冬である。
あったかいもの食べたいなあと旦那にお願いしたら、コンビニで肉まんのようなものを買ってきてくれた。
あの、パン工場が売り出し中の特別な「まん」らしい。

1 / 1
まん

 珍しいもの好きな旦那が、コンビニで買い物をしてきた。

 

 冬である。

 あったかいもん食べたいなあとお願いしたら、今売り出し中の、パン工場オリジナルのアツアツまんシリーズを買ってきたと言う。

 

 「なにそのアツアツまんって」

 普通の肉まんとか、あんまんじゃないの?

 

 こたつでぬくぬくしながら、ドヤ顔の旦那を見上げた。

 旦那は嬉しそうにこたつに入ると、包み紙をこちらによこし、開いてみてくれと言うのだった。

 

 「どうれ」

 開いて取り出し、お皿に並べてみる。

 なんの変哲もない肉まんだかあんまんじゃないと思ったが。皿に乗せてみたら白い表皮に顔が書いてあったのでびっくりした。

 

 「アンパンまん、カレーパンまん、しょくぱんまん……」

 

 なんと、パン工場の三大ヒーローが表皮に焼き付けてある。

 なるほど、パン工場め、考えたものだ。大人気の彼らの顔さえ付けておけば、売れることは間違いなかろう。

 

 「ずるいなー」

 ほかほか湯気をあげている三つのまんをみながら、わたしは呟いた。

 「これさー、中身普通なんでしょう。連中の顔を焼き付けただけで、今売り出し中とか、せこいよ」

 

 まあ、食べてみようよ。

 旦那は言うと、自分はまずアンパンまんを掴んで一口齧ってみせた。うまいよ、これ。言われるので、わたしも一口もらって食べた。

 

 普通のあんまんじゃないか!

 

 「じゃあどうせこのカレーパンまんは、カレーまんなんでしょ」

 「いいじゃない、美味しければ」

 文句をいいたいわたしと、美味しければ満足の旦那。もういい。食べてやる。

 

 カレーパンまんも、普通のカレーまんである。

 確かに美味しい。パン工場の技術を感じる。パンに対する愛を、冬の風物詩にもぶつけた心意気は認めてやろうか。

 

 しかし、そこに至って、わたしははたと気づいたのである。

 お皿に残るは、ひとつだけ。

 

 しょくぱんまん。

 

 

 

 アンパンまんは、あんまんだった。

 カレーパンまんは、カレーまんだった。

 じゃあ、しょくぱんまんは。

 

 「食べてみよう」

 旦那はどこまでも嬉しそうに、謎のしょくぱんまんを二つに割って、片割れをわたしにくれた。

 

 はぐう、とかぶりつき、旦那は目を細める。うんうまいじゃないか。たまらんね。

 

 それでわたしも食べてみる。

 もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ……。

 

 美味しいよ。うん、確かに。さすがパン工場だ。

 しかしね。

 食べても食べても食べても食べても。

 

 

 食べても。

 

 

 

 

 「ねえ、これ、中身ないんだけど」

 皮ばっかりなんだけど。

 

 既に食べ終えて大満足顔の旦那は、にっこり笑って言うのだった。

 「え、だってこれ、しょくぱんまんだし」


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。