人類最強の小娘の日常〜この世界の不条理には別世界の不条理で対抗します!〜   作:黒須 英雄

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日常研究部 2ー3

 まさか……切り札が効かない吸血鬼がいるなどと思ってもいなかった!

 

 今はそんなことを考えている余裕はないな!

 とりあえず逃げなければ!

 武器がない俺にーー勝機はない!!

 

「逃げられるわけないでしょ!」

「チッ! 化け物め!!」

 

 太刀筋はより鋭くなり、速度はより速くなっている。

 避けきれた攻撃はない。

 全ての攻撃が皮膚を削り、ほぼ全身に切り傷が付いている。

 

 魔人として、本気を出せば戦況を五分五分にまでは持っていけるだろうが、これは計画外……リスクを犯すわけにはいかない。

 

『救援を要請する! 場所は魔力を探知してきてくれ!』

『了解です!』

 

「【通信魔法】? 無属性持ち!?」

「だったらなんなんだ!」

 

 感覚で感じ取ったようだが、【通信魔法】などという便利な代物ではない、ただの魔具だ。

 魔力の燃費も悪く、中継役がいなければ効果を存分に発揮できない骨董品だ。

 

 しかし、勝手に勘違いしてくれる分には構わない。むしろ、それを脅威に感じ、攻撃の手が休まればいいのだが……。

 

「使う前に切る!」

 

 ですよね。

 このままだと計画に影響が出かねないが、ここで死ぬわけにもいかない!

 

『すまない、魔力を解放する』

『待ってください! あと一分でそちらに到着します』

『ありがとう、あと一分! その後、援護を受けながら撤退する』

 

「覚悟は決まったぞ強き少女! この決着は持ち越しだ!!」

「っ!? させない!」

 

 魔力爆発という技がある。

 本来は自爆のためにあるのだが、魔力を腕に込めその部分を完全に切り離せば、行き場を失った魔力は暴走し破裂する。

 

 魔人特有の魔力はこの効果が他の種族の魔力よりも大きいという特性がある。

 

 俺は躊躇なく左腕を切り落とし、少女と俺の間に叩きつけた。

 追い風を発生させ、爆風の効果を最大限に発揮させる。

 

「目くらましっ!?」

 

 自爆と読んでいた少女は防御の構えをとった為、俺と彼女の間には逃亡に最低限必要な分の距離は出来た。

 

『撤退を開始する! 粉塵の上がった所から西の森まで援護してくれ!』

『了解しました!』

 

 片手を失った。

 しかし、浅はかな気持ちで戦闘に挑んだ自業自得。

 むしろ、片手で済んだだけマシだったであろう。

 

「ふ〜、きついな」

「それは!? 大丈夫ですか!?」

 

 ここまで来ればほぼ大丈夫なのだが、相手が未知である現状からして油断すべきではない。

 

「まだ油断はできない! 森まで警戒を怠るな!」

「そういう意味では無かったのですが……了解しました!」

 

 それにしてもあの少女は何者なのだ?

 あれほどの化け物でありながら常に魔力量は一定だった。つまり、魔力をコントロールしているということだ。

 まさか昨日の魔力反応は彼女なのか!?

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 いつもの洞窟、暗い中、十数人の魔人が集まっていた。

 

「集合して貰ったのは計画を本格的に実行に移すためだ! 」

 

 あの少女のことなど気がかりなことはあるが、計画通り……足並みを揃えなければ意味が無い。

 

「頼んでおいた生け捕りは確保出来たか? それに別働隊。メンバーが減っているのではないか?」

 

 暗くて顔が見づらいが、三人ほど人数が少ないように感じる。

 

「はい、二名の犠牲者を出し生け捕りに成功しました」

「それが生け捕りか」

 

 手足と口を拘束している。毛むくじゃらの男だ。

 

「自白剤を飲ませておけ! 後で尋問をする」

「了解しました!」

 

 ふ〜、痛いな。止血はしたが流石に体力の限界が……。

 

「おいおい、大丈夫なのかよアスナタ」

 

 チッ! 邪魔者が来たか。

 

「大丈夫だ。それよりお前のところは終わったのか?」

「下準備を終えたところだ。第二学園もいつでも制圧できる!」

 

 無駄に優秀なヤツめ。

 第二学園は戦闘向きではないにしろセキュリティは頑丈だったはずだ。それをいとも簡単に攻略するとは……。

 

「それより、その腕はどうしたんだ? まさかあれを使っても勝てなかったとか言うんじゃねぇだろう?」

 

 こいつ……見てやがったな? 食えない女狐め。

 だが、今の最優先事項はこいつじゃない。

 

「全員に伝えなければならないことがある! この腕はとある少女に切り落とされた! その少女には吸血鬼殺しも効かない!」

「そんなっ!? あの方の権能を破るなんて!」

 

 動揺が広がるが、女狐は愉快にほくそ笑んでいるだけだ。

 

「特徴は緑の髪で、第三学園の制服を着用! 帯刀しているから目につきやすいだろう! 見つけたら報告を入れてすぐさまその場を離れろ! いいな!」

「「「はっ!」」」

「計画は明日の七時、万全の状態で挑んでくれ!」

 

 魔力災害級の魔力の正体は不明だが、彼女の魔力量は……未知数、必ず計画の障害となるだろう。

 

 必ずこの手でーーーー

 

「お前にやれるのか? 片腕を失ったお前に?」

「殺る、この身が滅びようとも必ず!!」

 

 ふ〜ん、と言って女狐は薄ら笑いを浮かべる。

 

「とっておき! 第二学園で手に入れた魔具だ。自爆の前に使え」

「効果は?」

 

 怪しい。そもそも敵が作った魔具を使って無事でいられる保証がない。

 

「秘密だが? それに無事である必要など無くなった時にだけ使え」

「……分かった」

 

 小さな箱を手渡される。これを握り潰せば効果は発揮されるらしい。使い捨ての魔具は珍しいな。

 

 俺が自爆してでも……あらゆる犠牲を持ってしてもこの計画を止めるわけにはいかない。

 

 我ら、ーーーー永劫の教団(アルカナ・カルト)の悲願のために。

 あの方の悲願のために、……世界に災厄を。

 




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