リリカルな戦闘民族 (ドラゴンボールZ×リリカルなのは) 作:顔芸の帝王
広大な森林の中で静かに動き出した怪しげな魔導師達。しかしそれを見逃すほど六課の警備は甘くない。
「…っ!クラールビントに反応…!」
「こっちも捉えました…!けどこれって…」
管制室のモニターに魔力反応を示す無数の点が表示されてゆく。その数は以前のハイジャック事件を上回るほどだったが、局員達の視線は別の場所にあった。
「ガジェットの後方にかなり大きな魔力反応が二つ…!しかもその内の一つはSランク並です!」
「いえ、この反応…それだけじゃないわ…複数の魔導師がガジェット達に混ざってこっちに向かってる…!」
「えっ…!それってもしかして…」
「話は後よ!私はシグナム達前線チームに伝えるから、みんなははやてちゃん達に連絡を!」
「り、了解しました!」
***
バビディ達が動き出す少し前、一人廊下を歩いていたバーダックは、付近の異様な気を感じ取り一人佇んでいた。
(さっきから漂っているこの気は何だ…決して強くはねぇが普通の人間のモノじゃねぇ。へっ…こりゃ本当に一波来るかもな)
バーダックは目を閉じて感覚を研ぎ澄ませながら過去の記憶を辿って行くが、結局気の主の手がかりになるような考えが出ることはなかった。
(…パラガスの野郎にも聞いてみるか。あいつもこの気は感じ取っているはずだ)
そう思いポケットの通信機を手に取った瞬間、まるで待っていたかのように通信機の無機質な音が鳴り響いた。
「…なんだ」
「こちらはやてです。バーダックさん、今管制から通信が入ったんですけど、結構な数のガジェットがこっちに向かってるそうです…!」
「…そうか」
「オークションの方はとりあえず中止はせずに時間を延ばして様子を見る事にします。とりあえずバーダックさんには───
「任せろ。目に見える奴らは全て叩き落としてやる」
「ちょ…まだ私は何も…!バーダックさんには──
「よし…行くか…!」
はやての次の言葉を察したバーダックは素早く通信を切断すると、戦場へと駆けてゆくのであった。
***
「でやぁぁっ!」
ヴィータが上空に投げた鉄球をガジェット達に向かってフルスイングで叩きつける。魔力を帯びたそれらは寸分違わぬ精度で目標に向かって行くが、ガジェット達はまるで生きているかのような滑らかな動きで難なく回避してしまう。付近で警備に当たっていたシグナム、ザフィーラ、さらに小休憩を取っていたブロリーも戦っているが、通常より高い回避性能と数の多さには手を焼いているようだった。
「こいつら…さっきまでと動きが全然違う…!こりゃ機械の動きじゃねぇぞ!」
「ヴィータ、おそらく相手は召喚師だ。となれば会場に回り込まれるかもしれん。お前は新人達の方に行け!」
「そうは言ってもよ…ここだってアタシ達四人で精一杯だ!今一人でも欠けたらここを突破されるぞ…!」
『その事なら心配いらんで』
「は、はやて!」
『今バーダックさんが勝手に……コホン。じゃなくて向かってくれたからとりあえず大丈夫。せやからそっちに余裕が出来たら来てくれればええよ。新人達への連絡も私がしとくから、ヴィータ達は戦いに専念してな』
「わ、分かった!」
「了解しました…我が主」
***
シグナム達が奮戦している一方で、新人達の守るホテル正面では一方的な戦闘が繰り広げられていた。それもそのはず敵は新人達四人に対して、多数のガジェットに加えて謎の魔導師集団がスバル達に襲い掛かっていた。
「ほらほらどうしたぁ!天下の管理局員様が情ねぇな!?」
「くっ…でぇやああっ!」
「おらぁ!後ろががら空きだぞクソガキ!」
「えっ…うわっ…!」
「エリオ!このっ!」
(くっ…まさかこんなに強い魔導師が来るなんて…意地張って援軍を頼まなかったのは失敗だった…私達だけじゃこれ以上はもう…)
「きゃあっ!」
「へへっ…!捕まえたぜ嬢ちゃん…」
「キャロ!」
「うぅ…ごめんなさい…」
ティアナが援護を頼もうとしたその時、すぐ近くで後衛を担当していたキャロがバインドを掛けられてしまう。
「こりゃいいぜ…!俺程度の魔導師が六課の魔導師を拘束できるなんてな…流石はバビディ様だぜ…!」
(バビディ様…?聞いた事のない名前だけど…)
「おいお前ら!このガキの命が惜しければその場から動くんじゃねぇぞ!」
「くっ…卑怯な…!」
「へっ…何とでも言うがいいさ。とにかくお前らは──
人質を取り得意げになっている男の顔面に、突如強烈な横蹴りが飛ぶ。男は顔の形が変形したままそのまま奥の林まで滑空していった。
「なっ…」
「ば、バーダックさん!?」
「全く手間掛けさせやがって…いくら数が多いとはいえこんなカス共に遅れを取ってんじゃねぇ!」
「あっ…その…ごめんなさい…」
そう辛辣な言葉を並べつつも、バーダックはキャロのバインドを引きちぎると、新人達を庇うように男達の前に立ちふさがる。
「おいオッサン…誰がカスだって…?」
「てめぇら以外に誰がいるってんだ」
バーダックの煽りで怒り心頭な男達は、一斉に魔法弾を放つ。それらはバーダックの身体に命中すると、周辺の地面ごと吹き飛ばす程の爆発を引き起こした。
「バーダックさん!」
「はっ、馬鹿め!モロにくらいやがった!」
「たまたま不意打ちが決まったからっていい気になってるから…だ…ぜ…?」
「…下らねぇ技だな。埃を巻き上げるだけか」
「な…何だと…」
「そんなバカな…俺達の全力の技を…」
「どうした?もう怖気付いたのか?」
「ひ、怯むなお前達!俺達はバビディ様に力を授かったのだ!」
「そうだ…!俺達全員で掛かれば倒せるはずだぜ…!」
「へっ…その割に腰が引けてるじゃねぇか!そっちが来ねぇなら…こっちから行くぞ!」
そう言い放つとバーダックは男達へと飛びかかり、攻撃を加える。常人には全く目で追えない程の速度で懐に飛び込み、的確に人間の弱点を突く…口で言うのは簡単だが、この一連の動作をここまで高いレベルで行う事が出来るのは限られた人間だけである。
「す、凄い…」
「バーダックさんって…こんなに強かったんだ…!」
荒っぽい攻撃でありながら攻防一体の隙のない動きを、新人達はしばらく唖然として見ていた。
(これが…本物の…エリートの動き…!すごい…凄いけど…負けられない…!)
「スバル、エリオ、キャロ!ガジェットはまだ来てるんだから!私達も戦うわよ!」
「は、はい!」
こうして先程先程まで防戦一方であった新人達も、バーダックの援護によって一転して攻勢に出るのであった。
~~~
「でりゃあっ!」
「う…うぉぉ…」
「はぁっ…はぁっ…そんな…ここまで力の差が……ぐうっ…!」
初めは数十人は居たはずの男達だったが、ものの数分の間にその殆どがバーダックによって撃墜された。最後まで抵抗らしい抵抗を見せていた者の一人もついに打ち倒され、残るはリーダーと思われる男と、僅かな取巻き達だけとなっていた。その内の一人も現在バーダックに首を絞められダウン寸前の状態だ。
まさに神業と呼んでも良いレベルの戦いを見せたバーダックだったが、表情はいつも以上に厳しい物だった。
「貴様…!一体何者──
「てめぇらの問答に答える義理はねぇ。それより…そのスカウター…どっから持って来やがった」
バーダックは男達の顔を指差しながら鬼気迫る表情で声を張り上げる。そう、あろうことか男達の耳元には見慣れたあの機械が装着されていたのである。
「ス、スカウターだぁ…?この機械の事か?」
「それ以外に何がある。まさかてめぇフリーザの手下か…?」
「し、知らねぇよそんな奴…!お、俺達はバビディ様にこれを…」
「バビディだと…?知らねぇ野郎だな…」
「ほ、本当だ!他にも知っている事は全部話す…!だから離してくれ…!もう息が…」
「…ほらよ。それとこいつは礼だ。貰っておけっ!」
男を解放した瞬間、バーダックは首元に手刀を食らわせる。男は失神すると、そのまま泡を吹きながら地に伏した。
(チッ…一体どうなってやがる…まぁいい。とにかく今は…新人共の様子も見てやらねぇとな…)
***
「お前ら!大丈夫か!」
「ヴィータ副隊長!それにブロリーも!そっちは大丈夫だったんですか!?」
「ああ。数は凄かったがあらかた片付けた」
「…こっちも大丈夫です。あと少し残党はいますが…」
「そうか…よし!それなら一気に片付けるぞ!」
ヴィータの一声で各員が再び戦闘態勢に入る。その中で新人達の司令塔であるティアナは、思い詰めた表情でガジェットに対峙していた。
(…ヴィータ副隊長の方もかなりの数のガジェットが来ていたはずなのに…魔力リミッターがかかってる副隊長二人とザフィーラ…それにまだエリオやキャロと同い年のブロリーだけでこうもあっさり……でも…それでも負けられない…!ランスターの弾丸は…ちゃんと敵を貫けるって証明するんだ…!)
『ちょ、ちょっとティアナ!六発リロードなんて無茶だよ!』
「大丈夫です……撃てます!」
管制からの静止を無視し、鋭い眼差しでガジェットに標準を合わせる。
「行ける…行ける!私は…行かなくちゃいけないんだ!」
半ばやけくそじみた言葉を叫びながら、ティアナは次々にトリガーを引いていく。次々に発射される弾丸は的確にガジェットを捉え、今までに無いほどの凄まじい戦果を挙げて行く。
しかし実力を超えた力を行使する事は、時に自己や仲間までも危険に晒す事もある。
「えっ…」
ウィングロードを使い囮となっていたスバルの背中に橙色の弾丸が迫る。辛うじて命中前に気付いたが時既に遅し。彼女は思わず顔を腕で覆う。
「でりゃあぁぁぁぁっ!」
痛みを覚悟したスバルだったが、ギリギリのタイミングで現れたヴィータが弾丸をあさっての方角へ弾き飛ばす。
「ティアナ!てめぇ…ヘマした上に味方撃ってどうすんだ!」
「あっ…ああ…」
「ヴィータ副隊長!あ、あの今のは私が………ってああ!後ろっ!」
スバルの指さした方向は、先程弾丸を弾き飛ばした方向。その先にはあろうことかガジェットの残当を狩っているブロリーが背を向けて立っていた。
「ブロリー!後ろ───」
しかしヴィータの叫び声も意味を成さず、ブロリーの背中に魔法弾が突き刺さり、大きな爆発を引き起こす。
「ブ、ブロリー…ブロリーっ!」
「あ、ああ…」
(チッ…また面倒な事になりそうだ…)
まさかの出来事に顔面蒼白のヴィータに、立ち尽くすティアナとスバル。そんな様子を上空から見下ろすバーダックは、ブロリーの様子以上に、僅かに亀裂が入り始めた六課の様子に一人眉を顰めるのであった。
***
「た、ただいま戻りました…バビディ様…」
負傷しながらもなんとかバーダックの追跡を振り切った数人の魔導師達は、バビディの前で膝をつき、戦闘の報告を行っていた。
「は、初めはこちらが優勢だったのですが…バーダックという男の強さが凄まじく、我ら以外は全員が落とされました…!」
「………」
「あ、あの…バビディ様…?」
先程から一言も言葉を発しないバビディの様子に、困惑する部下達。そんな様子を目にしたバビディは、仕方なさそうにゆっくりと口を開く。
「…そんな事はとっくに知ってるよ。ボクが見てないとでも思ったのかい?…それで?なんでお前らはここに戻って来てるんだ?」
「そ、それは…」
「ボクはガジェット共と一緒に戦えとは言ったけど、おめおめと逃げてこいなんて命令はしてないんどけどな?」
「…はっ…!も、申し訳ございません!」
「おい…もうその辺にしておけ。仮にもそいつらはお前の部下だろう?」
バビディのあまりの言い草に、そばで見ていたゼストが止めに入る。ルーテシアはバビディに少し怯えた様子で、ゼストのコートを握りしめている。
「…君らは目的が達成できたからいいだろうけど、ボクはロクに偵察出来てないんだ。それにボクの駒をどう扱おうがボクの勝手だろ?」
「うっ…」
バビディは不機嫌そうに文句を垂れながら、跪く部下の傷口を蹴り付ける。
「…まぁいい。ボクは優しいから君らにまた命令を与えてやるよ。最後の命令だからよーく聞いてろよ?」
「さ、最後…?」
にたりと気味の悪い笑みを浮かべると、地面に這い蹲る男に指を指して叫んだ。
「死んでボクを楽しませて見ろっ!」
「えっ…それは………ぎゃあぁぁぁっ!」
初めは意味が分からず困惑する部下達であったが、すぐにに激しい頭痛に吐き気に襲われ、奇声を発しながら地面をのたうち回る。
「貴様…何を…!」
「へへっ…面白いだろ?…でもまだまだ。ここからが楽しいんだ」
「ぐぅぅぅ……た、助け…」
必死に命乞いをする部下の声など全く聞かず、最後の仕上げとばかりに指をピンと立てる。するとその直後、男達の頭はどんどん膨れ上がり、限界を迎えた頭部は様々なまるで針を刺された水風船のように炸裂した。
「へっ、ポンッだってさ。いつ聞いてもいい音だよね…」
あまりの凄惨な光景に、ルーテシアはその場に座り込んでしまう。
「大丈夫かルーテシア…!…貴様…!」
「なんだい…?文句でもあるのかい?」
「…貴様が部下を殺すのは勝手だが…もう二度と我らの前に現れるな!」
「分かった分かった…随分と嫌われたね。はぁ…早くまともな部下が欲しいもんだ…」
バビディはそう呟くと、森の奥深くへと消えてゆく。その様子を二人は黙って見ている事しかできなかった。
どうも。顔芸です。
最近は暑くなって来たせいか夏バテ気味ですが、なるだけ更新頻度は落とさないようにしたいです…
内容についてですが、バビディのキャラが定まってない気がしてならないです…。もっとバカっぽいキャラでしたっけ…?
それと次話あたりから若干展開が変わって来ます。それに加えてそろそろ頭を冷やす回が近付いて来たので皆さんに受け入れてもらえるか正直怖いですが、また読んでくださると嬉しいです。