人類最強の小娘の日常〜この世界の不条理には別世界の不条理で対抗します!〜   作:黒須 英雄

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魔王城の双子姫 4ー2

 これは、どうやって入ればいいのだろう?

 門ではなく、立ちはだかっているのは壁だった。

 

 王立第二学園。それは王立第一学園と共に創立されたこの国の初期からあった学園だ。

 王立第一学園は武、第二学園は知と言われている。

 それもそのはず、王立第二学園は魔法研究職の金の卵達が通う学園だ。

 

「君達、見かけない顔だけど。ここに入りたいのかい?」

「おっと、すいません。ここに避難したはずのオリビア王妃に面会を求めたいのですが」

 

 後には白衣を身にまとい、ボサボサの髪に丸ぶちの大きな眼鏡をかけた冴えない研究員がいた。

 だらしないを体現した様にも思えるが、背筋だけは真っ直ぐだ。

 

「王妃のことを知っているならこの街の者ではないのかな? まぁ、多分会えるとは思うよ……。ちょっと離れてね」

 

 壁にその男は手を突き出した。そして、魔力を少し込めると、壁に人が通るには十分な大きさの穴が空いた。

 

「どうぞ? ようこそかな。ここからは第二学園の管轄だ。僕はそこのしがない一教員さ。王妃との面会は僕から頼んでみるよ」

「ありがとうございます」

 

 そこから中に入ると、第三学園とは違い、すぐに校舎が出迎えた。

 左右に五棟ずつはあるだろう。とにかく建物が多いという印象を受けた。

 

 しばらくするとその男が戻って来た。

 

「すまないね、名前を教えてもらえるかな? 場合によっては断るかもしれないそうだ」

「……シャルテア・ウィズマークと伝えてください」

 

 この名前が通じるのは家族とキールくらいだろう。

 

「ウィズマーク? まぁ、伝えるよ」

 

 待つこと数分後、バンッという音と共に扉が開かれた。

 

「お嬢様……でない?」

「久しぶり! キール。心配させてすまなかった」

 

 執事の服を身にまとったキールがいた。別に半年も経ってはいないのだが、数年ぶりの再会のように思えた。

 

「ご冗談を、私キールと申します。シャルテア様は何処に?」

「だから俺がシャルテアだよキール。色々あって今はこの姿なんだ」

 

 て言っても信じてもらえるわけがないか。

 久しぶりに再会したら性別も年齢も変わっていたらそうなるか。

 

「失礼ですが……いえ、ご誕生日は?」

「四月十三日、五日後には確実に戻っているからその時にでも確認してくれ」

「は、はぁ。面会はいいのですが、後ろの御二方には御遠慮して貰ってもよろしいでしょうか? 此度の出来事で王妃は大変疲弊していらっしゃるので」

 

 やはり、母は悲しいだろうな。

 吸血鬼にとって死に別れということは、認識が薄い。

 稀にしか起こらない事であり、王ともなればそれなりの実力は兼ね備えていたはずだ。

 それに死の瞬間、夫の最期に立ち会えないというのは辛いものだろう……。

 

「分かった」

「了解です!」

 

 素直に二人も答えた。この二人にとっては特に知らない相手だからな〜。

 

「ありがとうございます。では、付いてきてください」

 

 部屋を出て二つ隣の部屋。キールはそこの扉を開けた。

 

「母さん……ただいま」

「貴方は? いえ、シャルテアなのね」

「うん。色々あったんだ。でも今はそれどころじゃない!」

「ええ、ここに来ているということは……知っているのね。大丈夫?」

「母さんこそ! 絶対に犯人は探し出す!」

「駄目よ!! シャルテアが戦う必要はないわ!」

「俺は強い! いや、強くなくてもやらなきゃいけないんだ! あの時、俺は敵に負けて……何も出来なかった。あんな思いはしたくない!」

「シャルテア…………」

 

 この犯人は必ずこの手で殺し返す! あの男が率いる組織ごと潰して、それでやっと父の前に顔を出せる。

 これは俺の中のケジメに似ている。譲れないものだ。

 

「分かった……好きにしなさい。けど、死ぬのはダメ……。もう失いたくないから」

「ありがとう。国は第一王子と第二王子がどうにかしてくれるはずだから安心してくれ」

 

 第二王子は第一王子の補佐で今も忙しくしていることだろう。声をかけておきたかったが、いつも忙しそうに働いていた。

 

「それじゃ、キール。母さんのことは任せたよ」

「お嬢様もお気をつけて。影!!」

 

 影? 秘密の隠密部隊のことか? どこにも居ないぞ?

 

「はいよー。仕事ですか?」

 

 今どっから出てきた!? 壁に影が現れたと思ったら、それが人型になった。それよりも……。

 

「お前、影だったんだな」

「ん? 誰だお前は。そんなことより、仕事ですか?」

 

 影と呼ばれて出てきたのは、毎朝嫌がらせのように家に現れただらしない男だった。

 

「そうだよ。君だけ独立して彼の戦いの補佐をしてやってくれ。命に代えても必ず守るように」

「りょーかいです。で、この人は何と戦うんですかー」

 

 そんな勝手に護衛を動かしていいのか? まぁ、一任されてるってことだろう。

 

「本人に聞いてくれ、彼の仲間も応接室にいるから」

「りょーかいです」

 

「キール、母さんを頼む」

「承りました。この命にかえても必ず」

 

 お前も死んでもらったら困るのだが、言葉のあやってやつだろう。

 

 俺は母さんとキールがいる部屋をあとにした。影の男はその後に付き添う形でついてきた。

 

「じゃあ、自己紹介して」

 

 俺はこの男の強さしか知らない。それも、俺とやっていた時は絶対に力を抜いていただろう。

 唯一一度だけ白星を獲得したが、その時も余裕はあった。

 

「えっと〜、ゼルドミアでーす。お好きに呼んでくださーい」

 

 やる気が全く感じられない。

 

「えっ!? 君が王国の影かい? いや〜光栄だな」

 

 さっきから部屋にずっといた白衣が驚いた。

 なぜそんなに驚くことがあるのだ?

 

「そんな尊敬されるようなものじゃないよー。君こそ、稀代の魔法使いなんだろう?」

「へぇ? この人が」

 

 珍しくイアが反応を示した。

 この人って冴えない白衣の事だよな。

 

「そんなことないですよ〜。ちょっと変わった魔法が使えるだけです」

 

 変わった魔法? なんじゃそりゃ、俺の知ってる魔法か?

 

「どんな魔法なんだ?」

「【魔法模倣魔法】、ただ相手の魔法を完全コピーするだけですよ〜。ねっ? そんな大したものじゃないでしょう?」

 

 俺は絶句して何も言葉が出なかった。

 

【魔法模倣魔法】、それは俺が長年かけても開発できなかった魔法だった。




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