リリカルな戦闘民族 (ドラゴンボールZ×リリカルなのは) 作:顔芸の帝王
リンディ達が裁判を終えるまで、地球で暮らす事になったバーダック。すぐにでも地球に行きたいと言い出したバーダックの要望通り、翌日の午後には地球に送り出すことになった。
「…という訳で、少しだけでいいから彼の案内をしてあげて欲しいのだけど…」
「大丈夫です。その日は学校もお休みなので。…実を言うとちょっと気になってたんです。あの人最初に見た時大怪我してたから…」
「そう…ありがとう。ちょっと気難しい人だけど…悪い人じゃないから大丈夫よ」
***
「…じゃあ最後にもう一度確認するよ。基本的にはあの世界では人目に付く場所で空を飛んだりといった魔法…君でいえば”気”を使うことは禁止だ。あと通信機を渡しておくから、何か分からない事や問題があったら必ず僕達に連絡を取ってくれよ。それから…」
「…その話はもう5回は聞いた。いい加減しつこいぞ」
「君は問題を起こしそうだから心配なんだ。それにただでさえ今は忙しいんだ。こんな時にこれ以上面倒事を増やされても困る」
「………」
「それと貴方には通信機の他にマンションを用意したから、そこで生活してくれ。場所は地球にいる案内人に伝えてある」
「ほう…寝床まで容易するとは随分と気前がいいじゃねぇか」
「…管理局が住む場所も用意せず時空漂流者を一人にする訳にはいかないだろ?というか寝泊まりする場所を考えずに行くつもりだったのか…全く貴方という人は…」
「けっこういい物件だから、期待していいですよ?」
「バーダックさん、次に会う時は貴方に勝てるように頑張ります!」
「そりゃ無理だな…まぁせいぜいクロノや犬女と無駄な努力をするんだな」
「だ、誰が犬女だ!私にはアルフっていう名前が…」
「へっ…誰とは言ってねぇぞ」
「なっ…ぐぬぬ…」
皆に悪態をつきながら、バーダックは転送ポートに入る。
「そろそろ時間ね…じゃあ転送するわよ」
エイミィが機械を操作すると、バーダックの足元が光り始め、転送が開始される。
「あばよ。世話になったな」
去り際に短くそう呟くと、バーダックはアースラから消え、地球へと向かった。
「全く…素直じゃないねぇ…」
「バーダックさん…また会えるかな…」
「ええ…きっと…今度はなのはさんと一緒に…ね?」
***
バーダックが目を開けるとそこは木に囲まれた山奥だった。どこにでもある景色ではあるのだが、どうにも既視感がある。
(ここは……記憶が曖昧だが俺が最初に流れ着いた場所だな…)
「あの…バーダックさん…ですよね?」
背後から声を掛けられ振り向くと、栗色の髪を二つに結んだ少女が立っていた。見たところ年齢はフェイトと同じぐらいなのだが、子供らしからぬ妙な落ち着きのあった。
「はじめまして…でいいのかな?私、高町なのはです。こっちは友達のユーノ君」
「どうも、ユーノ・スクライアです」
「…お前らがリンディ達の言っていた案内人か?…よく覚えちゃいねぇが世話になったらしいな」
「あぁ、覚えてたんですね。リンディさんやフェイトから話は聞いています。ええっと…まずは家まで案内するので一緒に行きましょう」
「…ああ」
***
「あの…バーダックさんって魔導師なんですか?模擬戦でクロノ君とフェイトちゃんに勝ったって聞いたんですけど…?」
「別に魔導師じゃねぇよ…そういうお前も、フェイトには勝ったらしいじゃねぇか」
「あ、あれはたまたまです!私なんて魔法も最近覚えたばかりだから、知識も無いしコントロールだって…」
「…それでフェイトに勝ったんだろ?なんなら今度試してやろうか?」
「あ、あはは…お手柔らかにお願いします…」
「…ここか?」
「はい。地図だとここなんですが…」
「急ごしらえの割にいいマンションだね…」
確かにリンディは「期待していい」と言ってはいたが、バーダックもまさかここまでの高物件だとは思わなかった。
建物の大きさもさる事ながら部屋数も多く、バーダックが一人で住むにはあまりにも不釣り合いであった。
「あ、そうだ。バーダックさんって通信機持ってるんですよね?これ私の番号です」
そう言ってなのはは番号の書かれた小さな紙を手渡した。
「困った事があったら私に言ってくださいね。家も近いですから」
「あ、そうだなのは、この後の魔法の特訓、バーダックさんに見てもらったらどうだい?」
「あ、そうだね!…バーダックさん、もし時間があれば行きませんか?」
「特訓…?もしかするとお前、結界とかいう奴は使えるのか?」
「結界ですか?結界なら私もユーノくんも使えますよ」
「そうか…よし…なら仕方ねぇ…行ってやるか」
仕方ないといいつつもバーダックは内心満更でもなかった。アースラではあまりパワーを出す訳にもいかず、地球でも激しい修行は出来ないと思っていたが、結界があるなら話は別だ。以前のように暴れられる上、魔法が使えるスパー相手まで付いてくるのだから。
(へっ…やはり地球に来て正解だったな…)
(…なんか悪寒がするなぁ…)
***
「…この辺りならいいかな。それじゃあ今から結界を張りますね」
そう言ってなのはは結界を張る。
「…何か変わったか?」
魔力のある人間は感覚で分かるらしいが、バーダックには張る以前との違いがわからなかった。
「ええ。今この辺り一体に結界が張られてますよ。見えないのは無理ないです。そもそも魔力のない人にまで見えてしまったら意味がありませんからね」
「そういう物か。まぁ結界があるなら好きにやらせてもらうぜ」
そういうとバーダックは上空へ飛んでいき、拳にエネルギーを溜め始める。
「ああ、でもいくら結界と言っても限界があるから…
「こいつは準備運動だ!でりゃぁぁぁぁぁ!」
バーダックが上空に放ったエネルギー弾は、数秒の内に凄まじい速度で上昇し、大爆発を起こす。
そしてエネルギー弾はかなりの高さまで飛んだはずだったが、地上にまで爆音と爆風が届き、辺りの草木を揺らす。
「い、今一体何を…」
(凄い…今の砲撃ははなのは並の威力だ…!でもやっぱり魔力が無い…一体どうやって…)
そんな事を考えている間に、バーダックはどんどん気を解放し始める。
「あっ!バーダックさん、これ以上強力なのはダメですからね!おーい!聞いてますかぁー!」
***
あれからユーノに自重するように言われたバーダックは、気を限界まで高めた超スピードのシャドウに切り替えていた。
なのは達は最初物珍しいそうに見ていたが、ジロジロと見られるのを嫌ったバーダックに怒鳴られると、慌てて自分の特訓に戻った。
しばらくして休憩を取ったバーダックは、なのはの特訓に目をやる。それは、バーダック達サイヤ人のものとは異なり、テキストやら魔導書を見ながら知識や呪文のコントロールを学ぶものだった。
「そうそう。魔力の収縮を制御して思い切り放出しつつ、外には逃がさない感じで…」
「う、うん…」
そんな掛け合いを聞きながら、バーダックはこの地球について考えていた。
(…この星が俺の世界の地球ならカカロットがいるはずだ。…だが今の俺にはスカウターが無い。何かスカウターの代わりになるような道具や技があれば…)
そんな事をぼんやりと考えていると、練習を終えたなのは達がやって来た。
「バーダックさん、飲み物あるのでどうぞ」
バーダックが無言で受け取ると、なのはもその場に座り込む。
「…おい、一つ聞いてもいいか」
「はい、なんでしょう?」
「…最近地球に宇宙船が来なかったか?」
「えっ、宇宙船ですか?…地球にそんなのが来たら大騒ぎですから来てないと思いますけど…」
「そうか…ならいい」
突然突拍子も無い事を言われ、からかわれているのかと思ったが、バーダックの表情は真剣だった。
「あの…何か重要なことなんでしょうか…?もし何かお手伝いできることがあれば…」
「…大したことじゃねぇ。まだ赤ん坊だが俺のガキが乗ってるかもしれねぇってだけだ」
「そ、それかなり重要なことじゃないですか!もしかして地球に地球に来てるかもしれないんですか?」
「…さあな。地球に一人で送り出されたという話は聞いたが、この世界の地球かどうかもわからん」
「なっ…赤ん坊を一人で送り出したんですか!?」
まるで鬼の様な仕打ちになのはとユーノは唖然とする。
「俺達のサイヤ人は戦闘力が全てだ。俺のガキは戦闘力が低かったからな。弱い野郎は子供でも容赦なくほかの星へ送り込まれる」
「…そんな…いくらサイヤ人だからって…子供にまでそんなこと…!」
「…俺達サイヤ人は常に戦いの中に身を置いてきた種族だ。そんな中でカカロットの様な最下級戦士なんてのはすぐに殺されるのが関の山だ。…まだ辺境の星に送る方が生き延びる可能性あるんだよ。実際、俺のガキは地球に送り込まれていなければ今頃死んでるはずだ」
「でも…」
バーダックの話を聞いた二人は衝撃を受けた。バーダック達サイヤ人がどんな種族かはリンディに聞いていたが、まさか赤ん坊にまで残酷な仕打ちがされているとは思わなかったのだ。
「…それにきっとアイツは生きてるはずだ」
「どうして…分かるんですか?」
「お前ら、俺が未来を見たと言ったら笑うか?」
「み、未来が見えるんですか!?」
「確か魔導師にもそういうレアスキルを持ってる人はいるけど…」
「…まぁ正確には見せられたという方が正しいがな。…あの野郎、頭でも打ちやがったのか、与えられた命令を無視して地球人と暮らしていやがった。…全くサイヤ人の癖に甘い野郎だ」
文句を言いつつも、バーダックは少しだけ笑みを浮かべていた。
「そうなんですか…!それを聞いてちょっとだけ安心しました…」
なのははホッと胸を撫で下ろす。
「そういう事だ。それになんと言ってもアイツは俺のガキだからな。そう簡単にはくたばらねぇはずだ」
「…でもそれが運命だとしても寂しいですね…本当ならまだまだ親に甘えたい時期なのに…」
「………」
「なのは。そろそろ門限も近いし帰ろう」
「…あ…ほんとだ。……今度こそ間に合わせないとね…」
「なら俺も勝手に帰らせて貰う。世話になったな」
「あ、いえ…誘ったのは私達ですから。今日はバーダックさんに見てもらうって言って来たのに結局流れちゃいましたから、時間があればまた付き合ってくださいね」
「…考えておいてやる」
そういうとバーダックはなのは達に別れを告げて帰路に付いた。
***
「ねぇ…ユーノ君…」
「なんだい?」
「バーダックさんの事なんだけど…私、少し心配なんだ…」
「リンディさんから聞いたフリーザっていう侵略者の事かい?」
「それもあるんだけど……バーダックさんって自分の子供も行方不明で、住んでた故郷も一族も奪われちゃったんだよね…」
「うん…本人はさらっと言うけど…きっと大変な出来事だったんだろうね…」
「元からなのかもしれないけど、バーダックさんってあんまり笑ったりしないし、訓練してる時もなんだか凄く必死な感じで、初めて会った時のフェイトちゃんみたいに凄く無理してるみたいに見えたんだ…だから余計なお世話だって言われちゃうかもしれないけど、私達に出来ることはしてあげたいって思うの…」
「うん…そうだね…僕もそう思う。…僕達でゆっくりでもいいから彼の傷を癒せるように努力してみようよ」
「…うん!ありがとうユーノ君!」
二人は少しでもバーダックの助けになろうと決意し、帰路につくのであった。
***
家に帰り着いたバーダックは、窓から空を眺めつつこの世界での出来事を振り返っていた。
思い返してみると、この世界にやって来てから知り合った人間は、バーダックがこれまで関わってきた人々とは違っていた。
利益もないのに当たり前のように見ず知らずの人間を助けたり、他人の出来事にいちいち一喜一憂する。こんな人間は今まで出会って来なかったし、自分でも今までその事を疑問に思うことはなかった。
バーダックはそんな彼らを甘い奴らだと思う反面、ほんの少しではあるがこんな人間達も悪くないと思い始めていた。
(全く…奴らの甘さが移ったか…)
バーダックは自分の中で新たな感情が芽生えるのを感じながら眠りに着くのであった。
***
「……ここは…何処だ…?
…確か俺達はフリーザの攻撃に巻き込まれて……」
…そうだ…グッ…────は…────はどこだ…!?」
男は傷だらけの状態だったが、首を上げて辺りを見渡すと、すぐ近くに目的の人物は倒れていた。
「だ、大丈夫か…!?今そっちへ行くぞ…」
そう言って男は這いつくばりながらももう一人に近付くが、痛みで意識が薄れて上手く進むことが出来ない。
「…グッ…クソ…意識が……」
ここまでかと思っていた矢先、近くで声が聞こえてきた。
「た、大変や!こんなところで人が倒れてるで!…しかもこっちは赤ちゃんやないか…!」
「二人共ひでぇ怪我だ…おいシャマル!」
「分かってるわ。今治療するから…!」
こうしてとある車椅子の少女一家に助けられた男たち。この出会いが、少女やバーダックにどんな影響を及ぼすのか。
この時点では誰にも分からなかった。
どうも顔芸です。
はい。結局今回も遅くなってしまいました…ごめんなさい…
その代わりと言ってはなんですが、若干文字数が増しました。次回からは最低でもこれぐらいで行こうと思います。
それにしてもバーダックのキャラって難しいですね…。多分原作と比べて最初から丸くなってると思う方もいると思いますが、あんまりつっけんどんだと話が進まないので大目に見てくださると嬉しいです。
それと、前話の最後から今回の出発までの間の話は、書いてもよかったのですが、私の文才ではあれ以上書くとグダグダになってしまうので止めました。
大まかな出来事としては、出発までの間にフェイト達とちょっとした交流と、リンディがなのは達にバーダックについて詳しく説明するぐらいです。
ただ、頭の中ではなんとなく決まっているので、要望があったり、話が一段落着いたら書こうと思います。
最後にラストの会話ですが…勘のいい方は誰だか分かると思いますが、あの方を出そうと思います。出来るだけ読みやすく努力したいと思いますが、それに伴って場面転換が多くなり、ただでさえ読みにくいものが更に読みにくくなってしまったらごめんなさい。
それでは。
※追記
バーダックが気を知っているのは何故かという趣旨のコメントを頂いたので、ここで解説しておきます。
ドラゴンボールの世界では、悟空たちが使うエネルギーの事を「気」と呼んでいます。しかし、気は「戦闘力」「エナジー」「妖気」など、作中で様々な呼び方をされています。フリーザ軍系列の人々は、主に「戦闘力」と呼んでいましたが、戦闘力と言うとクロスオーバーでは曖昧な表現になってしまう上に、今回の最後に登場したキャラクターも、元フリーザ軍系列でありながら気という呼び方をしていた事を踏まえ、今作ではバーダックも気と呼んでいる設定にしました。