問題児たちと天空の御子が来るそうですよ?   作:皐月の王

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十三番目の太陽を撃て
恩恵に沈む少女


アンダーウッド 西南の平野に天音は降り立ち巨人族、大蛇、巨亀と対峙する。龍角を持つ鷲獅子も決死の覚悟をもって戦っているが混乱している状態では指揮系統も連携も無いに等しい。

 

(状況は良くない。連携も何もあったもんじゃない!)

 

天音は拳を握りながら地面を軽く蹴り、巨人に一気に距離を詰めて蹴りを放つ。巨人は凄まじい勢いで建物や同族を巻き込みながら吹き飛んでいく。幻獣達は天音の姿を見て驚く。天音は

 

「今のうちに陣形を立て直したりしてください!」

 

雷光を纏い天音は迫り来る魔獣、巨人との戦闘を始める。

 

『アイツは確か名無しの!』

 

『だが!あの強さは異常だぞ!』

 

神雷を放ち、光を変幻自在に鞭のようにして斬り裂いたり、レーザーのように撃ち抜いたりと多彩な戦法で戦場を駆け巡る。しかし、

 

(体が……重い……!いつも以上に動けない…!!)

 

精神的に疲弊している天音にとって今のコンディションは最悪である。精彩を欠いた動きで、勢いも平時の6〜7割程しかない。本調子から遠い状態なら決定的な隙が生じてしまう。

 

『む!危ないぞ嬢ちゃん!!』

 

「っ!」

 

「ウォォォォォオオオオオ!!!」

 

巨人が投げた鎖が幾重にも重なり天音の自由を奪う。そしてそのまま剛力の勢いにものを言わした叩きつけが天音を襲う。一度、二度、三度と地面にたたきつけられる。その度に地面に亀裂がはいり、轟音が響き渡る。幻獣は天音が挽肉になった事を疑わなかったが、次の瞬間には鎖が融解し

 

「ふっ!!」

 

鎖の束から槍を持った天音が飛び出し、鎖を持っていた巨人を仕留める。多少の出血が見られるが、戦闘続行には支障はなさそうである。そのまま天音は槍を握り魔獣と巨人族を相手にする。弓に持ち替えたり、剣を出したりして戦線を押し上げようと奮戦する。しかし、次第に意識が遠のいていく。

 

槍、剣を振るう度、弓を引く度、それは顕著に出てくる。そして鎖と重しがつけられたように徐々に体が重く感じ、意識が沈んでいく。

 

(ダメ……この感覚…!また……!!)

 

天音は頭を抑えてふらつく。そして巨人族が杖から放つ雷撃が天音を穿つ。俯き両膝を着く。天音の意識は再び恩恵の底に沈む。

 

ゆっくりと天音は立ち上がり、槍の一振眼前の巨人と魔獣の命を薙ぎ払った。

 

その場にいる誰もが理解が出来なかった。物量で押されていた少女が急に吹き返し巨人族と魔獣を一瞬で薙ぎ払ったのだ。技のキレが増したなんて生易しいものではない。そこからはほぼ単独で天音は巨人をなぎ払い、巨亀を射抜き、大蛇を蹴り穿つ。最初はその惨状を少しでも抑える為に動き始めたものだが、その現状はただ目に映る敵対者を効率よく屠っているに過ぎない。その動きに淀みはなく、無駄が無く、洗練されているものだった。

 

その動きを見る十六夜は拳を強く握りしめていた。迫り来る巨人族を投げ飛ばしながらも天音を見て

 

(本気でこのまま行けば……話に聞いた通りになるってか……槍兵ってやつが言っていた力を振るうだけの……!)

 

強くなったことは仲間としては喜ばしいことこの上ないことだが、その弊害がある以上喜ぶことは出来ないし寧ろ戦って欲しくないと十六夜は思った。だが、状況がそれを許さない。

 

(……クソが)

 

十六夜は東南平野の加勢に入る。現状それが最善だと本人が1番理解しているからだ。だからこそ、龍角を持つ鷲獅子の現状の体たらくにはひとつ文句が言いたくもなる。もっとやる気を出せば天音はと考えて頭を振る。

 

(例えそうでも……お人好しのお前なら前線に出るよな。んな事は分かってる!)

 

十六夜は巨人族と向き合い

 

「悪いが、少し付き合ってもらうぜ?ケルトの巨人族、収穫祭の妨害の件と個人的な八つ当たりも含めてな!!」

 

獰猛に吠えて十六夜も戦闘を本格的に開始する。

 

報告を受け戦場を見ているサラは呆けていた。

 

「黒ウサギ殿……なんだ、アレは」

 

一大事に何を呆けていると言われればそうなのだが、普段は毅然とした立ち振る舞いをする彼女が呆けるにも理由がある。

 

東南の十六夜と西南の天音により巨人族の進行を食い止め戦線を押し上げるどころか殲滅せんとする勢いで形勢をひっくり返そうとしていたのだ。

 

天音は先程の戦いでも話を聞いていたが、十六夜は全く初めて見聞きするものだ。その目で二人の戦いを見るとまさに一騎当千の強者である。だが、サラが黒ウサギの方を見ると辛そうな顔をしていた。その視線の先は西南、天音のいる方だ。その戦い方、武器の持ち替えを見る度に想起されるのは神話の英雄の技量。が槍兵が言う通りにこのままじゃ進めば、感情持たぬ戦闘人形となると……。

 

(天音さん……!槍兵さんは乗り越えるしかないと仰っていましたが!何をどう天音さんが乗り越えたら大丈夫となるのですか!?)

 

解決策を言ったようで要約すると本人次第だ。ただ、黒ウサギは見ているしかない現状がどうにかしたいと十六夜を頼る形で、今回の件を話した。

 

その時の十六夜は大きなため息をつき、顔を手で抑えて天を仰ぎ

 

『厄介なことになりやがったな……。腹になにか抱えてんなぁって思ってたけど、思ってたより重症だな!!』

 

笑いながらに言っていたが、目だけは笑っていなかった。そんな事を思い出しながらも黒ウサギは槍兵の言葉を思い出す。

 

『……天音を頼む』

 

あの場の全員が聞いた言葉。天音の仲間であるノーネームに託された言葉。そんな風に言われたら何を悲観する必要がある。何を迷う必要がある。出来ることなんて分かりきっているのだ。だったら、それをすればいいと黒ウサギはふと吹っ切れた。

 

(そうです!!天音さんが乗り越えて解決するなら!黒ウサギ達が支えればいいのです!!その為に槍兵さんは黒ウサギ達に託したはずです!!)

 

黒ウサギは奮い立ち1歩前に出てサラに言う。

 

「審議決議が受理される時刻は間もなくです。それを知らせますので、サラ様は都市内の魔獣掃討作戦に加わり指揮を!」

 

「うむ。心得た」

 

黒ウサギは自身のギフトカードから疑似神格・金剛杵取り出した。そして髪を緋色に変えて立つ。ヒョコヒョコとウサ耳を揺らした黒ウサギアンダーウッド全域に宣言する。

 

「"審判権限"の発動が受理されました!只今から"SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"は一時休戦し、審議決議を執り行います!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!繰り返し……!」

 

黒ウサギが審議決議の宣言をしている最中、巨龍は咆哮をあげて動き出した。雷雲を撒き散らしアンダーウッドへと急降下し始めたのだ。身動ぎひとつで大気を震撼させる。巨龍はただ動いただけに過ぎない。審議決議が受理されている以上、危害を加えようとする行動に意味が無いからだ。だが、それだけで戦場の全てを空へと巻き込んで吹き飛ばした。敵味方の概念なく等しくその場にいる全てを空へ余波だけで吹き飛ばした。

 

「馬鹿な……こんなことが!?」

 

サラは軋む大樹に縋り付きその光景を見る。視界に移るのは巨龍と巨龍によって巻き上げられた瓦礫の残骸と悲鳴をあげて落下する仲間と巨人族のみである。

 

その時、落下する瓦礫に紛れて何かが光り輝くと、仲間を助けるように空中に光のネットが広範囲に展開された。

 

時はほんの少し巻き戻り、巨龍が動きその場の全員が空中に投げ出された時に戻る。天音も例外なく空中に投げ出される。そしてそのタイミングで天音の意識が戻ったのだ

 

「っ!?うっ……おぇっ……!!」

 

急に意識が戻ったのと、今まで沈んでいたと言う事実で思わず吐きそうになる。一寸の先にもう戻れないんじゃないかと言う不快感と恐怖が天音を確実に蝕む。だが、そんな感傷に浸っている状況じゃないというのを理解させられる。

 

「皆……!!」

 

瞬時に天音は頭を働かせる。1人でも多く仲間を助ける為に。しかし、そんな便利な技量も武具も思い至らない。しかし、ゲーマーとしての天音が思いつく。乾いた笑いを漏らし

 

「……助からなくても、文句なしだよ」

 

天音は自身の力の光を瞬時に集約させ

 

「届け……!!」

 

それを自身を中心に網目状に光を展開し、瓦礫と巨人族、魔獣を除いて引っかかる様に展開する。そうして、ゲームは一時的に休戦へと至る。




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