人類最強の小娘の日常〜この世界の不条理には別世界の不条理で対抗します!〜   作:黒須 英雄

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魔王城の双子姫 5ー2

「先にフェーカスから聞こうか」

「アルフォード君の狙い通りでした! 森には魔法陣が仕掛けられていました!」

「そうか!」

 

 ん? じゃあなんでイアは不機嫌な顔をしているんだ?

 

「イアはどうかしたのか?」

「どうかしたかなんてものじゃないわ。あんなものが簡単に作られたら確実に負けるわよ」

「何の魔法陣だったの?」

 

 そこまで厄介な魔法陣は……でも、この世界の魔法の基準はかなり低いみたいだからなー。

【結界魔法】が無ければ防げない攻撃法も多いかもしれないな。

 

「魔物の生産の上位版ね。魔人の力を持った生物の生成かしら」

 

 んー、思ったより微妙な魔法陣だな。

 生産速度が早ければ驚異的だが、それ程の魔力を補える戦力があるのか? それならそれで対処の仕方があるのだが。

 

「数はどうだったの?」

 

 この系統の魔法陣は一つや二つ仕掛けた所であまり効果的ではない。

 最低限、十個は必要だな。そうでなければ戦術的な戦力は期待出来ないだろう。

 

「今日見つけただけでも二十個よ。ね、どう使用もないでしょ?」

「……いや、手段は最低でも片手の指の数くらいはあるよ」

 

 単純に魔法陣を解除するだけでもいいのだが、そこに供給される魔力を横取りすることも出来るはずだ。

 あまりにも複雑で強固な場合は、予め結界で囲んでおいて一掃するのも手だ。

 

「そう、まさかその姿でも強いの?」

「アルフォードの姿よりは流石に劣るし、使えない魔法もあるけど、ある程度は」

 

 今は【時間錯誤魔法】は使えないだろう。この前ので随分と魔子回路が傷ついている。一ヶ月、いや二ヶ月はあまり大きな規模の魔法は使いたくない。

 

「そんなことより、破壊は? 出来そうだった?」

「ダメね、破壊は難しそうだったわ。場所をずらすとか、小さな干渉は出来そうだったけど」

 

 破壊だけはさせてくれないか。多分、魔力ですぐに再構築されるタイプだろう。

 供給源からの魔力供給を遮断し続ければ、理論上は妨害出来る。だが、その方法は魔力切れで元も子もなくなるのがオチだろう。

 最悪の可能性……龍脈が供給源として利用されている可能性も、現状否定しきれない。

 

「そっちは私がどうにかしてみるわ」

 

 少し細工をするだけで効率は落とせるだろう。生産速度と、生産される魔人の強度のどちらに干渉するかは迷いどころだな。

 冒険者の強さにもよる。今度の戦いでは全面的に冒険者などの力を借りなければ勝てないはずだ。

 

「明日はどうするの? また情報収集?」

「いや…………どうしようかな」

 

 情報収集も悪くは無い。

 先日の魔王城での戦い。王を名乗るニュクスという男が魔王城を襲撃してきた。

 しかし、総力戦ではなく単体でだ。目的が魔王の殺害だったのならば単体で乗り込む必要は無い。

 かと言って魔法陣を仕掛けるために国を襲撃する必要もない。

 

 奴らの目的が分からない。それが分かれば随分と楽になると思うのだが……。

 それを模索している間に先輩達はあっさり殺られましたとなっては困る。

 ゼルドミアの方も何かあったみたいだしなー。

 

「王都に戻ろう。ただし堂々とは帰らない。何があるか分からないんだ。森の魔法陣に細工しながらこっそり戻ろう」

 

 予定よりもよりも早くなったが仕方がない。ここの防衛はカルロにも任せられる。

 そもそも母が狙いになる理由も無いはずだ。

 この国に伝わる兵器でもあれば話は別になってくるが……吸血鬼そのものが兵器みたいなものだからなー。

 

 一番いいのは第一学園のある街、アルパに応援を頼む事だが、向こうは向こうで大変だろう。

 戦力を徐々に削られているような、嫌な流れだ。

 

「時間は有限。夕食が終わったら出よう」

「了解です!」

「分かった」

 

 その日俺らはこの街を発つ予定だった。

 夕食は魚にスープ。どちらも学食のご飯なんだそうだ。

 俺達は一気にスープを飲み干した。後味が悪い気もしたが普通に美味しかった。

 

「アル、フォードく……むにゃむにゃ」

「っ!? やられ……た」

 

 視界が歪み、声を発する間もないまま俺は深い眠りについた。

 

 翌朝

「ん、あっ……!?」

 

 意識が覚醒し、状況を把握する。

 手足は椅子に固定されており、奇妙に物静かだった。壁は石造り、前には劣化が目に見えて分かるほどの鉄格子があった。

 その横にはイアとフェーカスも椅子に固定され、スヤスヤと眠っていた。

 

「……パー………ん……ここは?」

「むにゃむにゃ」

 

 イアも目覚めたみたいだ。

 魔力探知をすると、この上に多くの未熟な魔力反応が見られた。数からしても、隊列のように並んでいることからも、生徒達だろうと推測できる。

 

 それと、この階には警備員はいなかった。

 逃げられることを前提に捕まえたのだろう。ならば目的は時間稼ぎか。急いだ方が良さそうだな。

 

【氷塊魔法】で手足を拘束していた縄を切り落とす。

 

「……嵌められたわね」

「そうだね。でも、それよりも王都が気になる! できるだけ早く戻るぞ!」

「分かった。ほら、起きなさい駄犬!」

 

 イアがフェーカスの椅子を傾けて倒した。確かに起きざるをえないだろうが……些か対応が酷すぎないか?

 

「むにゃむにゃ」

 

 嘘だろ!? 今ので起きないとか……。これはイアが経験したことがあるみたいだな。やれやれという顔をしている。

 

「んー、朝ですか?」

「よし、ここを脱出する! ここは第二学園の地下だと思う」

「どうするの? 森に立ち寄るのか寄らないのか。最悪、戦いは始まってるわ」

 

 そこが迷いどころなんだよなー。時間的余裕は無い。それどころか一歩、いや、五歩くらい出遅れているかもしれない。

 

「直行しよう!」

 

 階段があり、その上には出口と思われる扉があった。

 

 そこを開け、外に出た。そこには第二学園の風景が広がっている予定だった。

 

「まさかっ!? すいません! ここはどこですか!?」

 

 今どこから出てきたんだと言いたげな顔をした、一番近くにいた少年に声をかける。

 

「はぁ? ここは()()()()に決まってんじゃん」




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