リリカルな戦闘民族 (ドラゴンボールZ×リリカルなのは)   作:顔芸の帝王

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第十六話 予感

ブロリー達が現場での対応に追われている頃、ほかの隊員達もそれぞれ行動を開始していた。中でも隊舎に残っていたなのは、フェイト、シャマル、リイン、バーダックの五人はいち早く現場に到着し、前線メンバー達と合流を果たした。

 

 

「みんな、検査終わったわ。大丈夫、命に別状はないし危険な反応もないわ」

 

シャマルの言葉にほっと息をつく一同。しかし、これで危険がすべて除かれた訳ではない。むしろここからが危険を伴う任務なのだ。

 

「それにしてもさっきはびっくりしたね…まさかこんなに小さな子が出てくるなんて…」

「ああ。気を感じた時から妙だとは思っていたが、まさかレリックを持っていたとはな」

 

あの後三人が目撃した光景は、あまりに異常なものだった。薄暗いマンホールから這い出てきたのは、赤と緑のオッドアイが特徴の小さな女の子。それもエリオ達どころの年齢ではなく、見た所まだ4~5歳程であった。さらにそれだけではない。彼女に足枷の様に繋がれた箱の中からは、現在捜索中のレリックが発見されたのだ。

 

「あんまり考えたくないけど、状況から言って普通の子…じゃないよね」

「それにこの足に付けられていた鎖…この繋ぎ方から察するに、多分引きずってたケースは一つじゃない…なのはさん、これは──」

「うん。多分まだ地下水路に封印されてないケースが残ってると思う。このケースと女の子はヘリで搬送するから、とりあえずスターズとライトニングはこっちで現場調査。それから、ブロリーも皆と一緒に調査に当たってもらえる?」

「ああ。分かった」

 

「なのはちゃん、この子ヘリまで抱いて行ってもらえる?」

「分かりました」

 

そう言って抱き上げると、少女の衰弱具合がより色濃く伝わって来る。体温はまるで死体のように冷えきっており、現代人が着ているとは思えないようなボロ布の服からは血の滲んだ素肌が顔を覗かせていた。何より時折見せる苦しそうな表情を見ればこの子の生きてきた環境は容易に想像できた。

 

(まだこんなに小さな子が…どうして…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

様々な理由から現在は人の住んでいないこの区画。廃棄されてから間もないため、荒れ果ててはいるものの殆どの建造物はその形状を保っている。

そんな廃棄都市区画のビルの屋上、ローブを纏った二人の男が空を見上げながら、ここを通過するであろう機体を待っていた。

 

 

 

「クソッ、まだヘリは来ねぇのか。奴ら俺達を騙してるんじゃねぇだろうな」

「その内嫌でも来る。…少しは落ち着いたらどうだ」

「チッ…お前は腹が立たねぇのか!折角自由になったと思ったら、こそこそ隠れながらあんな連中に良いようにこき使われてよ!」

「…仕方あるまい。それがあの方の望みなのだからな。それに、時が来るまで管理局に…もといサイヤ人共に正体を悟らせないというのは、あの方本人のご意思だ」

「そんな事は分かってる!…クソッ…何だってあの方は今回に限ってこんな回りくどいやり方を…」

 

不満を漏らす二人だったが、耳元の通信機に入った通信が会話を断ち切った。

 

『お二人共、配置にはついていただきましたか?』

「ああ。いつでも大丈夫だ」

『分かりました。それでは改めて目標をお伝えします。あなた方には管理局のヘリの撃墜、その後マテリアルの回収をしていただきます。ああ、それから仮に撃墜できなかった場合でも、近くに妹達を控えさせていますのでご安心ください』

「…それは頼もしい。そうしてくれれば我々も安心出来るというものだ」

「…とはいえくれぐれも油断はされぬようにお願いします。今回の目標は特に重要なマテリアルの回収になりますので」

「分かった。善処しよう」

「それでは…あなた方の幸運を祈っています」

 

 

 

「クソッタレ、何が油断されぬようにだ!舐め腐りやがって!」

「当然だ。実力を悟られぬように動いて来たのだからな。わざわざ先に攻撃させる所を見ると、端から何かあれば我々を見捨てて逃げ帰るつもりなのだろう。私達が捕まった所で奴らの足はつかないからな」

「それで?また苦戦するフリでもしときゃいいのか?」

「いや、今回は暴れて構わんそうだ。それに相手は脆弱な”羽虫”だ。…あっさりと終わらせてしまえばいい」

「へっ…そりゃいい。せいぜい憂さ晴らしさせてもらうとするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーダックさん、この件どう思いますか?」

「そのガキの弱り具合からして、レリックを封印するまでの間相当長い間水路を歩いていたらしいな。…これを見逃すほど奴らは馬鹿じゃねぇはずだ」

「それじゃあやっぱり…」

 

『敵ガジェット来ました!地下水路に複数のグループで16…いえ20!』

『海上方面もです!現在12機隊列が5グループ!まだ増えてます!』

 

「噂をすれば…ですね」

 

『スターズ2からロングアーチへ!こちらスターズ2。会場演習中だったけど、ナカジマ三佐が現場に向かう許可をくれたんだ。それからもう一人…頼もしいな助っ人だ』

 

『108部隊のギンガ・ナカジマです。別件で捜査中だったのですが、そちらの事例と関係がありそうなんです。参加してもよろしいでしょうか?』

 

『おお、ギンガ!是非お願いや。よし…ほんならヴィータはバーダックさんとリインの二人と合流。協力して海上の南西方向を制圧。なのは隊長とフェイト隊長は北西部から。それからヘリの方はパラガスさんが向かってくれてるから、今はヴァイス君とシャマルに任せてええか?』

「お任せあれ!」

「しっかり守りますね」

『ありがとうな。最後にギンガは地下でスバル達と合流。途中、別件の事も聞かせてな』

『はい!』

 

「よし…フェイトちゃん行こう!」

「うん。あ、あのバーダックさん…」

「あぁ?なんだ?」

 

「い、いえ。その…ご武運を」

「なんだ…?急に改まりやがって…まぁいい。お前も下手こくんじゃねぇぞ」

「こっちはリインが付いてますから大丈夫ですよ!バーダックさんの事も私がしっかり守って──ひゃあっ!?ちょ、ちょっと何するですか!」

「てめぇの後に付いてったんじゃ日が暮れちまうからな。目的地までは俺が運んでやる」

「だからってそんな風に掴まなくても…というかリインはそんなに遅くないですよ!」

 

ガッシリと握りこまれたバーダックの手の中で、リインは必死に腕を振って反論する。しかし、抵抗虚しくバーダックは淡々と離陸の準備に入って行く。

 

「よし。先に行くぞ」

「は、はい…」

「ちょ…人の話を…!」

「リインちゃん…頑張ってね」

「シャ、シャマルまでそんな…ってきゃあぁぁぁっ!せめてもう少しスピードを落とすですよぉぉぉ!」

 

(リイン…大丈夫だよね?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギンガ、さっき言ってた別件って言うのは?』

『はい。初めは突然トラックの積み荷が突然爆発したという通報を受けて現場に向かいました。その後周辺を調べてみると、複数のガジェットの残骸と…壊れた生体ポッドがあったんです。丁度…5〜6歳の子供が入るくらいの大きさでした。そしてそこから何か…重いものを引きずって歩いたような跡があって、それを辿ろうとした際に連絡を受けた次第です』

『そうか…やっぱり今回の件関係はありそうやな』

 

『それからこの生体ポッド…少し前の事件でよく似たものを見た覚えがあるんです。…おそらく、人造魔導師計画の素体培養器』

『…まさか』

『あくまで推測ですが、あの子は人造魔導師の素材として作り出された子供ではないかと…』

 

 

 

「スバルさん、人造魔導師って…」

「優秀な遺伝子を使って、人工的に生み出した子供に、投薬とか機械部品の埋め込みで後天的に強力な力を持たせる。それが…人造魔導師」

「倫理的な問題は勿論、今の技術じゃどうしたって色々無理があるし、コストも合わない。だからよっぽどどうかしてる連中じゃない限り手を出したりはしないはずなんだけど…」

「まぁ、俺にはこんな事件を引き起こしている時点で、どうかしてるとしか思えないがな」

「そんな奴らにケースを渡さないようにしないとね…とにかく今は早くギン姉と合流しよう」

「…!敵の反応ありました!小型ガジェット6機、来ます!」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「…片付いたか」

「そうみてぇだな。準備運動は出来たか?」

「フン…こんなガラクタ共、何体壊しても準備運動になる訳がねぇだろう」

「はは…そりゃ頼もしいな」

(それにしてもこいつ…やっぱ強ぇ。素の戦闘力もとんでもなく高い上に、砲撃が使えるからほぼ全てのレンジで弱点らしい弱点もない。戦闘スタイルも一見荒っぽく見えるけど、決して力任せじゃなく最小限のエネルギーと動きで効率よく戦ってる。サイヤ人ってのはこんな奴らばっかなのか…?)

「それで…次はどうすんだ?」

「ん…あ、ああ。予想以上に早く終わったからな。他のフォローに回って──

「待つですよヴィータちゃん!あれを見てください…!」

 

 

 

 

「増援…!?しかもすげぇ数だ…あいつら強引にここを突破するつもりか…行かせねぇぞ!」

「チッ、面倒だ。こいつでまとめて落としてやる」

 

先頭の編隊の中心部にエネルギー弾を投げつけるバーダック。すぐさま回避行動を取るガジェットだったが、光弾から広範囲に巻き起こる爆発が逃れる事を許さない。

 

「よし…上手く範囲に入った!これで数はかなり減ったはず…」

 

喜んだのも束の間、光の中から現れたガジェット達はその数を殆ど減らしておらず、次々に散開してバーダック達を取り囲む。

 

「あれは…幻影…!」

「だけど実機も混ざってるとなると…無視は出来ねぇ」

「フン…なら全て叩き落とすだけだ。行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーダック達が再び交戦状態に入った頃、なのは達もまた実体のない敵との戦闘を余儀なくされていた。

 

「幻影と実機の構成編隊…!」

「防衛ラインを割られない自信はあるけど…これじゃあキリがないね」

「それに、これだけ派手な引きつけをするって事は…」

「うん。多分地下かヘリに主力が向かってる」

 

幻影が混ざっている以上、当然見た目ほど大した戦力ではないのだが、対処に時間がかかる分現在の状況では全て実機の部隊よりも遥かに厄介な相手だった。

「…なのは、ここは私が抑えるから、ヴィータかバーダックさんと一緒に行って」

「フェイトちゃん!?」

「いくら二人でも、普通に戦ってたんじゃ時間がかかりすぎるし、限定解除すれば広域殲滅でまとめて落とせる。それに…なんだか嫌な予感がするんだ」

「でも…」

 

『二人共割り込み失礼!フェイトちゃん、悪いけどその案は部隊長権限で却下します』

「はやて…!」

「何か作戦が?」

『クロノ君から私の限定解除許可を貰う事にしたんよ。だから空の掃除は私が引き受ける』

「でも、はやてちゃんの限定許可は2回しか…」

『…分かってる。でももしヘリが狙われてるなら、すぐにでもヘリを守りに行かないといかへん。パラガスさんの到着が間に合うかは微妙やし、何より使える能力を出し惜しみして、後で後悔するのは嫌やからな』

「…分かった。はやてがそう言うなら私達はその通り動くよ」

「ヘリの方は私達に任せて!」

 

ヘリへと向かう二人を見届けると遥か遠くの敵を見据え、愛機シュベルトクロイツを振りかざす。

 

「…よし。任されたからには失敗はできひん。久しぶりの遠距離攻撃魔法…いってみようか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれで最後です!」

「よし、あれは私が行く!」

 

最早通常のガジェットが何機現れた所で六課で過酷な訓練を受けてきたスバル達の敵ではなかった。

何十機といた一団も瞬く間に数を減らし、最後の一機もスバルの拳によって無力な鉄屑に変えられようとしていた。

 

「どおりゃあぁっ!」

 

うなり声と共に鈍い金属音が辺りに響き渡り、再び静寂を取り戻した水路が一時的ではあるがこの戦いに終止符が打たれた事を告げる。

そんな中、一部の者には聞き覚えのある女性の声が五人の耳に飛び込んできた。

 

「お待たせ!みんな大丈夫!?」

 

スバルと同じ色の髪を靡かせながら現れたのは、合流予定だったギンガ・ナカジマその人だった。

 

「ギンガさん!」

「ギン姉!」

「よかった…みんな無事みたいね」

「なのはさん達に鍛えてもらってるんだもん。これぐらいどうってことないって!」

 

「そっちの二人は…はじめましてね。いつもスバルがお世話になってます」

「ちょ、ちょっとギン姉!」

「いえ、とんでもないです!僕達の方がいつも助けてもらってます!」

 

「それからブロリー君、久しぶりね」

「あれ?ブロリーってギン姉と会ったことあったの?」

「いや、会った覚えはないが…」

「覚えていないのも無理ないわ。もう何年も前だもの。ほら、父さんって昔からはやてさん達と知り合いだったでしょ?そのツテで少しだけね。まぁブロリー君はまだ小さかったから覚えてないと思うけど…」

「へぇ…そうだったんだ…」

「それにしても随分大人っぽくなったわね。前に会った時はもっとわんぱく少年って感じだったんだけど」

 

(…!)

 

「へぇ…私も大人っぽいってイメージが強かったから、ちょっと意外です」

「私、ちょっと興味あるかも…」

「僕も聞いてみたいです!」

「へへっ、後でその辺は詳しく聞かせて貰おうかな。ねっ、ブロリー?」

 

「………」

 

「あの…ブロリー?」

「あっ…いやすまない。…それはまた今度な」

「そうね。今は早くレリックを探さないと…みんな、行きましょうか」

 

 

(私…何かまずいこと言っちゃったかな…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だと?一体何事だこれは」

 

ロストロギアの回収から広範囲に及ぶ戦闘へと状況が変わった事により、その情報はすぐに地上本部局員達の知るところとなった。無論その報は首都防衛隊トップであるレジアス・ゲイズ中将の耳にも入り、彼の一室からは憤慨の混じった低い声が響き渡っていた。

 

「本局遺失物捜査部、機動六課の戦闘。そのリアルタイム映像です」

「長距離砲撃だと…撃っているのは誰だ?」

「確定はできませんが、恐らく六課の部隊長かと。魔導師ランクはSSです」

「ん…?地上部隊にSSだと?聞いておらんぞ」

「彼女の所属は本局ですから」

「フン…海の連中が考えている事が透けて見えるわ。それで?その部隊長というのは…」

「…八神はやて二等陸佐です」

「何…八神はやてだと!?あの八神はやてか!」

「はい。例の闇の事件の八神はやてです」

「中規模次元震の根源…!犯罪者ではないかっ!」

「八神二佐らの執行猶予期間は既に過ぎていますし、グレアム提督の件も不問という事にはなっています。ですから…」

「同じ事だ!犯した罪が消えるものか!」

「…問題発言です。公式の場ではお控えください」

「分かっておる…!クソッ、忌々しい。海の連中は危険要素を軽視しすぎている。それに六課と言えばただでさえ得体の知れない力を持った連中を抱え込んでいるらしいではないか」

 

「得体の知れないと言えばもう一つ…以前送られてきた差出人不明のメッセージがまた届いております」

「またあの悪戯か。あんな物は無視しておけと言った筈だが?」

「私も初めはそうするつもりでしたが…今回のメッセージは内容がかなり具体的でして…」

「…見せてみろ」

 

 

それまで吐き捨てるような口調で話していたレジアスだったが、メッセージを見た途端、思わず目を見開いて聞き返す。

 

「こっ…これはっ…おい!機動六課の戦闘員のランクは!?」

「研修を兼ねた新人達を除けば、最高で八神はやてのSS、全員がAAランク以上です。とはいえリミッターが掛けられている隊員も居るようですが…」

「そんなものいざ危うくなれば何時でも解除できる。こいつはそれを知っていてこんな物を送り付けて来たのか…?」

「すぐに六課に連絡しますか?」

「いや待て。…このまま様子を見る」

「しかしそれでは…」

「どんな手を使うか知らんが、言葉通りの実力かどうかこの目で確かめねばならん。それに、何か不手際があれば本局や教会の連中を叩く良い材料にもなる」

「…承知しました」

 

 

僅かに不服そうな秘書の目も気にせず、レジアスは再びモニターに視線を向ける。しかし、食い入るように見つめる彼の眼には、もう機動六課の姿は映ってはいなかった。

 

 

 

 

(AAランク以上の魔導師を撃墜予告…馬鹿な。そんな事が出来るはずが無い。出来るはずが───)

 

 

 




どうも顔芸です。
平成の内にと思っていたのですがギリギリで過ぎてしまいました。

今回は新たな二人が登場しましたが、皆さん何となく察していますでしょうか…?
この前の彼らはキャラが強すぎて即バレそうでしたから…()

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