これからもよろしくお願いします
四人が店から出ると、熱い風が頬を撫でた。いつの間にかに移動した支店からは街の一帯が展望できる。しかし眼前の景色はよく知る街ではない。
「赤壁と炎と……ガラスの街……!?」
飛鳥は大きく息を呑む。胸を躍らせるように感嘆の声を上げる。東と北を区切る、天を衝くほどの壁が境界壁だ。鉱石で彫像されたモニュメント、ゴシック調の尖塔群のアーチ、巨大な凱旋門、色彩鮮やかなカットグラスで飾られた歩廊。
「凄い……!980000Kmも離れてるだけでこんなにも違うなんて、東とはまた違った文化がある、あっあそこに歩くキャンドルがある!」
「ふぅん。厳しい環境があってこその発展か。ハハッ、聞くからに東側より面白そうだ」
「……むっ?それは聞き捨てならんぞ小僧。東側だっていいものは沢山ある。
おんしらの所の外門が寂れているだけだわい」
拗ねるように口を尖らせる白夜叉、飛鳥は美麗な街並みを指差し
「今すぐ降りましょう! あの歩廊に行ってみたいわ!」
「そうだの。まぁ、続きは夜に話そう。それまで、遊んでくるとよい」
白夜叉は袖から取り出したゲームのチラシを四人に渡す。四人はそれを覗き込むと
「見ィつけた―――――のですよおおおおおおおおおお!」
ドップラー効果の聞いた絶叫と爆撃のような着地。その声に跳ね上がる一同。大声の主は我らが同士黒ウサギ
「ふ、ふふ、フフフフ……!ようぉぉぉやく見つけたのですよ、問題児方……!」
淡い緋色の髪を戦慄かせ、怒りのオーラを振りまく黒ウサギは帝釈天の眷属より、仁王のそれである
「行くよ!飛鳥ッ!」
「逃げるぞッ!」
「逃がすかッ!!」
「え、ちょっと!?」
天音はすぐさま飛鳥を抱きかかえて高台から飛び降りる。十六夜も続くように飛び降りた
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天音と飛鳥と十六夜は赤いガラスの歩廊に入り、人混みに紛れて黒ウサギから身を隠していた。三人が隠れたのは、店と店の間にある横道。赤レンガの壁際から顔を覗かせ周囲を伺う
「……いないかな?」
「ええ、多分。だけどこんなに早く追いつかれるなんて………」
「黒ウサギを焚きつける餌としては冗談でも効果抜群だったことだな」
安全を確認して飛鳥は大通りに出てスカートを靡かせるようにステップして振り返る
「さて、それじゃあ散策開始しましょう。エスコートお願いできるかしら天音さん十六夜君」
「私でいいなら僭越お受けしますよお嬢様」
「それでは僭越しながらエスコートの真似事でもさせてもらいますお嬢様ーーそうだな。まずはこの赤い歩廊を散歩かな。商店街のようだし、ご当地品や限定ものを物色して回るのも観光の醍醐味って奴だ」
「そうだね、あの歩くキャンドルが店で売ってるかもしれないし」
「そう。物好きな二人が言うのであればそうなのでしょう行きましょう二人とも、歩くキャンドル見たいわね」
「そうだな……お嬢様と天音が欲しいなら、その辺から二体とってもいいが?」
「そんなのダメだよ」
「あら、そんなのルール違反だわ」
二人の少女は首を横に振り最高の悪戯っぽい笑みで
「欲しいものは、ギフトゲームで挑んで勝つ」
「それが箱庭のルールでしょう?」
「はは、そりゃそうだな」
にこやかに宣言する二人の少女と、哄笑する少年は嬉々とした表情でガラスの歩廊を散策する
散策して数時間が経つ。丁度正午をすぎて1時間というところだろう。飛鳥は煉瓦とカットガラスで彩らてた赤窓の歩廊の真ん中にある。龍にモニュメントの前で休憩していた疲れたわけではなくじっくり見るためだ
「凄く綺麗な場所。私の故郷にはこんな場所無かったわ」
「私の故郷にもこんなの無いよ、綺麗だね」
天音は龍のモニュメントをiP〇oneで写真に収め言う。十六夜は周りをグルグル回って眺めていた
「へぇ……こんなに大きなテクタイト結晶、初めて見た」
「テクタイト結晶?ガラスではなく?」
「テクタイトは天然のガラスの一種だよ。隕石の衝突で生まれたエネルギーと熱量によって合成された稀少鉱石だったよね十六夜」
「ああ、その通りだぜよく知ってたな。有名なのはドイツのネルトリンガー・リースに降った隕石とかだな」
「ドイツの……隕石?でも箱庭の世界に隕石なんて降るのかしら?」
「ああ、俺も疑問に思ってた。色からしてモルダバイトの類似品だと思うのだが」
「十六夜このモニュメントに看板あるよ」
天音の言葉で看板に気づいた十六夜は看板に目を落とす
『出展コミュニティ "サラマンドラ"
タイトル:霊造のテクタイト大結晶によって彫像された、初代頭領 "星海龍王"様 製作者・サラ』
と書かれていた
「霊造ってことは……オイオイ、人為的に造り出したテクタイト結晶ってことか?」
「天然ものでは無くて?」
「うん。製作者は人間じゃないみたいだけど……この彫像の製作者はサラっていう人だね、面白そうじゃんジン君が知ってそうだったし機会があったら会いたいね」
天音と十六夜の横顔を珍しそうに見つめた飛鳥はポツリと声が漏れる
「前々から思ってたけど……天音さんと十六夜君はどうしてそんなに博学なの?」
「そう?博学というより雑学程度だよ」
「ああ右に同じく俺も雑学程度だ。……お、歩くキャンドル発見!」
二足歩行で歩くキャンドルスタンドを見つけた十六夜は、飛鳥を置いて軽快走って行く。慌てて追いかける天音と飛鳥。歩くキャンドルスタンドも美術展の作品らしく、首から "ウィル・オ・ウィスプ "という看板を下げていた
「二足歩行のキャンドルスタンドに浮かぶランタン……ならカボチャのおばけはいないのかしら?ハロなんとかと言うお祭りに出てくる妖怪なのだけど、天音さん、十六夜君は知ってる?」
「「ん?」」
突然の飛鳥の言葉に足を止める二人
「オイオイ、箱入りが過ぎるぜお嬢様。カボチャの怪物といえばジャック・オー・ランタンのことだろ?今どきハロウィンぐらいは知っとけよ」
「それは無茶がすぎるよ十六夜。飛鳥が来た時代は戦後まもない時代。日本にハロウィンが広く認知され始めのは一九九〇年代。最古でも八〇年代だよ」
「そう…… 天音さんと十六夜君の時代には、もうハロウィンは珍しいものでは無いのね」
「まあな。お嬢様はハロウィンみたいなお祭りが好きなのか?」
「好きという程のものじゃないわ。ただ幼い頃に小耳に挟んだ時は………とても素敵な催しものだと思ったの」
飛鳥の表情を見ながら天音は飛鳥の話を思い出す。飛鳥は財閥の令嬢で両親は居なく威光の力のせいで隔離のような形で寮制の学校に閉じ込められていた。飛鳥にとって外の世界と文化には強い憧れのようなものがあるのだろう
「私………箱庭に来て本当に良かったわ。こんなに素敵な場所に来ることが出来たもの。噂のハロウィンは体験できなかったけど………実家で飼い殺される人生よりよっぽど期待もてるもの」
「………そうかい。そりゃ何よりだな」
くるくるりと回る飛鳥をみて天音は言う
「ならさ、私達でハロウィンしようよ」
「え?」
「そう言えば、お嬢様、ハロウィンが元は収穫祭って知ってたか?ノーネームの裏手の莫大な農園跡地は知ってるだろ?そこが復活すればコミュニティも大助かりだと思うんだが」
「え、ええそれは知ってるわ、それと天音さんのハロウィンをしようはどうな繋がるの?」
「元は収穫祭のハロウィン、ノーネームの裏手に莫大な農園跡地、つまりいつか私達で、私達のハロウィンをしようよという提案なんだけど。どうかな飛鳥?」
「私達のコミュニティで……ハロウィンのギフトゲームを主催する、ということ?」
「ああ。箱庭で過ごす以上、やっぱり "主催者"は経験しておかないとな」
十六夜の言葉に瞳を輝かせる飛鳥は感嘆の声を上げる
「素晴らしい提案だわ! それならコミュニティも助かるしとても楽しそうだわ!」
「そうだねとにかく、そのためには色々なゲームに勝たないとね」
「勿論。こんなに大きなお祭りなんだもの。凄いギフトが貰えるゲームがあるはずよ」
「YES!祭典では創作系のギフトを競い合う二大ギフトゲームが進行地なのですよ!」
「創作系?なにか作るの?」
「はいな。耀さんの持つ生命の目録のように人造、霊造、神造、星造、を問わず、様々な創作系ギフトを持つ者達が参加できるギフトゲームなのでございます♪」
「よく分からんが、凄いギフトが貰えるのか?」
「それはもう!新たにフロアマスターとなったサンドラ様から直々に恩恵を与えられるとなるとよっぽどのことでございます!今から白夜叉様のところへ向かうのですがその前に黒ウサギニオトナシク捕マッテクレマスヨネオサンガタ?」
「「「勿論、断る!」」」
瞬間十六夜が歩廊にクレーターを作る脚力でスタートダッシュ。天音と飛鳥は逆方向に逃げるが、空から舞い降りてきたレティシアに飛びつかれて捕まる
「きゃ!」
「あ!」
「フフ。観念してもらうぞ、天音、飛鳥」
翼をたたみ微笑みながら二人を抱きしめるようにぶら下がる、二人は参ったと降参するように手を上げる。天音は最後に
「十六夜が最後だから!簡単に捕まったらダメだよ!」
「了解!任せておけ!」
そう言い、十六夜は逃げ黒ウサギはそれを追いかけるのであった。
どのタイミングで十六夜と天音をくっつけるか悩んでいる人ですどうしよう…
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