人類最強の小娘の日常〜この世界の不条理には別世界の不条理で対抗します!〜   作:黒須 英雄

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魔王城の双子姫 5ー1

「……予定変更だ。ゼルドミアは今すぐエリスフィア先輩の所まで行って詳しい事情を聞いてきてくれ」

「りょーかい」

「フェーカスはこの街と王都の周辺の森を捜索してきてくれ。何か仕掛けられている可能性が高い」

「了解です!」

「俺とイアはいつも通りだ」

「分かった」

 

 魔人達が出現した方向は揃いも揃って森からだ。魔物の生産や、転移魔法陣でも仕掛けられていたら防ぎようがない。

 そんな有効な手に気づいていないほど雑魚ではない。

 

「午後六時にまたここで。各自警戒しながら行動してくれ!」

 

 魔人は人に化けれる。もし、この国に侵入されていたとしても気づかないかもしれない。

 常に魔力探知をしている奴なんていないからな。

 

 最悪……王が偽物の可能性もある。

 いや、これはそうであって欲しいという矛盾した希望的観測か。

 

 その日の四時頃、反動は容赦なく俺から力を奪った。しかし、失った魔力はすぐにイアが補充してくれたので命に関わることは無かった。

 

「イア、ありがとう。だけどまだ動けそうにない」

「休んでおいた方がいい。それは見えない部分でも反動が来ることがあるかも知れないから」

 

 この魔法について知ってるのか? まぁ、そんなことはいいか。目先の問題の優先度の方が高い。

 

「イアはフェーカスと合流してくれ。そうだな……六時の集合を遅らせて七時に来てくれ」

「分かった。ちゃんと大人しくしてなさい」

 

 イアは心配しすぎだ、まるで姉のような感じか?

 それは置いといて、これで俺は影が帰ってくるまでは一人だ。

 出来ればカルロの研究を見たかったのだが、体が動きそうにない。

 ゼルドミアの報告を大人しく待つとするか…………。

 

 

 …………おーい、お嬢様

「ごめん、寝てた」

 

 ついウトウトして寝てしまっていたようだ。今ゼルドミアの声が聞こえたような気がしたんだが……どこにも居ないぞ?

 

 影分身ってのを使ってんだ。手短に済ます。

 まず、先輩との接触には失敗した。同じ顔の三つ子も消えたそうだ。

 次に、奴隷制度が国民に喜ばれているということだ。これは……洗脳などはないと思う。

 それと、私情でこっちに残らせてもらう。面倒事のかたがつけば戻るつもりだ。

 

「分かった。何かあれば定期的に報告してくれ」

 

 りょーかい。

 

 影が消えた。何が何だか分からないが、あまりおいしくない状況だ。

 兄の政策が国民に認められた時点で奴隷大国となるのは避けられない。これは避けたいところだ。

 次に、先輩達の失踪は王の仕業ではないだろう。先輩達は直属の部下だ。いくら何でも自分で戦力を減らすようなことはしないはず。

 

 それにイア以外の三つ子が失踪か…………罠だな。

 これは魔王を引きずり出すための人質の役割を背負っている可能性が高い。それならば犯人は魔人だろう。

 それと同時に目障りだった先輩達を攫ったといったところか。

 

「面倒だな」

 

 もちろん放って置く訳には行かない。助けに行くのは助けに行くのだが……見当がつかない。

 それに、第二王子の件は別件と考えるべきなのか? その点についても先輩達が鍵となってくるのか。

 

 魔人の尻尾を捕まえることは容易くない。

 むしろ、罠にかかった魔王を利用して……。悪くない案だが、それまで先輩達が無事である必要がないな。

 不必要な人質は殺されるだろう。

 

 イアとフェーカスが戻ってくるまで後一時間はあるな。とりあえず、あの人に頼みに行くか。

 

「失礼します。カルロ教授はいらっしゃいますか?」

「はーい。どなたでしょう?」

「シャルテアです、少しいいですか?」

 

 俺が頼みに来たのはカルロだ。彼の【魔法模倣魔法】を応用すれば相手の魔法陣を解析できるかもしれない。

 

「シャルテア? 男の人だったと思うんだけどー? ああ、こっちが本当の姿ってことかい?」

「はい。王立第三学園の生徒です……元ですが」

「辞めてしまったのかい? 勿体無い。まぁ、事情は人それぞれだから聞かないけどね。で、話って?」

 

 事情を聞いてくれないのは助かる。

 こうは言っているが、多分聞くのが面倒なだけだろうなー。ばっちし顔に出てるぞ。

 

「貴方の【魔法模倣魔法】の魔法陣を見せていただきたい。それと協力してほしいことがあります」

「魔法陣……いいけど使えないと思うよ?」

「知っています。何せ何百年も研究しましたし……。話が逸れましたね、お願いできますか?」

「構わないよ! 少し待ってね」

 

 カルロは模造紙に魔法陣を書き出した。

 その間はヒマなので研究室を見て回ることにした。

 この研究室にはカルロ以外いないし、来ないそうだ。

 何やら説明が下手くそらしい。

 よくそれで教員になれたなとは思うが、もちろん口には出していない。

 できるだけ友好的な関係でいたいからな。

 

「お待たせー。これで出来たよ」

 

 五つの魔法陣が重なり合い、複雑に描かれている。やはり、【結界魔法】の魔法陣を要として配置するのは間違っていなかったようだ。

 試しにこの魔法陣に魔力を流してみたが、案の定発動しなかった。

 

 しかし、これで本来の目的は果たせそうだ。

 

「えっと………………こうして、これで発動できるか試してみてください」

 

 魔法陣をさらに二つ追加した。五つの魔法陣の両端を支えるように【魔力吸収魔法】の魔法陣を設置した。

 

 これで理論上は敵の魔法を解析できるようになったはずだが……。

 

「うん、発動しないよ……。【魔力吸収魔法】の魔法陣がやはり僕とはあっていないようだ。手を加えてみるけど……期待はしないで」

「そう上手くは行きませんよね。分かりましたお願いします。それともう一つお願いしたいことがあります」

 

 これは、戦力的に頼みたいことだ。

 

「私と一緒に魔人達と戦って欲しいんです。お願いできませんか?」

「……敵は前の奴らと同じなのかい?」

「はい。前の奴らはまだ戦闘員でも弱い方だったかも知れませんが。同じ組織です」

 

 やはり、いい顔はされないな。わざわざ戦場に足を運びたがるほどの戦闘狂には全く見えないし。

 

「戦えないよ僕は……。でも、この街くらいなら任せてくれ。できるだけ多くの人を守るよ」

「ありがとうございます!」

 

 よし、母のいるこの街の防衛は完璧にも等しいだろう。キール達とカルロが協力すれば大概の敵は殲滅できるはずだ。

 その守りの一手が欲しかった。

 

 そのあと俺は応接室に戻った。

 そこには、目を輝かせたフェーカスと、見るからに落ち込んでいるイアがいた。




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