問題児たちと天空の御子が来るそうですよ?   作:皐月の王

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実力試し

その後、本拠に戻った十六夜、飛鳥、天音、ジンは耀の容体を確認するため、耀の部屋に行く。見舞いのあと談話室のソファーで寛いでいた十六夜は

 

「春日部の傷は完治で休めば元気になるか……流石不死の英雄が身にまとっていた鎧だな」

 

「はい、それを出したのが、天音さんです。傷が完治したのを見届け鎧をまた収納しました。あと天音さんのアドバイスで増血を施しました」

 

『耀は出血が激しかったから、輸血か増血しないと行けないじゃないかな?』

 

とアドバイスをして天音はソファーで座りながら音楽を聞き目を瞑っていた。小さく寝息を立てているようにも思える

 

「輸血となると専用のコミュニティに依頼しなければなりません」

 

「金がかからない方法があるならそっちでいいだろ。それで、例のゲームはどうなった?」

 

十六夜と黒ウサギは本拠の三階にある談話室で、仲間が景品に出されるゲームのことを話をしていた、天音は目を瞑っていながらも耳に内容を挟んでいる。申請から戻った黒ウサギは十六夜にその事を問われると、一転して泣きそうになる

 

「ゲームが延期?」

 

「はい………申請に行った先で知りました。このまま中止の線もあるそうです」

 

黒ウサギは口惜しそうに顔を歪め落ち込んでいる。十六夜は肩透かしを食らったようにソファーに寝そべった。

 

「なんてつまらない事をしてくれるんだ。白夜叉に言ってもどうにかならないのか?」

 

「どうにもならないでしょう。どうやら巨額の買い手がついてしまったそうです」

 

十六夜の表情は目に見えて、不快感を露にする。1度はゲームの商品として出したものを、金を積まれたっという理由で取り下げるのはホストとしていい事ではない。十六夜は盛大に舌打ちをした

 

「チッ。所詮は売買組織かってことかよ。サウザンドアイズは巨大なコミュニティじゃなかったのか?プライドは無いのかよ」

 

「仕方ないですよ。サウザンドアイズは群体のコミュニティです。白夜叉様のような直轄の幹部が半数、傘下のコミュニティが半数です。今回の主催はサウザンドアイズの傘下のコミュニティ "ペルセウス" 。双女神の看板に傷が付くことも気にならないほどのお金やギフトを得ることが出来れば、ゲームの撤回ぐらいやるでしょう」

 

達観したような物言いの黒ウサギだが、悔しさで言えば、十六夜の何倍も感じているはず、だが冷静で入れたのは、箱庭においてギフトゲームは絶対の法律だからだ。勝利者は得ることが出来、敗者は奪われ、所有されてしまう。その仲間を集めるのは容易じゃない。

 

「……?」

 

天音は窓の方に気配を感じ、目をゆっくり開く、その目は眠たそうが、すぐに目を擦り、ヘッドホンを外しゆっくり窓の方に向かう

 

「気づかれたか」

 

「君は?」

 

「私はレティシア=ドラクレア……今は人に所有されるみだが、ノーネームのメンバーだったものだ」

 

その見た目は美人で、プラチナブロンドの様だ、天音は見たことのないような美人を目の前に、可愛いといい抱きしめたくなったが、グッと堪え、錠を開けてレティシアを招き入れる

 

「私の名前は八神天音。新しいノーネームの一員です。よろしく、レティシア」

 

「うむ、黒ウサギは今いているか?」

 

「すぐそこに居るよ」

 

一方黒ウサギは

 

「それはもう! スーパープラチナブロンドの超美人さんです。指を通すと絹糸見たいに肌触りが良くて、湯浴みの時に濡れた髪はが星の光でキラキラするのです。加えて思慮深く、黒ウサギより先輩でとても可愛がってくれました。

近くにいるのなら、せめて1度お話したかったのですけど………」

 

レティシアについて熱く語っていた。天音は黒ウサギに

 

「黒ウサギ、それってレティシアのことでしょ?」

 

それを聞いた黒ウサギは

 

「なぜそのお方のお名前を!?」

 

黒ウサギが天音の方を見る、そこには黒ウサギの先輩のレティシア=ドラクレアが居た

 

「だって、今招き入れたし、言ってた特徴と一致したから」

 

「嬉しいことを言ってくれるじゃないか黒ウサギ」

 

驚いた黒ウサギは急いでレティシアに駆け寄る

 

「レ、レティシア様!?」

 

「様はよせ。今の私は他人に所有される身分だ。 "箱庭の貴族" ともあろうのが、モノに敬意を払っていては笑われるぞ」

 

「こんな場所からの入室で済まない。ジンに見つからずに黒ウサギと会いたかったんだ」

 

「そ、そうでしたか。あ、すぐにお茶を淹れるので少々お待ち下さい!」

 

久しぶりに会えた仲間と会えたことが嬉しいかったのか、黒ウサギは小躍りするように茶室へ向かう。

 

「いつから気づいていたんだよ?天音」

 

「黒ウサギが 『ゲームの撤回ぐらいやるでしょう』って言ったあたりに気づいた」

 

十六夜の存在に気づいたレティシアは十六夜の視線に小首をかしげる。

 

「どうした?私の顔に何かついているか?」

 

「別に前評判通りの美少女だと思って、目の保養に観賞してた」

 

十六夜の真剣な回答だったのだが、レティシアは心底楽しそうな哄笑で返す。口元を押さえながら笑いを噛み殺し、なるべく上品に装って席についた。

 

「なるほど、君が十六夜か。白夜叉の話通りに歯に衣着せぬ男だな。しかし観賞するなら黒ウサギも負けてないと思うのだが。あれは私と違う方向性の可愛さがあるぞ」

 

「あれは、愛玩動物なんだから、弄ってナンボだろ」

 

「ふむ、否定しない」

 

「確かにね」

 

「否定してください!」

 

紅茶のティーセットを持ってきた黒ウサギ口を尖らせ怒る。温められたカップに紅茶を注ぐ際も不機嫌だ

 

「レティシア様に比べれば世の女性の殆どが鑑賞価値のない女性でございます。黒ウサギだけが見劣る訳ではありません」

 

「いや、全く負けちゃいないぜ?違う方向性で美人なのは否定しねぇよ、好みでいえば、天音と黒ウサギがタイプだからな」

 

「っ……。あ、ありがとう……」

 

「………そ、そうですか」

 

不意打ちの言葉に思わず耳まで紅くなる二人。黒ウサギは賛辞や愛の言葉は星の数受けてきたが、十六夜の言葉は不自然なほどまで耳に残り、天音も言われていたが、黒ウサギ同様に耳に残る

 

「……黒ウサギ。まさか私は無粋な事をしたか?」

 

「滅相もございません!して、どのようなご要件ですか?」

 

慌てて話題を戻す。レティシアは他人に所有される身分。その彼女が主の命も無く来たということは、相応のリスクを背負って来たということだ。ならばただ会いに来ただけのはずが無い。それならジンにも顔を見せていただろう。ジンに聞かれてはまずい話をしに来たと推測するのが、レティシアが苦笑して首を振る

 

「用件って程じゃない。新生コミュニティがどの程度の力を持っているのか、それを見に来たんだ。ジンに会いたくないというのは、合わせる顔がないからだよ。お前達の仲間を傷つける結果になってしまったからな」

 

思い出す、予想はしていたがあの木々が鬼化していたのはレティシアの仕業だった。鬼種の中でも個体が最も少ない一つとされる吸血鬼の純血。その生態は十六夜、天音の知るのとさほど変わりない。大きな相違があるのなら、互いの世界における吸血鬼の思想だろう。箱庭の創始者の眷属であるウサギが "箱庭の貴族" と呼ばれるのと同様に、箱庭の世界でのみ太陽の光を浴びれる彼らは、 "箱庭の騎士" と称される。彼らがもたらす恩恵は儀式を省き互いの体液を交換し合うことで、鬼種化を成立させることが出来る。この恩恵を受けた者は吸血鬼として食人の気を持つが、純血以外の吸血鬼に血を吸われても、鬼種化することは無い。

よって血に飢えた者は独自にギフトゲームを開催し、チップの代わりに吸血を行う。箱庭で人と吸血鬼が共存できるのは互いにルールを尊重しているからだ、太陽の光を浴び、平穏と誇りを胸に生活し箱庭を守る姿から吸血鬼の純血は "箱庭の騎士"と呼び称される存在になったのだ

 

「吸血鬼?なるほど、だから美人設定なのか」

 

「吸血鬼だから美少女なんだ」

 

「は?」

 

「え?」

 

「「いや、いいから続けて(続けてくれ)」

 

十六夜と天音はヒラヒラと手を振る

 

「実は黒ウサギ達が "ノーネーム"としてコミュニティの再建を掲げたと聞いた時、なんと愚かな真似を……と憤っていた。それがどれだけ茨の道か、お前がわかっていないと思えなかったからな」

 

「……」

 

「コミュニティを解散するように説得するため、ようやくお前達と接触するチャンスを得た時……看過できない話を耳にした。神格級のギフト保持者が、黒ウサギの同士としてコミュニティに参加したとな」

 

黒ウサギの視線が、天音と十六夜の方に移る。おそらく白夜叉にでも聞いたもだろう。四桁外門に本拠を持つ "階層支配者"の白夜叉が、最下層である七桁の外門に足を運んでいた理由は、秘密裏にレティシアを此処まで連れてくるためだった。

 

「そこで私は一つ試して見たくなった。その新人達がコミュニティを救えるだけの力を秘めているのかを」

 

「結果は?」

 

黒ウサギが真剣な双眸で問う。レティシアは苦笑しながら首を振る

 

「生憎、ガルドでは当て馬にもならなかったよ。ゲームに参加した彼女達はまだまだ青い果実で判断に困る。……こうして足を運んだはいいが、さて。私はお前達に何と言葉をかければいいのか」

 

自分でも理解出来ない胸の内にまた苦笑する

 

「違うね。アナタは言葉を掛けたくて古巣に足を運んだじゃない。古巣のな仲間が今後、自立した組織としてやっていける姿を見て、安心したかっただけだろ?」

 

十六夜の言葉に首肯するレティシア。しかし目的は果たされずに終わった、二人は飛鳥と耀は人間の中ではずば抜けた才能の持ち主だ。だがいかんせん原石。仲間の将来を安心して託すには至らない。だが解散するように説得するには遅すぎた、それはもう手遅れだ。

危険を冒してまでレティシアの目的中途半端で進行しているのだ。自嘲が拭えないレティシアに天音が提案する

 

「その不安をぬぐえる簡単な方法があるよ」

 

「なに?」

 

「簡単な話だよ、レティシアは "ノーネーム"が魔王を相手に戦えるかが不安なのなら、その身で力を試せばいいんだよ、どう?いい案だと思うけど、元魔王様?」

 

天音の意図を理解したレティシアは一瞬唖然とした、十六夜は

 

「先に言われたか……そういう事だ元魔王様簡単だが思いつかなかっただろ?下手な策を弄さず実力を測れる」

 

レティシアは弾けるような笑い声をあげて、涙目になりながら立ち上がる。

 

「ふふ……なるほど。それは思いつかなかった。実にわかりやすい。初めからそうしていればよかったなあ」

 

「ちょ、ちょっと御三人様?」

 

「ゲームのルールはどうする?」

 

「どうせ力試しだ。手間暇かける必要は無い。双方が共に一撃ずつ撃ち合い、それを受け合う」

 

「撃ち合って、立っていたほうの勝ちだね、いいね実にわかりやすいよ」

 

笑を交わし、天音とレティシアは窓から中庭に同時に飛び出た。開け開かれていた窓は二人を遮ることなく通す。窓から十間ほど離れて中庭で向かい合う二人は天と地に位置していた。

 

「レティシアも空飛べるんだ、翼で飛んでいるの?」

 

「ああ。翼では飛んでいないんだ、制空権を支配されるのは不満か?」

 

「別に、ルールには書いてないし。この力試しに制空権は有無は私には意味は無いよ」

 

肩を竦め煽るように挑発する天音、レティシアはその態度をまず評価する、ギフトゲームにおいて、相手が未知数なのは基本だ、相手が見せる未知数に自信が持つギフトで如何に対抗するかを競うことこそギフトゲームの真髄であえり醍醐味なのだ。

 

「(なるほど。気構えは十分。あとは実力が伴うか否か……!)」

 

満月を背負うレティシアは微笑と共に黒い翼を広げ、己のギフトゲームを取り出した。金と紅と黒のコントラストで彩られたギフトカードを見た黒ウサギは蒼白になって叫ぶ

 

「レティシア様!?そのカードは」

 

「下がれ黒ウサギ。力試しとはいえ、これが決闘であることには変わりがない」

 

ギフトカードが輝き、封印されていたギフトが顕現する。光の粒子が収束して外殻を作り、突然爆ぜたように長い柄の武具が現れた

 

「互いにランスを1回投擲する。受けては止められねば敗北。悪いが先手は譲ってもらうぞ」

 

「いいよ、お好きにどうぞ」

 

投擲用に作られたランスを掲げる

 

「ふっーー!」

 

レティシアは呼吸を整え、翼を大きく広げる。全身をしならせた反動で打ち出すと、その衝撃で空気中に視認できるほどの巨大な波紋だ

 

「ハァア!」

 

怒号とともに放たれた槍は摩擦で熱を帯び、流星の如く待機を揺らして天音の元に迫る、天音は

 

「そら!」

 

足でその勢いを完全に殺し、槍を空中に待機させるようにリフティングであげて

 

「今度はこっち!」

 

蹴り抜いた

 

「「ーーーーは?」」

 

黒ウサギとレティシアは素っ頓狂な声を上げる、現在の全霊を込めて投擲したランスをいとも簡単に止められ、投擲時より早く大気の壁を易々と突破する速度で、蹴りにより、砕け散り、散弾銃にように第三宇宙速度で迫る。いくら吸血鬼の純血種の彼女でもこれをまともに食らえばひとたまりもない

 

「(これほどか……)」

 

着弾する間際、黒ウサギが

 

「レティシア様!」

 

レティシアに狭る鉄塊を黒ウサギは全て払い落とした。レティシアは驚愕しながら黒ウサギを抱きとめ、翼をたたんで落下する。

 

「く、黒ウサギ!何を!」

 

レティシアが声を上げる、それは黒ウサギの手に握られたレティシアから取ったギフトカードに対する講義だ。

黒ウサギは抗議に乗らずレティシアのギフトカードを見つめ震える声で向き直る

 

「ギフトネーム・ "純潔の吸血姫"……やっぱり、ギフトネームが変わっている。鬼種は残っているものの、神格が残っていない」

 

「っ……!」

 

さっと目を背けるレティシア。歩み寄る天音は

 

「もしかして、レティシアのギフトって吸血鬼のギフトしか」

 

「……はい。武具は多少残してありますが、自身に宿るギフトは……」

 

天音はガッカリした風にため息をする。相手は弱りきっていた、そんな状態で相手にされたのが不服だった

 

 

「白けるよ、思ったより力がこもってないわけだ……他人に所有されたらギフトまで取られてしまうものなの?」

 

「いいえ……魔王がコミュニティから奪ったのは人材であってギフトではありません。武具などの顕現しているギフトと違い "恩恵"は様々な要因から受けた奇跡、魂の一部。隷属させた相手から合意なしにギフトを奪うことは出来ません」

 

それはレティシアが自らのギフトを差し出したということだ。レティシアは苦虫を噛み潰したような顔で目をそらし黒ウサギも苦い顔で問う

 

「レティシア様は純血の鬼種と神格の両方を備えていたために "魔王"を自称できるだけの力は持っていました。今の貴女はかつての十分の一にも満ちません。どうして……」

 

「それは……」

 

「まあ、話があるなら屋敷に戻ってこいよ」

 

十六夜が屋敷から言う、このまま立ち話もあれだと十六夜の配慮だ

 

「……そう、ですね」

 

レティシアと黒ウサギは沈鬱そうに頷き、屋敷に戻るのであった

 

 

 




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