遅れてすいませんでしたぁぁぁぁ!!!
その後、天音は深く眠っていた。呼ばれる時間までは猶予があったからだ。天音はここ最近休んでいるはずなのに精神的には疲労し続けていた。その理由は、夢である。別に悪夢を見ているという訳では無いのだが、その夢の感覚が、次第に"自分がかつて体験したもの"と感じるようになり、更に無意識にその夢で見た人物の所作をしてしまうようになっていたからだ。
まともに自分を認識していないと、境界が分からなくなるかもしれないと言う恐怖とそれでも明るく振る舞わないと、貢献しなければと言う思いが、彼女を精神的な疲弊へと押し込んでいた。
今回の眠りも例外は無く、神話の一端を見る。己が体験として……
(今回……も……か)
天音が見ている……いや、体験しているのは正午の沐浴だった。太陽神に対しての礼拝。それを行っていた。
そんな時、バラモンの僧が訪ねてきて、黄金の鎧を要求してきた。天音はこの逸話を知っている。だが、天音にはどうすることも出来ない。
話は進み、やがては自分の体に小剣を突き立てる。
(痛い!痛い!痛い!あっ……があああああ!!!痛い痛い痛い痛い!!!)
激痛が襲う。体と一体化している鎧を剥がそうと言うのだから、その苦痛は約束されたものだ。だが、天音にその激痛を感じなければならない理由は無い。ただただ、実体験のように見せつけられるだけ。思考も、感情も、その時の空気も、その全てが自分を塗りつぶさんと天音に見せつけてくる。
(やめ……!やめ……て!私を……!飲み込ま……いで……!)
(それは、無理な相談だ)
真っ暗闇な空間に放り出される天音。激痛は不快な感覚は未だに残り続けるが光景を見なくて済んだ分幾分かマシである。
ただ、願いを拒否したであろう声の主であろう人物が、天音を覗き込む形で見下ろす。
その人物は黒髪に一部が金髪ので白い無精髭を生やしている、真紅の瞳の男が立っていた。
「それは無理な相談だ。八神 天音」
「ど、どういう事……?貴方は……」
「俺の名前はどうでもいいだろ。答える……義理はある、必要もあるかもしれないが、答えない」
男は嫌そうな顔をして天音の腹部を踏みつける。そこは、夢で小剣を刺していた所である。
「――――――!!!」
天音は声にならない声を上げて悶える。
「随分と侵食されてんなぁ。まぁ、オレの力で使えるようになって、弊害なくスムーズに侵食されるよな。思春期の女子には厳しいだろうな。まぁ、オレには関係は無いな……お前の問題だし」
足を退けたあと男は背を向けその場から消える。それと同時に天音は沈んでいく。恩恵が天音を飲み込まんとして。天音には音も、感覚もどんどん鈍くなり何も感じなくなって行くのを感じる。
(助けて……たすけて……タスケテ……黒うさぎ、飛鳥、耀……十六夜……)
耐えきれず夢の中ですらも目を閉じる。諦めた時
『行かんな、これでは。オレでは役不足かもしれんが、遅らせることが出来るだろう』
そんな優しい声が聞こえないはずの天音の耳に、入る。
―――――――――――――――
現在、アンダーウッドは襲撃を受けていた。黒ウサギは地下の巨人を相手して、耀と飛鳥は地表に出てきて巨人の対応をしていた。耀はヘッドホンの事が気になっていた。理由は簡単、そ十六夜のヘッドホンが自分の鞄にから出てきてしまったからだ。耀からしたら自分が嵌めたとなってしまう。耀はそんなことをする人物では無い。
飛鳥はディーンで巨人の対応をしている。耀はその様子を見て驚愕していたが、もう一つ大事なことに気づく。
(天音が……見当たらない!?)
真っ先に前線に出てきてもおかしくないであろう人物の八神 天音の姿がその場に居なかったのだ。黒ウサギと地下で対応するのであれば、最初の合流時に居たはずだと。
「飛鳥!天音が出てきてない!」
「天音さんが!?」
それを聞いて飛鳥も驚く。だが、巨人が群がってきて、手を回す余裕が無い。
「っ!春日部さん!天音さんの捜索をお願いするわ!」
「で、でも!」
先程、耀は巨人に自分が知りうる最重量の動物の攻撃をしたが、蝿を払うように弾かれ、その一撃は、風とかで勢いを殺さないと話にならないレベルだった。すぐさま合流できたから飛鳥との合流ができたが、あれが飛鳥に当たればと思った時には蒼白になっていた。それゆえの離れられないと
「今自由に動けて頼りになるのは貴女だけよ!こっちは大丈夫だから!」
「っ!直ぐに見つけてくる!」
耀は飛び出した。天音を探し出すべく。それと同時に嫌な予感が頭から離れないでいた。天音が巨人に殺られてしまって居たらと。そんなはずないと直ぐに一蹴するが、耀は知っている。天音がここ1ヶ月、ろくに休めていないということに。睡眠は取れているが、表情は来た時よりも少し暗く、遠い目をすることがあったり、何処か消えてしまいそうな空気を感じたりと。その度に相談に乗ろうとしたが、何を言っても大丈夫と帰ってくるだけ
(私は……そんなに頼りない?そうかもしれないけど……!)
耀に取って、天音は黒ウサギや飛鳥、十六夜と同じく箱庭に来てからできた同士で友人だ。それだけではなく、命の恩人でもある。"フォレス・ガロ"とのゲームで重症を負った耀に惜しみなく、自身の最強の鎧を傷を治す為だけに一時的とは言え貸した。その鎧の温かみは今でも覚えている。それ故に、単なる友人、同士では収まらない感情を持ち
(私は……天音の力になりたい。天音が辛そうにしてるなら、その力になりたい!)
その一心で天音を探す。持てる動物の力、犬の嗅覚、鷹の瞳、グリフォンの旋風を駆使して、戦場を翔ける。天音を見つけるべく。そして見つける。天音はぐったりと眠った状態で巨人の手の中に収まり、今まさに握りつぶされようとされている瞬間だった
「天音!天音から離れて!」
耀は無我夢中でグリフォンの烈風を纏い、像の質量を以て空中から奇襲を仕掛ける。完全に不意を突いた一撃だが、巨人はよろける所か、微動打にしなかった。
「………っ………!」
焦りが胸を締め付ける。飛鳥の心配もあるが、目の前の仲間が何も出来ずに握り潰される。そんな最悪な光景が頭に浮かぶ。
そんな思考を知ってか知らずか、周りを飛ばれることを嫌がった巨人は蝿を払うように腕を振るう。耀は咄嗟にガードするが、そのまま大河の水面を何度もバウンドして対岸に飛ばされる。衝撃を風圧で和らげ無傷だが、助けに行くには絶望的な距離になる。更に濃霧が場を支配する。一寸先すら見ることが困難な程の濃霧だ。これでは鷹の瞳も嗅覚も阻害される。
「あ……天音……!」
時間が経てば経つほど嫌な想像しかあまたを過ぎらない。頭を振り、無我夢中で旋風を使い少しでも視界を確保し、天音の元に向かう。そして、シルエットが見える。巨人が両手を使い天音を握り潰そうとしているのが見えた。
「あっ……ああ……!」
間に合わない。辿り着いても、助けることが出来ない。そんな絶望が、耀を支配する。
「天音ねぇぇぇぇぇ!!!」
らしくない耀の叫び。普段の彼女からは考えられない焦燥感と絶望を含んだ叫びが届いたのか……巨人は炎に包まれた。
「え?」
そして周りにいるであろう巨人も一瞬の内に血飛沫をあげて倒れたり、燃えて焼死体へと姿を変える。そして、その人物が、耀の隣に立つ。
黄金の槍を左手に持ち耀の左手隣に立つ金髪の少女。『ノーネーム』の次席に座す者であり、1か月前の魔王とのゲームで魔王を討った人物が立っていた。その少女を見て耀は安堵の表情を浮かべ、思わず息を吐く。
「よかった……無事だったんだ」
そう、声をかける。これで、巨人族を押し返すことが出来き、アンダーウッドを守ることが出来るとほっとするが
「ああ、問題無い。いや、この肉体の主的には現在進行形で問題しかないか……だが、今はそれを話す時ではない。現状を打開が最優先だ。動けるな?」
耀は固まる。そして言葉が出ていなかった。目の前に居る人物は、耀に取って大切なもの友人で命の恩人であり、耀が力になりたいと思っている人物だ。だが、雰囲気が口調が気配がその人物と一致しない。
「あ……貴女は……誰……?」
震える声で耀は質問をする。助けたかった人物であってくれと祈るように、しかし
「名乗る程の者では無い。……だが、それでは不義理になるな。この娘に起こっている
無情にも現実を突きつけられ、天音の安否を間接的にも否定され、苦しむ原因を知ることとなる。
ここからが正念場です!
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