いずく1/2   作:知ったか豆腐

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いずく1/2 その13(爆豪戦 本編)

 雄英体育祭、一年の部。その決勝戦がまさに始まろうとしていた。

 この栄光ある決勝戦に駒を進めたのは、一人は緑谷出久。体育祭の第一種目からトップを維持し続け、試合の度に新たな力を見せつけてきた今回の優勝候補の一人である。

 もう一人は爆豪勝己。選手宣誓にて自らの優勝を宣言し、その言にたがわぬ実力を示し続けてきた。残念ながらトップの座こそとっていないが、優勝を狙うにふさわしい実力者の一人である。

 どちらも一年生とは思えぬスペックを見せてきた。

 会場のプロヒーローたちも注目する中ステージの上で対峙する。

 

「なぁ、デク。最初の戦闘訓練を覚えてっか?」

「うん。忘れるわけないよ」

 

 静かに語りかける爆豪。しかし、その目は幻術対策で視線こそ合わせないものの、闘志に満ちていた。

 

「あの日に負けてから俺はてめえに勝つことだけを考えてきた」

 

 ひたすら自らを鍛え上げ、強くなるためには他人に教えを請うてまでも力をつけてきたのだ、と、語る爆豪に出久も負けずと頷く。

 

「かっちゃんがすごいのは知ってる。でも、僕だってキミに負けない……負けたくない!」

「あの日の雪辱を果たす! 今日、ここでなァ!!」

 

 互いに宣戦布告をして戦闘準備をする。そして間もなく開始の合図が告げられた。

 

 

 先に仕掛けたのは爆豪。

 スタングレネードの閃光が出久の視界を奪い、幻術を使えなくさせる。

 

「しまった!? グハッ!」

「油断してんじゃねえよ! ナメてんのか!!」

 

 目を閉じてしまった出久に正面から爆破をブチかます爆豪。

 九尾の自動防御も正面は薄いため、簡単に破られてしまった。

 とっさに狐火を放ち、後退して距離をとった出久だったが、顔にかかる影に気が付いてハッと上を見上げる。

 

「死ねぇ!」

「うわあああ!」

 

 いつの間にか空中にいた爆豪に頭上から攻撃をくらい、地面を転がる出久。むろんそのまま逃がすような爆豪ではない。

 身体を回転させるように連続爆破で追撃し、最後についに強力な蹴りを当てる。

 今大会で初めて出久がくらったクリーンヒットに会場がざわめく。

 当初の予想を裏切り、爆豪の一方的な試合展開となっている。

 これには出久も焦りを隠せない。

 

『くそ。考えてから動く僕のスタイルじゃ間に合わない』

『主様、妾に代われ!』

 

 爆豪の見てから動ける反応速度に磨きをかけた猛攻に出久は手も足も出ない。

 ならば、動物的本能の勘で反応できる乙音の〝白面金毛モード”で対抗するまで。

 一瞬にして体が変化し、通常モードよりも強化された身体能力で距離を詰め、拳を振りぬく乙音。だが――――

 

「カハッ……」

「見えてんだよ、そんな攻撃」

 

 拳は空を切り、逆にカウンター気味に反撃を貰って吹き飛ばされてしまった。

 再び立ちあがり攻撃を仕掛けるも、また同じように反撃をくらう。

 まるで攻撃を見透かされているような感覚に舌打ちが漏れる。

 

「チィ! 妾の動きが見切られている」

「てめぇの動きは速いが、速いだけで単純なんだよ」

 

 単純すぎて読みやすい、と、告げる爆豪だが、やっていることは高度な先読みである。

 見てから動く反応ではなく、相手の動きを予測して対応する能力は、以前の爆豪にはなかったものだ。

 この力を手に入れたきっかけはもう少し前のことだ。

 

 爆豪は最初の戦闘訓練に負けた翌日に、その足で三年生の教室を訪れていた。

 雄英ビッグ3と呼ばれる三人の実力者の元へ。

 結果、ビッグ3の一人、ミリオに半ば弟子入りさせてもらう形で、時間を見つけては教えを受けていた。

 ミリオの戦闘スタイルは何よりも「予測」を重視した戦い方だ。それに倣った爆豪も必然「予測」の力を身に着けていく。

 元来天才型の爆豪である。ミリオとの戦闘を通して驚くべきスピードで「予測」する力を身に着けていった。

 その結果がこの試合だ。

 守勢に回った乙音の九尾の自動防御ですら虚実を交えた攻撃で空振りをさせ、攻撃を当てるほどの行動「予測」だ。

 師であるミリオに比べれば甘い「予測」も、本人がもともと持っている「見てから動く」反応速度で対応できてしまう。

 

 以前戦った時から新たに身に着けた爆豪の実力に自身の敗北を予感する出久。

 

『このままじゃ、かっちゃんに勝てない……』

『主様、弱気になるな!』

『わかってる! でも、乙音の力を借りるだけじゃだめだ』

 

 出久の思考は間に合わず、乙音の動きは見切られる。二人のどちらが相手をしても勝てないならばどうするべきか?

 出久の出した答えはシンプルだ。

 

『僕と乙音の力を合わせるんだ! 一緒に、戦って。僕と!』

『主様よ……よかろう! 愉しい相乗りとゆこうではないか!』

 

 狐火の業火が出久の周囲を囲むように燃え上がり、爆豪に距離をとらせた。

 そして、その炎が消え去って現れた出久の姿に爆豪は目を見開いて驚く。

 

「てめえ、何だ、その姿は?」

「悪いけどかっちゃん」「ここからは二対一で相手させてもらうぞえ?」

 

 新たに見せた出久の姿。

 まず目に付くのは左右半々で別れた髪の色だ。

 右は緑、左は金とツートンカラーとなっている。

 また、瞳の色は右目が緑で左目が赤と、出久と乙音の特徴が左右で別れて現れている。

 

 新モード、ハーフ&ハーフモードとでも呼ぶべきこの形態は、白面金毛モードの身体強化レベルと高火力に通常モードの細やかなコントロールや幻術能力を合わせ持っている。

 要は出久の思考・考察と乙音の動物的勘による反応を両立させたモードだ。

 

「いくよ、かっちゃん!」「いくぞ、爆破小僧!」

「チッ、また新たな能力かよ。出し惜しみしてんじゃねぇぞ、デクゥウウ!」

 

 正面からぶつかる両者。

 そのさなか、出久が乙音に指示を出す。

 

『右の大振り、くるよ!』

 

 出久の思考・考察が爆豪の動きを読みとり、乙音が尾の一つを操って爆豪の右手を封じる。

 同時に繰り出された爆豪の蹴りは、乙音が本能的な勘で避け、ついに拳を爆豪に届かせた。

 吹き飛ぶ爆豪だが、すぐさま立ち上がり、獰猛な笑みを浮かべて出久に向き直る。

 

『追い付いた……ってか? 俺の先読みに』

 

 これまで一方的に攻撃していた相手からの反撃に、爆豪は怒るどころか歓喜の感情でこれを迎えていた。

 求めるものは完膚なきまでの優勝なのだ。

 その決勝の相手の本気をブッ潰してこそ優勝に価値があるのだ。

 出久が本能と思考を両立させ、身体能力と火力・手数で勝負するのなら、爆豪は持ち前の才能(センス)と反応速度、鍛えた個性と先読みによる虚実を混ぜたテクニックで対応する。

 一進一退。

 とても高校一年生とは思えぬ戦いに、会場は息をのんで戦いを見守る。

 激闘を続ける二人であったが、戦いの天秤は思わぬところで傾き始めた。

 

「うっ、あぁあああ……」

 

 立ちくらみのようなものを覚え、頭を抱えて膝をつく出久。

 こんな大きな隙を晒されて放っておく爆豪ではない。容赦なく攻撃を加え、地をはねるほど大きく出久を吹き飛ばす。

 

 H&Hモードの活動限界だ。

 能力をフル活用しているこのモードでは体力の消耗が激しい。

 個性とて身体能力の一部。強い個性には大きなデメリットが当然あるに決まっている。

 前半に蓄積したダメージもじわじわと効き始め、出久はもはや足元がおぼつかない。

 倒れそうになる出久。

 そんな出久に喝を与えたのは意外にも対戦相手の爆豪だった。

 

「フザけんな! 俺が欲しいのは完膚なきまでの一位なんだよ! 勝手に倒れて終わりなんて許さねえ! だから……最後までかかってこい!!」

「かっちゃん……舐めるなよ! 爆破小僧!」

 

 爆豪の言葉を受けて最後の力で拳を握る出久。

 その顔はお互いに笑みを浮かべていた。

 最後の一撃。最後の全力。最後の決着!

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)

〝二極轟一・天崩”

 

 爆豪の身体を回転させた勢いを合わせた特大爆破と、出久の狐火を纏わせた全力の蹴りがぶつかり合う。

 衝撃と閃光が会場を襲い、皆の視界を奪う。

 

 視界が戻り、その結果は……

 

 出久を馬乗りで押さえつける爆豪の姿だった。

 

 

 

 ただし、出久の姿は幼女である。

 

「は?」

「ふぇええ!?」

 

 お互いに変な声を出す二人。いや、会場中で唖然とした空気が漂っていた。

 

 個性発動、巨大狐化、白面金毛化……いずれの際にも副作用が出久を襲っていたが、今回も例にもれず副作用が出たわけである。

 すなわち幼女化である。

 緑谷出久は自分の個性の新たな力を使った結果、身体が縮んでしまっていた!

 身体は子供、頭脳は大人……とか言っている場合ではない。

 現在の状況はありていに言ってヤバい!

 

 1.爆炎の熱で上気して赤い顔と荒い息。

 2.縮んだせいで脱げかけてはだけた服。

 3.そんな幼女を押し倒す荒い息の男子高校生。

 

 Q.ここから導き出される結論は?

 A.スリーアウト! ギルティ! このロリコン!?

 

 ここで出久は体力の限界を迎え、爆豪の勝利となるのだが……

 ネット上では『ロリコン』の文字が躍り狂っていた。

 

 全力を出して完膚なきまでの一位を取ったのに、なぜか不名誉までついてきた爆豪であった。

 

「俺はロリコンじゃねえよ! どうしてこうなったァ!」

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