多忙な雑用職員さんとオルタ二人   作:グナードン

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……遅くなりましたでいいのかな?

やってる途中でヤバと思いましたがなんか五千を超えていた。
そして気づいたら一万……遅くなるわけですね。

暇な人は見てくだされば幸いです。


仕事と食事は大切に

「……うん、今日も完璧だ」

 

「ありがとうございます」

 

そう言って俺はダヴィンチさんにサーヴァントに関するレポートを渡した事の証明に端末にサインするよう促す。

この仕事は本当なら研究部の人がやらなければいけないはずだが、レフさんはその人たちの多くをアボーンさせたので今では俺がこのレポートの作成をしてダヴィンチさんに持っていく。研究者は俺に研究データを渡して次の研究に取り組むのである。

これを完成させる為に三時間は費やした。最初は慣れずに五時間以上を費やしていた。それには理由がある。このレポートだけでなく、こういった類のものは基本的に「誰が見ても分かりやすく」という共通概念がどこの部署にも存在しており、それが出来てないとどこも受け取ってくれない。なんでも、レフさんの爆発の影響で死んでしまった所長さんが「誰が見てもわかりやすく、かつ迅速に」というような事を口煩く言っていたらしい。無茶にも程がある。しかし、色々な職員さんに聞いて見ると、所長さんはレポート作成などを何度もやっており、それはそれは丁寧で分かりやすく、物凄い速さで作成をしていたという。そう思うと、俺はまだまだ未熟者のようである。

 

「はい、書いたよ」

 

「ありがとうございます。では……」

 

俺の三時間の苦労を五秒のサインで終わらすという凄技を見終えた俺はその場を立ち去ろうと一度頭を下げ、後ろを向いた。しかし、直ぐその後に「待ちたまえ」と言いながら俺の肩を叩いた。

 

「なんですか?」

 

「ん?いや、最近はどうかなってね。ほら、君寝てないでしょ」

 

「……まぁ、大丈夫ですかね」

 

ダヴィンチさんは俺の多忙さを知っている。俺が眠いといえば、「眠気?何それ美味しいの?」を無料でくれたり、更に眠いといえば「眠いといったな?あれは嘘だ」をくれる。因みにどちらも俺が名付けた。

こんなしょうもない名前にしたのは俺しか飲まないからだ。

他の職員さんはきちんとした睡眠を取っていらっしゃる。本当にこのカルデアは職員不足なのにホワイトな職場だ。誰もが羨む職場だ。そう、俺がいなければね。

 

 

「そうか、いや、安心したよ」

 

「……」

 

彼女はうんうんと何かを納得したように頷いた。一見俺の事を気遣ってくれているようなその言葉。しかし俺は、この言葉を聞いた瞬間、脳裏で誰かをちらつかせた。それは彼女の今の言葉を言っている国連の先輩であった。彼はこれと丸っ切り同じ言葉を言うと八割の確率で面倒な事を俺に押し付けていた。それも陰湿きわまりないものばかりだ。大学時代は俺にとって少し苦い記憶。

俺は瞬時に危ないと悟り、一言挨拶をしてそそくさと出口に向かった。

 

「いやー、他の職員も君を見習ってほしいよ」

 

「そうですね。では、これで……」

 

「え?もう行くの?ゆっくりすれば?」

 

「いえ、まだまだやる事があるので。では……」

 

歩く速さはいつもの三倍。相手に自分の心を悟られないように……。体よ、もってくれ!そう願いつつ俺は天才ダヴィンチ様から逃げる。振り返ったら何かに引っ張られて仕事というデスボールをくらいそうで怖かった。そして遂にドアまであと一歩。その瞬間だった。

 

「次に使うであろう素材と必須データ、必要研究費とか君のパソコンに送っといたからね。カルデア職員会議の時までによろしく」

 

「……」

 

 

デスボールではなく、デスビームだった。

 

 

彼女の言葉に俺は振り返り絶望したような顔を彼女に見せる。彼女はそれを見ると此方に何かを放り投げた。綺麗な放物線を描きながら飛んでくるその物体をキャッチすると薄茶色の瓶であった。ラベルには「眠いといったな?あれは嘘だ」と大きく書かれていた。第一段階を吹っ飛ばし、第二段階のブツをくれるとは……。やられたね。呆気なくやられたよ。

 

「……ちょっと何いってるかよく分からないですけど」

 

「今は分からなくても、部屋に戻れば、嫌でもやらなくちゃいけないよ。君は程々という言葉を覚えたら同じ天才になれるかもね」

 

「……ご冗談を」

 

「ま、一つ頼んだよ」

 

ふざけた返しを入れながらニコッと笑うその姿に少しの怒りと強い憤りを感じた。マジで天才は嫌いだ。自分の発明、発言、行動でドン底の人生に堕ちろ。天才死ね。

 

 

工房から出て直ぐの所の自販機でお茶を買い、少しずつ飲みながら次の仕事の確認をする為に胸ポケットから手帳を取り出した。このカルデア内では端末機がそれぞれの職員に支給されており、何もかもがそこで見れるようになっている。彼等はこれを使っている。しかし、俺はそれとは別に手帳を持って行動する。カルデア唯一の手帳持ちである。理由なんてものは特になく、俺がこっちの方が見やすいからだ。

 

「次の仕事は……掃除、か」

 

引きつった笑いを浮かべながら、手帳を閉じ何度目か分からないため息をつく。幅広い仕事の中で二番目くらいにキツイ仕事。一つ一つが短いのに部屋の数が多すぎる。その為、これだけで一日はかかる事も……。おまけに三日後にはカルデア職員会議ときた。これはまた徹夜だな。

その時、不意に肩を叩かれた。誰だと思いつつ振り返ると俺と同じ服を着ているカルデア職員さんがニコッと笑っていた。

 

「よぉ、元気か?」

 

「え、ええ……まぁ」

 

彼は久しぶりに友人と再会した見たいに、白い歯を見せながら、肩を組んできた。いや、誰です?正直なところ最近、あまりにも寝なさすぎて職員の顔やサーヴァントの顔が同じに見えてくる。この前なんてジャンヌとアルトリアを間違えてひどく怒られてしまった。

 

「なんだよー……お前って入った時から連れねーよなー」

 

「そう、ですかね……」

 

目線をやや下に下げながら俺は曖昧な返事をした。彼はその反応を見て「そこ!そこなんだよ」と人差し指で俺の顔を指した。

 

「もっと笑った方がいいぜ……ん?」

 

彼は何かに気づいたような声をだした。それに反応し彼の顔を見ると目線が俺の右手にいっていた。右手に持っているのは手帳である。なるほど、カルデア職員さんには要らないもんね。

 

「ほら……掃除とかあるので」

 

「……あ、あーはいはい!確かにな!端末では掃除はできねーもんな。お前にとっては端末とか関係ねーわな」

 

 

「………………………………まぁ、そうっすね」

 

 

「お前はお前で大変だな……おっと、こんな時間だ。俺はまだ飯食ってないから……じゃあな」

 

彼はそう言いながら歩いていった。マジで何だったんだ。いきなり絡んできて話すだけ話してその場を去る。典型的な自己中心型だな。ああいうタイプはマジで苦手だ。よく高校の時とかテストの日だけ絡んで「今日、勉強してきたん?」とか言ってくる奴とかいたな。あれと一緒だ。ああいうのと一緒にいるのは自分の中では酷だ。

 

「あ、あとお前のパソコンに必要経費とか新しい技術開発のプロジェクト関係のデータとか送ったから。カルデア職員会議の時までに資料作成、よろしくな」

 

「ちょっと何いってるかよく分かんない!」

 

俺は今日も明日も寝れねーのかよ。本当、いい職場だな。俺を除いて。マジで何?このままいくと死ぬよ?元気があれば何でも出来るとかのレベルじゃなくね?限度ってものあるだろ。スピードうてばいいの?チョコ吸えばいいの?大体それくらいお前がやれよ。飯食う暇があるなら仕事しろ!社畜としてあるまじき行為だぞ!

 

「こちとらニ週間乾パンぐらいしか食ってねーんだぞ」

 

「……え?」

 

「……ん?」

 

俺のボキャブラリーが可笑しくなりつつあった(決壊はしかけていた)その時、後ろに誰かの声がした。え?というたったの一音。その声で誰が発したか、俺は即座に分かった。

ゆっくりと後ろを振り向き、彼女の顔を見る。その顔には何時もとは違う何かがあった。

 

「……」

 

「……」

 

彼女と俺は何も話さず、ただ顔を見つめ合っていた。この暗黙に何かがある。それと同時に体の一ミリも動かしてはいけないという直感が働いた。つまり、彼女の怒りに触れるぞ。この空間はそう語っていた。しかし、俺はその直感とは違う方へと動いた。ゆっくり、ゆっくりと後ろに下がり、彼女との間合いをとっていく。時が止まったような空間を動くには凄く体力を使うがここを切り抜ければ……。その瞬間、対峙していた彼女とは違う人の声が俺の耳に入った。

 

「あの……」

 

「ひゃい⁉︎」

 

あまりの事にビクッと肩を強張らせ、反射的に後ろを向いた。驚いて変な声が……、自分の何処からでたのか分からない声を上げてしまった。

声をかけたのは、薄い紫色の髪が片目を隠しているのが特徴の少女、マシュキリエライトであった。カルデア職員はマシュの事を「マシュ」や「マシュさん」や「マシュちゃん」と呼んでいる。ある奴は陰で「マシュたん」とか気持ち悪いことを言っているが今は関係ない。

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、何でもないです」

 

彼女はこちらを不思議そうに眼鏡越しに見つめていた。俺は自分に言い聞かせるように言った。彼女は小さくそうですかと言うと俺の後ろに気配を感じたのか、俺の後ろを見た。

 

「あれは……ジャンヌさん?」

 

彼女はまた不思議そうに呟いた。しかし、ジャンヌは彼女の言葉に一切反応を示さない。ヤバい、俺は瞬間的に感じ、彼女の意識を俺に向けさせるように声を少し張り上げた。

 

「あ、あのー……俺に何かようがおありで?マシュさんが来たということはレイシフト関係ですよね?」

 

俺の問い掛けにマシュは自分の仕事を思い出したかのように、そうでしたと小さく言いポケットの中から小さなSDカードを取り出した。

 

「これ、今日のレイシフトの結果です。よろしくお願いします」

 

「分かりました。では、明日にでもまとめてロマンさんとダヴィンチさんに渡しておきますね」

 

俺は今までで一番の営業スマイルを顔に貼り付けた。勿論、声も今までよりも元気で張った声を出している。

しかし、俺の営業スマイルとは裏腹に後ろにいるジャンヌはただ、無表情に俺の背中を見つめている。マシュは少しだけ顔を困ったような顔にしかめた。

 

「それが、今日は新しいものが手に入ったりしたので、その関係で今日中にという事なのですが……お願いできますか?」

 

彼女は少し上目遣いをしながらそう言った。言ったのは多分、カルデア職員の奴だろう。成る程、確かにそういう場合、報告書が今日中に欲しいだろう。おまけに数日後にはカルデア職員会議だ。これで必要経費以上の予算が出るような代物だったらと思うと尚更報告書が欲しいわけだ。

 

「……分かりました。では、今日中にやりますね」

 

俺は言いながら彼女からカードを受け取った。その瞬間、左腕に冷たい感覚が走った。俺の後ろからジャンヌが腕を掴んだのだ。ヤベッ……と思わず声が出そうになった。どうやら彼女の何かに俺は踏んだらしい。

 

「……ジャンヌさん?」

 

マシュがそう言った瞬間、俺は腕を引っ張られた。足がもつれそうになりつつも、彼女についていく。マシュはただ呆然と俺たちを見つめていた。最後に彼女に向かって営業スマイルをするとマシュはぺこりと一礼し俺たちと逆方向へ歩いていった。

コツコツと黙って歩いているが、手の力が強くなっていく。最初は耐えれたのだが徐々にその強さが冗談では通用しないレベルに達する。

 

「ジ、ジャンヌさん?痛いです」

 

「……」

 

「イ、痛いのですが……」

 

「…………」

 

「マジで!マジのマジ!お前サーヴァントだからね⁉︎人間死んじゃうから!」

 

俺の意味の分からない言葉でやっと力がゆるまった。しかし、腕を掴んだ手は離そうとしない。だが今から何処に行くのか、それは分かる。

彼女の逆鱗に触れたのは俺の食生活である。何せニ週間乾パン生活だからな。無理もない。俺が逆の立場だったら有無も言わせずにジャンヌと同じ行動をしている。

 

「あー……ジャンヌ。分かったから、手を離せ。今度からは食生活を見直すから」

 

「…………」

 

「今度はしっかりとしたもん食うから」

 

「…………」

 

「けど、今日は無理。三日後にカルデア職員会議があるし。その関係で滅茶苦茶資料を作らなきゃいけないし。後、この報告書も書かなきゃいけないし、それから……あ、部屋の掃除だ。後……あれだ、新しいサーヴァント召喚されただろ?その影響でそいつの部屋の登録。あとーー」

 

「アンタどんだけ掛け持ちしてるのよ!」

 

ジャンヌは驚いた顔を俺に見せた。どうやら俺の仕事量に彼女は怒りを通り越したらしい。だが、俺の腕は相変わらず解放されておらず、足も止まらず歩き続けている。

 

「仕方がないだろう?職員の人数がめっきり減ったんだから」

 

「減ったからってアンタの仕事が増えていいわけないじゃない」

 

「何言ってる?増えるに決まってるだろ。他の人たちは研究やら開発やら、ましてやレイシフトとかで忙しいんだ。人数が足りないいま、多忙なんだよ?だから新たなデータを集めたり発見するのが専門になり、それを資料にまとめるのが専門外になるのが有ってもいいわけだ」

 

「けど限度ってものが……!」

 

「確かに、限度はあるな。だが、やる奴がいないいま、限度なんてものはない。だから俺はあえて言おう……限界突破している俺は最強であると!ジークジオン!」

 

「…………」

 

昔、国連の先輩が大学生の時に合コンの席でそんな事を言っていた。なんでそれを言ったのかは忘れてしまったが、ドヤ顔でそう言った。

国連の先輩は「これいうと絶対落ちるのよ。お前みたいなやつでもな」とヘラヘラして言ったのを何故か今のタイミングで頭に浮かんだ。

結局その合コンの女性陣をみんなお持ち帰りし、その言葉の威力を証明してみせた。

俺はドヤ顔でジャンヌに今の言葉をぶつけた。それを見てジャンヌはジト目になりながら「何言ってるんだ、こいつ」というような雰囲気を醸し出していた。その顔になるのは当たり前だな。キモいわな。

 

「……昔、先輩がこんな事を言ったら女子全員をメロメロにしたから、言ったんだが……」

 

「……私で良かったわね。アイツだったら宝具使ってたわよ」

 

「……二度とやりません」

 

ジャンヌは片方の手を眉間に当て、ため息をついた。呆れた、そんな言葉を彼女の口からもれた。先程とは違い、その顔は何時も見ている彼女の顔に戻っていた。

 

「……アンタの言いたい事も分かるし、否定もしない」

 

「だろ?これからはしっかり……とまではいわないが体と向き合いながら食生活整えるから。だからこの手どかせ」

 

「……アンタの言葉で言ったら、“だが断る”かしら?」

 

「……露伴先生じゃないか。漫画だぞ。なんで知ってんの?」

 

「アンタが一度力説してたじゃない……その漫画というものを読んだ事ないから今度読ませなさい」

 

「……部屋に漫画ないから必要経費で落とすわ」

 

ジャンヌにそう言うと綺麗な笑顔で「はい」と答えた。俺はその笑顔の返事に完全な負けを認め、彼女についていき食堂に行く事を決めた。帰ったら速攻で終わらせなきゃな……ホント、飯も仕事も嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

食堂に行くとそこにはポツポツと人がいるだけだった。時計を見ると二時半を回っていた。思えばこの二、三週間、殆どロクなものを食べていないのにも関わらず、一向に腹が減るといった現象がおきていなかった。グゥという可愛らしい音もなった事もない。何故か腹が減らないのだ。

 

「……いきなりぼーっとしてどうしたのよ?」

 

「いや、ここのところ乾パンとか変なもんしか食ってないのに腹が減らなかっ……なんでもない」

 

ヤバいと思った時には既に遅かった。ジャンヌは俺を睨んだ。

 

「アンタはあそこで待ってなさい」

 

「…………あい」

 

そう言ってジャンヌが指した場所には大量のハンバーガーが乗せられトレイがあった。その横にアルトリアの姿が……。

俺はアルトリアの向かいに座り、おう、と小さく挨拶した。アルトリアは食べていたハンバーガーから視線を上げて俺を見た。

 

「……貴様か」

 

「ああ、社畜様だ」

 

彼女は鼻で笑い、また自分が食べていたハンバーガーに視線を戻した。彼女は結構なジャンクフード好きで特にハンバーガーが好物らしい。普段はその凛々しい表情と結構な物言いに若干の憎たらしさを感じるが、いざ食べるとなると少し可愛さが出てくる。その証拠に口の周りにケチャップが付いている。

 

「おい。食べるのはいいがな、もう少し綺麗に食えよ。口の周りについてるぞ」

 

「そんなものは後で拭き取ればいい」

 

「ハァ……ほらとってやる」

 

俺はポケットからハンカチを出し、口を拭ってやる。その時、俺は気づいた。彼女が食しているハンバーガーの包みについているシール。そこに賞味期限が書かれていた。

 

「お前、これ非常食だろ」

 

「何を言っている。作った」

 

「いや、見れば分かるぞ。俺が確認してるから尚更分かるぞ」

 

「心配するなまだある」

 

「そういう問題ちゃうし!怒られるの俺だからね!」

 

俺はテーブルを少し強めに叩いた。すると彼女はまた鼻で笑い新しいバーガーの包みを破った。

 

「そこも心配するな。その時は私が助けてやる」

 

「……話し合いだよな?」

 

「ああ、私にとっての話し合いだ」

 

「…………非常食をもうちょっとハンバーガーにするか」

 

「それは賢明な判断だな」

 

「賢明じゃないわよ」

 

ジャンヌの声が途端に聞こえたので、ふと隣を見ると少し大きめのトレイに丼が二つと味噌汁がのっていた。

 

「お前も食べてなかったのか?」

 

ジャンヌは俺の言葉を聞くと、キョトンとした顔になった。その後に深くため息をついた。

おい、そんな疲れた顔されると俺の心に響くから止めろよ。なんか鈍感な主人公みたいじゃないか。

 

「…………今日はレイシフトに行ったのよ」

 

「……あれ?そうだっけ?」

 

「そうよ!アンタが『お前今日レイシフトだろ?この資料マスターに渡してくれ』って言ってたじゃない!」

 

「……最近寝てないからそこら辺も危ういわ。それ昨日?今日?」

 

「今日に決まってるでしょ!」

 

ジャンヌはガミガミと俺に言った。顔は狼の様に怖かった。

 

「お前最近怒ってばっかだな。なんかあった?」

 

「アンタの所為よ!アンタの!」

 

顔をこっちに凄く近づけ、胸辺りを人差し指でグリグリされる。もうこれでガルルと唸れば、比喩としてではなく、本当の狼そのものである。

 

「わ、悪かった。だからそんな怒るなよ。ほら、冷めちゃうと美味いもんが上手くなくなるぞ。腹ペコ王が怒るぞ」

 

「それは私か?随分偉くなったな。命が惜しく無くなったか?」

 

「……すいません」

 

俺はアルトリアに謝り、素直に腰を下ろした。ジャンヌはそれを見て、ジャンヌも座る。

怖……。そう思うのは今更な感じがするし、何回もこういうのがあったがやっぱり慣れない。

そんなことを考えていると、ジャンヌは俺の前に丼と味噌汁を置き、箸を俺に渡した。俺は黙ってそれをもらい、丼の蓋を開ける。トロトロとした卵と少し大きめのカツ……。

 

「……カツ丼ね」

 

「何でも今日は偶々らしいわよ。アンタも知ってるでしょ?エミヤってサーヴァント。何時もはもう少しヘルシーなんだけどマスターが食べたいって言ったのが原因。ラッキーね」

 

「……正直いうとあんまり食いたくねーな」

 

「どうしてよ」

 

「いや、眠くなるんだよ。消化が始まると眠くなる体質だから」

 

そう思いながら、味噌汁を啜る。口に広がる味噌の味が懐かしく感じた。乾パンとかでは大違いの美味しさがある。

しかし、カツ丼は別だ。この後にも仕事がある俺にとって重いものは食べられない。いや、食べられないというより食いたくても食えない。この後の仕事に支障をきたすわけにはいかないからな。実際のところ、アルトリアが食ってるあのハンバーガー一個でも重い。

 

ジャンヌは俺の言葉を聞いて、また鋭く睨んだ。その顔に「だったら寝ればいい」と書いてある。

もし、そんな事を言われれば正論すぎて何も言い返せない。そして、無理やり食わされるのがオチだ。

 

「……なぜだ?」

 

「……ん?」

 

突然、アルトリアがそんな事を口にした。

アルトリアは複数の意味がこもっているであろう言葉を俺に言った。彼女の目は真剣そのものであった。

 

「なぜ貴様はそこまで仕事に固執する。貴様のそれは異常だ」

 

その言葉は俺を一瞬だけ動揺させた。若干の悪寒がはしり、体からは鳥肌がたったような感覚がした。

なぜ、か。確かに異常と思えば異常だろう。俺も自覚はある。どっかの主人公みたいに悪役を演じたりそれが普通という神経があったりするわけではない。

 

「貴様の本来の仕事はもっと違うはずだ。いや、違わなくてももっと少なくなっても良いはずだ」

 

「まぁ……な」

 

「私にはお前が自らそういうところに陥っているとしか思えない」

 

「……まぁ、あながち間違ってない。俺から突っ込んでいるんだと思う」

 

「それはなぜだ」

 

彼女はじっと俺を見つめた。その瞳から俺は逃れられないような気がした。彼女の凛々しい姿がこんなにも怖くて恐ろしいものと感じたのは多分初めてだ。

だから俺も彼女に伝える。

 

「……俺はさ、このカルデアに貢献したいとそう思った事は一度もない。寧ろ逆で恨むというものではないけどそれに近いものを感じてはいる。今もだ」

 

「なら尚更ーー」

 

「けど、今のカルデアの現状はとても厳しい状況だ。人数が少ない。おまけに外からの援助は期待できない。だったらやらざるを得ないだろう?雑用と言われるヤツが文句を言いながら、愚痴を言いながらでも少しでも負担を減らせなきゃと思うのは当たり前だ。もっとも仕事が無い方がいいに決まっているし、寧ろそっちをお願いしたいが……」

 

アルトリアは尚もジッとこちらを見つめている。彼女の真剣さは未だ消える事なく俺を捉え続けている。そんな彼女に俺はとうとう耐えきれなくなって視線を外した。

 

「まぁ、要するにあれだ。『子は親よりも大切』ではなく『親は子よりも大切』って事だ。まぁ、このカルデアが俺の最後の経歴になったりしたら俺はここを恨むがな」

 

俺は彼女から視線を外しながら言葉を続けて言った。いつになく真面目に話した所為で恥ずかしさが徐々に募ってくる。次第に体がほんのり熱くなる。後で賢者タイムに突入する感じだな。

 

「……そうか」

 

彼女の口から出たのはそれだけだった。俺は目だけを彼女に向けると彼女は目を伏せていた。何だ?俺の言葉を反芻してるのか?だとしたらやめて欲しい。俺が恥ずかしさで死んでしまう。

 

「おい、どうしーー」

 

「では、これは私がもらってやる」

 

そう言った彼女は俺の目の前にあったカツ丼と味噌汁を自分のところに持っていった。

その行動に俺もジャンヌも驚いた。しかし、そんな俺らとは違い、何時もと変わらぬ凛々しい顔のままであった。

アルトリアは自分の横にあるハンバーガーを一つを包みから破くとパクパクと食べ始める。その行動を見ていたジャンヌは痺れを切らしたのか声を少し荒げた。

 

「ちょ、ちょっとアンタねぇ……!」

 

「仕方がなかろう、彼には食べられない理由がある。ならばこれは誰かが処理しなければならない」

 

「だからと言ってこのままじゃーー」

 

「ああ、貴様がいいたいのも分かる。だから……」

 

彼女はジャンヌの言葉を遮った。そしてあろうことか彼女は左手を俺に向けた。

 

「こいつと交換だ」

 

彼女の左手には先ほど食べていたハンバーガーがある。それと交換と言い出した。その時の彼女の目はうっすらと笑っていた。

 

「……は?」

 

俺はあまりの事に少し頭が急ブレーキを踏んだみたいに一気に止まった。しかし、脳の信号が緑になるのはそう遅くはなかった。

 

「貴様はこれを食え。どうせロクなものしか食っていないだろう?これだけでも充分栄養になる」

 

さっきの言葉をどうやって受け止めたかは分からないが、どうやら俺の食生活が乱れていたのは見透かされていた。

 

「貴様の事だ。これ一つでも重いというだろう。ならば半分だ。それならば貴様も文句はないはずだ」

 

「……まぁ」

 

「ならば受け取れ」

 

彼女の手からハンバーガーを受け取る。そこそこの重量感が手に伝わってきた。半分でもこれなら一個はもう少し重いのだろう。改めてアルトリアを見ると彼女は綺麗な微笑をして俺を見ていた。

 

「じゃあ……」

 

そう言い、半分のハンバーガーを口に入れる。ハンバーグとレタスやピクルスの味が一度に口の中で広がる。美味しさが口を包んだ。

そうして、数分の間、ハンバーガーをゆっくりと堪能した。

食い終わったらいよいよ腰を下ろしていた椅子から立ち上がって気合いを入れるように、よし、と小さく呟く。

 

「……アルトリア、ありがとうな」

 

アルトリアに礼を言うと彼女はハンバーガーを食いながら、最初の時のように鼻で笑った。

 

「礼はいい。貴様が食べれないから交換しただけだ」

 

「そう言ってもらえると助かるな……ジャンヌもありがとうな」

 

「私は何もしてないわよ」

 

「それでもだよ」

 

ジャンヌはそっぽを向きながらつまらないような声で答えた。

 

「じゃあ……」

 

俺はそう言い食堂を出て行った。

ポケットの中にはヒンヤリと冷たい瓶がある。俺はそれを強く握り締めた。

 

 

 

 

 

「……バカ」

 

ジャンヌは無表情で彼の後ろ姿を見てそう言った。その言葉にアルトリアは先程彼にしていたように鼻で笑った。

 

「ああ、バカだ。だが、それはこちらも同じだ。魔女といわれ憎悪を求めるバカ。剣を振るい戦闘にしか価値を見出せないバカ。自分の事より仕事を優先するバカ。これ以上にない組み合わせだ」

 

「……その通り、って言ってもいいのかしら」

 

「言わざるを得まい」

 

アルトリアの言葉を聞き、ジャンヌはうっすらと笑った。そしてもう一回うわごとのように「バカ」と言い、綺麗に箸を持った。

 

「それにしても、アンタもアイツもよくやるわね。見てるこっちは驚いたわ」

 

「……ふん、恥じらいというのは今の私にはない。それはアイツもそうだ。それにその言葉がお似合いなのはもう一人の私だ。貴様は違うのか?」

 

「まさか。ただ、驚いただけよ。どうせアンタの事だから分けてから食べるのが面倒ってだけでしょ」

 

「……いつになく察しがいいな何か変なものでも食べたか?」

 

「喧嘩売ってるの?それともバカにしてるの?」

 

「両方だ。貴様も早く食え。それは冷めてから食べるものではない」

 

「知ってるわよ」

 

ジャンヌ達はそれぞれのテーブルにある丼に手をつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、やりますかね」

 

「お、いたいた。お前のパソコンに研究データと必要経費とかの予算とか送っといたから。カルデア職員会議の時よろしくな」

 

 

「……チョットナニイッテルカヨクワカンナイ」

 

 

「あ、あと今日中にレイシフトの報告書。研究部の方とDr.ロマンに送っとけよ」

 

ちょっと何言ってるかよく分かんない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




余談ですが、皆さんジャンヌオルタガチャ引きましたか?
私は三万課金しました。

「よっしゃやったンゴ」

ガチャ「やあ」

「よし、最初から飛ばすぜ!十連やったンゴ」

ガチャ「おっやるか?」

「ジャンヌこい」

ジャンヌオルタ「どうしました?さ、契約書です」

「……ちょっと何言ってるかよく分かんない」

課金って何だっけ?爆死って何だっけ?


三万がある意味無駄でした。
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