十六夜が私のことを知らない………笑えない、逆に震えるよ……だけど、十六夜は操られているわけでも記憶を操作されてる感じじゃない。明確に意思があり、後ろの少女 『凪咲』と対峙してた私を敵として認識している。
「何があったの!?凪咲さん」
「これをやったの貴女なの?」
出入口から、飛鳥と耀も出てくる、疑問は確信に近づく、そうか……見慣れたノーネームの本拠、見慣れたいつものメンバー、ただ一人 『凪咲』と言う少女を除いて。ここの箱庭は、私の知る箱庭と異なる箱庭というわけか。合点がいって悪夢を思い出す
"お前は一生孤独だ" 嗚呼まさに一生じゃないにしろ、ここに私の味方はいない
「そう見たいだぜ、お嬢様、春日部、俺達の仲間に手を出したんだ覚悟してもらわないとな」
「ええそうね、凪咲さんを傷つけた貴女を捨て置くわけにはいかなわいね」
「覚悟してね」
あはは……やっぱり理解しても堪えるものがある…… 体は動くし……致命傷になり得たのは十六夜の一撃だけ。でも私は戦いたくない。見知った顔の相手を殴り飛ばすなんてことは……
「行くぞオラ!」
十六夜は第三宇宙速度で迫り右腕を振りかぶる。考える暇なんてない
「当たるわけには行かない……」
「"そこを動くな"!」
回避行動を取ろうとすると動けなくなる。これは飛鳥の威光。私にはさほど効果は無いけど、確実に一瞬は止まる、回避行動出来ず十六夜の一撃を貰う
「ッ!………」
咄嗟に後ろの飛び、威力を逃すが飛んだ方向に
「はぁ!」
グリフォンの旋風を足に纏わせ重さを像にして蹴りこんでくる耀
「なんの!」
私はギリギリで受け流す。
「容赦がないね全く……」
「手を抜く必要性が何処にあるんだよ!」
「そりゃそうだね」
戦う気は無い、だから受け流す、だけど怒ってる十六夜の攻撃は私の反応を超えた、腹部を強打し、止まったところを耀が旋風のギフトで舞い上がらせて、十六夜が殴りに来る。回避行動の余裕は無い。防御だ、腕を交差させ防御する。山河打ち砕くであろう一撃は重く地面に叩きつけられる
「グッ……!」
吐きそうになる、嗚咽をする、息ができない……頭で分かってても、辛い……知ってる人に知らない人扱いされ、殴られるのは辛い、小さな傷は増えてきてるけど、致命的な一撃は最初の一撃だけ。だけど自分でもわかるように、精神的にも、さっきの戦いのダメージがないわけでもない。でもそんなのがどうでもよくなることがひとつある。凪咲という少女が思い詰めた様子でこっちを見ている。まるで自分のせいでこうなったとでも言いたげな、私は知ってる、あの悪夢は彼女の悲鳴そのものだ "お前も一生孤独だ"は彼女が孤独だったからだ、理不尽に振り回された、かよわい少女の悲鳴……私なんかが想像出来ないものを味わったに違いない。だから私は伝わらなくとも、彼女に伝えなくては
「君は……何も悪くない……ただ間が悪かっただけ……巡り合わせが良くなかっただけ……もう十分不幸だったでしょ?抱え込まなくとも……こんなにも思ってくれる人がいるじゃん、頼ればいいんだよ……」
「ねぇ様子おかしくない?春日部さん」
「うん、凪咲と戦ったんだったらもっと、攻撃してくると思ったけど、あの人私たちとは戦いたくないみたい」
「ええ、そう思うわ、なにか理由が」
飛鳥と耀がそんな事を話してる。考えてくれてるのかな……でも
「そんなの関係ねぇ、凪咲に手を出したんだ……俺からしたらそれだけで倒す理由があるんだよ!そっちの理由なんて知ったことか!」
「ッ!」
会話に気を取られ一瞬のスキを生み出してしまった。十六夜から意識がそれてた、無防備に近い形で腹部の鳩尾に拳が深く突き刺さる。その一撃でも私は膝から崩れ、意識が途切れそうになる、十六夜の後ろから
「十六夜ダメ!その人は!」
その先から意識が途切れる。
夢を見た、いつもの先祖の夢と元の箱庭の夢を、嗚呼随分懐かしく思えるものだった。大切な場所、大切な人達、大切な時間。文字通り宝なのだろう。
目が覚めると、白銀の少女が私の手を握り眠っていた。
「……苦労していたんだね、凪咲さん」
ふと手が伸び優しく頭を撫でていた。きっと妹がいたらこういうものだろうかと考えながら
「……目が覚めた?」
少女が目を覚ました、私はびっくりして撫でるのをやめてしまう。
「うん、本当にさっきはごめん、体が咄嗟に反応したとはいえ攻撃してしまって、貴女を傷つけてしまった本当にごめんなさい」
私は彼女に謝罪する、これは大事なことだ、彼女は目を丸くして
「あ、謝らないでください、私のせいで貴女がこっちに来て、そして……」
「傷つけてしまった?それ以上は言わなくてもいいよ、"私"はこういうのは確かに慣れてないけど、周りに味方がいないのは経験と記憶があるし……あ、今の無しね」
「その、ありがとう、ございました、あの時、あんなふうに言ってくれて」
その意外な言葉を受けて私は笑う
「大丈夫だよ。ただ思ったことを言っただけだから、貴女は気にしなくてもいいんだよ」
私はそう言った、そうあの時、伝えなきゃと思って言った、ただそう思って
「私、みんなに、言ってないんです自分の過去の全ても、感じてきた孤独も、言ったら、みんないなくなっちゃうって思ったら、怖くて何も言えなくて今は優しいみんなも、変わってしまうかもしれないって思ったら、何が正解なのかも分からなくなって」
私は黙って聞いた、私が思うに正解なんてきっと無い。彼女の不安は周りを大切に思ってるからこそのものだろう。それとまた一人になることが怖いんだと思う。私は微笑んで優しく頭を撫でながら
「大丈夫だよ、十六夜や飛鳥達がその程度で離れたりしないよ。私が夢で、感じた孤独は君のほんの一部なのかもしれない。だけど、君も十六夜や飛鳥達を知り尽くしていないでしょ?知ったら離れるとか、知らないままならいられるとかじゃなく、本当に彼女達を君が信じて、自分を見つめられるかだよ。君の目は、迷惑かけたくないと心で言ってその実、みんなから逃げてるだけ。自分がどうでもいいと思ってる人に他人が守れるはずがない。少し難しかったかな?まぁふとした時に思い出してくれたらいいよ」
話終えると丁度いい感じに
「目が覚めたか?」
「目が覚めたようね?」
「目覚めたみたい」
十六夜達が入ってくる。私は申し訳なさそうに目を逸らす、すると凪咲さんがひとつひとつ十六夜達に説明してた。互いの勘違いから始まった戦い。そして私が別の世界の箱庭のノーネームメンバーだと言うこと
「とまぁ、私の不注意と体調管理不足からの余裕のなさで騒いでしまったみたい。ごめんねみんな」
「ええ、私も凪咲さんのところしか見てなかった訳だから、謝るのはこっちもだわ、ごめんなさい」
「うん、ごめんなさい」
「………まぁ……悪かった」
「ううん、大丈夫だって、こっちでは十六夜と凪咲が付き合ってるんだね、いやーお熱いねぇ」
「ッ!なんでそれを!」
「見れば分かるよ、と言うかわかりやすい」
凪咲は顔を真っ赤にしながら慌てる
「じゃあそういうお前は、そっちの俺とどういう関係なんだ?」
十六夜が私とこっちの箱庭の十六夜がどういう関係か知りたいみたい……どういう関係と言われても、
「うーん、仲間で友人だよ、本当だよ?」
その直後、体が軽くなり、光の粒子のように溶けていく。それはまるで消滅……いや違う。引き戻されてるのかな
「嗚呼、夢の終わりか……良くも悪くもいい経験だったよ……でもこの消え方は嫌だなぁ、体の感覚とかも消えそうな感じ……でもこれを自らの意思でできたら……」
そんなことをブツブツいいながらベットから出て立って言う
「とりあえず、異世界交流はここまでみたいだね。凪咲は周りを見ること、十六夜は凪咲を泣かせない事。……そんなんかな? じゃあね、寂しがり屋の影使い凪咲今度会う時が楽しみだね」
「待って!名前は!」
凪咲が私の名前を問いかける、そう言えば名乗ってなかった。私は某仮面ラ〇ダーの決めゼリフぽく
「私は通りすがりのノーネームメンバー八神天音!それじゃあバイバイ」
そして意識が途切れ目の前が白くなる
「……私の部屋だ……」
「あ、起きましたか!?天音さん!」
目を覚ますと、近くに黒ウサギが居た
安堵の表情をしている
「どうしたのさ黒ウサギそんなに慌てて?」
「どうしたもこうしたもないですよ!天音さんどんなに呼びかけてもピクリとも反応しなかったんですよ!?皆さんは書庫で治す方法を探してます!皆様を呼んできます!」
脱兎の如く、黒ウサギは慌ただしく出ていった
「……帰ってきたんだ……よかった……記憶とか消えなくて」
あんな貴重な体験忘れたくはない、けど精神的には参った面もある
このあと三人にいや黒ウサギやレティシア達に話を聞いたら、私はまる二日眠りっぱなしだったらしい。
「もう大丈夫なのかよ、天音」
「うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね?」
「ああ、そうだな大分心配したぜ」
ヤハハと笑う十六夜、私も可笑しくて笑っていた。私だけが体験した異世界の箱庭、また何時か会えると思う。凪咲にその日が楽しみだ
「心が踊る」