゆく。そんな微笑ましい様子をなのはとパラガスの二人は笑顔で見つめていたが、当の本人は難しい顔付きで小首をかしげるばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここは…何処だ……?)

 

 

気が付くと知らない街の道路に一人佇んでいた。街と言っても建物はいつ崩れてもおかしくないほどに破壊されており、まるで戦争でも起こったようだった。人の姿は見受けられず、生物の気も感じない。そして自分が何故こんな場所に居るのか、自分が今まで何をしていたのか…果ては自分の名前すらはっきりと思い出せない。

 

(一体何が…分からない…何も……)

 

しばらくは当てもなく街を歩いていたが、結局記憶が蘇る事は無かった。しかし記憶を失ったとはいえ明らかにこの状況はおかしい事ぐらいは分かる。そしてなんとか今の状況だけでも把握しようと、手頃なビルの屋上から辺りを見渡してみる。空には不気味な灰色の曇が広がり、遠くには同じようなビルが建ち並んでいるばかりで、手がかりになるような物は何も無かった。高い場所に登った程度で思い出せるなら最初から記憶を失ったりしない……そう思い地上に降りようとしたその時、脳内に電撃が走った。

 

 

「違う…俺は…この街を知っている……ミッ……ド…チル…?……ミッドチルダか…!…まさかっ…!」

 

 

そう呟くと躊躇いなくビルを飛び降り、全速力で道路を駆け抜ける。決して今の状況が理解出来た訳では無く、何処に向かっているのかもあやふやだった。ただ何か取り返しのつかない何かが起きてしまったような…そんな胸騒ぎだけが自らの足を動かしていた。

 

「親父っ…!はやて…!リイン…!シグナム…!ヴィータ…!シャマル…ザフィーラ…!」

 

気がつけば譫言のように大事な人の名前を口にしながらひたすらに走る。走る。走る。走る。

 

 

 

 

「はぁっ…!はぁっ…!はっ…ここは…」

 

 

 

 

どのぐらい走っただろうか。気が付くと彼はとある家の玄関先にまでやって来ていた。いつの間にか空を覆っていた雲は消え、周囲からは人の気が溢れ建物も元通りの状態に戻っている。

 

 

(今までのは…夢だったのか?)

 

 

ブロリーは思わず胸を撫で下ろす。悪い夢だ。最近修行ばかりしてあまり寝ていなかったせいだろう。はやて達を心配させてもいけない。今日は早く休もう。

そんな事を考えながらドアに向かう。今は一秒でも早く聞き慣れた声が聞きたかった。

 

 

 

「はやて……ただい……ま…?」

 

 

 

そう言いながらドアノブに手を乗せた時だった。見てしまった。気がついてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自身の手が真っ赤に染まっている事に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かはぁっ……!はぁっ…はぁっ…はぁっ……」

「うおっ…!?びっくりした…」

「大丈夫か?随分うなされていたようだったが…」

「ヴィータ…シグナム…?俺は……」

「お前が通信に出なかったから様子を見に来たんだ。そしたらお前が地面にぶっ倒れてて…」

「そうだったのか…すまなかった…」

「別に私に謝んなくていいけどよ…お前は最近根詰めて訓練しすぎだ!皆心配してんだから程々にしとけよ…?」

「…気を付ける。俺が寝ている間に何か異常は無かったか?」

「その事なら大丈夫だ。それよりお前は念のため少し休んでいろ」

「だが…」

「あくまで見張りだけだ。何かあればお前にもすぐに連絡する」

「…分かった。じゃあ何かあったら呼んでくれ」

 

そう言うとブロリーは素直に休憩室へと向かって行く。その背中には明らかな披露の色が見えた。

 

「いいのかよ…ずっと休ませなくて…」

「あいつは辛いことは隠したがるからな。これぐらいに言っておかなければ無理にでも仕事をするかもしれん」

「なるほどな……ホントこういうところははやてそっくりだ」

「まぁそれが良いところでもあるのだがな…それよりあのブロリーがうなされるとは相当な悪夢を見たんだろう。お前何か心当たりはあるか?」

「さあな…だけどあの真面目なブロリーが仕事中に突っ伏して寝るなんて訓練でよっぽど疲れてんだ。こりゃ本格的にどうにかしねぇといけねぇかもな…」

 

ひとまずブロリーの無事に安堵の表情を浮かべる二人であったが、同時に心配事も増えてしまうのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ねぇティア…」

 

 

(最初の出動の時…それなりに上手くいった。でも…ただそれだけ。毎日の訓練もあんまり強くなってる気がしない。でも私の周りには天才の同僚や優秀過ぎる隊長達ばかり。今でも疑問に思ってる…なんで私がこんなところに居るのか…なぜあの人は私を部下に選んだのか…)

 

 

「ティアってば!」

 

「えっ…あぁ…」

「さっきからぼーっとしてるみたいだけど…具合でも悪いの?」

「ごめんごめん…少し考え事をしてただけよ。それで何の話だったっけ…」

「今日は八神部隊長の守護騎士団全員集合だねって話だよ」

「あーそうだったわね。そう言えばアンタその辺詳しかったわよね?」

「うん…って言っても父さんやギン姉から聞いたことぐらいだけど…八神部隊長の使ってるデバイスが魔導書型で、それの名前が夜天の魔導書って事と…それと副隊長達とシャマル先生とザフィーラ、リイン曹長は八神部隊長個人が保有する特別戦力だって事。パラガスさんとブロリーは八神家に居候してる親子…らしいんだけど、ほとんど家族みたいな感じらしいから、家族全員揃えば無敵の戦力なんだって…」

「ふうん…まさにエリート一家って感じね…」

「ティア…?なんか気になるの?」

「別に…」

「そう…じゃあまた後でね」

 

そう言うと二人は念話を切り再び仕事へと戻る。この時ティアナの表情は浮かばないものだったが、着々と戦闘開始の準備が進んでいるのであった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ホテル・アグスタ周辺の薄暗い森の中に大小二つの影があった。一人は栗色のコートを着た大柄の男。もう一人は薄紫の髪にフードを被った幼い少女である。

 

「…いいのか?お前の探し物はここには無いのだろう…?」

「うん…でもドクターのおもちゃがこっちに向かってるって…」

 

少女がそう言いかけた時、ドクターと呼ばれた男…スカリエッティから通信が入る。

 

「ごきげんよう…騎士ゼスト…ルーテシア」

「ごきげんよう…」

「…一体何の用だ」

 

嬉々としてでは無いにしろ挨拶を返すルーテシアに対して、ゼストの方は辛辣な言葉をぶつける。

 

「相変わらず冷たいねぇ…まぁいいさ。レリックではないんだがあのホテルに興味深い骨董が一つあるんだ。少し協力してもらえないかい?」

「断る。レリックが絡まぬ限り、貴様らとは互いに不可侵を守ると決めたはずだ」

「ルーテシアはどうだい?頼まれてくれないかな?」

「…いいよ」

「ふっ…優しいな…ありがとう。今度お茶でも奢らせてくれ。君のデバイスに私が欲しい物のデータを送ったよ」

「…うん」

「それともうもう一つ…君に協力したいという者が居てね…今そっちに向かっているんだが…」

「協力者…?」

「ああ。君の力を疑っている訳じゃないんだが…どうしても今回協力したいそうでね」

「でもドクター…そんな気配は全然……」

「へへへっ…待たせちゃったかな…?」

「…っ!?」

(こいつ…いつの間に近付いて…)

 

突然背後から聞こえた不気味な声に二人はばっと振り返る。するとそこには全身にローブを纏った老人らしき姿があった。身長はゼストどころかルーテシアよりも小さく、フードを深く被っているため顔は僅かしか見えないが、異常に細い黄土色の腕や独特の声がただの人間ではない事が分かる。

 

「貴様…何者だ…」

「この男の言う通りさ…心配しなくても君達の邪魔はしないよ」

「…解せんな。一体何が目的だ?」

「…しつこいヤツだね。本当に協力してやるだけだよ。…まぁ強いて言うなら今回は偵察が目的かな?」

「………」

 

ゼストとルーテシアは信用ならないという表情だったが、このまま問いただしたところで無駄だと判断する。

 

「…私達の邪魔をしないのであれば勝手にするがいい。ルーテシア、お前もそれでいいか?」

「うん…」

「そりゃどうも。さて…じゃあぼちぼち早速始めようかな」

 

 

そう言うと老人は掌から大きな水晶玉を取り出し、ゆっくりと手をかざす。すると水晶は禍々しい光と強烈な風を放ち、それに伴って今まで見えなかった老人の顔が顕になる。体に対して明らかに大きい皺だらけの頭に備わった今にも飛び出しそうな巨大な眼球は、明らかに人間とはかけ離れている。そんな異形の姿を見て驚きを隠せない二人を尻目に、老人は両腕を高く掲げると目を細めてにんまりと笑みを浮かべる。

 

 

 

 

「さて…僕の…このバビディ様の力を見せてやるとするか…」

 

 

 




どうも顔芸です。
今回は一人目の敵が明らかになりました。皆さんの予想をいい意味で裏切れたら嬉しいですが、勘のいい方は前話ぐらいで気づいているかもですね…

もう一つ前回のアンケートですが、協力してくださった方ありがとうございました<(_ _)>以外にも3のそのままでという方が多かったです。

次回は二度目の戦闘回の予定ですが、前回はほとんどカットだったので実質Sts編初めての戦闘回になりますね。また読んでいただけると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。