問題児たちと天空の御子が来るそうですよ?   作:皐月の王

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この勢いであと何回投稿できるか……頑張るんだよ!


例外の恩恵

「ど……言うこと……恩恵に侵食されるって……」

 

耀は影法師を名乗る天音に聞く。しかし、

 

「話すのは良いが、先ずは仲間の安否で安全確保が重要では無いのか?」

 

そう言うとゆっくりと浮き上がり、光と炎を纏った槍で

 

「ふっ――――!」

 

霧の一角を切り裂いて見せた。

 

「行くぞ」

 

影法師は先に進む。同じ声のはずなのに、その声は別人に感じる。知っている人物が変わり果てたと感じて胸が苦しくなる。だが、耀はその後ろをついて行く。

 

立ちはだかる巨人を意図も簡単に槍術で淀みなく一瞬で蹂躙する。耀はそれに再度驚く。

 

(天音の強さは知っているけど、ここまで練り上げられた感じじゃなかった……)

 

そして、ある程度進むと、無傷の飛鳥を見つける。

 

「飛鳥………!」

 

「か、春日部さん………きゃっ!」

 

勢い余って飛鳥に飛び込む。ディーンから降りていたため落下による怪我はないが、尻もちを着く。

 

「よかった……!飛鳥は凄い……あの状況で無傷なんて」

 

「当然よ……と言いたいけれど。私の力で倒したわけじゃないわ」

 

「え?」

 

「周りを見れば分かるわ」

 

飛鳥の思い声に促され周囲を確認する耀。薄くなった霧が隠されたモノを露わにする。眼前にあるのは皆殺しにされた巨人族の死体だ。しかも、どの死体も同一の殺害方法で死んでいるのだ。耀はその光景に息を飲んだ。天音を探しに行ったと言えどそう時間は掛かっていない。

 

「お怪我はありませんか?」

 

「ぇ……え?」

 

ハッと我に返り、警戒心を高めるが

 

「警戒する必要は無いだろう。彼女が巨人族を鏖殺した人物だ」

 

影法師が言う。その人物は純白で美しい白髪を頭上で纏めている黒い髪飾り。静謐さを放つ白いドレススカートと、精緻な意匠が施された白銀の鎧を身にまとい、顔の上半分を隠す白黒の舞踏仮面をつけていた。全身を巨人族の血で染め上げているが。

 

無事を確認したその騎士は三人を一瞥してその場から立ち去る。

 

「彼女は……強いわよ」

 

飛鳥はそう告げた。プライドの高い飛鳥が無条件で認めざるを得ない程の圧倒的な実力者というのは、耀は対面しただけで理解した。

 

「それよりも無事でよかったわ、天音さん。怪我は無い?」

 

「あっ……飛鳥……」

 

飛鳥は気を取り直したように天音に聞く。耀は飛鳥を止めようとしたが既に遅かった。だって

 

「大丈夫だ、問題は無い」

 

「え?……は?」

 

いつもの天音の答え方、口調、雰囲気が違うことに、飛鳥の思考がどういう事か受け止められずに居た。何があったのかと、

 

「……お前は何か重要な物を確認をしたいのでは無いのか?」

 

そういうのと同時に安全を知らせる為の鐘が鳴らされた。

 

「疾く急ぐが良い。それを確認しないことにはお前の次の行動が決まらないのでは無いのか?」

 

「っ!ごめん、飛鳥!後で説明する!」

 

耀は急いで旋風を巻き上げて宿舎に向かう。影と飛鳥はそれを見送る。そして

 

「答えなさい!貴女は何者なの!?私の友人の姿を模している訳?それとも恩恵で乗っ取っているの!?」

 

鬼気迫る表情で飛鳥は問いただす。しかし、影法師は何の弁明も話しもしない。

 

「っ!『答えなさい』!!!」

 

『威光』のギフトを使い強制する。影法師は表情を変えることなく口を開く。

 

「今それについて話している時間があるのか?」

 

そう言い『威光』を振り払う。

 

「っ!」

 

「今は、負傷者や仲間の安否の確認が優先されるべきでは無いのか?」

 

「――だから!その仲間の天音さんに何をしたのか、聞いているのよ!いいから『答えなさい』!!!」

 

再度『威光』を叩きつける。先程以上に強い思いが乗った『威光』は影法師に強く伸し掛る。同じように払うことが出来るであろうその『威光』飛鳥は無理矢理でも通す気迫だった。その目を見て

 

「なるほど、それ程までに思われているのか……。それ程の気迫、この肉体の主に対する思いを見せられては答えない方が失礼千万だな。謝罪の意を示す」

 

『威光』を払いつつも頭を下げる。その姿勢に飛鳥は動揺した。それはあまりにも紳士的に返された返答だったからだ。

 

「だが、詳しく話すにはここに集っている仲間の前で話さなければならないのも理解していただきたい」

 

「え、ええ。それでいいわ。その方が皆にも情報が行き渡るしね。それで話してくれる?」

 

「では、簡易的に話すとしよう。彼女は八神 天音は恩恵の侵食を受けている。このまま侵食が進めば、力を行使するだけの人形になる。俺は助けを求める声に反応した、恩恵に記された人物の影だ」

 

飛鳥はそれを聞き絶句する。恩恵による侵食。そんなの聞いたことの無い話だと、そして、そんな状態に気づけなかった自分が情けないと。

 

「仲間思いのお前達に気にするなと言っても無駄かもしれないが、そこまで気負うのはお門違いだ。何せ、本人ですら違和感を感じていなかったのだからな」

 

そう言うと、天音は歩き始める。

 

「話は一旦終わりだ。すべきことをするぞ」

 

「……分かったわ」

 

飛鳥は悔しさを滲ませ、影法師のあとを着いていく。その後は互いに分かれて、天音は救助を飛鳥は耀の下へ向かう。

 

「た、助けていただきありがとうございます!」

 

「礼には及ばない。そんなことより、早く子供を連れて救護所へ行くといい。いつ、第二陣が来てもおかしくは無い」

 

「は、はい!分かりました!」

 

影法師は救助を終えて瓦礫に腰をかける。

 

「未だ目覚めはしないか、お前と相対する事が出来れば向き合い方を伝えることは出来るが……。それでは意味が無い」

 

『存外冷てぇなぁ。我が孫は』

 

男の影が影法師の前に立つ。影法師はその影を見据えながら話す。

 

「感嘆の言葉が出る。俺に対して祖父を名乗る器量があるとは。それほどの器量がありながら、あのような選択を取ったのか理解し難い」

 

男の影は大きため息をつきながらも少し笑みを浮かべ

 

『……言ってくれるじゃねぇか。さすがアイツの息子だな。それで意味は無いって?』

 

「言葉通りだ。この程度の障害を乗り越えられない人物に俺達の恩恵を使う資格は無いという事だ。乗り越えるのは本人次第だろうよ。であれば、その機会を作るのが俺の役目だ」

 

『いいや、十分親切だとは思うぜ?寧ろ俺としてはノーヒントでもいいと思うし、背負うもんが背負うもんだからな。それはソレとして、もがき苦しんで抗う姿を見るのは好きだからなオレは』

 

人影は獰猛に口角を吊り上げて話す。影法師は肩を竦めてそのまま立ち上がり、歩き出す。

 

『何処へ行くんだよ』

 

「この彼女の仲間の下だ。外野もいるようだが、全くの無関係という訳でもなく、交流があるようだ。いい機会だ」

 

そう歩みを進め、黒ウサギや耀、飛鳥のところに向かう。

 

その頃、耀と飛鳥は黒ウサギとジンと三毛猫、そしてウィル・オ・ウィスプのジャックとアーシャが集まっていた。耀の戦果、飛鳥と望んでギフトゲームで勝利した話などしていた時だった。

 

三者三様に謝る。飛鳥は友人の耀を気遣い、耀は自分が悩んでいたから飛鳥を巻き込んだと謝り、黒ウサギは自分の過度な期待が壁を作ってしまったと。そして、そのタイミングで

 

「なるほど、いい仲間を持っているな。これほどの仲間に恵まれるとなると、人柄が良いか幸運か、それとも運命か。どちらにせよ宝には違いない」

 

聞き覚えのある声が全員の耳に入る。ジンは喜ぶが、黒ウサギは警戒心を高める。ジャックもそんな黒ウサギを見て警戒するが、すぐ様、耀と飛鳥が止める。

 

「待って!黒ウサギ!ジャック!」

 

「待って……欲しい」

 

「どういうつもりかは存じ上げませんが、仲間があんな状態にされて黙っているほど黒ウサギは穏便ではありませんよ?天音さんをどうしたんですか!!!」

 

黒ウサギの髪はピンクに変色しその激情を表現する。片手には疑似神格・金剛杵が握られている。

 

「え?どういうこと!?黒ウサギ!」

 

「ジン坊っちゃま、悪い知らせですが、天音さんは何者かに乗っ取られているようです!何者ですか!私達の仲間にそんなことをする輩は!!!」

 

「だから待ちなさい!黒ウサギ!!!」

 

飛鳥の怒号が黒ウサギの耳がキーンとなる。それはそうだろう。飛鳥は黒ウサギの耳元で叫んだのだから。

 

「な、何をするんですか!あ、飛鳥さん!耳がキーンとなるじゃないですか!」

 

「いいから……話を聞いて欲しいのよ。ほら、見るためにきたわけじゃないでしょ?」

 

飛鳥が先を促す。それに応えるように天音は話し始める

 

「さすが、あの男の眷族だな。一目見て気づくとは」

 

影法師は黒ウサギへの賞賛を送る。そしてジャックとアーシャも様子が変だと気づく。

 

「なぁ、あの金髪様子が変じゃないか?」

 

「ええ、それにこの気配只者じゃないですよ」

 

警戒心を高める二人を他所に話を始める。

 

「自己紹介をする時間はないから省かせて貰う。そこの眷族がそろそろ勘づいている頃合だろうからな」

 

黒ウサギはその言葉を聞き、感じる気配を首を横に振って驚いていた。

 

「そんな!あの方と似た気配が天音さんから!でも、あの方とは少し違う!」

 

「詮索は無用だ。俺は彼女の恩恵の影、1部に過ぎん。だが、こうして彼女の体を借りているには理由がある。そこにいる二人には軽く話してる」

 

そういうと耀と飛鳥を見る。耀は悲しげに拳を握り、飛鳥は悔しさを滲ませていた。

 

「そ、それで貴方様がなんで天音さんの体を……」

 

「彼女が恩恵に侵食されているからだ」

 

黒ウサギの疑問にバッサリと答える。それを聞いた飛鳥と耀以外が理解できないと固まる。

 

「お、恩恵による侵食とは有り得ません!恩恵とは様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた特異な力。様々な形に変幻し、生命に宿ることでその恩恵となる力を発揮するものです!その恩恵に侵食されるなんて!」

 

「事実だ。彼女は己が恩恵を使うことで、深く結びつき、我々の生きた世界の記録を実体験として夢で見続ける。それも、名を馳せた英雄や神仏の記録だ。それ故に自身と我々との境界を見失った。ここだけ聞くと心だけの問題。だが、それを得て、彼女は凄まじい速度で技量を上げ新たな力を振っている。覚えがあるのでは無いのか?」

 

そう聞かれると覚えがあるのは黒ウサギだ。ペルセウスとのギフトゲームの時には弓を出してはいたが、魔王との一戦の時は、槍を巧みに扱い、弓矢を放ち、そして最後には軍神の槍をも顕現させ魔王を討伐した。それはそれほどの技量がないと出来ないということだ。

 

「そんなことがあるのかよ!」

 

「本来なら有り得ないと言わざるを得ませんが、現に彼女がそうなっているのでしたら事実でしょう……」

 

ジャックの言葉が重く感じる。

 

「で、では天音さんは何故相談をしなか……」

 

「彼女を知るお前たちが、それを出来ると思っているのか?」

 

それを言われて黒ウサギは黙る。言い返せなかった。天音は無茶をするし、意外にも抱え込む質である。

 

「ど、どうしたら、元に戻せるんですか?」

 

「今の状態からか?」

 

「はい!」

 

ジンは質問をする。すると、

 

「俺から彼女に戻るのにそう時間はかからない。俺の時間稼ぎもここまでだ。俺は侵食を遅らせるために出てきたのにすぎん」

 

「え?」

 

「だが、俺から彼女に戻れば侵食を進行する」

 

「止める手だては……無いの?」

 

耀は泣きそうな顔で聞く。

 

「それは彼女が乗り越える他あるまい。乗り越えることが出来なければ、ただ望まれたように力を振るう戦闘人形になるだろう」

 

そう締めくくると同時に

 

「第2陣が来たか」

 

そうつぶやくと

 

「大変です!巨人族がかつてない大軍を率いて……アンダーウッドを強襲し始めました!」

 

直後、地下都市を震わせる地鳴りが一帯に響く。

 




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