いずく1/2   作:知ったか豆腐

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体育祭編開始


いずく1/2 その6(雄英体育祭 騎馬戦)

 雄英体育祭 第一種目「障害物競走」

 

 最初のロボ・インフェルノを入試の時の再現とばかりに怪力で吹き飛ばし、綱渡りを野生動物ばりのバランス力で軽々と突破。

 最後の地雷原は、先頭を走る爆豪・轟に対して念力を使って埋まっていた地雷を直接ぶつけるという割と過激な手段で一位を通過した出久。

 

 そんな、圧倒的性能を見せつけた出久は今、第二種目の騎馬戦で1000万Pを与えられた重圧に体を震わせていた。

 

 まだ第一種目を終えただけの刹那的なトップの座。それがこんなにも重い。

 トップを走るというプレッシャーに慄きつつも、心を奮い立たせる。

 だが、現実は厳しい。

 

 チーム決めの交渉に難航していた。

 

『うぅ、みんな目を合わせた瞬間に顔を逸らして……これまで自分なりに強さは見せたはずだけど、1000万Pを狙われるリスクは嫌がられるのか?』

『……絶対、それ以外の理由もあると思うのじゃがの?』

 

 このとき出久は気が付いていないが、尻尾とケモ耳がかなり自己主張していたりする。

 断られるときに耳は悲しそうにへにゃりと下がり、話しかけようとするときに尻尾が緊張でピンと立つ。

 口ほどにものを言う尻尾と耳にかわいすぎて皆目を合わせられない。かわいすぎるのも罪だねぇ。

 

『くっ、なんだあの可愛い生き物は!!』

『萌える。萌え死ぬぅ!』

『目を合わせちゃだめだ。(萌え)死ぬぞ』

 

 無自覚の魅力を振りまく出久に周囲の被害は甚大だ!

 彼(彼女)に声をかけるのは勇気がいる。

 だが、ここは雄英高校。勇者はいるものだ。

 

「いっしょに組も! デクちゃん!」

「麗日さん!? い、良いの!? たぶん、僕1000万ゆえに超狙われるけど……」

「ガン逃げされたらデクちゃん勝つじゃん……」

「そ、それ、過信してる気がするよ麗日さん」

「するさ! 何よりデクちゃん(のモフモフ)は私が守るから!!」

「う、麗日さん……!!」

 

 男前なセリフに頬を染める出久。

 それでいいのか? おい。

 

『主が雌の顔に!? なんじゃこれ、なんじゃこれぇ!?』

 

 乙音もビックリである。

 てか、ぶれないね。セコム麗日。

 

 その後、サポート科の発目とA組男子常闇を加入してチームが決まった。

 なお、絵面だけ見れば常闇のハーレムである。一部男性からの嫉妬の目線が来たのはしかたない。

 

「いいなぁ、あの鳥っぽい子。女の子に囲まれてるよ」

許羨(ゆるせん)ッ!」

「俺もモフりてぇーーーーーー!」

 

 ……一部、モフリストからの羨望も仕方ない。

 

 

     ・・・・・

 

 そんなこんなで試合開始。

 当然、1000万P、狙われるに決まっているのだが……

 

「追われし者の宿命(さだめ)……選択しろ、緑谷!」

 

 中二チックなセリフで緑谷の指示を促す常闇。

 

「モフモフや、モフモフすぎて幸せすぎる!!」

「思った以上のモフモフ度。これはハマりそうです!」

「おい、後ろ二人、なにやってる!?」

 

 後ろ騎馬の女子二人は、出久の尻尾に埋もれて幸せそうな顔でヘブン状態になっている。

 常闇が注意をするが、二人は文字通り物理的にもハマってしまっている。

 

「ミドリヤ、モフモフ!!」

「ダークシャドウ!? おまえまで!?」

 

 ついでに自らの個性までこの始末。

 組むチームを間違えたんじゃないかと後悔した常闇だった。

 

「大丈夫、常闇君。僕に任せて! まずは、数の不利をひっくり返す!!」

 

 常闇の不安をかき消すように、出久が行動を起こす。

 尻尾から毛をまとめて引き抜き、フッと息を吹きかけて飛ばす。

 飛ばされた毛はポンと音と煙を立てて子ぎつねたちに変身した。

 

 “羽衣狐”の能力の一つ、式神召喚。

 まだ出久が未熟なため、子ぎつねの式神しか使えないが、今後習熟していけば使える種類は増えていく。

 しかし、この場では大量の子ぎつねで十分効果を発揮できた。

 というより、子ぎつねだからこそ効果を発揮したというかなんというか――――

 

「う、邪魔を……」

「ズルいぞ! こんなの抵抗できるか!」

「How cute! かわいいネ!」

「心を鬼にして……駄目です! そんなつぶらな瞳で見つめないで!!」

 

 フィールドを駆け回る子ぎつねたちは、周りのプレイヤーに手当たり次第に襲い掛かる――――わけではなく、思いっきりまとわりついて甘えていた。

 『窮鳥懐に入れば猟師も殺さず』といったところか。

 いや、どちらかというと『小さきものは、皆うつくし』だろうか?

 とにかく、小動物が無邪気にじゃれついてきたのを無情にも払い落とすような非道な行為をヒーロー志望の人間がそうそうできるわけがない。

 ついでに言えば、この子ぎつねたちは可愛いもの好きの女子たちにクリティカルヒット。

 女性特攻持ちなのでは? と、思うくらいに女子騎馬たちの行動を不能にしていたり。

 

 会場は大混乱だ。でも、幸せそう。

 

「よし、今のうちに離脱だ!」

「緑谷、おまえも身の内に獣を住まわせる者だったか」

「デクちゃん! あとで、あとで一匹モフらせて!!」

 

 子ぎつねの式神たちによる足止めを利用して逃走を開始する緑谷チーム。

 このまま逃げ切るかと思われたが、そうは問屋が卸さない。

 追いかけてきた騎馬が二騎。

 

「全部捕まえるのに思ったより手間取ったな」

「いや、それほど時間は経っていない。しかし、一部だけ凍らせて捕まえるなんて細やかな制御もできたのだな」

「やだねー、才能マンは。でも、味方なのは頼もしいぜ」

「ごめんなさい。後で救けてあげますわ。いまは戦いに集中しましょう!」

 

 轟の個性により子ぎつねの足を凍らせて捕まえた轟チーム。

 飯田の機動力によってあっという間に緑谷チームに迫る。

 

「あんな小さな動物を……心が痛えよ!! やっぱり漢としてどうなんだ!?」

「ごめんね、ごめんねぇ!!」

「俺たち、ヒーローなんだよな? ヴィランじゃねえよな?」

「うるせえ!! あんなもん、デクの個性で本物じゃねえんだ! どうして容赦してやる必要があるってんだ、アァン!?」

 

 周りの子ぎつねたちを無情にもすべて爆破してきた爆豪チーム。

 黒焦げになった子ぎつねたちの姿に、会場からのヘイトが集まっている。

 これが、人間のやることかよ!!

 

「轟くん!? かっちゃん!?」

「もらうぞ、緑谷」

「死ねえ! クソナード!!」

 

 挟み撃ちにされ絶体絶命の出久。

 ダークシャドウと九尾の尻尾による防御、麗日の無重力と発目のエアジェットでの逃走。

 さまざまな手段を駆使して逃げ回る緑谷チームだったが、ついに爆豪の執念が出久を追いつめる。

 

「覚悟しろや、クソデクがぁ!!」

「しまった!? 空中じゃ分が悪い!」

 

 空中戦にもつれ込まされた出久は爆速ターボによって動ける爆豪に、額のハチマキを奪われてしまう。

 そして無情にも鳴る試合終了(タイムアップ)の合図。

 

 その結果は……1位、緑谷チーム1000万325P!!

 

「なんだと!? 確かに俺はハチマキを……ッ!?」

 

 驚く爆豪は奪ったはずのハチマキを見る。が、その手の中には何もなかった。

 確かに手ごたえがあったのに。

 確かにこの手で掴んだはずなのに!

 

「てめえ、何をしやがった!」

 

 混乱し、怒鳴る爆豪。その答えを、近くで見てた轟たちが考察していた。

 

「緑谷の1000万のハチマキ、首にかけてある。俺たちが見ていたのは額にあったはずだ」

「変ですわ。付け替える暇もなければ、そもそも交換する別のハチマキを取ってもいません」

「存在するはずの無い幻のハチマキか。ううむ、何がどうなっているのか」

 

 ふと、飯田の言葉に違和感を感じ、考え込む轟。

 そして次の瞬間に答えを導き出した。

 

「そうか。幻術だ。緑谷の個性の能力の一つに催眠系の能力があっただろう? それを使ったんだ」

「なるほど。いえ、それはやっぱりおかしいですわ。緑谷さんが暗示をかけるには瞳を見るという条件があったはず。私たち、騎馬戦が始まってから目を合わせてはいませんわ!」

「たしかに……いや、待ちたまえ! 緑谷君はいつから個性を使っていた? 普段は女子に体が変わるのを嫌がっている彼が今日はずっと女子のままだったぞ。

 あれは気合を入れているからかと思っていたが、まさか!?」

 

 次々と考察を深めていく轟、八百万、飯田の三人。その推理はおおむね間違っていない。

 上鳴? ああ、となりでウェイウェイとアホになってるよ。

 

「デクゥ!! てめえ、いつからだ!? いつから騙していやがった!!」

 

 激昂して迫る爆豪に、“イズク”はニヤリと笑い、

 

「逆に聞くが……いつから幻術にかかってないと思っておった?」

 

 妖艶に口元が弧を描く。

 そう、初めから。今日の体育祭が始まる朝に仕込みは済ませてあったのだ。

 出久の中の同居人、“羽衣狐”の乙音は何人もの人間を渡り歩いてきた化け狐の個性である。

 化かし合いでは一日の長がある。このくらいはわけはない。

 

「この腹黒狐が!!」

 

 爆豪の負け惜しみが、会場に響く。

 狐に化かされた第二種目。どうなる第三種目!?

 

 

     ~~~つづく~~~

 

 

 ===オマケの物間くん===

 

「この狐をコピーすれば!」

 

 子ぎつねに触れる物間。個性をコピーした瞬間――――

 

「うおっ!? 物間が女になった!!」

「ハァ!? ワケわかんないんだけど!?」

 

 突如出現した、狐っ娘、物間。

 混乱する物間チームに誰かが声をかけてきた。

 

「おい、大丈夫か?」

「大丈夫に見えるのかよ? あんたの目は節穴か……あっ」

 

 心操の個性により完全停止した物間。

 彼らは試合が終わるまで子ぎつねたちのジャングルジムと化していた。

 

 

 ===オマケの拳藤さん===

 

「モフモフ、可愛いなぁ」

「そんなに好きならもう一匹いるか?」

「本当!? ……あっ」

 

 拳藤チーム、アウト!

 

 

 ===オマケの女性陣(葉隠・小大・角取チーム)===

 

「「「か、可愛い!!」」」

「おい、もう一匹(以下略)」

 

 3チーム、アウトー!

 

 ===オマケの鉄哲チーム===

 

「あぁ! 柔らかくした地面に子ぎつねたちが!?」

「ウオオ! 見捨てるなんて漢らしくねえ! いま救けるぜ!」

「あ、馬鹿、騎手が騎馬を降りるな!!」

「てか、飛び降りたら危な――――」

 

 鉄哲、地面に頭から突っ込み、犬神家状態に。失格。

 アウトォ!!

 

 

 ===オマケの宍戸くん===

 

「なあ、そんなにオレって怖いかな?」

「いやいや、そんなことないって。ほら、肉食獣を恐れるのは動物の本能だし」

「そっか、やっぱり怖いのか……」

 

 宍戸君。子ぎつねたちに怖がられて心に傷を負う。戦意喪失。

 アウトォォ!!

 

 

 ===オマケの峰田チーム===

 

「うわあああ、中に、中に入って来たぞ!!」

「峰田ちゃん、待って、中でもぎもぎしないでちょうだい!」

「おい、俺の背中の上で何やってる!? てか、腕が開かん!!」

 

 峰田混乱につき自滅。

 アウトォォォォォ!!!

 

 

 結論:心操無双により心操チーム2位通過。

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