リリカルな戦闘民族 (ドラゴンボールZ×リリカルなのは)   作:顔芸の帝王

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第十一話 匹夫の勇

今日もバーダックはいつも通りに修行に励む。並の人間なら動けなくなるような重りを身に付け、腹筋や腕立てといったトレーニングを何千回とこなす。異常に思われるかもしれないが、この男にとっては日課の一つであり、行わない方が珍しいのだ。しかし、ここ数日は教え子であるブロリーが居ない。以前の一件を心配したはやてが今日は休ませるようにとバーダックに頼んだのだ。ブロリー自身もはやてに心配を掛けたくないとあっさり了承したようで、特に揉めたりと言う事は無かったようだ。そんな折、バーダックの元にパラガスが訪れる。

 

「お前か…一体何の用だ」

「お前、新人達の模擬戦の話はもう聞いたか?」

「模擬戦…?ああ、昨日なのはが言ってやがったやつか」

「なんだ…知っていたのか。それならなぜこんな場所に居る?もうすぐ始まってしまうぞ」

「馬鹿かお前は。模擬戦ぐらいいつもやってるんだ。わざわざ見に行く物でもねぇだろうが」

「そうでもないぞ。新人達にとって今日の模擬戦は合格が出れば次のステップに進める大事な一戦だ。いつも以上に力の入った戦闘になるだろうよ。…だがまぁ…お前も修行で忙しそうだしな。うむ、仕方ない。俺一人で楽しんで来るとするか」

「………」

 

パラガスの焚き付けるような台詞が少々鼻についたが、いつも以上の戦闘が見られる。そう言われてはサイヤ人の血が騒がないはずがない。

 

「…いいだろう。多少の暇つぶしにはなるだろうからな。今回はてめぇの罠にまんまとかかってやる」

「ふっ…それでいい。ならとっとと行くぞ」

 

 

こうして訓練場へと向かう事になった二人だったが、この後ある意味いつも以上の出来事が二人の目の前で起こることになるのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

二人が訓練場にやって来ると、そこには四人の新人達と模擬戦の相手を担当する隊長二人に加え、ヴィータとブロリーの姿があった。

 

「バーダックに…親父か…」

「あっ、バーダックさんにパラガスさん!」

「おはようございます!」

「お二人も見にいらしたんですね」

「ああ。今日は暇だったからな」

「それよりなんだブロリー、てめぇも来てたのか。今日は休むんじゃなかったのか?」

「別に体調が悪い訳じゃない。それに今日は見ているだけだ」

「ところでフェイト、なのは達はもう出たのか?」

「ええ。ついさっき準備に。スターズの模擬戦も私が引き受けるつもりだったんですけど、なのはがどうしてもって…」

「アイツも最近訓練詰めだからな。本当は少し休ませてぇんだけど…」

「うん。なのは、部屋に戻ってからもモニターに向かいっぱなしなんだよ」

「そうなんですか…?」

「なのはさん私達のためにそんなに…」

「…おい、始まるぞ」

 

 

そんな事を話している内に、スバル達の模擬戦が開始されようとしていた。戦闘を一瞬でも見逃すまいとしているバーダックだったが、その表情は曇っていた。その理由は無論ティアナである。ここに向かっている最中から考えていた事だが、戦闘前のティアナの目を見て確信した。

 

 

(あの野郎…何をやらかすつもりだ…)

 

 

その後の戦闘は酷いものだった。ティアナの無謀な近接戦闘がなのはの逆鱗に触れ、スバルはバインドで拘束、ティアナも誰も傷付けたくない、失いたくないという想いも虚しく、悲しげな表情のなのはにあっさりと撃墜された。

そんな様子を様々な表情で見上げるヴィータ達。その中を、バーダックは一人何も語らずに去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

訓練場の後片付けを終え、なのはは一人隊舎へと戻る。時刻は既に9時過ぎ。とっくに日は落ち、街頭と月明かりだけが足下を薄ぼんやりと照らしている。普段人前ではどんなに疲れていてもその事を顔に出さないのだが、今日はため息を零さずにはいられなかった。どうすれば良かったのか。何が駄目だったのか。これから何をしてあげられるのか。そんな自問自答を繰り返すばかりだった。

 

そんな折、幸か不幸かバーダックと鉢合わせた。

 

「あっ…バーダックさん…」

「………」

 

なのははスバル達の模擬戦の後フェイト達の元へ戻ったが、そこにバーダックの姿は無かった。パラガス曰く、ティアナが墜された後いつの間にか姿を消していたらしい。バーダックは何も語らないが、何を言おうとしているのかなのはには想像が付いた。

 

バーダックは今まで出会って来た誰よりも修行に人生を費やしていた。穏やかに生きられるはずだった時間の全てを鍛錬に費やし、時には体を限界以上に酷使し、死んでしまうのではという状況を数え切れないほど経験してきたのだ。そんな生き方を、ひいてはバーダックという人間そのものを、ある意味今回の模擬戦で否定したのだ。

 

「バーダックさん、私…間違ってるんでしょうか?」

「…なんだ突然」

「私、真剣にティア達の事を考えて、無謀な事をしなくても戦えるように鍛えてるつもりでした。でもみんなにはそれが伝わってなかったみたいで…」

 

しおらしく言葉を紡ぐなのは。いくら実力者と言っても彼女とてまだ19歳の少女。信頼している二人からあんな視線を向けられたのは堪えたのだろう。

 

「バーダックさんって、トレーニングは人一倍ハードですよね。バーダックさんからしたら、やっぱり私の考えは綺麗事なんでしょうか?」

「フン…だろうな。俺がアイツらの立場ならてめぇをぶん殴ってる所だ」

「うっ…」

「全員がお前やフェイトのように才能がある訳じゃねぇ。血の滲むような努力をしてお前らに追いつこうとする人間は大勢いるんだ。その努力を、お前は踏みにじった訳だ」

「わ、私そんなつもりじゃ…!」

「お前にそのつもりがあろうがなかろうが、アイツらはそう感じた筈だ」

 

容赦なく言い放たれ、なのはは言葉に詰まってしまう。彼女達がそんな風に思っているとは考えもつかなかった。それでもなのはには譲れない想いがある。

 

「それでも私…ティアのやり方には賛同出来ないです。皆の強くなりたいって気持ちが真剣なものだって事は分かります。でも…私みたいな辛い思いはして欲しくないんです!そのためなら私、皆から嫌われても…」

「……」

 

魔法どころかまともな生活すら保証できないと告げられた時の恐怖や苦しみ。そんなものは彼女達に味わって欲しくなかった。しかし、それは同時にバーダックの命を削る生き方を否定する事にもなる。それもなのはにとっては承知の上だった。

 

「フン…全く手間取らせやがって」

「えっ…」

 

しかし、予想に反してバーダックの反応は意外な物だった。怒りや落胆と言った表情ではなく、まるで初めからこうなる事が分かっていたようだ。

 

「結局、俺がなんと言おうが最初から腹は決まってんじゃねぇか」

「あ…」

「お前があの時の事を黙っている理由は知らねぇが、格好つけてねぇでとっとと腹割って話せばいいだろうが」

「バーダックさん…」

「誰に似たか知らねぇが、あいつら相当頑固な奴らだ。こうでもしなきゃ長引くだけだぞ」

 

「そう…ですよね。何だか自分の過去を話すのって気が引けるけど、そんな事に拘ってる場合じゃないですよね…!ありがとうございます、バーダックさん。おかげで進む道が見えました」

 

先程とは打って変わって晴々とした表情を取り戻していた。そんな様子に単純な奴だと毒づくバーダックだったが、彼女はニコリと微笑んでいた。

 

「…そうだ。お前は、それでいい」

「バーダックさん?それって───

 

バーダックのどこか哀愁のある表情と、小さく呟いた意味深な言葉に困惑するなのは。その意味する所を尋ねようとしたその時、隊舎のスピーカーから緊急事態を示すアラートが鳴り響いた。

 

「こいつは…」

「アラート…!バーダックさん!とりあえずはやてちゃんの所へ!」

 

 

 

 

 

 

感傷に浸る間もなく、二人ははやての居る司令室へと急ぐ。到着するとはやてや管制官達の他に、モニターを確認するフェイトとブロリーの姿があった。

 

「おお、バーダックさんになのは部隊長。とりあえず隊長二人はは揃ったみたいやな」

「それで、状況はどうなってんだ」

「東部海上に複数のガジェットドローン二型が旋回飛行中…近くにレリックの反応はないんですが…スピードは以前よりかなり速くなってます!」

「近くにはレリックどころか海上施設も船もない…まるで撃ち落としてくれって言ってるようなもんや…」

「ガジェットの数からして、本気で戦うって感じじゃない。多分、こっちの動きとか航空戦力を探りたいんだと思う」

「せやな…本当はこの程度なら超長距離攻撃で一発なんやけど…」

「…それだと奴らの思う壷って訳か」

「うん。だからなるべく奥の手や新しい情報は出さないで、今まで通り迎撃に出て片付けちゃうのがいいかな」

 

この判断に全員納得したようで、なのはの言葉に異を唱える者はいなかった。しかし、はやてが出撃する人間を指名しようとしたところで、意外な人物が声を上げる。

 

「ほんなら出撃してもらうのは、なのはちゃんにフェイトちゃん、それからヴィータに───」

「はやて、俺に行かせてくれないか」

「えっ……ブロリー?」

「相手はAMFを使う可能性が高い。気を使える誰かが行くのがいいはず。それなら一番経験の浅い俺が一番いいんじゃないか?」

「でもブロリーはバーダックさん達に比べたら新しい戦力や。それに今は体調だって…」

「今まで何度もガジェットとは戦って来た。敵も俺の情報はもう知っているはずだ。それに、体ももう大丈夫だ。…俺も腐ってもサイヤ人だからな」

 

しばらく考え込むはやてだったが、今回はブロリーも簡単には折れなかった。

 

「絶対にはやて達に迷惑を掛けたりはしない。だから頼む。俺に行かせてくれ」

「……分かった。でもヴィータ達と一緒に行ってもらうで。それから約束や。無茶な事は絶対しないって約束できるか?」

「…ああ。約束する」

「よし…ええ子や。そういう訳でなのはちゃん、申し訳ないんやけどフェイトちゃん。ブロリーが一緒でもええか?」

「私は大丈夫だよ」

「うん。むしろブロリーの実力ならこっちも助かるよ」

「…二人共ありがとうな」

 

はやては申し訳なさそうにしながらなのは達を見送ると、若干不安そうな表情で自らの席へ戻る。隣のリィンはそんな様子を見てか、心配そうに顔を覗き込む。

 

「はやてちゃん、よかったんですか?ブロリーちゃんはしばらく休ませるって…」

「…多分ブロリーは修行の成果を試したいんやろうな。でもブロリーの言ってる事は正論や。体調も…多分もう良くなってるはずやし、なのはちゃん達が一緒なら安心できるから」

 

微笑みながらそう告げるはやて。しかし、心の内ではブロリーとの部下としての関係と、大切な家族の一人としての関係によって小さな迷いや葛藤が生まれ始めていた。

 

(本当はパラガスさんかバーダックさんに行ってもらうのが一番だったのかも…でも…普段頼み事なんてしないブロリーが折れなかったんや。…そうや…私に出来ることなら──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、とある港で薄紫の髪をなびかせながら、ルーテシアは遠くの空を見上げる。その表情には喜怒哀楽が無く、何を考えているかは分からない。その後彼女は無表情のまま目の前にモニターを出現させると、とある人物に連絡を入れる。

 

「おや…君から連絡くれるとは…嬉しいじゃないか。ゼスト達はどうしたんだい?」

「今は別行動中。遠くでドクターのおもちゃ飛んでるみたいだけど。…レリック?」

「だったら君に真っ先に報告しているさ。何、ちょっとした実験だよ」

「…レリックじゃないなら私には関係ないけど……もう一つだけ聞いていい?」

「ああ。言ってごらん」

「ドクターのおもちゃの周りに協力者だって言ってたバビディって人が近くにいるみたいだけど…」

「なんだ気付いてたのかい。実は今回は彼の頼みでね。管理局の戦力を間近で見たいそうだ」

「……そう。ならいいけど」

「くくっ…彼が怖いかい?」

「………」

「ふっふっ…大丈夫。少し変わってはいるが君らに危害を加えたりしないように言ってある」

「…うん。ありがとうドクター。それじゃあ頑張ってね」

「ああ。ありがとう。優しいルーテシア」

 

 

優しげな言葉を掛けるスカリエッティの声を聞き終えると、少女は再び空を見上げる。星々がよく見える澄み渡った空とは対照的に、彼女の表情には陰りが現れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管制室でのやりとりから数分後、六課の前線メンバーは屋上のヘリポートに集合し、なのはからスターズとライトニングへ指示が伝えられる。そして

 

「…それからティアナ。ティアナは出動待機から外れててね」

「…っ!」

「今日は魔力も体調も万全じゃないだろうし…」

 

 

練習で撃墜され、半日目が覚めなかった人間を前線から外す。普通に考えれば普通の事だ。しかし、今のティアナにはそんな事を考えられるほど余裕は無かった。

 

 

「…言う事を聞かない奴は…要らないって事ですか…!?」

 

 

憤りを感じさせる声。普段真面目なティアナの明確な反抗に、スバル達も驚きを隠せない。しかし、管理局のような大組織において勝手に動くような人間が不要である事など至極当然の事である。

 

 

「…自分で言ってて気付かない?それ、当然の事だよ」

「現場での命令や指揮には従ってます!訓練だって手を抜かずに…でも、私はそれ以外の努力まで指示通りじゃなきゃ駄目なんですか!?実際、バーダックさんなんて私とは比にならないぐらい訓練してるのに───」

 

 

ティアナは溜まっていた物を吐き出すように言葉をぶつける。なのはは何も言わずにただ聞いていたが、彼女の言葉は止まりそうもない。見かねたシグナムがティアナの元へ歩き出した────その時だった。隣で見ていたバーダックが腕を上げ制止させる。

 

 

「お前…何を…」

「………」

 

 

バーダックは何も言わずに二人の間へ割り込むと、ティアナに鋭い視線を向ける。

 

 

「バーダックさん…?」

「…お前、そこまでして…こいつらに刃向かってまで力が欲しいのか」

「っ……それは……」

 

 

今この瞬間自分がなのは達に逆らっている事を改めて突きつけられ、ティアナの良心が痛む。しかし、それ以上に強くなりたいという意思は固かった。

 

 

「…………勿論です。どうしても…どうしても力がいるんです!だから───」

「ティア…」

「…いいだろう。てめぇにその気があるなら…ついて来やがれ」

「えっ…」

「お、おい!何考えてんだバーダック!いくらお前でも勝手にそんな事…!ほら!なのはも見てねぇでなんか言ってやれ!」

「……バーダックさん」

「…なんだ」

「私達はもう現場に行かないといけません。ですから、それまでティアナの事……お願いします。…ヴィータちゃん。ほら」

「お前まで何を…」

 

 

困惑するヴィータを他所に、通じるはずの無い念話をバーダックに送りながら、なのははヘリへと歩いて行く。

 

 

 

(バーダックさん……信じてますからね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、何度も聞くけど本当に大丈夫かよ?」

 

先程の判断が腑に落ちないヴィータは、少し頬をふくらませながらなのはに問いかける。

 

「うん…バーダックさんなら大丈夫だよ。…多分」

「た、多分ってお前なぁ…」

「まぁまぁ…なのはの言う通り、きっと大丈夫だよ。ヴィータだってバーダックさんの事、信用してない訳じゃないでしょ?」

「う…そりゃそうだけどさ……お前は心配じゃねぇのか?特に修行の事に限っては何するかわかんねぇぞ」

「…実は私ね、模擬戦が終わった後バーダックさんと話したの」

「な、そうだったのか?」

「うん。その時ね、絶対怒られると思ったの。私が否定したティアナのやり方は普段のバーダックさんそのものだったから……でもそんな事なかった。私の考えてる事を伝えたら『それならいい』って…」

「それって…どういう事だ?」

「よく分からないけど、あのバーダックがこういう事を自分から言い出したんだから、考えがあるんじゃないかな?」

「はぁ…だといいけどな…」

 

不安を拭いきる事のできないヴィータだったが、今は杞憂であることを願うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、あれが話に聞いていた新型のガジェットか」

「ふーん…前よりは少しはマシに動けるようになったみたいだね。でもボクはあんなガラクタには興味ないんだ。……おいお前、もう少し場所を変えるぞ」

「貴様!私に気安く命令するな!私に命令できるのは────

「あー分かった!分かったっての!……ふん、全く扱いづらい奴だなお前は」

「だから私を部下のように呼ぶな!私とて…私とて好き好んで貴様などと組んでいる訳ではないのだぞ…!」

「はぁ…とにかく行くぞ。奴らはもうそこまで来てるんだからね」

 

 

 

 

 

 




どうも。顔芸です。

まずは恒例になってきたお詫びです…本当はもっと早く上げたかったのに結局盆明けになってしまいました…すみません。


話は変わるのですが、最近新しい映画の影響もあって書いている途中でふと思うことがありまして、劇中のパラガスの戦闘力ってどの程度だったんですかね。今は9000ぐらいが定説らしいのですが、個人的にはブロリーになぶられてた事を考えるともう少しあってもいいかなーなんて思ったりしてます。
とはいえ判断材料が少なすぎるのでなんとも言えないのですが…

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