問題児たちと天空の御子が来るそうですよ?   作:皐月の王

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北の支配者

五人は "サウザンドアイズ"の支店の前で止まる。桜並木の街道に立つ店前を掃除していた割烹着の女性店員に

 

「お帰りください」

 

「まだ何も言ってないよ」

 

苦笑いしながら言う天音。そう彼らは門前払いを受けていた。どうも問題児達は女性店員に嫌われている節がある。きっとファーストコンタクトに失敗したのだろう。ギフトゲームで得た金品はこの店で捌いて貰っている。

 

「そこそこの常連客なんだし、もう少し愛想良くしてくれてもいいと思うのだけど」

 

口を尖らせ講義する飛鳥

 

「常連客というものは店にお金を落としていくお客様を言うのです。何時も何時も換金しかしない者はお客様では無く、取引相手と言うのです」

 

「それもそうね。じゃあお邪魔します」

 

何気なく店に上がりこもうとする飛鳥達に大の字で塞がる店員

 

「だからうちの店は"ノーネーム"はお断りです!オーナーがいる時はともかくいmーー」

 

「やっふぉおおおおおお!ようやく来よったか小僧どもおおおおおお!」

 

和装の白髪の少女こと手紙の送り主白夜叉が荒々しく登場する。十六夜は土煙を払い女性店員に呆れながら言う

 

「ぶっ飛んで現れなければ気が済まねえのか、ここのオーナーは」

 

「…………、」

 

痛烈に頭が痛そうに頭を抱える女性店員。耀は招待状を白夜叉に見せた

 

「招待、ありがと。だけどどうやって北側に行くかわからなくて……」

 

「よいよい、全部わかっとるよ。まずは店に入れ。条件次第では路銀は私が支払ってやる。……秘密裏に話しておきたいこともあるしな」

 

目を細める白夜叉、最後の言葉だけには真剣な声音が宿る。

 

「それは楽しいこと?」

 

「さて、どうかの。まあおんしら次第だな」

 

意味深に話す白夜叉。四人はジンを引きずりつつ、嬉嬉として暖簾をくぐる。中庭からざしきに招かれた

 

「さて、本題に入る前にジンよ。おんしに聞きたいことがある。"フォレス・ガロ"とのギフトゲーム以降おんし達が魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂を耳にしたのだが、真か?」

 

白夜叉は厳しい表情を浮かべ、ジンを見据え問う、それに飛鳥は

 

「ああ、その話なら本当よ」

 

飛鳥は正座したまま首肯する。白夜叉が小さく頷くと、視線をジンに移し再度問う

 

「ジンよ、それはコミニティのトップの方針か?」

 

「はい。名も旗印が無い僕たちにはこうしてコミュニティの存在を広めていくしかありませんから」

 

「リスクは承知の上なのだな?」

 

「覚悟の上です。それに仇の魔王からシンボルを取り戻そうにも、今の僕たちでは箱庭の上層に行くことができません。ですから僕たちの名と旗印を奪った魔王に出向いてもらい迎え撃つつもりです」

 

「無関係な魔王と敵対するかもしれんがそれでもか?」

 

「それこそ望むところだろ。倒した魔王を隷属させ、より強い魔王に挑む……さらに打倒魔王を掲げてる、箱庭世界でもこんなにもかっこいいコミニティは無いだろ」

 

上座から前傾に身を乗り出しさらに切り込む白夜叉に十六夜は茶化して言う。だが、目は笑っていない

 

「ふむ」

 

しばし瞑想すると、呆れた笑みを浮かべ

 

「そこまで考えとるなら良い。これ以上の世話は老婆心というものだろう。では、打倒魔王を掲げたコミュニティに東のフロアマスターとして正式に依頼をしよう。よろしいかな、ジン殿?」

 

「は、はい!謹んで承ります!」

 

子供を愛でるような物言いでは無く組織の長として言い改める白夜叉

 

「まず、北のフロアマスターの一角が世代交代した。急病で引退とか。まぁ、亜龍にしては高齢だったからのう。寄る年波には勝てなかったと見える。此度の大祭は新たなフロアマスターである、火龍の誕生祭での」

 

「「龍?」」

 

龍の部分に十六夜と耀が反応した。キラリと光る期待の眼差しだ。

 

「ところでおんしら、階層支配者についてどのぐらい知っておる?」

 

「私は全く知らないわ」

 

「私も全然知らない」

 

「俺はそこそこ知ってる」

 

「右に同じく、簡単に言うと、下層の秩序と平和を見守る守護者ですよね」

 

階層支配者とは下層の秩序と成長を見守る連中で箱庭内の土地の分割や譲渡、コミュニティが上位に移転できるかを試すのにギフトゲームを行うなどの役割がある。そして秩序を乱す、天災・魔王が現れたら率先して戦うといった義務がある。それと引き換えに主催者権限が与えられてるそうだ。

 

「しかし北は鬼種や精霊、悪魔といった種が混在した土地なので、それだけ治安が良くないのです。そのため、マスターは複数存在します」

 

「けど、そうですか。"サラマンドラ"とはかつては親交はあったのですが、頭首が替わっていたとは知りませんでした。今はどなたが頭首を?やっぱり、長女のサラ様か、次男のマンドラ様が」

 

「いや。末の娘のサンドラだ」

 

その名前にジンが身を乗り出して驚く。

 

「サ、サンドラが!?そんな、彼女はまだ十一歳ですよ!?」

 

「ジン君だって十一歳で私たちのリーダーじゃない」

 

「それはそうですけど……いえ、ですが」

 

「なんだ?御チビの恋人か?」

 

「ち、違います!」

 

ヤハハと茶化す十六夜と飛鳥に怒鳴るジン、天音が続きを促す

 

「それで私達は何をすればいいの?」

 

「そう急かすな。実は今回の生誕祭だが、北の次代マスターであるサンドラのお披露目も兼ねている。しかしその幼さゆえ、東のマスターである私に共同の主催者を依頼してきたのだ」

 

「あら、それはおかしな話ね。北のマスター達は他にもいるのでしょ?ならそのコミュニティにお願いして共同でしたらいいのに」

 

「うむ。まぁ、そうなのだが」

 

白夜叉が歯切れ悪く話す。ポリポリと頭をかいて言いにくそうにしてると十六夜が助け船を出す

 

「幼い権力者を良く思わない組織がある……とか、在り来たりにそんなところだろ?」

 

「まぁ、そんなところだ」

 

十六夜のセリフに肯定も否定もしない白夜叉。飛鳥の表情は不愉快そうに歪んでいた。瞳は目に見えるほどの怒りと落胆の色が浮かんでいる

 

「そう……神仏集う箱庭の長たちでも、思考回路は人並なのね」

 

「うう、実に手厳しい。だが全くもってその通りだ。実は東のマスターである私に共同祭典の話を持ちかけてきたのも、様々な理由があってだ」

 

「待った、白夜叉その話はまだ長くなる?」

 

天音がなにかに気づいたらしく話を制す

 

「ん?そうだな、短くとも後1時間ぐらいかの」

 

 

「それはまずいかも。……黒ウサギ達に追いつかれるかも」

 

 

 

耀の言葉で十六夜と飛鳥も気づいたらしく少し慌てる。ジンも気が付き立ち上がる。

 

「し、白夜叉様!どうかこのまま」

 

「飛鳥!」

 

「わかってるわよ!ジン君『黙りなさい!』」

 

天音は飛鳥の名前を呼び指示する飛鳥もそれを理解しギフトでジンの口を無理やり閉じる

 

「白夜叉!今すぐ北側へ向かってくれ!」

 

「構わんが内容を聞かずによいのか?」

 

「構わねぇ!事情は追々話すし、何よりそっちの方が面白い!保障する!」

 

十六夜のセリフに白夜叉はニヤリと笑う。

 

「そうか。面白いか。いやいや、それは大事だ!ジンには悪いが面白いなら仕方ないのぉ?」

 

白夜叉は悪戯ぽい横顔に、声にならない悲鳴をあげるジン。暴れるジンを抑える天音と十六夜。白夜叉が両手をパンパンと二回叩く。

 

「これでよし。北側へ着いたぞ」

 

「「「「………………は?」」」」

 

ジンを縛り上げながら素っ頓狂な声を上げる四人。北側までの距離は980000Kmと言うばかげた距離をいまの僅かな柏手で? ……と言う疑問は一瞬で過ぎ去り、四人は期待を胸に店外へ出た

 

 

 

 




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