いずく1/2   作:知ったか豆腐

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『たとえばこんな緑谷出久』より独立させました。


プロローグ&雄英入学
いずく1/2 その1


 緑谷出久。14歳。中学三年生。

 いまどき珍しい“無個性”の男子中学生だ。

 

 無個性ゆえに学校でヒーロー志望を笑われた帰り道。

 出久はかすかな声を聞き取り、人気のない路地裏に足を向けた。

 

「あれ? こ、これは!?」

 

 路地裏に入って出久が見つけたのは衰弱した様子の狐。

 かなり元気がなく、弱っている様子に慌てて近くに駆け寄る。

 

「大変だ! ここは動物病院に連絡を……いや、野生動物相手の対応は保健所かな? とりあえず専門家の意見を聞いて対応を指示してもらわないと」

 

 携帯を片手にブツブツとつぶやく出久。

 その声に気が付いたのか、狐が頭をあげて()()()()()()()

 

『おぬし、“無個性”か? 男……是非も無し。おぬしの生涯、相乗りさせてもらうぞ!』

「え?」

 

 突如聞こえてきた女性の声に驚く暇もなく、出久は飛びかかってきた狐に意識を奪われる。

 

 この日、緑谷出久の運命は大きく変わることとなった。

 

 

     ==========

 

 ――――雄英高校 屋内訓練用ビル

 

 雄英に入学した出久は、オールマイトの初授業「ヒーロー基礎学」の戦闘訓練で因縁の幼馴染である爆豪と対峙していた。

 

「“個性”使えよデク。全力でてめェをねじふせる」

 

 どう猛に笑う爆豪に出久は気圧される。

 出久が無個性ではなく個性があったことを隠されていて、騙されたと怒りに燃える爆豪は容赦ない攻勢を仕掛け、出久を追いこんでいた。

 これまでは個性を使わずに戦ってきた出久であったが、これ以上、その戦い方を続けることは限界を迎えている。

 

『なにをしておるのじゃ、おぬし。何故、妾の力を使わん!』

 

 “個性”の使用をためらう出久に、一年前から体に住み着いた同居人が声を上げる。

 いま出久が持っている個性の力はもともとはこの同居人の能力だ。

 元来、自分の物でない力を使うリスク。それを出久は恐れて使っていないのだ。

 

『でも、今の僕には個性を使った時のリスクをコントロールできていないんだ』

『バカかおぬし。体に影響はないじゃろうが。あんなものリスクとは言わん』

『えぇっ!? 影響がないわけでは……というか、僕、あれが一番嫌なんだけど!』

 

 心の中で会話をする二人。

 個性使用のリスク、いや、正確に言うなら後遺症だろうか。

 それを巡って二名は言い争っていたのだ。

 もちろん、いまは戦闘中。悩んでいる猶予はもうない。

 

『ええい、埒が明かん。おぬしにもう任せておけるか! おぬしの身体、使わせてもらうぞ』

『え、ちょっと待って』

『イ・ヤ・じゃ!』

 

 焦れた同居人が出久の身体の主導権を奪う。

 薄れゆく意識の中、出久は同居人の言葉を耳にした。

 

『安心せい! あの爆破小僧は妾がコテンパンにしておくからの!』

 

 全然安心できない。悪い予感がする。

 そう思いつつも意識を失う出久であった。

 まぁ、この予感は的中するのだが。

 

 

「先生、緑谷の身体が!」

「あ、アンビリーバボー」

 

 画面越しに戦いを眺めていたクラスメイトとオールマイトが驚きの声を上げる。

 それもそのはず。

 画面の向こう側に移る緑谷出久の姿が大きく変化していたのだ。

 まず目立つのは頭に生えた三角形の耳にふさふさの毛に覆われた九つの尻尾。

 昔話に出てきそうな九尾の狐の特徴をした姿に変わっていたのだ。

 

 それだけではない。

 

「緑谷ちゃん、女の子になってないかしら?」

 

 思ったことははっきり口にするタイプの蛙吹が皆の疑問を代弁する。

 大きく膨らんだ胸にくびれた腰、すこし華奢になった身体。

 全体的に丸みを帯びた女性らしい肉体的な特徴が身体にフィットしたジャンプスーツのせいで余計に強調されてしまっている。

 

「緑谷、めっちゃエロい!」

 

 涎を流さんばかりに喜ぶ峰田を耳郎が女性の敵と制裁を加える。

 しかしながら、皆の心中としては同意できるところが悲しいところだった。

 

 

 

「な、なんだてめぇは!?」

 

 一方、目の前で幼馴染が女にかわるという異常事態を見せつけられた爆豪は混乱の中にいた。

 まぁ、10年以上一緒にいた男がいきなり女になって何も感じなかったら逆におかしいのだけれど。

 呆然とする爆豪に対して、イズクは艶美ともいえる笑みを浮かべた。

 

「クフフ。爆破小僧が間抜けな顔をしとるのう。どれ、お望み通り妾の力を見せてやろうかえ?」

 

 そう言って振るった腕の一振りで――――

 

「なん……だと?」

 

 天井数枚をぶち抜き、数階分の吹き抜けを作り出した。

 

「よそ見とは余裕じゃの? これでおとなしく寝とれ」

「チッ、しまっ……た」

 

 あまりの威力に目を奪われたところをすかさず接近したイズクは至近距離で目を合わせ爆豪を昏倒させた。

 視線による暗示・催眠術の類の能力だ。

 

「あっけないのう。まあ、妾にかかればこんなものか。さてと、時間もないしさっさと終わらせねばの」

 

 そう言って自らが空けた穴から上階に飛び上がるイズク。

 核はあっさりと回収され、ヒーローチームの勝利となった。

 

「緑谷少年……いや、少女? とにかく、なんだあの個性は」

 

 オールマイトのつぶやきに皆が頷く。

 戻って来た出久が質問攻めにあう運命はここに決定したのであった。

 

 

     =========

個性『羽衣狐』

 「他人に憑りつく個性」を持った狐が人から人に渡り歩くことで意思を持つ“個性”となったもの。

 出久の中の同居人である。

 超常黎明期から存在しており、人間社会を渡り歩いてきたため知識は深い。

 一度憑りついたらその宿主が死ぬまで離れられない。

 他人から他人に移るたびに能力が増えるという性質を持っており、出久で九代目。尾の数は代替わりごとに増えてきた。

 本来なら、宿主は女性を好んでいる。もとになった狐がメスであったため。

 憑りつく相手は“無個性”であることが条件にあり、無個性の少なくなった現代で前の宿主が亡くなり、消滅しかかっていたところを出久が発見。

 男だが選択肢がないということで宿主に選んだ。

 

 今まで女性ばかり宿主にしていたため、羽衣狐の能力を使おうとすると、出久が女体化する。

 個性を使うと女になっちゃうふざけた体質。

 ほんの一瞬使うだけなら女体化しないため、出久はコントロールができるようになれば克服できると信じている。(女体化しなくなるとはだれも言っていない)

 

 ちなみに、女体化したイズクは昔のお母さんに似たスタイルのいい美少女になります。やったね!

 

 さらについでに羽衣狐の能力はこちら。

 1.憑依+狐の運動能力 2.怪力 3.狐火 4.変化 5.幻術 6.式神召喚 7.催眠術・暗示 8.念力 9.巨大九尾化

 

 結構チートな個性である。

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