問題児たちと天空の御子が来るそうですよ?   作:皐月の王

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VSペルセウス

飛鳥と二手に分かれた十六夜達は、飛鳥と対照的に息を殺し状況を伺っていた

 

「……飛鳥は上手くやってるみたいだね」

 

「うん、1階から水の音と男の悲鳴が聞こえる」

 

宮殿の柱陰に隠れ、耳を澄まして周囲の気配を探る耀、少しの間と共にピクリとも反応する耀

 

「人が来る。皆は隠れて」

 

耀は緊張した声で警告する。いかに見えないといえど、物音と匂い迄までは消せない。耀の高性能の五感は不可視のギフトに対抗する唯一の対抗手段だ。獣のように腰を落とした耀は、見えない敵に奇襲を仕掛け、後頭部を強打する。騎士は何故居場所がバレたのか分からずに気絶する。倒れた騎士から兜が落ちる。

 

「この兜が不可視のギフトで間違いなさそう」

 

「ホレ、御チビ。お前が被っとけ」

 

「わっ」

 

十六夜が兜を拾い上げてジンの頭に乗せようとすると

 

「連中が不可視のギフトを使っているのを限定しているのは安易に奪われないためだと思う。最低でもあと一つ贅沢を言えば三つ欲しいかな」

 

「なるほどな、おい、御チビ。作戦変更だ。俺と春日部と天音で透明になっているやつを叩く。ギフトを渡せ」

 

「は、はい」

 

ジンが十六夜に手渡す。兜を付ける前に、耀に確認する。

 

「前哨戦をちまちまやっていても埒が明かない。本命はルイオスだ。春日部と天音には悪いけど」

 

「気にしなくていいよ」

 

「うん、大丈夫」

 

フルフルと頭を振る耀と楽しそうに言う天音、天音もルイオス戦での戦力の一部だが、必要とあらば春日部と似た役割も担うつもりだ。

 

「悪いな、いいとこ取りみたいで。これでもお嬢様や春日部、天音には感謝してるんだぞ。今回のゲームなんかは、ソロプレイで攻略出来そうにないし」

 

「だから気にしなくていい」

 

「埋め合わせは任せるね十六夜」

 

天音はイタズラぽく埋め合わせを要求する。思わず哄笑をあげそうになるが、今はそんな場合じゃない。

 

「御チビは隠れておけ。死んでも見つかるな」

 

「はい」

 

十六夜の姿が消える、天音は物陰に隠れる、ルイオス戦の予備戦力と言うのあって春日部と同じ役割を担うつもりだが見つかる確率は下げておきたいのだ

 

「いたぞ! 名無しの娘だ!」

 

「これで敵の残りは三人だ!」

 

「よし、その娘をとらえろ!人質にして残りを炙り出せ!」

 

耀に襲いかかる騎士達、それを姿を消した十六夜が白亜の宮殿の外まで殴り飛ばす。

 

「邪魔だ!」

 

殴り飛ばされた騎士達は悲鳴をあげながら壁を幾層も突き破り、揃って第三宇宙速度で吹き飛ばされていく

 

「相変わらずすごいなぁ」

 

天音はその様子を見ながら言う。十六夜が味方でよかったと心底思ってる

 

「どうだ、春日部。分かるか?」

 

「ううん……飛鳥が暴れている音や、ほかの音が大きすぎてちょっと……わ!?」

 

「耀!?」

 

突然、前触れもなく耀が吹き飛んで壁に叩きつけられる。十六夜は即座に反対方向に蹴りを入れるが空をきるだけだ。おかしいのは "春日部耀の五感を以てしても接近に気づけなかったことだ"

十六夜にしても、そんなに近くに人が居るのに居る人間を感知出来ないのは不自然だ

 

「十六夜!レプリカじゃなくて本物を」

 

天音はすぐに察した、春日部が反応出来なかったのと、その距離で感知出来なかった十六夜を見て、一つの可能性を導き出した

 

「そのようだな、春日部!一度引くぞ!」

 

倒れた春日部を抱き上げる。だが姿が見えない敵は、それを見計らったように十六夜を襲う。姿の見える耀を抱きあげれば、自然と十六夜の位置を把握出来てしまう。巨大な鈍器らしいもので横薙ぎに飛ばされる十六夜は兜を抑えながら痛烈に舌打ちする

 

「危ねぇなおい!兜が取れるところだったぞクソッタレ!カウンターでも入れてやろうかと思ったのにほんとに感知出来ねぇ」

 

「十六夜、私に任せて」

 

天音が言う、天音の瞳には策ありと言う色を浮かべている

 

「なんだ天音、方法があるのか?」

 

「うん。十六夜達は隠れてて、あとルイオス戦任せるね!」

 

天音は物陰から飛び出る、十六夜達と入れ違いになるように、天音は部屋の中央、吹き抜けになっているところで陣取る

 

「十六夜は耀を連れて少し奥の通路まで戻ってて」

 

「ああ、面白そうなものが見れなくて残念だが良いぜ!」

 

「(あいつなんのつもりだ?だがここで潰しておく!)」

 

目に見えない的は標的を天音に切り替える、その瞬間天音は言う

 

「ハデスの隠れ兜ってさ、透明になるギフトであって透過になるギフトじゃないよね?」

 

右手をあげると、手の上……いや吹き抜けのところから雨が降り注いでくる。この雨で、天音の居る付近は濡れる、当然仕留めようと近くにいた騎士も濡れる、さらに続ける

 

「水はね純水じゃないと電気を通すんだって、雨が純水な訳ないよね?」

 

「(まさか!こいつ!)」

 

騎士は周りを見る、濡らして足音音を出させるための雨じゃなく、濡らして感電させるための雨だった

 

「じゃあ……死なない程度にLet's Party!」

 

右足をあげ神雷を出し濡れてる地面に落とす、水を伝い、見えない騎士を撃ち抜く

 

「ぐああああああ!?!?」

 

思わず絶叫をあげる騎士。目には見えないが絶叫をあげれば分かる。天音は叫び声がするところ目掛け蹴りを入れる。鎧を砕く手応えもバッチリあり天音は虚空の存在の騎士を感じ取り兜を剥ぎ取り言う

 

「少し無理やりすぎたけど、これでいいかな……はぁびしょびしょだよ……」

 

そんなことを呟きながら十六夜達を呼び戻す、水は電気分解して後処理をした

 

「手に入れたみたいだな天音、すごい音が鳴ってたが……何で濡れてんだよ何したんだ?」

 

「それは内緒だよ、私には挑戦権無いし、ジン君の分と十六夜の分があれば十分でしょう」

 

天音は十六夜に兜を渡す

 

「ああそうだな、サンキュな天音」

 

「どういたしまして、耀 大丈夫?あんなもので殴られてたけど」

 

天音は鈍器を見ながらいう

 

「大丈夫、天音は十六夜の護衛お願い、ここは私に任せて」

 

「分かった!急ごう十六夜!」

 

「ああ!」

 

二つ目の不可視のギフトを手に入れ、天音が先陣を切り、騎士を薙ぎ払い、3人は宮殿の最上階に着く、最奥は闘技場のように簡素な造りだ

 

「十六夜さん、天音さん、ジン坊ちゃん………!」

 

最上階で待ってた黒ウサギは安堵したように三人の姿を確かめて息を漏らす。

眼前に開けた上空には膝まで覆うロングブーツから対の光る翼で空を飛んでいるルイオスが居た

 

「ふん。ほんとに使えない奴ら、今回の一件でまとめて粛清しないと。まあでも、これでもコミュニティが誰のおかげで存続できているか分かっただろうね。何はともあれようこそ白亜の宮殿・最上階へ、ゲームマスターとして相手しましょうあれ?この台詞言うの初めてかも?」

 

それは全て騎士達が優秀だったからだ。今回のように準備が伴わない、突然の決闘でなければ、十六夜達の目論見通りに事は進まなかっただろう

 

「ま、不意を打っての決闘だからな。勘弁してやれよ」

 

「フン。名無し風情を僕の前に来させた時点で重罪さ」

 

ルイオスはギフトカードから炎の弓を出して構える。

 

「炎の弓?ペルセウスの武器で戦うつもりは無い、という事でしょうか?」

 

「飛べるのにどうして同じ土俵で戦わなきゃいけないのさ。それにメインで戦うのは僕じゃない。僕はゲームマスターだ。僕の敗北はそのまま"ペルセウス"の敗北になる。そこまでリスクを負う様な決闘じゃないだろう?僕の代わりに戦うのはコイツさ」

 

ルイオスは首のチョーカーについてる装飾を引き千切ると投げ捨て、獰猛な表情で叫んだ

 

「目覚めろ。アルゴールの魔王!」

 

光が褐色に染まり、四人の視界を染めていく。白亜の宮殿に共鳴するかのような女の声が響き渡った

 

「GYAAAAAAAAAAaaaaaaa!」

 

現れた女の発する声は中枢を狂わせるほどの不協和音で人の言葉とは程遠いものだ、女は拘束ベルトを引きちぎり、半身を反らし更なる絶叫をあげる

 

「ra、GYAAAAAaaaaaa!!」

 

「な、なんて絶叫を」

 

「避けろ!黒ウサギ!!」

 

えっ、と硬直する黒ウサギ。頭上めがけ岩塊が山のように落下する、が岩が跡形もなく爆発する、よく見る矢が命中し岩を砕いていた

 

「大丈夫!?黒ウサギ、ジン君」

 

黒ウサギは天音の方を見る、天音の手には弓が握られていた、弦は青く光り弓の放つ所は筒のような装飾が施されている。黒ウサギはそれが神格の武具だとわかる

 

「神格の武具!?他にもあるのですか!?その弓はまさか」

 

「飛べない人間は不便だよね。落ちてくる雲も避けれないんだから」

 

「石化のギフト……ね……」

 

天音は肩をすくませながら、弓を直す

 

「今頃君たちの仲間と部下どもは石になってるだろうさ。ま、無能にはいい体罰さ」

 

十六夜達が石になっていないのは、ルイオスの遊び心だろう、ようやっと訪れた初めての挑戦者。すぐに終わらせては勿体無い。吐く軽口より、内心の闘志は遥かに高まっているのだろう

 

 

「目論見が外れたな。レティシアが戻れば魔王に対抗できると思ったんだろうが、肝心のレティシアは使えない。どうする、例の作戦止めるか?」

 

「……ですが、僕たちにはまだ十六夜さんと天音さんの2人がいます。貴方達が本当に魔王に勝てる人材だと言うのなら、この舞台で僕達にそれを証明してください」

 

「OK。よく見てな御チビ」

 

「じゃあ私は観戦でもしてよ、挑戦権無いからね、頑張って十六夜!」

 

「おう!任せておけ」

 

十六夜は余裕そうに右手をあげて言う

 

「はっ!名無し風情が、後悔するがいい!」

 

いざここに、十六夜とルイオス&アルゴールの魔王との戦いが始まった。

十六夜は真正面からアルゴールとぶつかり合う。押し合いになったのは僅か一瞬。アルゴールは耐え切れず押し切られ、その場でねじ伏せられる。

 

「ハハ、どうした元・魔王様!今のは本物の悲鳴みたいだったぞ!」

 

獰猛な笑顔でねじ伏せ、さらに腹部を幾度も踏みつける。それだけで闘技場に亀裂を発生させ白亜の宮殿を砕く程の力だ。ハルパーを片手に疾駆するルイオスを下半身を捻った勢いで蹴り上げる、第三宇宙速度以上で吹き飛ばしたルイオスに十六夜は跳躍して一瞬で追いつき

 

「どうした?翼があるのに不便そうだな?」

 

「貴様っ!」

 

怒りに任せハルパーを振りかざすが、十六夜は受け止め、地面めがけ投げ飛ばす、ルイオスはアルゴールと重なるように叩きつけられた、二つの呻き声、ルイオスは

 

「き……貴様、本当に人間か!?いったいどんなギフトを持ってる!?」

 

「ギフトネーム・ "正体不明" ーーん、悪いなこれじゃわからないか」

 

 

「……もういい、アルゴール。宮殿の悪魔化を許可する!奴を殺せ!」

 

ルイオスの命令に従うようにアルゴールは絶叫する。すると黒いしみがアルゴールを中心に広がり、あたりからいろんな魔獣を生み出す。

 

「確か伝承じゃゴルゴーンにはそんな力あったな」

 

「そうだ!これが数々の魔獣を生み出したゴーゴンの特性!お前の相手は魔王とこの宮殿そのものだ!逃げ場はないものと知れ!」

 

「そうかい……ならこの宮殿ごと壊せばいい話だな?」

 

 

「「え?」」

 

ジンと黒ウサギは嫌な予感がした。天音の行動は早く、二人を抱き抱える。十六夜は無造作に拳を振り下ろし宮殿に叩き込む。闘技場が崩壊し瓦礫は四階を巻き込んで三階まで落下する。その様を、天音に抱き抱えられた状態で黒ウサギとジンは息を呑む、翼を持つルイオスも同様だった。闘技場には常時防備結界がはられているそれこそ、山河を打ち砕く程の力がなければ……

 

「……馬鹿な、どういう事だ、奴の拳は山河を撃ち砕くほどの力があるのか!?」

 

「どうした?もうネタ切れか?」

 

ルイオスは悔しそうな顔を浮かべるがすぐに真顔に戻った。

 

「もういい、アルゴール。終わらせろ」

 

石化のギフトを解放した。星霊・アルゴールは謳う様に不協和音と共に、褐色の光を放つ。これこそアルゴールを魔王に至らしめる根幹。天地に至るまで全てを褐色の光で包み、灰色の世界へと変えていく星霊の力、褐色の光に包まれた十六夜は真正面から捉え

 

「……ゲームマスターが狡い真似してんじゃねぇ!!!」

 

その光を踏み潰した、アルゴールの放つ光をガラス細工の様に砕いたのだ

 

「ギフトを破壊した!?黒ウサギあれほどの力を持ってギフトの破壊はできる?」

 

「有り得ません!あれだけの身体能力がありながらギフトを破壊するなんて!」

 

「(そういう事か、ギフトカードがエラー起こしたのではなく、十六夜のギフトが査定を壊したのか……だけどそれを両立する魂……矛盾だけど存在している。まさに……"正体不明")」

 

天音は冷や汗を書きながら十六夜の方を見る。

 

「さぁ、続けようぜゲームマスター。次はどんな手を使うんだ?」

 

「もうこれ以上のものは出ないと思います。アルゴールが拘束具で繋がれてる時点で察するべきでした。ルイオス様はアルゴールを支配するにはまだ未熟すぎるのです」

 

ルイオスは悔しそうにした俯く。

 

 

「ああ、そうだ。もしこのまま負けたら……お前達の旗印。どうなるかわかってんだろうな?」

 

「な、なに?」

 

「このゲームでお前たちの旗印を手に入れたら、今度は旗印を盾にもう一戦申し込む。そうだな、次は"ペルセウス"の名前を頂こうか」

 

ルイオスは恐怖に顔を歪め怯える。

大方、"ノーネーム"になった自分たちを想像したんだろう。

 

「その二つを手に入れたあと"ペルセウス"が2度と箱庭で活動出来ないように、徹底的に、徹底的だ、泣こうが怒ろうが、喚こうが、コミュニティの存続が出来ないようにな」

 

「や、やめろ……!」

 

ここで負ければ旗印が奪われる。そうなれば "ペルセウス" は決闘を断ることをできない。今の状況で戦うなど不可能だ。ルイオスは自身のコミュニティが崩壊の瀬戸際に立たされているのに気づく

 

「そうか。嫌か。なら方法はひとつしかないよな?」

 

一転して凶悪さが消えにこやかな笑顔で言う

 

「来いよ、ペルセウス。 命懸けで俺を楽しませろ」

 

獰猛な快楽主義者は両手を広げゲーム続行を促す、自ら招いた組織の危機にルイオスは覚悟を決めて叫ぶ

 

「負けてたまるか!奴を倒すぞ アルゴオォォォォォル!!」

 

二人を下ろした天音は、小さく口角を上げ、小さく呟く

 

「……ゲームセット、今度は戦う時は私ね」

 

そう言いレティシアの石像を慎重に回収した。

 

 

 

 

 

 




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