最初の変化は本陣営のバルコニーからだ。突如として白夜叉の全身を黒い風が包み込み、彼女の周囲を球体に包み込んだ
「な、何ッ!?」
「白夜叉様!?」
サンドラは白夜叉に手を伸ばすが、バルコニーに吹き荒れる黒い風に阻まれる。黒い風は勢いを増し、白夜叉を除く全ての人間をいっせいに押し出す
「きゃ……!」
「飛鳥、掴まって!」
空中に投げ飛ばされた飛鳥を天音は抱き抱え、着地する。
「ちっ。"サラマンドラ" の連中は観客席に飛ばされたか」
十六夜が言う通りにサラマンドラ一同は観客席、ノーネーム一同は舞台に。十六夜は舞台袖から出てきたジン達を確認し、黒ウサギに振り向く。
「魔王が現れた。………そういう事でいいんだな?」
「はい、そういう事でございます」
黒ウサギが真剣な表情で頷くと、メンバー全員に緊張が走る。阿鼻叫喚が渦巻く会場の中心で、軽薄な笑みを浮かべてる十六夜だが、その瞳は何時もの余裕が見られない。真剣な瞳で黒ウサギに視線を向け
「白夜叉の"主催者権限"が破られた様子はないんだな?」
「はい。黒ウサギジャッジマスターを務めてる以上、誤魔化しは利きません」
「じゃあ連中は、ルールに則った上でゲーム盤に現れてるわけだね。流石は魔王だね」
「ああ、俺の期待を裏切らねえぜ魔王様は」
「どうする?ここで迎え撃つ?」
耀がここで迎え撃つか尋ねる答えは
「ああ。けど全員で迎え撃つの具合が悪いぜ。それに"サラマンドラ"の連中も気になる。アイツらは観客席に飛ばされたからな」
「では黒ウサギがサンドラ様を探しに行きます。その間は十六夜さんと天音さん、レティシア様の三人で魔王に備えてください。ジン坊ちゃん達は白夜叉様をお願いします」
「分かったよ」
レティシアとジンが頷く。対照的に飛鳥の顔が不満の色に染まる
「ふん………また面白い場面を外されたわ」
「そう言うなよお嬢様。 "契約書類"には白夜叉がゲームマスターだと記述されている。それがどんな影響を与えるか確かめねえと」
天音は思考を巡らせていた。契約書類には
『※ゲーム参加諸事項※
・現在、プレイヤー側ゲームマスターの"参加条件がクリアされていません"。
ゲームマスターの参加を望む場合、参加条件をクリアしてください。』
つまりここで言うプレイヤー側のゲームマスターは白夜叉、その白夜叉がゲームの参加条件を満たせてないということだ
「(どういう方法で星霊たる白夜叉を封印したんだろう、参加条件と白夜叉……説明が足りない気がする、だけどそれは憶測の範囲……考えるのは、魔王と星霊の白夜叉を封印することが出来る理由とルール。魔王の情報がない以上分からない)」
「見ろ!魔王が降りてくるぞ!」
上空から人影が落下してくる。十六夜は見るや否や両の手の拳を強く叩き、レティシアと天音に振り返って叫ぶ。
「んじゃ行くか!黒いヤツと白いヤツは俺が、デカイのと小さいのは任せたぞ天音、レティシア」
「了解した主殿、行くぞ天音」
「了解、十六夜もしっかり」
十六夜は舞台会場を踏み砕く勢いで跳躍する。
「レティシア、私は外から援護する、サポートは任せて、戦況を見て私も内に入るから」
「了解した、頼んだぞ主殿」
レティシアと別れ、時計塔のようなところで陣をとる。ギフトカードから、ペルセウス戦の時に出した弓を出し深呼吸し、弓を構える
「BRUUUUUUM!!」
「くっ……!」
陶器の巨兵は全身の風穴から空気を吸い込み、四方八方に大気の渦を作り上げていた。翼を広げて空中を舞っているレティシアにとっては、敵の起こす乱気流に引き寄せられ思うように動けない。そんな彼女を見て斑模様の少女は無機質な瞳で
「………貴女、本当に純血のヴァンパイア?もういいよシュトロム。その子いらない」
「手厳しいな!これでも精一杯戦ってるつもりだが……!」
金の髪を靡かせ、苦々しい声で返す
「(シュトロム……"嵐"か。ならばあの巨兵は天災に関する悪魔の類…!)」
かつての力を失ったレティシアだが、彼女には数多のゲームを乗り越えた経験がある。魔王とのゲームは些細な情報でも有益だと、彼女は知ってる。とりわけ名前はクリアに必要な情報に成りうると心得ていた
「本命を探すから、殺そ」
無情にも死を宣告する少女。それが合図だったのだろう。シュトロムと呼ばれた陶器の巨人は吸収した瓦礫をの山を圧縮し放とうとする……が
青い光の一射、シュトロムに着弾しシュトロムは爆発する。
「今だ!」
その隙にレティシアはリボンを取り外し、少女の姿から女性の姿、本来の姿へと戻り、金と黒で装飾されたギフトカードから長柄の槍を出し、疾風の如き一刺しで少女の胸を突く。
「やったか!?」
「やってないわ」
レティシアの突き出した槍は少女の身体を持ち上げただけにとどまり、槍の尖端は胸部に当たって拉げていた。少女はその手から黒い風を発生させレティシアを捕縛する
「(な………なんだ、この奇妙な風は!?)」
それは数多のギフトゲームを経験した彼女の知識にすらない不気味な風だった。黒く、温く、不気味な風。蠢く様に生物的な風は、徐々にレティシアの意識を蝕む
「痛かったわ。凄く痛かった。だけど許してあげる。………あ、あと前言撤回。貴女はいい手駒になりそう」
くすり、と笑う白黒の斑の少女。蝕むう様にレティシアの全身を覆う黒い風。そのままにしておく天音では無かった。その瞳は普段の青色ではなく金色になり、手に持つ神弓の真名を解放する
「
再び弓を引き矢を放つ、青い光に炎が纏い、矢はライフル弾を超える速度で少女に飛来しする
「くっ!」
少女はレティシアを解放しそれを防御で防ぐ、衝撃と威力で後方に弾き飛ばされる。少女は怪訝な表情をしてに飛んできた方向を見るが少女は目を見開いた。さっきの矢よりも速い速度、第三宇宙速度を超える速度で現れ槍を構えていた。
その槍の形状を見て忌々しものを見るような表情を浮かべる。天音は槍に光を纏わせ、少女を薙ぎ払うように槍を振るう。あまりにも速い速度で現れ不意に近い一撃は少女を捉え凄まじい勢いで街中に叩きつける。
「大丈夫?レティシア」
「ああ、助かった主殿」
叩きつけられたところから、黒い風を纏い少女が浮上してくる。
「今の光、……貴女何者?」
「私?人間だけど、何者って聞かれてもねぇそれぐらいしか返す言葉もないし」
天音は槍を右手で持ち少女に向けている。すると少女の後ろから紅い閃光が飛ぶ、少女は黒い風でそれを受け止める。
「………ようやく現れたのね」
上空にある光はペンダントランプだけではなく、轟々と燃え盛る炎の龍紋を掲げた、北側の"階層支配者"ーーーーーーーサンドラが、龍を模した炎を身にまとい見下していた。
「待っていたわ。逃げられたのではと心配していたところよ」
「……目的はなんですか、ハーメルンの魔王」
「あ、それ間違い。私のギフトネームの正式名称は "黒死斑の魔王"よ」
「………。二十四代目 "火龍" サンドラ」
「自己紹介ありがとう。目的は言わずともわかるでしょ?太陽主権者である白夜叉と星海龍王の遺骨。つまり、貴女のつけている龍角が欲しいの」
「流石は魔王を名乗るだけはあってふてぶてしい。だけどこのような無体秩序の守護神は決して見過ごさない。我らの御旗の下、必ず誅してみせる」
「そう。素敵ね、フロアマスター」
サンドラは天音とレティシアの近くに来て言う
「改めて名乗ります、サラマンドラのリーダーを務めます北側の階層支配者、サンドラです、一緒に戦ってはもらえないでしょうか?」
サンドラ、フロアマスターからの直々の頼みだ、それを断る技量を持ち合わせていない天音は快く快諾する
「私で良ければ、ノーネームの八神天音、よろしく」
「ノーネーム!?ジン君のところの!?」
「うん、そうだよ」
「なら、尚更お願いしますね!」
「了解、サンドラ」
轟々と荒ぶる火龍の炎と神雷、黒々とした不気味な暴風がぶつかり合う。三つの衝撃波は空間を歪め、強大な力の本流は境界壁のペンダントランプを余波で砕く。その残骸は両者の戦いを彩るか如く煌めきを放ちながら霧散した。
サンドラが炎で攻撃し、天音が神雷で攻撃する。斑の魔王はそれを黒い風で遮断する。天音が槍で光を纏いそれを引き裂くと風は霧散する。
その時だけスキが生まれ、サンドラの炎が命中する。がその傷は瞬時に回復する。
「(このままじゃ埒が明かない……)」
そんな時、違う方向から雷鳴と黒ウサギの声が聞こえた
「“審判権限”の発動が受理されました!これよりギフトゲーム"The PIED PIPER of HAMELIN"は一時中断し、審議決議を執り行います!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!繰り返します――――――」
そこには"
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