私立グリモワール魔法学園SS   作:sakuto@グリモア

4 / 8
#003

「──これで校内もだいたい案内できたと思うんですが……」

「うん、だいたい把握できた。ありがとう智花」

「あ、いえ‥…頼まれましたから!」

 

 責任感もあって、本当に良い人なんだな、智花は。

 

「じゃあそろそろ生徒会室に……って、あれ?」

 

 智花が何やら携帯のようなものを取り出し、その画面を見て困惑した表情を浮かべる。どうやらあの機器はみたまんま通信機器のようだ。なにか連絡が来たらしい。

 ややあって、智花がこちらをみる。

 

「どうかしたの?」

「すみません転校生さん。初日は案内と挨拶だけだった筈なんですが……いきなりクエストに出なければならなくなっちゃいました」

 

 申し訳無さそうな表情で智花がそう告げる。別に智花のせいではないんだろうし、そんな表情をしなくても良いと思うんだけど。

 

「僕は大丈夫だけど……智花は?」

「私は勿論大丈夫です」

「そっか。じゃあ、初めてだから迷惑かけちゃうかもしれないんだけど……よろしくね」

「はい、任せてください! 転校生さんは私が守ります」

「うん……ごめん」

 

 実は、僕は確かに尋常じゃない魔力量を有していて、それを他人に受け渡すことの出来る珍しい人間らしいと聞いた。しかし僕自身は魔法を全くと言っていいほど使えない。全然使えないというわけではないのだが、出せてもライター程度の小さな火や、水滴、微風くらいしか発生させることができず、とてもじゃないが魔物には通用しない。何でも全魔法と絶望的に相性が悪いらしい。

 したがって僕の役割は後方支援がメインとなってくる。正直、情けない。魔力を受け渡すというのは十分すぎる支援だそうだが、情けない。

 

「そ、それじゃあ転校生さん。早速行きましょう!」

 

 僅かに落ち込んだ僕の様子を見て、智花が慌てて声を張り上げた。

 良い人だなぁ……。

 

 ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 

「あ、そうだ。転校生さん、デバイス出してくれますか? クエストの受注をしなければならないので」

「デバイス?」

「えっと、これなんですけど……」

 

 と、智花は先ほどの黒い機器を取り出した。

 

「あの、貰ってないんだけど……」

「ええ!? そうなんですか? 困ったなぁ‥…デバイスがないとクエストを受けることが出来ないんですけど……」

 

 智花が困り顔になるが、僕もどうしようもない。二人して廊下に立ち尽くしていると、不意に横から声をかけられた。

 

「それなら心配ないわ」

「うわっ!?」

「宍戸さん?」

 

 目の前の少女は、僕の様子など意にも介さず、白衣のポケットから智花のそれと同じものを取り出した。……なんで白衣着てるんだろう?

 少女ははいとデバイスを僕に手渡し、じっと見つめてくる。

 

「あなたが転校生……魔力を受け渡すことの出来る唯一の魔法使い……」

「えっと……」

「これからクエストなのね。……あなたには学術的価値がある。どういう体質なのかとても興味があるわ。だから、生きて帰ってきてね」

 

 そういうと、その少女は立ち去った。

 ……まあ、取りあえずデバイスを手に入れた。

 

「あ、今の人は、宍戸由希さんで……えっと、とにかく凄い人なんです!」

「凄い人……うん、なんか見た目から科学者って感じだね」

「そうなんです。詳しいことは知らないんですけど……あ、取りあえずクエストを受けちゃいましょうか」

 

 デバイスを智花の言うとおりに操作し、クエストを受注した。

 そして早速クエストに向かう。

 校門にいく途中に何やら店らしきものがあった。さっきまで閉じていたのだが、今開いたらしい。

 

「あれはMOMOYAです。えっと、要するに購買ですね」

「なるほど」

「あ、そうだ。折角なのでクエPを買っていきましょうか」

「……え?」

「クエストポーション、です。長いのでだいたいの人はクエPと呼んでいますね」

「……それはなんなの?」

「え? えっと……よく分からないんですけど、でも、クエストに行くときには飲まなきゃだめなんです!」

「ええ……」

 

 なんだそれ。

 取りあえず進路をももやに向ける。

 

「ももやへようこそー!」

 

 店に入ると元気な声で迎えられる。声の主を見ると、どうやら僕たちと同じ学園生の女の子のようだ。

 

「あ、智花ちゃん、と……」

「こんにちは、ももちゃん。この人は転校生さんだよ」

「あなたが転校生さんなんですね。えっと、智花ちゃんと同じ学年ってことは、先輩ですね!」

「よろしく。えっと、ももさん?」

「桃世もも、です。ももって呼んでください」

「うん。よろしく、もも」

「はい!」

 

 元気よくて明るい子だなぁ。桃色の髪がお辞儀にあわせてふわっと揺れる。この子もかなり可愛い人だ。

 

「ももちゃん。私たち、クエPを買いに来たんだけど、ある?」

「勿論です! 今取ってきますね」

 

 そう言ってももはパタパタと奥へ走っていった。どうやら店頭には置いてないらしい。

 

「クエPの他に、レイドポーションやバトルポーションもあるんです」

「そうなんだ」

 

 ポーションってなんなんだと思うが、僕以外は疑問を感じていないようだ。それなら僕も気にしないが吉なのだろう。

 

「む? そこにいるのは智花と……」

「あ、おはよう怜ちゃん。この人は転校生さんだよ」

「ああ、君が噂の転校生か」

 

 声をかけてきた目の前の少女は智花の友達のようだ。腰まで伸びた艶やかな黒髪、色白できれいな肌、そして所作がとても流麗で、いかにもな和風美人だった。

 その少女が近寄ってくる。

 

「初めまして、転校生。私は神凪怜だ。転校生とは同い年だったな。怜と呼んでくれていい」

「初めまして。これからよろしく、怜」

「ああ。ところで二人は……早速クエストに行くのだったな。くれぐれも気をつけてくれ」

「うん。ありがとう怜ちゃん」

「ではまた」

 

 去っていく後ろ姿がやけに様になっている。かっこいい人だなぁ。

 

「怜ちゃんと夏海ちゃんは、私と同時期に入ってきたんです。なので、とっても仲良しなんですよ」

「なるほど、だから二人には敬語じゃないんだね」

「あぅ……えっと、別に転校生さんとも仲良くなりたいって思ってますよ?」

「あ、いや、無理はしなくて良いから」

 

 どうやら皮肉に聞こえてしまったようだ。慌てて言い繕う。

 

「クエP持ってきました!」

「ありがとうももちゃん。お仕事頑張ってね」

「はい! ありがとうございましたー!」

 

 目当てのものが買えたので、店を後にする。いよいよ初クエストだ。

 やや緊張しながらも、デバイスの指示する場所へ向かおうと校門を抜けて一歩を踏み出した。

 

「あ、クエP忘れずに飲んでくださいね!」

「あ、うん……」

 

 決まりらしいので、クエPを手に取る。観察してみると、青色がかっていてラムネのように見える。

 ちらりと智花を窺うと、ぐいっと一息に飲んでいた。元気ハツラツオ○ナミンCとか続きそうな感じ。

 

「転校生さんも早く飲んでください。美味しいですよ」

 

 美味しいのか……。

 意を決してぐいっと一気にあおった。

 

「どうですか?」

 

 うん、ラムネだね。確かに美味しい。しかし特に身体には変化がない。ただの栄養ドリンクの可能性が高い。……ん?

 

「では、出発です!」

「……おー!」

 

 どことなくテンションが上がってきたような……。い、いや、まさかね……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。