問題児たちと天空の御子が来るそうですよ?   作:皐月の王

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収穫祭の主催者に

その後"ノーネーム"一同は、"ウィル・オ・ウィスプ"と共に貴賓客が泊まるための宿舎に入った。土壁と木造宿舎なのだが、思いの外しっかりと建て付けにしてあった。

 

土造りなのに空気が乾燥がしないのは、水樹の根が水気を常に放出しているからだろう。所々に浮き出た水樹の根は談話室で椅子のように扱われており、それに座った耀が大きく息を吐き、アンダーウッドの感想を言う。

 

「……凄いところだね」

 

「ええ。大自然的というのかしら。北側は建造物が多いのに対して」

 

「ここは環境に合わせて過ごしている感じだよね!」

 

「YES!南側は箱庭の都市が建設された時、多くの豊穣神や地母神が訪れたと伝わっています。自然神の力が強い地域は、生態系が大きく変化しますから」

 

「そうなのね。でも、水路の水晶は北側の技術でしょう?似たような物を誕生祭で見たわ。ねぇ?天音さん」

 

「うん、テクタイト結晶の彫像だよね。あれはすごかったね」

 

へ?と耳を傾ける黒ウサギ。その隣に座るジャックが答える。

 

「よく分かりましたねぇ。飛鳥嬢と天音嬢の言う通りです。十年前の魔王襲撃から此処まで復興できたのも、その技術を持ち込んだ御方の功績だとか」

 

「そ、それは初耳でございます。一体何処の御方が?」

 

黒ウサギを含め、一同は顔を見合わせる。ジャックはカボチャ頭の顎っぽいところに手を当てて説明する。

 

「実はアンダーウッドに宿る大精霊ですが……十年前に現れた魔王の傷跡が原因で、未だ休眠状態にあるとか。そこで"龍角を持つ鷲獅子"のコミュニティアンダーウッドとの共存を条件に守護と復興を手助けしているのです」

 

「その"龍角を持つ鷲獅子"で復興を主導している人が、北側出身の人だということ?」

 

「はい。その方のおかげで、十年と言う短い月日で再活動の目途が立てられたと聞き及んでおります」

 

「……そうですか……凄い御仁でございますね」

 

黒ウサギは胸に手を当てジャックの言葉を噛みしめる。おそらく、自分たちの境遇と重ねているのだろう。

 

「ヤホホホホ、我々はこれより"主催者"に挨拶に行きますが…・よろしければ、"ノーネーム"の皆さんもご一緒にどうです?ここで会ったのもなにかの縁ですし」

 

「そうですね。荷物を置いてきますから少しだけ待っていてください」

 

陽気に笑って承諾したジャックは、アーシャと共に宿の外で待つ。荷物を宿舎に置いた"ノーネーム"一同はジャックとアーシャに連れられ、収穫祭本陣営まで足を運び出す。

 

 

壁際の螺旋階段を登りながら上を目指していく。深さは約20mくらいだろう。壁伝いに登るとなればいささか距離がある。しかし、メンバーは億劫な顔はすること無く、初めて見る景色に瞳を輝かせ、楽しんでいた。収穫祭ということもあり、で店からは食欲をそそるいい薫りが漂って来る。

 

天音と耀は六本傷の旗が飾られているで店に、瞳を奪われた。

 

「……あ、黒ウサギ。あの出店で売ってる"白牛の焼きたてチーズ"って」

 

「"黒牛の焼きたて串焼き"って」

 

「ダメですよ。食べ歩きは"主催者"への挨拶が済んでからゆっくり……」

 

「「美味しいね」」

 

「御二方いつの間に買ってきたんですか!!?」

 

二人は黒ウサギのツッコミを意に介さず、二人は自分が買った食べ物を食べる。一口齧ると、ジューシーな肉汁が溢れてくる。香ばしい肉の香りと塩胡椒の味がマッチングして最高だった。

 

「……一口欲しいの?耀」

 

「うん」

 

迷いが無かった。一切の迷い無く、即座に頷く耀。天音は肉汁が零れないように紙を受け皿にして

 

「はい、あーん」

 

口の中に肉を入れる。耀は噛みちぎり、味わって食べる。

 

「美味しい?」

 

「うん、美味しい。天音も」

 

天音も耀からチーズをもらい食べる。単品でも食べても飽きない味だ。

 

「このチーズ美味しい……美味しいね!」

 

「よかった」

 

耀は少し嬉しそうに微笑みチーズを食べるのに専念する。横で耀と天音が食べてるものを見ている飛鳥とアーシャは物欲しそうにしていた。串焼きはあの二切れある。その前に耀が

 

「……………匂う?」

 

「匂う!?」

 

「匂う!?今、匂うって言った!?普通そこは食べる?って聞くはずじゃない!?」

 

「だってもう食べちゃったし」

 

「しかも空っぽ!?」

 

「残り香かよ!?どんなシュールプレイ!?」

 

「え!?あの一瞬で食べたの!?」

 

天音が貰った時はまだ残っていたが、次にはもうなくなっていると来た。驚く他ない。

 

「二人とも食べる?」

 

「お、いいのか?いいたくぜ」

 

「ありがとう天音さん。いただきます」

 

アーシャが食べ、飛鳥も食べる。二人とも服を汚さないように慎重に食べていた。

 

「ヤホホホホホ!賑やかな同士をお持ちで羨ましい限りですよ、ジン=ラッセル殿」

 

「はい。でも、賑やかさでは"ウィル・オ・ウィスプ"の方が上だと思います」

 

「ヤホホホホホホ!いや、まったく恐れ入ります!」

 

どの集団より賑やかに、楽しみながら進む一同は、網目模様の根を上がり地表に出る。大樹を見上げて先を見る……。まだまだ登らないと行けないし、まだ地表に出てきたばかりだ。

 

「ジャックさん。この樹は何メートルあるんですか?」

 

「500ⅿと聞いてますよ。御神木の中では一番大きい部類に入るかと」

 

「黒ウサギ、私達が向かう場所ってどのあたり?」

 

「中ほどの位置ですね」

 

250mが目標地点だ。跳べば一瞬で着く。跳ぶのにも加減が欲しいくらいだ。残りの250mを徒歩で行くと考えると自ずと出る答えが、

 

「飛んで行ってもいいかな?」

 

「私もいいかな?」

 

飛べる組みは最短で行きたいとなる。天音と耀は面倒そうだなぁという表情を隠す素振りを見せることなく言う。

 

「二人ともいくらなんでも自由度が高すぎるわ」

 

「ヤホホ!ご心配なく。エレベーターがありますから、さほど時間もかかりませんよ」

 

ジャックは詳しい説明をすることなく、先に歩みを進める。太い幹の麓まで来ると、ジャックは木造のボックスに乗り手招きをする。

 

「このボックスに乗ってください。全員が乗ったら閉めて、ベルを二回鳴らしてください」

 

「わかった」

 

言われたとおりに全員が乗るをを待ち、木製ボックスにあるベルの縄を二回引いて鳴らす。

 

「わっ!」

 

「上がり始めたわ!」

 

「反対の空箱に注水して引き上げているんだ……凄い!」

 

「ヤホホ!原始的な手段ですが、足で上るよりよほど速いですよ」

 

エレベーターはものの数分で目的の階層に到着した。幹の通路を歩くと、収穫祭の主催者である"龍角を持つ鷲獅子"の旗印が見えた。

 

「七枚の旗?七つのコミュニティが主催してるの?」

 

「残念ながらNOです。"龍角を持つ鷲獅子"は六つのコミュニティが一つの連盟を組んでると聞いています。その中心の大きな旗は連盟旗です」

 

「連盟?何のために組むの?」

 

「用途は色々ありますが、一番は魔王への対抗するためですね」

 

「つまり、連盟加入コミュニティが魔王に襲われた際に助太刀に行けるようになる感じ?」

 

「YES!更に連盟加入コミュニティなら魔王のギフトゲームへ介入することも可能です」

 

連盟の旗、龍角を持つ鷲獅子を中心に

 

"一本角"

"二翼"

"三本の尾"

"四本足"

"五爪"

"六本傷"

 

六枚の旗印が飾られていた。六つのコミュニティの連盟それが龍角を持つ鷲獅子だろう。天音は旗印を見上げていた。連盟……ノーネームもこう言う組織になれば対魔王……引いては旗印を奪った魔王と戦いやすくなるのだろうかと……

 

そんなことをふと考えている天音を他所に、ジンとジャックは本陣入口の受付で入場届を出していた。

 

「"ウィル・オ・ウィスプ"のジャックとアーシャです」

 

「"ノーネーム"のジン=ラッセルです」

 

「はい、"ウィル・オ・ウィスプ"と"ノーネーム"の…あ、もしかして、"ノーネーム"の久遠飛鳥様でしょうか?」

 

樹霊の少女が飛鳥を見て声を上げる。

飛鳥はその通りだと頷く。

 

「私、火龍誕生祭に参加していた"アンダーウッド"の樹霊の一人です。飛鳥様には弟を救っていただいたとお聞きしたのですか」

 

飛鳥は思い出したように声を上げた。黒死斑の魔王との戦い、その時に助けた少年の姉が目の前の人というわけだ。

 

「やはりそうでしたか。その節は弟の命を救っていただきありがとうございました。おかげで、コミュニティ一同、一人も欠けることなく帰って来られました」

 

「そう、それは良かったわ。なら、招待状を送ってくれたのは貴女たちなのかしら?」

 

「はい。大精霊(かあさん)は今眠っていますので。他には"一本角"の新頭首にして"龍角を持つ鷲獅子"の議長でもあらせられる、サラ=ドルトレイクからの招待状と明記しております」

 

それを聞いたノーネームのメンバーは一斉に顔を見合わせ驚く。

 

「サラ……ドルトレイク?」

 

「どこかで聞いたことが……」

 

飛鳥と天音が考える。姓に聞き覚えがあるからだ。

 

「まさか、"サラマンドラ"の……?」

 

「北で見たテクタイト結晶の?」

 

 

「え、ええ。サンドラの姉であるサラ様です。まさか南側に来ていたなんて………もしかしたら、北側の技術を流出させたのも」

 

「流出とは人聞きが悪いな、ジン=ラッセル殿」

 

聞き覚えのない言葉に驚き一斉に振り向く。途端、熱風が大樹を揺らした。激しく吹きすさぶ熱と風の発生源は、空から現れた女性が放つ二枚の翼だった。

 

「久しいな、ジン。会える日を待っていた。後ろの"箱庭の貴族"殿とは、初対面かな?」

 

「サ、サラ様!」

 

「この人が、北のフロアマスターのお姉さん……」

 

天音は呟くようにその言葉を出した。




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