「噴水広場の近くに来ると思うのだけど……二一〇三八〇外門のある悪趣味なコーディネートは、いったい誰がしてるの?」
飛鳥は不快そうに外門に視線を向ける。外門と箱庭の内壁の繋ぎ目で石柱には、巨大な虎の彫像が掘り起こされており、門の上部には今は亡きコミュニティ "フォレス・ガロ" の虎の旗印がある。
「箱庭の外門は地域の権利者がフロアマスターの提示するギフトゲームをクリアすることで、コーディネートする権利を得ます。一種のコミュニティの広告塔の役割もあります」
「そう……それであの外道の名残が残っているのね」
不機嫌そうに髪をかきあげる飛鳥。気を取り直し
「それで、北側までどうやっていけばいいのかしら?」
飛鳥は以前に黒ウサギから貰った深紅のドレススカートを着用している。飛鳥自身も普段着にドレスはどうかと思ったが慣れればそんなものだ。箱庭では突拍子もない姿をしている者もいるのだから。本人も違和感を感じなくなってきたのだ。その隣の耀は小首をかしげながら
「んー北にあるんだから、兎に角きたに歩けばいいじゃないかな?」
無計画にも程がある耀の提案を聞いた一同は苦笑する。耀の服装は召喚された時と代わり映えせず、シャツ・ジャケット・ショートパンツ・ニーハイソックス・ブーツと全く色気がない組み合わせだ唯一お洒落にあとはブーツのアンクレットだ黒ウサギから貰ったギフトらしい。その耀の隣で十六夜がジンに問う
「で、我らのリーダーは何か言い案はないのか?」
ニヤニヤと見下ろす十六夜は着古した紺の制服とヘッドホンを首にかけたまま、天音も服装は黒いワイシャツに黒いブレザーの制服にヘッドホンを首にかけた状態だ二人は、一二を争う簡素な服装だ。ジンはダボダボのローブを着たままため息をつく
「予想してましたけど……もしかして、北側の境界壁までの距離を知らないのですか?」
「知らないけど、そんなに遠いの?」
天音は怪訝な表情で返す。ジンは頭が痛そうに抱える
「……なら説明する前に聞いておきますね。この箱庭の世界が恒星級の面積だという話は知っていますか?」
「……?え、恒星?」
素っ頓狂な声を上げる飛鳥、表情を変えないまま瞬きを三回する耀、首肯する十六夜と天音。十六夜は眉を顰めながら聞く
「それなら黒ウサギから聞いた。けど箱庭の世界は殆どが野ざらしにされているって聞いたぞ。大小あるがこの都市以外にも街はあると」
「有りますよ。しかしそれを差し引いても、箱庭都市はこの世界最大規模の都市。箱庭の世界の表面積を占める比率はほかの都市とは比べ物になりません」
「比率?」
ジンの勿体ぶった話し方に飛鳥達は不穏な気配を感じる。
「仮に、箱庭の世界の表面積が太陽と同等と仮定した場合は地球の一三〇〇〇倍バカバカしいよ」
天音は口に出しながらも馬鹿らしいと肩をすくめる
「まさか、恒星の1割位を都市部が占めている……なんて馬鹿なことは言わないだろうな?」
「さ、流石にありえませんよ。比率と言ってもその数字は極小数になります。この場所から北側の境界壁までは少し北寄りなので大雑把なら………980000Kmぐらいかと」
「「「「うわお」」」」
四人は同時に様々な声音で。嬉々とした、唖然とした、平淡な声を上げた。
~その頃のコミュニティ~
「食堂にはいなかったよ!」
「大広間、個室、貴賓室、全部見てきた!」
「貯水池付近もいないっ!」
「お腹すいた!」
「それはまた後でな。……金庫の方は?」
「コミュニティのお金に手を付けていません。皆さんの自腹では境界壁まで向かうことができませんから、外門付近で捕まえれることが可能です!」
「なら、黒ウサギは外門へ向かえ。
捕まえれなくとも"箱庭の貴族"のお前なら境界門の起動に金はかからない。私は"サウザンドアイズ"の支店に向かう。招待状の贈り主が白夜叉なら無償で北の境界壁まで送り届ける可能性もあるからな」
黒ウサギとレティシアは行動を確認し合い、頷き動く
「あの問題児様方………!今度という今度は絶対に!絶対に許さないのですよ!」
黒ウサギの目にはかつて無いほどの怒りの火花が散っていた。怒りのオーラで髪を淡い緋色に染め、土埃をあげ爆走する
〜end〜
「いくらなんでも遠すぎるでしょう!?」
「遠いですよ!箱庭の都市は中心を見上げた時の遠近感を狂わせるようにできているため、肉眼で見た縮尺との差異が非常に大きいんです!」
「なるほど、呼び出された時、箱庭の向こうの地平線が見えたんだね。縮尺そのものを誤認させるようなトリック
があったわけだね」
そう彼女らが召喚された時、箱庭の都市の縮尺を見間違ったのは巨大だけでは無く、一見してして巨大な外観を持つ箱庭の都市だがよく見るとより一層巨大な都市なのだ
「そう。なら仕方ないわ。 "ペルセウス"のコミュニティへ向かった時のように、外門と外門を繋いでもらいましょう」
「……それはもしかして "境界門"のことを言っているのですか?もしそうだとしたら断固却下です! あれは起動にするのに凄くお金がかかります! "サウザンドアイズ"発行の金貨で一人一枚!五人で五枚!コミュニティの全財産を上回ります!」
皆様は子供達を餓死させるつもりなのですかーッ!! と黒ウサギがいたのなら怒られるだろう。ジンに反論され苦々しい表情で黙り込む四人
「………980000Kmか。流石にちょっと遠いな」
軽薄そうな笑みを浮かべる十六夜だが流石に打つ手がない様子。無駄な散財は避けるべきだ、だが如何に彼らでも地球の二十五個分も歩くわけも行かない
「今らな笑い話で済みますから……皆さんも、もう戻りませんか?」
「断固拒否」
「右に同じ」
「以下同文」
「絶対拒否」
肩を落とすジン。あんな愉快で素敵な挑発的な手紙を残してきた以上、彼らも引くに引けない
「思ったんだけど、この手紙出したの白夜叉でしょ?なら路銀くらい出してくれてもいいのにね」
「「「………あ」」」
天音の言葉に3人は勢いよく立ち上がり言う
「そうよ!どうしてそれが出てこなかったのかしら!そうと決まれば行くわよ!」
「おう!こうなったら駄目で元々!"サウザンドアイズ"へ交渉に行くぞゴラァ!」
「行くぞコラ」
「ちょ、ちょっと待ってよーーー」
ハイテンションな十六夜と飛鳥に続き耀はその場のノリに合わせて声を出す。ジンは十六夜はダボダボのローブをを掴まれ首を絞めながら、天音は目を丸くして遅れながら追いかけた。