雄英体育祭ももう終盤。
次は決勝戦。最後の試合。相手は爆豪という強敵である。
「相手はかっちゃんだ。油断できないぞ……」
真剣な表情をする出久であったが、実はシュールな状況だったりする。
『主様よ、気持ちは分かるが現実逃避は良くないぞえ?』
『ウン、ソウダネー』
どこかうつろな瞳で見つめるのは、テーブルの上にある〝女性用下着”、つまりブラジャーが置いてあった。
先ほどまでの試合でノーブラであったことが八百万にバレてしまった結果、
「動き回るのにノーブラは駄目ですわ! すぐにお作りしますわ!」
と、うきうきで作り出された物である。
『天下の雄英が全国波かつ生放送でブルンバストは拙い』との意見は理解できるのだが、心情的に使いたくないといったところ。
まぁ、せっかくの好意を無視するわけにもいかないし、無視したら無視したで八百万が怖い出久であった。
「はぁ……、試合もあるし早く着替えないと」
いろいろと葛藤していたのだが、諦めて着替えを始める出久。
正しいブラのつけ方は前回で学習済みである。男の子として複雑だ。
上着とTシャツを脱いで半裸になれば、自分の見事なバストがたわわに実っているのが目に入り、泣きそうになる。
一人の男の子として出久も興味がないわけではないが、それが自分のモノであるなら話は別であるわけで。
ちょっとしょんぼりしながらブラを手に取った。
その瞬間、大きく音を響かせて控室のドアが勢いよく開けられた。
「あ?」
「…………へっ?」
ドアを蹴り開けた姿のまま固まる爆豪。
なんで、おまえがここに!? と、驚くもすぐさま自分のミスに気が付いて焦りだす。
彼の明晰な頭脳はこの状況が自分にとって良くない状況であると瞬時に判断し、状況を打開すべく言葉を探す。
目の前にいる幼馴染(現在女)に対して、彼はどんな言葉を口にするのか。
「て、てめえは、身体は女でも本当は男だ! だから……問題はねぇ!!」
このセリフ、男が男の裸を見たところで問題ない、セーフだ!
と、主張したいのであろうが、出久に対してセクハラしても問題ないと言っているようにも捉えられるのでアウトであろう。
というより、絵面からして既に着替え中の女子の部屋に男子が押し入っている時点でもうヤバイのだが。
「いいからでてけよ!!」
出久の反応はごもっともである。
つべこべ言わずに一言謝って出ていけばよかったのにね。
無駄に自分を正当化しようとした結果は、顔に大きなもみじのプレゼントである。
試合前のダメージだが、まぁ、自業自得というものであろう。
「うわあああ! かっちゃん相手になんてことを!? てか、ぼくのこの反応の仕方って何!?」
つい、女の子みたいな反応をしてしまった自分に戸惑う出久。
さりげなく身体だけでなく、精神にも影響が!?
『いや、クラスメイトの女子どもの教育が優秀すぎるんじゃないかの?』
気をつけろ、出久。知らないうちに行動が刷り込まれているぞ!
「て、てめえは、身体は女でも本当は男だ! だから……問題はねぇ!!」
このセリフ、男が男の裸を見たところで問題ない、セーフだ! と、主張したいのであろうが、出久に対してセクハラしても問題ないと言っているようにも捉えられるのでアウトであろう。
事実、その場にいた人間には後者の意味で捉えられてしまった。
「ふーん、爆豪くん、デクちゃんになら手を出しても大丈夫っていいたいんやね?」
「ま、丸顔!? なんでここに!?」
爆豪の背後からスッとまったく麗らかでない顔で声をかけてきたのは麗日お茶子。
通称、デクちゃんセコム1号である。
「試合前に最後の応援にって思って来てみたんだけど……爆豪くん、ナニシテルノカナ?」
答え次第ではそのアバラぶち抜くぞ、と、堅気の人間がしちゃいけない顔で迫る麗日に爆豪は冷や汗を流す。
なんだ、このプレッシャーは!?
「へ、部屋を間違えたんだ! これは事故だ!」
「ふーん。そうなの? デクちゃん」
爆豪の言葉を受けて、出久に確認をとる麗日。
だが、無情にも出久は混乱のあまり答えられる状況ではなく、顔を赤くして涙目で見るだけであった。
この状況証拠(冤罪)をもって麗日の判決は決まった。
被告! 爆豪勝己!
判決!
刑罰! 死刑! 死刑! 死刑!!
「その罪を贖え! 爆豪勝己!」
「ちょっと待てや! どんな魔女裁判だァ!!」
蝶のように舞い、蜂のように死ねと、ばかりに襲い掛かる麗日から逃げ出す爆豪。
当然決勝戦には間に合わなかった。
こうして優勝は緑谷出久となったのである。
~IF もしもセコムがその場にいたら~