リリカルな戦闘民族 (ドラゴンボールZ×リリカルなのは) 作:顔芸の帝王
「…来たな」
夜空に紛れた大きな影が、けたたましいローター音を響かせながら近付いて来る。機体はそのままバーダック達の目前に降り立つと、扉が開きなのは達が姿を現した。
「お前達…よく帰って来た」
「はい。無事に…とはいきませんでしたが、作戦はなんとか遂行できました。ブロリーもこの通り、命に別状はありません」
なのははパラガスにそう告げると、隣で心配そうにこちらを見つめていたはやてに抱えていたブロリーを手渡した。
「なのはちゃん…他の皆も迷惑かけてすまんかったな…」
「ううん、大丈夫。今回の事は残念だったけど、はやてちゃんが謝ることないよ?」
「でも…」
「とにかく今はブロリーを休ませてあげて。大した怪我はしてないけど、相当疲れてるみたいだから」
「せやな…二人共ありがとう。ほんならシャマルのとこに預けてくるから。ヴィータも一緒に来てくれるか?」
「うん…分かった」
「………」
僅かに苦しそうにも見えるブロリーの寝顔を見ながら、二人は医務室へと足を運ぶ。そんな様子を心配そうに見守る中で、バーダックの視線だけは憂慮以外の感情が含まれていた。
「あの…バーダックさん、ティアの事は──
「…俺は言いたい事を言っただけだ。あいつが何を思ってるかは知らん。後はお前がなんとかしやがれ」
「はい…!ありがとうございます…!」
「あ、あの…すみません、ちょっといいでしょうか…?」
「シャーリー?どうしたの?」
「じ、実はですね…」
「ええっ!?昔の事話しちゃったの?」
「す、すみません!私、皆があんまり不器用だから見てられなくて…。あっ、でもティアにはまだ言ってないですよ…?」
「うーん…そういう問題じゃないんだけど…」
「…安心しろ。ティアナには俺が話しておいたからな」
「ちょ、ちょっとバーダックさんまで…!」
「…別に減るもんじゃねぇんだ。話しても構わねぇだろう。それにあの野郎なかなか頑固な野郎だからな。あれぐらいの薬が丁度いいだろう」
「そ、そうですよなのはさん!これを教訓にして皆が成長したと思えば…」
「それは…そうかもしれないけど…うーん…」
いまいち腑に落ちないなのはだったが、過ぎたことをいつまでも嘆いても仕方ない。今のなのはにはもう一つ、教導官としての仕事が残っているのだ。
「それじゃあ私、ティアの所に行ってきます」
「フン…もう面倒は起こさねぇようにして来いよ。…それと後で会議室に来い。お前らに話すことがある」
「…バビディの事ですか?」
「いや、正直奴の事は俺達にも分からん。それは寧ろお前達に聞きたいぐらいだ。…話とはブロリーの事だ。本来お前達にはもっと早く話しておくべきだったのかもしれんが…」
「…分かりました。話が終わり次第そっちへ行きますね」
***
「全員揃ったみたいやな。パラガスさん、お願い出来ますか?」
「ああ。皆分かっていると思うが、今回集まってもらったのはブロリーの件についてだ。が、その前に…まずは皆に謝らせてくれ。俺の倅が迷惑を掛けてしまって申し訳ない…。特に今回任務に当たった三人には───
「おいおい、律儀なのはいいけどさ、アタシらの間で今更そんなこと謝るなよ」
「そうですよパラガスさん。それに今回の戦いだって、結果的にはブロリーのお陰で勝てたんですから」
「…そう言ってくれるのは有難いのだが、素直に喜んでばかりもいられんのだ」
戦場に出た三人はは申し訳なさそうに頭を下げるパラガスを慰めるが、パラガスは重々しい表情を崩さない。そして、隣に座っていたバーダックに視線を送ると、バーダックはゆっくりと口を開き始めた。
「俺達サイヤ人の間に、真しやかに噂されていた伝説がある」
「一千年に一度現れる、どんな天才でも越えられない壁を越え、あらゆる種族の戦闘力を超越すると言われた破壊と殺戮を好む宇宙一の戦士……超サイヤ人の伝説…」
「超…サイヤ人…?」
バーダックの語った超サイヤ人の伝説は、漠然としている上に何処か神話じみていて、子供でも信じるか分からないレベルの内容だった。しかし、バーダックやパラガスの表情から、それがが決してデタラメでは無いことはすぐに理解できた。
そして同時に、今この話をするという事は──
「…つまり、ブロリーがその超サイヤ人かもしれんと言いたいのか?」
「お、おい!ちょっと待てよ!」
冷静に聞き返すシグナムに対して、ヴィータの声には憤りが混ざっている。
「アタシ達はあいつが赤ん坊の頃からずっと一緒に暮らしてきたんだ!破壊と殺戮を好むなんて、ブロリーはそんな奴じゃねぇよ!」
「そうですよ!私もヴィータちゃん程じゃないですけど、ずーっと一緒に暮らしてきたですよ!?」
「…俺もそんな伝説をそっくり信じてる訳じゃねぇ。だが、さっきのブロリーの気はそれだけ異常だったんだ。実際に戦闘に立ち会ったお前なら分かるだろう」
「それは…!」
「あの…バーダックさん」
終始黙り込んでいたはやてが、二人を仲介する形で会話に割って入る。
「バーダックさんの言う通り、確かにあの子は昔から強大な力を持っていました。でもヴィータの言ったように、私もあの子が残忍な戦士だとは思えないんです」
「お前の言う”異常な気”以外に何か理由でもあるのか?」
「…それについては俺から説明しよう。俺達サイヤ人が満月を見ると大猿に変化するのは知っているな」
「はい。あの時はびっくりしました…」
「あの状態になると、一部の者以外はサイヤ人の本能が増大し、自我を失ってしまう。…例え普段どんなに優しく、穏やかな者でもだ」
「仮に超サイヤ人が大猿のようなものの一つだとしたら…普段のブロリーの性格に関わらず、伝説通りの戦士に変わってしまうだろう」
徐々に現実味を帯びてくる超サイヤ人の伝説に、一同押し黙ってしまう。
「…机上の空論なのは分かっている。だが、それ程先程のブロリーの気の高まり方は尋常でなかったのだ」
「あの、デバイスみたいな物で暴走を止めるとかはできないんですか?」
「俺達の世界の技術力のある異星人ならそういう技術を持つ者もいるのかもしれんが、この世界は”気”についてまだ理解が薄い…恐らく難しいだろうな」
「そうですか…」
「…超サイヤ人はあくまでただの伝説だ。何をもって超サイヤ人とするのか。そもそも本当にそんなものが存在するかどうか、それすら分からん代物だ。だがあいつは今現実にここに存在していて、いつ暴走するか分からないサイヤ人だ。この先ブロリーをどうするか、選択を間違えば取り返しのつかない事になる事を…肝に銘じて置くんだな」
まだ十歳のブロリーに対して、バーダックの言葉は酷にも思える苛烈なものだった。しかし、同時に的を射ているその言葉は、はやて達に反論することを許さなかった。
***
「んっ……結局こんな時間になってしもうたな」
事務仕事を始めてから数時間、ようやくはやては仕事を終え、自室へと歩を進めていた。手の上には先に寝てしまったリインが心地良さそうに寝息を立てていた。そんな彼女の幸せそうな表情は、大きさや性別に違いはあれど、出会った頃のブロリーの姿を思い出させる。
「すぅ……すぅ……んんっ…もう食べられないですよ…」
(ふふっ、ほんまによく寝てるなぁ)
(そう言えば、あの子もこんな風に寝てたなぁ…。あの子はリインとは違って、奥手で物静かな子やったけど、皆に優しくて、よく笑った顔を見せてくれた。でも今は…)
ふと頭の中を一つの考えがよぎる。笑顔を見せなくなったのは自分のせいなのでは…と。
「ブロリー…」
私の事は本当はどう思っているのか。このままであの子は幸せなのか。沸き上がる様々な考えに、はやては人知れず自問自答を繰り返すばかりだった。
「ドクター。準備は殆ど整いました」
「ふむ…後はアレを手に入れるだけか。まぁこちらには十分な戦力がある。気長に待つとしようか」
「…それについてですが…よろしいのですか?あのバビディという魔導師、高い魔力に強力なレアスキル。正直、我々の手に余るのでは?」
「大丈夫さ。彼の戦闘能力自体は大したものではない。それに、あの男一人なら、対処する手段はいくらでもある」
「ドクターがそう仰るなら従いますが…」
「それより、もう一人はどうだい?何か要求してきたりは?」
「いえ…特には。最初の約束さえ違えなければ協力すると…」
「…不老不死か。随分と無茶な要求をしてくれたものだ」
「ですが、バビディより態度は柔和です。利害が一致する内は信用できそうです」
「…そうか。だが一応警戒しておいてくれ」
「了解しました」
(信用できる…か。どうかな。あの男は…私と同じ匂いがするからね)
どうも。顔芸です。
時間が空いてしまった上にあんまり展開の進まない話で申し訳ないです。次回からは急展開…とまではいきませんが、あの子の登場回を予定してます。
話は変わりますが、いやー映画良かったですね。ネタバレになるので内容はあまり言えませんが、とにかくすごかった(語彙力)
劇中でのチライとブロリーが会話シーンで、おこがましいかもしれませんが、目をつぶって聞くとフェイトとブロリーのようでなんとなく縁を感じてしまいました。