人類最強の小娘の日常〜この世界の不条理には別世界の不条理で対抗します!〜   作:黒須 英雄

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魔王城の双子姫 1ー2

 氷の杭は見事に翼に突き刺さり、竜を地に落とした。

 その音とは別の轟音が鳴り響いていたが、百メートル範囲内の探知には引っかからない。

 

「(こっちもそんなに余裕はないか……)」

 

 この竜達は魔法等は使えないみたいだが、腕力だけは一級品だ。

 こっちの戦況も必ず安全とは言い難い。

 

『フェーカス、お前は魔王の所まで行けたのか?』

『無理ですよ〜、こいつらを何度か倒したらめっちゃ強い二人組みが出てくるんです。ありゃ……無理っぽいですね……』

 

 段階式と言うわけか。

 ならば、まだあの轟音の方は放置していても大丈夫だろう。

 奴らの可能性が高い以上、距離は嫌でも縮まるはずだ。

 

「終わった〜。まさかこの年で竜退治を経験するとは思ってもいなかったよ」

 

 エリスフィア先輩の考えが常識だろうな。

 そもそもこれは竜でもないが……あっ、灰になった。

 

 目の前で血を流していた竜もどきは灰になって風に飛ばされた。

 素材など一欠片も残っていない。

 

『これが眷属か?』

『そうです〜。近づけばもっと湧いて出てきますよ』

 

 これが……面倒だな。

 魔王城に辿り着く前に力尽きそうだな。

 

「フェーカスによるとここからずっと今の奴らが襲ってくるそうです」

「……無理じゃないかな〜?」

 

「そうでしょうね。魔王と戦う訳ではありませんが出来るだけ魔力は温存しておきたい。そこで一つ提案があります」

 

 提案。

 真っ当な作戦とは行かないが……主に魔力量的に。

 

 俺はチラリとフェーカスの方を見て、ニヤリと笑った。

 フェーカスも覚えていてくれたようで何よりだ。

 

「フェンリルという幻獣種が持つ特性を利用しましょう」

「それって、呪力のこと?」

「そっちじゃない方のですよ」

 

 呪力とは稀に幻獣種が獲得している力だ。

 単なるパワーアップ以外にも、呪いを付与することが出来る。

 呪いの種類はバラバラだが、即死の呪い程強い呪いをかけられる訳では無い。どちらと言えばパワーアップの副産物に近い。

 その中でもほとんどが魔力の流れを乱すといった小業だ。

 

 呪力は魔力とは別の法則でこの世に存在していると言われている。

 ちなみにフェーカスが爪にまとっていたのも呪力だ。

 

「えっ!? 二つも特性を持つ幻獣種がいるの!?」

「そりゃ居るでしょ。フェンリルとか、ペガサスにユニコーン、キメラードやグリフォン、挙げればキリがないですよ」

 

 他にもざっと百種族以上いたはずだ。

 

「えっ……知らないってことはないですよね?」

「いや、シャルテアちゃん。それは全部神話の中の話でしょう? 伝承にもそんなの残ってないよ? 逆になんでそんなに詳しいのかが分からないよ」

 

『フェーカス、俺がいなくなって何が起こったんだ?』

『いやいや、アルフォード君が知らないことを知ってるわけないじゃないですか。あったことと言えば変遷ですかね?』

 

『変遷? 聞いたこともないな』

 

 そんな言葉は俺の記憶の中には一切出てこない。

 

『知らないって……アルフォード君が死んだ原因、みんなが死んじゃった原因ですよ! 変遷が来るからって僕を逃がした癖に何言ってるんですか!』

 

 変遷ってのが分からないが、後回しにしよう。

 眷属達が来る前に距離を稼ぎたい。

 

「とにかくみんなフェーカスの口の中に入ってください! ほらっ! 眷属達が来る前に!!」

「「えっ!?」」

 

『フェーカス! 面倒だから俺以外()()!!』

『り、了解です!』

 

『失礼するよー!』

 

 パクリ。

 大きく開かれた狼の顎は部員全員を飲み込んだ。

 

 この特性、亜空間を使うと、対象は引き寄せられるように飲み込まれ、別空間に飛ばされる。

 その空間はフェンリルが一人一人持つ収納箱といったイメージが近いかもしれない。

 

 ともかく、そこに入ればそのフェンリルが死なない限り安全だ。

 

「フェーカス! 百メートル先に数三十、真っ直ぐ突っ込め!」

 

 衝突までは三秒もないだろう。

 俺は急ぎで【氷塊魔法】を展開する。

 敵の数は三十、魔法陣の数は三十だ。

 

 敵の脳天を貫くのに氷の杭が一本あれば事は足りる!!

 

「発動! フェーカスは打ち損じがいても真っ直ぐ進んでくれ!」

『わっ、危ない!』

 

 五十メートルほど先で撃ち落とした眷属達はまだ灰となって消えることは無かった。

 それが空から降ってくる。

 

『フェーカス! 止まれっ!』

 

 第二波を撃ち落とし、夜の森に足を踏み入れると同時に嫌な雰囲気を感じた。

 

『夜の森には悪魔でも住んでいるのか?』

 

 見た目は魔女の森、黒色の木が生い茂っている。

 

『これは……入れそうにもありませんね』

『ああ、この木の壁の向こうには探知できるだけでも……二百はいるな』

 

 さて、どうするか? このまま突っ込んでもいいのだが……フェーカスが歯が立たなかった二人組みも気になる。

 

 ゴオォン!

 

 距離は丁度三百メートルほどのところ。

 木々が倒され、戦闘を匂わす轟音が鳴り響いた。

 

 それと同時に、木の壁の向こうにいた反応が音の方へと寄っていく。

 

『一、二、三、で突っ込め! 壁は俺が壊す』

『でも、これは、この反応は魔人だけど大丈夫!?』

 

『ああ、俺たちの標的だが、先に魔王に会うのを優先する! この程度の魔人は偵察がいい所だろうからな』

 

 魔力反応は強くない。

 この前に国を襲ってきた奴らと変わらない程度だ。

 

『一、二、三!!(【爆裂魔法】発動!)』

 

 木々が吹き飛ばされる。

 それと同時に木々の中に出来た穴に飛び込んだ。

 

『「やばっ!?」』

 

 二人の声が重なった。

 その直後、視界が火花で埋め尽くされた。




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